ホントウの勇者

さとう

大樹都市ウィル・ティエリー④/ヨルナ・3姉妹



 結局この日は泊まる事になった
 そして…嬉しい事がもう一つあったのだ


 「アウラ姉様!!」
 「ヨルナ!! 会いたかったのじゃ!!」


 そう、アウラの妹のヨルナである
 アウラを幼くした感じの13歳くらいの女の子だ


 「お久しぶりです、アウラ姉様…お姉様が病気で倒れて、会うことは許されないと言われて…ずっとマニャーナ姉様の元で勉強しておりました。お見舞いに行けずに申し訳ありません」


 アウラはマニャーナさんに視線を送る、マニャーナさんは苦笑して頷いた…どうやらヨルナには真実を伝えていないらしい。これも姉なりの優しさだった


 〔神の器〕の男性はいつの間にかいなくなっていた
 最後に見せたあの歪んだ笑みが気になるが…まぁ、後にしておこう


 「姉様、今日は一緒にいられるのですか?」
 「うむ、マニャーナ姉様と話したいこともあるしの、今日はお泊まりじゃ」
 「やったぁ!!」


 ヨルナは嬉しそうにアウラにじゃれつく。そして俺に視線を移した


 「……こちらの方は?」
 「ああ、彼はジュート。わらわをここまで送ってくれた人間じゃ」
 「………人間?」


 ヨルナはその言葉を聞いたとたんに猛スピードでアウラの後ろに隠れた


 「ににに、にんげん~~~!? ななななんで人間がここに~~!?」
 「お、落ち着くのじゃヨルナ、ジュートは恐くないぞ」
 「で、でも……人間はエルフを食べちゃうって…いっぱいひどいことして最後は捨てちゃうって…」


 なんだそりゃ……軽くショックなんですけど…しかし、俺には秘密兵器がある!!


 「え~と…ヨルナ…ちゃん、だよね。俺はジュート、よろしくな」
 「…………」
 「は、はい…ネコ。かわいいだろ?」
 《………チョット》
 「しゃ、しゃべった!?」
 《アラ、アナタも聞こえるのね?》


 どうやらヨルナもクロの声が聞こえるらしい…マニャーナさんはポカンとしてるし
 ヨルナはクロを抱っこして頭を撫でている。よし、表情が柔らかくなってきた…ここで切り札を使うぜ!!


 「よ~し、ヨルナちゃん…お兄さんが美味しい物をあげよう」
 「……おいしいもの?」
 「ああ、きっと気に入るぞ」


 俺はさっそくケーキと紅茶を用意する…この子はまだ子供だから、紅茶用に砂糖とミルクも用意しておこう
 アウラとマニャーナさんがソワソワし始める……分かってるよ、あんたらの分も用意してあるよ。ついでにラルシドとフェリーナのぶんもな


 「ほれ、みんな座って。ラルシドとフェリーナも一緒に」
 「し、しかし。親衛隊である私達が同席とは……」
 「その通りでございます……」


 ケーキを見つめながら悲しそうに言う…すると3姉妹が


 「いいから座りなさい…紅茶が冷めてしまうわ」
 「うむ。遠慮するでない」
 「よく分からないけど…一緒なら楽しいですよ?」


 3姉妹に言われてラルシド達は感動しながら席に着いた


 今度のケーキはショートケーキ。生クリームをたっぷり使った俺の中では最高のケーキだ


 「こ、今度のは違うのね」
 「うむっ。これも絶品なのじゃ!!」
 「そんなに美味しいんですか? 姉様」


 マニャーナさんとアウラは興奮しているが、ヨルナは冷めている…ふ、今に見てろよ


 「さ、召し上がれ」
 「はぁ…いただきます」


 全員に行き渡った所で食べ始める


 「う~~ん…おいしい~…これがケーキ…ぜひ我が国へ取り入れたい物だわ!!」
 「はい姉上!! わらわも同じ考えです!!」
 「ああ…すばらしい。生きていてよかった…」
 「同感だ…」


 ヨルナ以外の4人は相変わらず感動している…肝心のヨルナは


 「~~~~~~~っ!?」


 プルプル震えていた…大丈夫か?


 「お、おい…大丈夫か?」
 「……はっ!? 余りのおいしさに言葉がありませんでした!!」


 ヨルナは瞳をキラキラさせていた


 「美味しいです~~~っ!! スミマセンでしたぁ~~っ!!」


 そう言うとヨルナはガツガツケーキを食べている
 マニャーナさんとアウラも同じように食べている…そっくりだな
 そして…あっという間に食べ終わってしまった


 「は~~~~おいしかったぁ」
 「おいしかったのじゃ~~~~」
 「ですね~~~」


 3姉妹のだらけっぷりはそっくりだった
 ケーキひとつでここまでになるとは……恐ろしい


 「あ、あの」
 「ん? どうしたヨルナちゃん?」
 「ヨ…ヨルナでいいです……ジュートさん」


 どうやらヨルナも心を開いてくれたようだ


 俺たちはそのまましばらく談笑を続けた




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 夕食を終えて部屋に案内された…夕食は、薬草をふんだんに使ったスープに、焼いた肉とサラダというシンプルな物だった。精進料理、病院食という単語が何故か浮かんだ料理だった


 アウラ達3姉妹は、マニャーナさんの部屋で過ごすそうだ。俺が案内されたのは6畳ほどのシンプルな部屋。ベッドに机くらいしか設置されていない……まぁ寝るだけだからいいけど


 ベッドの上にいたクロが話しかけてきた


 《ジュート…あの〔神の器〕》
 「ああ、アイツはヤバい…勝てる気がしない」


 見た瞬間にわかった。アレはバケモノだと
 俺は正直、自分の【銃神ヴォルフガング】の力なら、どんな奴が相手でも戦える自信があった…しかし、あの男性を見た瞬間にその自信は砕かれた


 《恐ろしいワネ……人間でありながら【神】の領域まで上り詰めているワネ、恐らく実力的には【王ノ四牙フォーゲイザー】クラスかもネ。見た感じ神に精神を侵されている感じはしなかったケド……今のアナタじゃ勝ち目が無いワヨ》


 「……でも、やらなきゃならないかもしれない」


 《無理ヨ…殺されるワ。アナタは【神器ジンギ】に覚醒してまだ4ヶ月程度なのよ!! 今までの相手は同じ土俵の〔神の器〕だったから戦えたのを忘れないで。いくらアナタがヴォルの力を宿しているからって、相手が悪すぎるワ!! 言ったでショ…アナタより強い生物はいくらでもいるのヨ!!》


 「わかってるよ!!! でもアイツはヤバい。何か企んでる…それは間違いないはずだ」


 《ホンットにバカね!!……ココでアナタが死んだら誰がクラスメイトを救うの!?》


 「じゃあアウラ達を見捨てろって言うのかよ!!」




























 「おやおや…穏やかじゃないね」


 「なっ!?」
 《っ!?》




 声が聞こえた方向はベランダだった


 ありえない、ここは1階だし、ベランダの下は地面に真っ逆さまコースだぞ!? それに気配を全く感じなかった……ウソだろ!?




 「初めまして…僕は 切華きりはな斬駆ざんく。よかったら少しお話しませんか?……かわいい後輩くん」




 微笑を称える男性がそこにいた


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 「クロ……さ、下がってろ」
 《逃げなサイ!! 殺されるワ!!》


 俺の左手は【死の輝きシャイニング・デッド】に添えられていた…くそっ、汗が止まらない。恐い…


 「落ち着いて。キミと戦う理由は今は・・ありません」
 「なんだと?」


  切華きりはな斬駆ざんくと名乗った男性は変わらぬ微笑を称えながら言う


 「キミはもしかして…あの白い服の〔神の器〕のお友達かな?」
 「そうだ……テメェ、みんなに何しやがった!!」


 「なぁに、この森の結界を破壊して侵入してきたんでね…ちょっとお仕置きしてお家に帰って貰っただけさ。誰も殺してはいないよ」


 「ふっざけんな!!!」




 俺は【死の輝きシャイニング・デッド】を抜い




 「落ち着きなって…まともに話が出来やしない」


 「なっ!?」




 俺の左腕は 切華きりはな斬駆ざんくに押さえつけられていた


 俺は断じてヤツから目を離していない
 気がついたら後ろにいた


 「ははは。見えなかったかい? じゃあ僕には勝てないよ」
 「…………」


 「ほら、汗を拭いて…座ってお話ししよう?」


  切華きりはな斬駆ざんくは懐からハンカチを取り出し俺の汗を拭う。その表情は俺をいたわっているのか、舐めているのか全く分からなかった




 俺は腰が抜けたように座り込む




 「さて、キミのことを教えてくれ…大方、【魔神】に呼び出された〔神の器〕だろうけどね」


 「………アンタは何者だ? 目的はなんだ?」


 「ははは、質問を質問で返されたか。まぁいい、質問に答えてあげるよ」








 「僕は…いや、僕たち・・・は、10年前に【魔神】に呼び出された〔神の器〕さ」






 切華きりはな斬駆ざんくは、感情の読めない表情で語り出した





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