ホントウの勇者

さとう

果樹園の町ヘレルマート④/喫茶ポーストレ・大盛況



 そんなわけでケーキを作ろう‼


 生クリームとフルーツはある。すなわち……全てはスポンジケーキに懸かっているという訳だ
 これが意外と難しい…昔、調理実習で作ったときはどのグループも成功しなかった
 真っ黒に焦げたり、ベチャベチャのままだったり…なんでだろう


 とにかくやってみよう
 ちなみにそれっぽい道具は【灰】の魔術で生み出した。便利すぎる
 挟むフルーツはこの世界のキウイ、モモ、イチゴなどだ。初めて見たときに日本産とおんなじフルーツがあったから驚いた。この世界と俺の世界はどこかで繋がってるのかもな


 材料を混ぜて焼く……最初はスポンジが膨らまなかったり、膨らんでも中がダマになって美味しくなかった
 俺はかつての知識を思い出す…たしか、ダマになるのは小麦粉を振るわなかったとかなんとか…?
 卵は泡立てないとダメとか…泡立てすぎてもダメだとか……あああわかんねぇぇぇぇ!!!


 何度も失敗し…そこそこウマく出来た


 「ほおお…スゴい、不思議なパンだね…いい香りだ」
 「うむ…どんな味なのじゃ?」


 失敗作はもったいないが全て処分した……すまん
 後は半分にして生クリームを塗りフルーツを添えてスポンジを重ね、さらに全体をまんべんなく生クリームでコーティングする。仕上げにフルーツを上に盛り完成です!!


 俺は別に料理人じゃないし、センスがあるワケでもないが、このケーキはうまく出来たと思う。初めてのケーキ……俺は感動していた


 「おおお~!!…なんかスゴいのがある!!」


 カウンターで見ていたアウラの隣にレヨンが現れた。ナイスタイミング!!


 「レヨン、お腹は大丈夫か? まだ食べれるか?」
 「もっちろん!! ダメって言っても食べるからね!!」


 よーし。試食タイムと行きますか!!


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 そこそこ大きいし、4等分だとレヨンが食べきれないかもしれないので8等分にする
 お皿に盛り、食べる前にマスターにコーヒーを入れて貰う。レヨンはフルーツジュースだ


 「こんな食べ物は初めてだ…ジュート君、キミは一体…」
 「ま、まぁそんなことより食べましょう!!」
 「うむ…しかし、これは確かに未知の食物じゃ…緊張するのう」
 「すんすん…でもスッゴく甘い匂いがするよ」


 また誰も手を付けない……やっぱり俺が先陣を切るしかないな


 「いっただきま~す!!…あむ」


 ……ふ、俺はなんて罪な男だ。こんな物を生み出してしまうなんて!!
 うんまぁぁぁぁ!! ケーキ…しかもフルーツ
 スポンジのふわふわと生クリームとフルーツ、クレープとは違う食感!!
 あああ……美味しいです


 「おおお…これは、フルーツとホワイトの革命だ!!」
 「はぁぁぁ~ん…美味しい~のじゃ!!」
 「んんん~…あま~い!!」


 全員に好評のようだ…よし!!


 俺たちはしばらくケーキとコーヒーの味に酔いしれた


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 「よし…よしよし!! ジュート君!! 早速私は調理の特訓をする!! このメニューをウチの看板メニューにしてみせる。まずは完璧な物を作れるように特訓だ!! うおおおーっ燃えてきたーっ!!!」


 な、なんかマスターのキャラが変わってる…まぁいいか
 俺たちは出来る事をしよう




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 俺とアウラは、とりあえず掃除から始めた
 店に巻き付いてるツタや苔を掃除した。ツタはアウラが〔マルチウェポン〕のブレードで切り刻んだり、俺が魔術を使って刻んだ
 苔は地道に掃除した。バケツに水を入れてブラシでこする…地味だがこれしかない。この作業は4日かけて終わらせた


 ちなみにレヨンはマスターの手伝いをしている。マスターは料理人なだけあって、すぐに俺より立派なケーキを作った。フルーツのバリエーションを増やしたり、スポンジにハチミツを混ぜたり、既にレシピの改良までしている。俺があんなに苦労したスポンジもすぐにコツを掴み、ほぼ確実に焼き上げる事が出来るようになった


 俺はマスターと一緒に山に登り、コーヒー豆や紅茶畑、果樹園の手入れを手伝ったり、牛に餌を与る作業も手伝った。これはこれでなかなか楽しい…どうせ自分の世界に帰れないなら、この世界で農業をやるのも楽しいかもしれない


 アウラとレヨンは新しいメニュー表を作成した
 メニューはドリンクが…コーヒー、紅茶、各種ジュース
 ランチがパスタと、俺が教えたサンドイッチだ、中身はフルーツ系やサラダ系、カツサンドなんかもある
 デザートはケーキだ。フルーツケーキ、ショートケーキ、パンケーキ、クレープなど。これらは俺の提案で、イラストを描いてメニューに載せた…カメラがあればなぁ…


 さらにテイクアウトも提案した
 クレープなんかは座って食べるのもいいが、持ち歩きで食べるのも悪くない
 これは店の前でアウラが作る事になった。アウラは手先が器用で、マスターの指導の下で完璧なクレープを作り上げた。しかもものすごく早いし、これにはみんな驚いた
 再オープンしたら、店の前に簡易テントを設置して商売する。もちろん俺とアウラはいつまでもいないので商売が軌道に乗るまでだけど…しょうがない


 店の前にはショーケースを設置し、店の商品を並べて展示した。まぁ食品サンプルだな
 これはチョットだけズルをして、クロにこっそり時間停止魔術をかけてもらう…これでもう腐ったりしない。マスターにも絶対腐りません!! と言ったから大丈夫だろう


 店内の内装は弄らないことにした
 これはこれで完成してるし、俺のイメージする喫茶店にぴったりだったからな


 マスターの腕前もものすごく上達した。もう俺なんかじゃ絶対太刀打ちできない。レシピを改良してオリジナル料理を作り出したり、温かいコーヒーを冷やしてアイスコーヒーなんかも作ったりしてた…スゴい


 こうして再オープンの準備は整った
 役割は、マスターが店内全般
 レヨンがウェイトレス
 アウラがテントでクレープ販売
 俺がテントの会計係、後はレヨンの補助だ


 喫茶店の立地は町の外れだが、出口、入り口の所でもある…集客は問題無い


 ココまでの準備期間は12日……結構かかったな


 さぁ、明日は新生〔喫茶ポーストレ〕開店だ!!




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 「さて……今日は〔喫茶ポーストレ〕の再オープンだ。それぞれの役割を確認しよう」
 「はい、俺はアウラとレヨンの補助です。状況に応じて動きます」
 「うむ、わらわは外でクレープ作りなのじゃ。くっくっく、腕が鳴るわ!!」
 「は~い!! わたしはウエイトレスっ!! 頑張りま~す!!」


 俺とアウラとレヨンは新しい服に着替えた
 アウラとレヨンは白と黒をコンセプトにしたエプロンドレス、俺は似たようなシャツとエプロン
 アウラは耳を隠すため、短めのコック帽を被っていた
 ちなみにこれは俺からのプレゼント、マスターにも同じエプロンを送った


 「ジュート君、アウラさん…キミ達には本当に感謝…」
 「あ~いいですマスター!! その言葉は終わってからで」
 「うむ、まだ始まってすらおらぬ。気を引き締めていくぞ!!」
 「がんばろ~!!」


 「……はは、よし!!〔喫茶ポーストレ〕オープンだ!!」


 よーし、ガンガン行こうぜ!!


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 「へい!! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい!! こちらはこの店にしかない摩訶不思議な味、「クレープ」でござ~い!! 一口食べればその旨さに昇天確実!! 満たされぬココロに究極の甘味を是非ご覧あれ~!!!」


 「………おぬし、何じゃそのしゃべり方は…キモいぞ」


 アウラにジト目で突っ込まれた……ちくしょう、昨日必死に考えたのに
 道路には冒険者や傭兵が列をなして歩いている…これはチャンスだ


 「はいはい!! そこの道行く冒険者さーん!! おひとついかがですか~!!」


 4人組の冒険者グループと目が合った
 男2人に女2人のグループだ、装備からして剣士2人の魔術師2人だ
 魔術師の女の子と目が合った。よし、もう一息だ


 「そこの魔術師のお嬢さ~ん、あま~いクレープはいかがですか~!!」


 アウラがクレープを一つ作り俺に手渡してくる…ナイスアシスト!!
 俺はそれを見せつけるように前に出す


 「え?……なにあれ?」
 「ん? どうした?」


 魔術師の少女が俺のクレープに目を奪われ、それを見た剣士がその視線を追う


 「はーい、そこのイケメン剣士さんもいかがですか~!! 甘くてふわふわ、誰も食べたことのない味だよ~!!」


 お?…よーし、冒険者グループが近づいてきた。ここは一つサービスするか


 「アウラ、ちょっと……ごにょごにょ」
 「む?…ふむ、なるほど。わかったのじゃ」


 俺はアウラに耳打ちし、一つの作戦を伝えた


 「あの~…これは何ですか?」
 「これはクレープ。この店でしか食べられない未知の味だよ!!」
 「未知の味……ゴクリ」


 魔術師の少女2人の視線はクレープに釘付けだ…よし


 「お客さん…もしかしてこれからギルドかい?」
 「ああ、俺たちはBランクの冒険者だからな。モンスター退治を請け負うつもりだ」


 ビンゴ!! 作戦開始だ


 「なるほどね~。強そうな訳だ…よし!! あんた達はお客さん第一号だ。これは俺のおごりだ!!」
 「ええっ!! いいんですか!?」
 「おう!! その代わり、よかったらギルドで宣伝してくれ!!」
 「なんだ、そんなことですか。構いませんよ」


 アウラは手早くクレープを作り、冒険者に渡す


 「はい、どうぞ」
 「あ…ありがとう…」
 「お、おお…」


 剣士2人がアウラの笑顔にやられてた…罪な女だ
 4人はクレープにかじりつく……すると


 「「「「う、うんまぁっ!!!」」」」


 4人ともキレイにハモった……コッチも驚いたよ


 「何だこれ……メチャクチャウマいぞ!!」
 「ああ、ふわふわで甘い、しかも果物のわずかな酸味が見事にマッチしてる」
 「う~~~ん、しあわせ~~~」
 「おいひ~~~~!!」


 みんなあっという間に食べちまった……スゴいな
 すると4人は身を乗り出してきた


 「「「「おかわり!!!!」」」」


 「は、はい…あ、宣伝してくれるならタダにしてやるよ!!」
 「するする!! いくらでもする!!」
 「ああ、なんなら現物をギルドで食べよう」
 「うん!!」
 「お兄さん、はやく~~!!」


 凄い剣幕だ…チョット恐い
 あ、一応店の宣伝もしておくか


 「店の中にも新商品がたくさんあるよ、ホラそこのショーケースを見てごらん」
 「おお~~…見たことの無い食べ物だ…」
 「こ、これもウマいのかな?」
 「ね、ねぇ…食べていかない?」
 「で、でもでも…依頼を受けなきゃ」


 4人はショーケースの前で話し込んでいる
 お、全員が目を合わせて頷いた


 「俺たちはこれからギルドで宣伝かつ依頼を受けてきます」
 「おお、そうかい…頑張ってくれ!!」
 「はい!! 速攻で依頼を達成してまた来ます!!」
 「よーし行くぞ!!」
 「おー!!」


 4人はダッシュで行ってしまった……クレープの力、恐るべし


 「おぬしの作戦…上手くいったの」
 「ああ、先行投資作戦…大成功だ!!」


 後はあの4人に期待しよう…ここでも呼びかけ頑張ろう!!




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 あの4人のおかげか、冒険者や傭兵が少しずつ来始めた
 キレイになった喫茶店の一角が賑わい始めたことで、町の人達も少しずつ様子を見に来たり、実際に中で食べる人もで始めた


 ショ-ケースも設置して正解だった
 ショーケースの脇にはメニューと値段を書いたボードを設置してあるのでわかりやすくなってるし、どんな物があるのか一目瞭然だ……なにより


 「いや~…なんだこの料理は。こんなフルーツ初めて食べたぞ!!」
 「ほんっと…まさかエルブの店がこんなに変わるなんて」
 「ああ、アイツ一体どんな魔術を使ったんだ?」


 「う~ん、美味しいわね。クセになりそう!!」
 「ホントね~。この白いフワフワとこの黄色いフカフカがいい味出してるわ~」
 「ええ、お値段も手頃だし。言うことないわね」


 なかなか好評だ。この調子で町中に評判が広がるのも時間の問題だな
 俺とアウラも大忙しだ


 「ジュート!! 生地がたりんのじゃ。頼む!」
 「おう、今焼くからまってろ!!…あ、はい。お会計500ゴルドです」


 魔導コンロと魔導冷蔵庫も設置してあるので生地も焼ける
 俺は急いで生地を大量に焼く…その間に会計作業もする
 ヤバいな。手が話せない…中は大丈夫か?


 こんな調子で営業は続き……夕方には食材が空っぽになり閉店した


 オープン初日は大成功で終わった…やったぜ!!


 でも……疲れたぁ~




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 この日の売り上げは200万ゴルドだった


 「はい。ジュートさん、アウラお姉さん、お飲み物です!!」
 「れ、レヨン…ありがとう」
 「うむむ……疲れたのじゃ」


 俺とアウラはグロッキーだった
 しかし……レヨンとマスターは平然としてる。おかしいな…店内の客もかなりいたし、洗い物や会計、空いた食器を下げたりもしなくちゃいけなかったハズ…どうしてこんなにピンピンしてるんだ?


 「ふっふっふ…二人ともまだまだですね!! えっへん!!」
 「レヨン…すごい」
 「そ、尊敬するのじゃ」


 10歳くらいの少女に俺とアウラは完全に負けた
 すると、奥からマスターが現れる…こちらも疲労をまるで感じさせない


 「さて、お疲れさま。今日はここまで、また明日よろしく頼むよ。私は明日の仕込みをしてから休むよ。本当にありがとう」


 「ジュートさん、アウラお姉さん。また明日ね~!!」


 マスターは調理場に、レヨンは洗い物をするために奥へ入っていった
 スゴすぎる…なんて体力だ


 俺とアウラは身体を引きずるように宿へ戻った




 また明日頑張ろう……マジで





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