ホントウの勇者

さとう

閑話 岩木石堂・【岩神ロックフェルゼン】



 岩木石堂いわきせきどうは、魔導車の助手席でのんびりしていた


 この魔導車は道行く冒険者グループから奪った物で、大きさはキャンピングカータイプのかなり大きな物であった
 2階建ての大きさで、寝室は上に2つ、下に4つ簡易ベッドが置かれていて、上には火等かとう燃絵もえ粗某そぼう牛地ぎゅうじ。下には岩木石堂いわきせきどう刺兼都鍼さしがねとばりが使うようにしている


 車の運転は専ら刺兼都鍼さしがねとばりの仕事
 残りの3人は自由に過ごしている


 「なぁ〜横綱ぁ、運転変わってくれよ〜」
 「やだよメンドくさい」


 基本的に彼は面倒くさがりだ
 それはわかっていたが一応聞いたのだ


 「早くエルフ? のとこへ行って【神獣】を始末しよう。そうすれば無月も······無月ぃぃ‼···ゆるさーん‼」
 「お、おい‼ 落ち着けって‼ 暴れんなー‼」


 岩木石堂いわきせきどうはキレやすい
 すぐに熱くなるがすぐに冷めやすい···彼はこの性格のお陰で、中学時代は喧嘩ばかりしていた
 体格がよく太っていたのでよくバカにされて、その度に喧嘩をする···見かねた担任教師が近くの相撲部屋につれていったのが、彼の人生の転機でもあった


 元々才能もあったのですぐに頭角を表した。彼の熱しやすい性格は一対一の勝負には持ってこいだったのだ
 期待のルーキーとして中学二年から始めた相撲は数々の大会を制し、彼は有名になった


 三年の時に高校から推薦で今の高校へ入学した
 勿論、相撲部の特待生としてである


 高校生活は楽しかった
 自分をいじる同級生はいるが、それは信頼を込めた遊びで、彼を横綱という愛称で呼び共に遊ぶ仲間だった


 そして···彼は恋をした


 「あ、お、おはよう」
 「·········おはよう」


 クールな同級生、高名たかな氷寒ひょうか


 熱しやすい自分とは正反対の彼女は、岩木石堂いわきせきどうにとって憧れだった
 その容姿も然ることながら、スポーツも万能で特にテニスが上手い。部活では彼女の相手になる選手がいないので、よく大学のテニスサークルで練習をしてるという噂を聞いた


 なんとなく自分に似てる···彼はそう思った
 彼も部活では相手になる力士はいないので、よく相撲部屋に顔を出してそちらで本格的に稽古をしている
 彼女に惹かれたのも、そんな部分があったのかもしれない


 彼女が死んだ今······もうどうでも良いが
 すると、後ろから粗某そぼう牛地ぎゅうじが表れた


 「わりーな刺兼さしがね···ずっと運転させてよ」
 「ああ、気にしないで······っ⁉」
 「ん?···ああ、気にすんな」


 粗某そぼう牛地ぎゅうじは上半身裸で、下はハーフパンツのみだった
 確か彼は2階で火等かとう燃絵もえと一緒にいた筈···つまり、そう言う事なのか?


 「燃絵のヤツが寂しがってな···ま、そう言う事だ」
 「あー、うん、わかった」
 「アイツ···今寝てるからよ、俺が運転するよ。お前らも休んでおけ」
 「ああ、ありがとう」


 二人は一階のベッドに横になり、そのまま眠りについた




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 「ここが入口か···」
 「なんか不気味だね···」


 エルフの土地の入口の森···そこは薄暗く、深い霧に包まれていた


 「結界だね。周囲を守るタイプじゃなくて、惑わせて混乱させるタイプの結界だ。こりゃ骨が折れそうだ」
 「······所でアイツはどこ行った?」
 「さぁ? 着くなりどっかに行っちまったよ」


 「とりあえず進もう。みんな、気を引き締めて行こう」
 「おい刺兼ぇ···なんでお前が仕切ってんだよ」
 「ええ⁉」
 「まぁいいだろ、行こうぜ」
 「う、うん。わかった···牛児」
 「ええ〜···」


 4人はそのまま進みだした




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 「なるほどな···確かに凄い結界だ」


 彼らは先程から同じ場所をグルグル回っている
 かなり走ったが進んでる気がまるでしない


 「どうするの、牛児? このままじゃ···」
 「大丈夫。なんとなくわかった」
 「え?」


 すると粗某そぼう牛地ぎゅうじは車から降りて周囲を歩き始めた


 「違和感は······この辺だな」


 拳を握り地面を殴る···すると、地面から緑の珠が出てきた


 「な、なんだいそれ」
 「この霧の発生源だ」


 彼の手には珠が握られている。それをお手玉のようにポンポンさせながら説明した


 「同じ場所をグルグル回っていだろ? それで違和感を感じていたんだ。ここだけやけに霧が濃い、だからここに何かあるって思ったら······ビンゴだな」


 粗某そぼう牛地ぎゅうじはそのまま珠を握りつぶす
 すると、一瞬で霧が晴れて明るい森へと変わった


 「おお、やったぜ‼」
 「凄いね牛児‼」
 「さすが粗某そぼうくんだね」
 「い〜からさっさといこうよ」


 そして再び出発する
 そして······森の出口が見えてきた
 刺兼都鍼さしがねとばりはおかしな物を見た










 














 「ん?······誰かいるぞ?」








 そこには、二人の男女が立っていた



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