ホントウの勇者

さとう

大樹都市ウィル・ティエリー②/大樹・兄姉



 「所で…なぜわらわ達を襲ったのじゃ?」
 「そうだぜ、アウラの顔は知ってたんだろ? 俺個人を狙うなら分かるけど」


 その質問に、フェリーナとラルシドはバツの悪そうな顔をした


 「申し訳ありません…あなた様から感じる力が以前とは比べものにならないほど強く感じられましたので…偽者と疑っておりました」
 「その通りです。我々の知る姫様とは全くの別人…しかも、人間を連れていたので、迷わず攻撃命令を出してしまいました」
 「……まぁよいのじゃ。現在の国の状況を説明してくれ」


 「「ハッ!!」」




 フェリーナとラルシドは交互にしゃべり出した




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 まず、このエルフの地についてだが、この地には小規模のエルフの集落が無数に存在する。その数は100以上。そして集落の中心に〔大樹都市ウィル・ティエリー〕が存在する。大樹の頂上にある〔聖樹メーディアス〕は全てのエルフの聖域であり、未だかつて誰も踏み入れたことがない伝説の聖地だそうだ


 その聖地に入ることが出来るのは〔王の証〕を持つ者だけで、証を持つ者でも聖樹の側には近づけず、聖樹を祭る祭壇までしか近づけない。祭壇から先には超強力な結界が張ってあり、神ですら近づくことが出来ないそうだ


 言い伝えでは、〔聖樹メーディアス〕には古代の神様の力が眠るとされ、その力を手にした者は神を超えた存在になれると言われている……ウソ臭ぇ……マジで


 アウラが持つ〔王の証〕は、聖樹までの祭壇に近づくための結界通過装置みたいなもので、祭壇に祈りを捧げることでエルフの民の王として認められるらしい


 ここまでがこのエルフの地についての基礎情報だ


 ……っていうかクライブグリューンはそんなところにいるのかよ。どうやって近づけばいいんだ?




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 現在の国の状況は……国の統治は〔エルフ王ラウド・フィールディング〕が統治しているが、それはあくまで建前で、裏ではアウラの兄と姉が次期王は自分に相応しいと王を脅しているらしい。一時は王様は投獄されていたが、流石に現国王がずっと姿を見せないわけにはいかないので、妹のヨルナを人質にしてアウラを次期王から外すように説得していたらしい


 しかし、〔王の証〕はすでにアウラの手の中で、アウラ自身が望まない限り〔王の証〕はアウラから離れることはないらしい。なので今現在、兄姉はアウラの捜索を優先して人員を派遣しているそうだ。でもエルフは人里に降りたことがないので、できるのは精々〔ワウドゥ古代森〕の入り口でアウラの帰還を待つことぐらいしかできないらしい……なんかアホだな


 「ヨルナは無事なのじゃな?」
 「はい。それは間違いありません」
 「ヨルナ様は現在、マニャーナ様のお屋敷に匿われています。情報ではヨルナ様は次期王の争いの事とは一切無関係です。マニャーナ様の家庭教師という名目で、長期の屋敷滞在をさせているとのことです」
 「そうか。姉上……ヨルナ……」


 アウラは…悲しそうに呟いた


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 この国の派閥は3つある


 武闘派のアウラの兄 アルマティ派
 頭脳派のアウラの姉 マニャーナ派
 穏健派の我らの姫様 アウローラ派


 あとはほんの僅かにヨルナ派があるが、それは個人的なヨルナのファン集団らしいのでカウントしない。っていうかなんだよファン集団って


 アウラの兄アルマティは、エルフ族でもかなりの強さを持った戦士でもある。
 何より大事なのは力、と言うことを信じて鍛錬を欠かさず、自らが王となってエルフ族を最強の武力国家にしたい。そのために〔聖樹メーディアス〕に眠る古代の神の力を得るために王を目指しているらしい……話を聞く限りなんか頭悪そうだな


 アウラの姉マニャーナはエルフ族最高の頭脳を持ち、さらに魔術師としても最強の力を持っている
 アウラの姉はエルフは今のままではいけない。他国との交流、文化を取り入れて新たな時代を築く…そのために王の力を欲しているらしい……って、これってアウラの理想のまんまじゃん!!


 「アウラ、お前の姉さんって……」
 「うむ。姉上はわらわと同じ理想を持っているのじゃ……昔のわらわを知る姉上なら、きっと当時のわらわを王にするわけにはいかなかったはずじゃ。当時のわらわは王になぞ全く興味がなかったからの」


 確かに……でも、今は違う
 もしかしたら、分かってくれるかもしれない


 「まずは姉上と話をしよう。きっとわらわの事を理解してくれるはずじゃ」
 「そうだな、お前の妹もいるみたいだしな。まずはそこから責めてみるか」
 「うむ。姉上は〔大樹都市ウィル・ティエリー〕の〔5の枝〕の最先端に屋敷を構えているのじゃ」
 「??……とにかく行ってみようぜ」
 「うむ。ふふふ、姉上にケーキを出したらどんな顔をするかのぅ…楽しみじゃ」


 アウラはニヤニヤしながら呟いている…放っておこう
 アウラは姉の事が嫌いではなさそうだ


 「姉上は…スゴく頭がいいのじゃ。わらわの魔術の師匠でもある」
 「へぇ…スゴいんだな」
 「うむ!!」


 アウラは誇らしげに胸を張った




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 出発前に確認することがある……


 「なぁ…〔神の器〕の事だけど〕


 俺はフェリーナとラルシドに聞く
 二人は表情を硬くして語り出した


 「あの二人は突然結界を抜けて現れたのです。エルフの戦士達を不思議な力で昏倒させて無力化し、自分たちが〔神の器〕であり、神託によってこのエルフの地を守るために神が使わした…と。そしてアルマティ様とマニャーナ様がたいそう気に入りお二人の側で使えるようになったのです」


 「実際にあの男女の力は恐ろしい物でした。この周囲に存在するモンスターはほぼ彼らが一掃しましたし、歴戦の戦士などはまるで相手になりません……しかし」


 「?……なんじゃ?」


 フェリーナは肩をふるわせて言う


 「私には…あの二人がとても恐ろしく感じます。何か…何か不吉な予感が頭から離れないのです。このままではいけない…そんな気がしてならない」


 ラルシドも同意見のようだ


 「確かに、彼らが現れたタイミングも気になります。ちょうど次期王にアウローラ様が指名された時ですからな。しかも彼らは次期王の事をしきりに探っておりました」


 「……気になるの」
 「ああ…次期王…アウラのことか?」
 「うむ。じゃがどうして……む、もしかして!?」
 「なんだよ?」






 「古代の神の力……いや、考えすぎかの」






 アウラは首を振り、自分の考えを否定した




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 「とにかく、まずは姉上の所へ向かうのじゃ」
 「そうだな。ここから近いのか?」


 ラルシドが立ち上がりドアを開けながら言う


 「そうですな、ここからだと歩いて2時間ほどです」
 「……遠いな、魔導車でいくか」
 「魔導車?」


 フェリーナが首をかしげた…とにかく行こう
 俺は魔導車を紋章から取り出した…すると


 「な、何だこれは!?」
 「モ、モンスター!?」


 あー…面倒だからアウラに任せる
 アウラは懇切丁寧に二人に説明した…サンキュー


 3人が魔導車に乗り込み、俺も運転席のドアを開ける…すると


 《サァ、行くワヨ》
 「……おう」


 クロがシートに香箱座りで鎮座していた
 まぁいいか。とにかく行こう


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 クロは助手席のアウラの膝の上に乗っている


 《ゴロゴロ……うニャ…》
 「どうですかな…クロ殿?」
 《うん…キモチいいワネ…ゴロゴロ》
 「ふふふ…よしよし」


 相変わらずのテクニシャンだな…ちょっと羨ましい


 そのまましばらく進むと、かなり開けた場所に着いた。が、そこはかなりひどい場所だった


 地面はえぐれ、所々が陥没している。地面を無理矢理ほじくり返したような跡がいくつもあったし、まるで戦場のような場所だった


 「なんだこりゃ…爆撃でもあったのか?」
 「ばく……げき?」
 《にゃ?》


 クロとアウラはポカンとしている
 すると、フェリーナが静かに語る


 「違います…これは例の〔神の器〕が戦った場所です」
 「そうなのか? よっぽど強いモンスターが出たんだな?」
 「……いえ、違います」


 フェリーナは震えながら語る




































 「相手は…白い服の〔神の器〕・・・・・・・・でした・・・










 俺の思考が停止し、急ブレーキを掛けていた






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 「のわぁっ⁉ あ、危ないのじゃ‼ ジュート、いきなり······⁉」


 アウラが文句を言ってるがどうでもいい
 俺はフェリーナを問い詰めた


 「白い服って······何があったんだよ‼ お前見てたのか、知ってる事話せ‼」


 「ジュ、ジュート殿···落ち着いて下さい」
 「そうなのじゃ、フェリーナが怯えておる」


 しまった···落ち着け、冷静に···よし


 「済まなかった···何があったか話してくれ」
 「は、はい···」




 「私が見たのはこの森に入ってきた侵入者···男が3人と女が1人です。この森の〔霧の中の隠れんぼミスティック・レティーロ〕か破壊されたので周辺を探索していたら発見しました。しかし、4人ともかなりの力を感じて、私一人では太刀打ち出来そうもなかったので、そのまま後を尾行する程度しか出来ませんでした」


 「そして···この広場で〔神の器〕と接触、戦闘が始まりましたが···私では理解出来ない力を振るい、あっさりと3人を倒して···最後の一人をワザと見逃して撤退させました。恐ろしく強かったです」


 ぶるりとフェリーナは震えた




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 「なるほど···かなりの使い手という事じゃな」
 「いえ、あれは······そんな次元ではありません。もっと異質な···何かを感じました」
 「············」


 その〔神の器〕と戦ったのは誰だ?
 まさか······クラスの誰かが? ここに来たのは俺を待ち伏せる為か? わからない······とにかくこの国の〔神の器〕に話を聞かないとな


 俺は再び魔導車を発進させた


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 「お、見えて来たのじゃ」
 「へぇ、どれどれ·········⁉」


 俺の目の前に飛び込んできたのは······


 「な、なんじゃありゃ······⁉」


 巨大な1本の「木」だった
 俺は思わず魔導車の魔力供給を止めてしまう。そして思わず呟いた


 「た···『大樹』都市···か、なるほどな···」


 まだ距離はあるがここからでもわかった
 遠くから見るとまるで巨大なブロッコリーみたいな大樹が、天を貫くように地面から生えている
 大きさは直径何キロだ?···雲の近くまで伸びてるぞ、しかも根っこもアホみたいに太い


 「驚きましたか? あれが〔大樹都市ウィル・ティエリー〕です。エルフの民の聖域であり象徴です」


 ラルシドが誇らしげに言う。いやー驚いた、この世界に来て一番驚いたかも。よく見ると、枝にチラホラと建築物が見える。やっぱりあの上に住んでんのか


 「あそこは全6枝からなります。1〜3枝はエルフの庶民が、4枝は我々親衛隊が、5枝はエルフ王族の住まいで、6枝は王宮がございます。さらに6枝の上···最上枝には伝説の聖域〔聖樹メーディアス〕が生えているそうです」


 なるほど。枝っていうのは階っていう意味だよな
 アウラの姉さんは5枝に住んでるのか。じゃあアウラも?


 「王族はそれぞれ屋敷を持って言うおるのじゃ。父上、兄上や姉上、妹のヨルナも···もちろん、わらわもじゃ」


 アウラは俺の疑問を先に答えてくれた。するとフェリーナが懐かしそうに微笑む


 「そうですね、ヨルナ様は毎日アウローラ様の屋敷で過ごされておりました。私が毎日、果実や飲み物を持ってお出迎えしたものです」


 「ははは、そうじゃな。毎日一緒に物語を読んで過ごして、眠ったヨルナを寝室に運ぶのはラルシドの役目だったの」


 「······そうでございましたな」


 楽しそうに過去を語る3人···その表情は柔らかく、楽しそうだ




 俺は大樹を眺めながら、再び魔導車を走らせた





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