ホントウの勇者

さとう

果樹園の町ヘレルマート①/果実・甘い声



 俺とアウラは王都を出て〔果樹園の町ヘレルマート〕へ向かっていた
 外は生憎の雨なので魔導車での移動となる
 俺の隣にはアウラがいる
 王都で買いだめしたジュースを飲みながら、のんびり外の景色を眺めている
 膝の上にはクロを乗せ、優しく背中を撫でていた


 俺とアウラの旅もいよいよ終盤。ヘレルマートを抜ければいよいよエルフの守護する森、〔古代森ワウドゥ〕だ


 「町へ着いたら観光しようぜ。果樹園の町だから果物が沢山あるらしいしな、楽しみだぜ」
 「······うむ、そうじゃな‼ エメラルディアに聞いたがヘレルマートは果物を使ったデザートがたくさんあるらしいのじゃ。ふふふ、楽しみなのじゃ」


 アウラも感じているはずだ···
 俺との旅も、終わりが近いことを




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 ヘレルマートまであと4日ほどの距離になった


 《······ゴロゴロ》
 「ふふふ、クロ殿···気持ちいいですかな?」
 《うにゃ···なかなかネ》


 アウラは助手席でクロの喉を撫でていた
 クロのヤツ···俺には触らせないのに


 《アウラの手はしなやかで気持ちいいのヨ···ゴメンなさいネ······ゴロゴロ》
 「よーしよーし······ふふふ、かわいいのじゃ」


 うーん···俺も触ってみたい


 雨が強くなってきたので今日はここまで
 大きな木の下に車を止めて休む事にした


 「さーて、メシにするか。アウラ、何食べる?」
 「そうじゃな···よし、おぬしが作った「ちゃーはん」とやらを食べたいのじゃ‼」
 「りょーかい。ちょっと待ってろよ」


 俺は野菜をたっぷり使った炒飯を作る事にした 
 付け合せに作り置きしておいた肉のスープを温め、炒飯は少し薄味に仕上げる
 3分ほどで炒飯は完成、スープも出来た


 「よし、出来たぞー」
 「おおっ、早いのう」
 「おう、クロはこっちな」 
 《アリガト》


 クロにも炒飯を分けてみんなで食べる
 うん。今日もうまく出来たな


 食事を終えて片付けも終わる···時間にして約8時ってとこか
 クロは〔セーフルーム〕に引っ込んでしまった
 寝るにはまだ早いな···するとアウラが


 「のうジュートよ、おぬし···わらわを送り届けて〔神の器〕をなんとかしたら···行ってしまうのじゃな」
 「······ああ。そうだな」
 「そうか······」


 アウラは俯く···わかってる
 答えは分かっているが、聞いてみた


 「お前も一緒に来るか?···次は【白の大陸】だ。そこでは雪っていう自然現象が起きる所で凄くキレイな所らしい」


 そこまで言うとアウラは悲しく微笑む


 「バカ者···わらわを誘惑するな。これでも必死に我慢してるのじゃ」
 「······ゴメン」


 アウラのこれまでの旅路は、全てエルフのための物だった。それでも···楽しかったのは間違いない


 「ジュート、わらわは約束は必ず守る。だからおぬしも、わらわを最後まで導いてくれ」
 「······ああ。約束だ」


 アウラは俺の側で右手を差し出す
 俺もその手を握る
 すると···アウラは俺の胸に飛び込んできた


 アウラとお互いに見つめ合い···




 俺達は、この日初めてキスをした




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 そのまま順調に車を走らせる事3日。街が見えて来た


 「おお、あれがヘレルマートか」
 「すんすん···気のせいかいい匂いがするのじゃ‼」


 〔果樹園の町ヘレルマート〕は山沿いの町
 町民はほぼ全員果樹園を経営しており、町の産業も当然果物
 【緑の大陸】は共通して建物が木材のログハウスで出来ている
 町民は山にある果樹園で果物を栽培し、下の町で販売、加工をする。エメラルディアが言うには、生で食べたり、シロップに漬けたりジュースにして食べるのが普通らしい。果物はあるし、小麦粉、卵や砂糖もある。なんかケーキでも作れそうだなと聞いてみたら


 「ケーキ? なんですかソレ?」


 どうやらこの世界にはケーキはないみたいだ···作れそうな気がするんだよなぁ


 とりあえず町に入って見よう‼




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 魔導車を降りて歩いて町に入る···すると、明らかにいい匂いがする


 どこもかしこも果物を売っているし、オシャレなカフェもたくさんある
 お客さんも冒険者や傭兵なんかより、観光客や旅人みたいのが多い


 とりあえず、宿をとって買い物だな 


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 町の中央にはギルドや商店、露店が集中してる
 俺達はそのうちの一軒、〔果実の香り亭〕という宿に入った


 部屋を二つ取り町を散策する
 ここでは大量の果物と果実酒を手に入れた
 早速アグニとルーチェに送ってやる


 《おほーっ‼ キタキタ、これがヘレルマートの果実酒かぁ···いただくぜぇーっ‼》
 《美味しそうな果物がい~っぱい‼ アリガトねジュート‼ いただききま〜す···う〜ん美味し〜。あ、はいトレパモールにも》
 《もぐもぐ···もぐ〜っ‼》
 《アナタ達、ホドホドにしなさいネ···》


 向こうは向こうで楽しそうだ
 そういえば最近クロ達との時間が取れないな
 今度みんなで遊ぼうな


 「のうジュート、そろそろお昼の時間じゃ」
 「お、そうだな。どこかの店に入るか」
 「うむ。この町の果物···どこも旨そうなのじゃ‼」


 俺とアウラは町の景色を楽しみながら歩く···なんだかデートしてるみたいだ


 そのまま30分ほど歩き······立ち止まる


 「どこも混み過ぎだろ···全然店空いてねーじゃん」
 「ううう···お腹が空いたのじゃ」


 この町は観光地なので客が多い
 そういえば、王都からこの町まで専用の魔導バスが出てたっけ


 どこもかしこも人だらけで席は空いてない、しかも明らかに食べ終わっていたがそのままお喋りをして休んでるヤツもいる
 仕方ない、ピークが過ぎるまで待つしかないか


 「おいジュート、あそこじゃ」
 「え?······あそこって、あれか?」
 「他にどこがある?」


 アウラが指さしたのは一軒の···店?
 この町のでは珍しいレンガの建物。建物をコケや木のツタが覆いパッと見て喫茶店とは分かり辛い
 他の喫茶店はオープンテラスなどあるがここは無いのでお客さんにはスルーされている
 窓も無いので外観だけでは喫茶店とはわからないだろう···なんでアウラはわかったんだ?


 「なんで喫茶店てわかったんだ?」
 「簡単じゃ···ほれ」


 アウラは店を覆うツタをずらした
 そこには〔喫茶ポーストレ〕と書かれた古い看板があった
 よくわかったなこんなの


 「ふふん、甘味がわらわを呼んだのじゃ‼」
 「あーはいはい、じゃあ入るか」
 「ぬぬぬ、なんじゃその態度は⁉」


 とにかく腹減ったぜ···いっぱい食べよう





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