ホントウの勇者

さとう

果樹園の町ヘレルマート②/生クリーム・クレープ



 カランカランとドアが鳴り店内へ入る
 クロは外で散歩すると言い行ってしまった


 「いらっしゃいませ」
 「いらっしゃいで~す」


 挨拶をしたのは30歳くらいの男性と、小学生くらいのエプロンを着けた女の子だった


 「お席へど~ぞ」
 「あ、ありがとう」
 「うむ、ありがとう」


 席はカウンターに5席とボックス席が4つ
 店の雰囲気はこの町には余り合わなそうなアンティーク調の物だった
 ランプ魔道具は年代物だがこの店には凄くマッチしてるし、カウンターやテーブルはレンガ色のキレイな角テーブル、ボックス席のソファも柔らかく座り心地が言い
 店の飾りもスゴくいい。古めかしい絵画や、観葉植物。店主…いや、マスターの後ろには年代物のカップや、コーヒーや紅茶を入れる道具なんかが飾られている。店にはBGMが流れていて、これがなんとも落ち着く……まさに大人の店って感じだ


 「はい、こちらメニューです!!」
 「お、ありがとな」


 女の子が持ってきたメニューを見る
 パン・パスタ・果物のシロップ漬け、フルーツ盛り合わせにミックスジュース
 コーヒー・紅茶に……ん?


 「なぁ、この「フルーツのホワイト盛り」って何だ?」


 俺は女の子に質問する…すると


 「ふふ~ん!! それはこの町でパパしか作れないオリジナル料理です!! 味は食べてのおたのしみ!!」


 女の子は胸を張って言う
 パパって事はマスターの娘か……


 「じゃあ俺はそれで、あと食後にコーヒーで…アウラは?」
 「ふむ、わらわはフルーツパンと果物のシロップ漬けじゃ。あとミックスジュース」
 「果物づくしだな……」
 「う、うるさいのじゃ!!」


 少女が元気にオーダーを取り、マスターの所へ持って行く
 その光景を見ながらアウラに言う


 「いい店だな…しかも客は俺たちだけだしな」
 「うむ。こんなにいい店なのに、おかしいのじゃ」


 しばらく雑談していると、マスターと女の子が料理を運んできた


 「どうぞ、こちらフルーツのホワイト盛りです」
 「どうぞ~!!」
 「おお、ありが……!?」


 俺の前にはフルーツの盛り合わせと器に入った白い物が置かれた
 アウラの前にはフルーツパンと果物シロップ漬け、ミックスジュースが置かれる


 「どうぞごゆっくり……お客様?」
 「おいジュート、どうしたのじゃ?」
 「?」


 マスター、アウラ、女の子が、凍り付いた俺を見て心配する
 俺の視線は白い器に釘付けだった


 「ま、マスター…これって」
 「ああ、これは私の家に代々伝わるミルクの加工品です。曾祖父が開発した生活魔術を使って生成するんです」
 「スッゴく美味しいんだからね!!」


 俺はそれを一口嘗めてみた………間違いない




 これ……生クリームだ




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 食事を済ませてコーヒーを飲む
 甘い物を食べたので、ブラックは凄く美味しく感じる
 俺はどうしてもマスターに聞いてみたかった


 「あの、マスター。この生ク…ホワイト盛りってどうやって作るんですか?」


 この生クリームがあればケーキが作れるかも
 スポンジケーキは卵と砂糖と小麦粉…薄力粉はないからしかたない、があればできるし、この町の果物を使ってフルーツケーキが作れるかも


 「……すまない。これは我が家の秘伝、この店と一緒に父から受け継いだ大事な魔術なんだ。教える事はできない」
 「あー……そうですよね、やっぱり」


 まぁそうだよなあ…うん
 するとマスターは


 「ふふ、不思議だね…なぜこのホワイトの作り方を知りたいんだい?」
 「え、だって…これを使えばもっとスゴい物を作れますよ!! マスターのコーヒーにぴったりのスイーツが……!!」
 「そ、そうなのかい?…はは、キミも父と同じ事を言うんだね」
 「え?……どういうことですか?」


 「いや…父は長年このホワイトを使った料理を研究していたんだ。しかし…上手くいかなかった。このホワイトでは果物に付けて食べるくらいしか思いつかなかったからね。私もいろいろ研究したが…ダメだったよ、妻にも逃げられてしまったしね」


 「パパ…」


 女の子はマスターにしがみつく
 マスターは女の子の頭を優しく撫でる


 「いやぁ…お客さんにこんなことを喋ったのは初めてだ。ああ、私はエルブ、こちらは娘のレヨンだ」
 「俺はジュートです」
 「わらわはアウラなのじゃ」
 「レヨンです!!」


 レヨンはきちんとお辞儀をして挨拶する
 アウラが優しく頭を撫でた


 うーむ……なんとか出来ないかな…っていうかケーキの可能性を見てしまったから簡単には諦め切れん
 …………よし、頼んでみよう!!


 「あの…マスター。お願いがあるんですけど」
 「?…悪いが魔術は教えられないよ?」
 「いえ、その…俺が考えたレシピを一緒に作ってくれませんか?」
 「え?……」


 なんとかここでお願いしよう…頼むぜ!!




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 「つまり……私のホワイトを使って料理したいと?」
 「そうです。俺の考えてる料理にマスターのホワイトが必要なんです。もちろん食材は俺が用意しますし、お金も払います……お願いします!!」


 俺は立ち上がり頭を下げる
 アウラとレヨンは驚いていた


 「何故そこまでするのじゃ?…確かにウマいが」
 「でしょ!! パパの料理は大陸一なんだから!!」


 いつの間にかボックス席のアウラの隣にレヨンが座っていた
 アウラが果物をレヨンにあげている…もう懐いている
 マスターは考え込んでいた


 「う~ん……わかった。いいだろう」
 「ホントですか!!」
 「ああ。ただし…ホワイトの製造過程は見せられない、あと材料はキミが用意する事、さらにキミの料理の制作過程を見せて貰う…どうかな?」
 「もちろんです!! やったぜ!!」
 「……い、いいのかい!? キミの料理を私がマネするかもしれないんだよ!?」
 「え?…それが何か?」
 「…………」
 「じゃあ準備があるんで明日来ます。よーしアウラ!! もう一回買い物行くぞ!!」
 「ちょっ、ま、まつのじゃ!!」
 「また来てねー!!」


 俺とアウラは再び町へ繰り出した…よっしゃあ!!




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 俺の頭の中には2つのレシピが浮かんでいた
 ケーキとクレープ…どちらも材料はほぼ同じ
 問題はクレープをうまく焼けるかどうかだ


 この町は果物だけではなく、普通に小麦や卵、砂糖なんかも売っていた
 果物は大量にあるから買わなくてよし…くっくっく…楽しみだぜ


 「なんかスゴく怪しい顔してるのじゃ…」
 「ふっふっふ…アウラ、明日を楽しみにしてろよ…度肝ぬいてやるよ、はっはっはっは!!」


 アウラは不審者を見るような目で見ていたが俺は気にしない
 と言うか俺自身、変なテンションだと理解してた


 宿に戻り自分の部屋に入り、〔セーフルーム〕に入る
 ここには魔導キッチンがあるので簡単な料理も作れる
 中ではアグニが酒盛り、ルーチェがモルと一緒に果物を食べていた


 《ようジュート、なんかするのか?》
 「おう、ちょっと料理をな」
 《料理っ!! 何作るの?》
 「クレープって言う甘~いお菓子だ。まぁ、ウマく出来るかは分からんけど」
 《いいないいなぁ!! わたしにちょーだーい!!》
 「もちろん。ルーチェには味見して貰わないとな、アグニ達もどうだ?」
 《オレは果実酒があるからいい…どうせならしょっぱいツマミをつくってくれや》
 《もぐもぐ》
 《トレパモールはたべたいって!!》
 「あいよ……あれ、クロは?」


 クロがいない……アウラんトコでも行ってんのかな…まぁいいや
 よーし…調理開始だ!!


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 まずは卵、小麦粉、砂糖を混ぜて生地を作った
 分量は適当…何回もやり直してこつをつかんだ
 フライパンに油をしいて温め、余分な油は拭き取った
 お玉で生地をすくいいざ投入……ありゃ?……失敗、ベロンベロンになった


 なんの2回目……再び投入
 お!!……今度はいい感じ!!……よし、フライ返しでひっくりかえして…成功!!


 「ほいルーチェ、熱いから気を付けろよ」 
 《わーい!!…あちゅっ…ほふほふ、うんまーい!!》


 3枚目…今度はモルに
 ……よし成功!! 2枚目からは成功しやすいな


 「ほい、モル…ちょっと大きかったな」
 《もぐもぐ……もぐ!?…も~ぐもぐ!!》


 うん、わからん


 《すっごく美味しいって!! ねぇジュート、もっと焼いてよ~!!》
 《もぐ~!!》
 「はいはい…ちょっと待ってろよ。よし、こっちもいいな…ほれアグニ」
 《お?…おおお、焼き魚か。さっすがだぜ、オレの好物分かってんじゃん!!》


 俺は魔導オーブンで魚を焼き、皿に盛り付けアグニに出した
 ルーチェとモルだけじゃ不公平だもんな


 こうして俺は久しぶりにアグニ達と一緒に過ごした


 ちなみにクロはアウラと一緒に寝ていて、翌朝ルーチェ達がクレープ自慢をして少し不機嫌になっていた
 こりゃ今日の夜もクレープ焼かないとな……


 こうしてクレープはほぼ完璧に焼けるようになったのだった
 ココに生クリームを盛って、細かくカットした果物を添えれば……くぅぅうんまそ~!!


 「なんじゃ朝から…気持ち悪い顔をしおって……」


 アウラの見る目が冷たい……しかし、そう言ってられるのも今のうちだぜ!!




 俺はクレープの妄想をしながら〔喫茶ポーストレ〕へ向かったのだった





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