ホントウの勇者

さとう

王都グリーンカントリー②/反省・王の器



 俺たちは王都の中心を抜けて王宮へと向かっていった
 俺はエメラルディアに質問してみた


 「なぁエメラルディア、お前さ……怒られないのか?」
 「……はい?」


 エメラルディアはキョトンとして俺を見つめる


 「だってさ、仮にも【特級魔術師】のお前が薬草採取でいなくなって10日以上立つんだぜ? いきなり現れて「薬草採取で迷子になりました」なんて言ったら怒られるだろフツー」


 そう言ったとたんにエメラルディアの顔色が悪くなる
 どうやらその辺のことは何も考えていなかったようだ…おいおい


 「どどどどうしましょう……ヤバい、ヤバいですよ~!!」
 「おぬし……自業自得じゃな。正直に謝って罰を受けるのじゃ」
 「そうだな……がんばれよ」
 「見捨てないで下さいよ~!!」


 エメラルディアはアウラをつかんで肩をガクガクゆさぶる


 「あたしは今回の薬草採取は無断で出てきたんですよ!? 以前だって無断で外泊したら騎士団長にスゴく怒られたのに……今回はどうなっちゃうんですかぁ~!!」
 「し、しらんのじゃ!! 離すのじゃ!!」
 「アウラさ~ん!! 友達でしょ~…助けて下さいよぉ~!!」


 友達、と言う言葉にアウラが反応する……おい、まさか


 「と、友達……うむ、なぁジュートよ、なんとかできぬかの?」
 「…………」


 顔を赤らめてそんなことを言うアウラ
 初めての友達のお願いを聞いてやりたいんだろう……でもダメだ


 「ダメだ。エメラルディアは無断で出てきてこの城の人達に迷惑と心配を掛けてるんだぞ? そのことに対する責任は取らなくちゃいけない」
 「ううう~……ジュートさん厳しいです~…」
 「責任……確かに。済まんなエメラルディア、わらわ達は力になれぬ」


 アウラの言葉にエメラルディアは項垂れる…しょうが無いよな


 「俺たちも一緒に謝ってやるから、元気だして行こうぜ」
 「そうじゃな、一人より三人なのじゃ」
 「……ジュートさん…アウラさん…ありがとうございます~!!」


 エメラルディアは涙目でお礼を言う


 それじゃあ行きますか、怒られに……


───────────────


───────────


─────── 




 王宮の入り口に着き、門番に挨拶をする


 「こんにちはー」
 「ごきげんようなのじゃ」
 「あ、あはは…ど、どーもただいまでーす……」


 俺に隠れるように門番に挨拶をするエメラルディア…すると


 「エ、エメラルディア様!? 今までどちらに!?」
 「お、おい!! グローカス王と騎士団長へ報告しろ!!」
 「は、はい。ただちに!!」


 門番の一人が猛ダッシュで城の中へ走って行く…イヤな予感しかしねぇ…
 ものすごく帰りたくなってきた…


 「あああ…ヤバい、絶対に騎士団長が出てきます…」


 エメラルディアは頭を抱えて絶望してる…
 すると門番さんが俺たちを城の中に案内してくれた


 「こちらの部屋でお待ち下さい」


 城には行ってすぐの小部屋に案内される
 恐らく……王様や騎士団長とやらが準備をしてるんだろう
 アウラは何か考え込み、俺を見ながら言う


 「ふむ。この大陸で一番の権力者…王様か。ここでパイプを作っておくのも悪くないのじゃ……ふむむ、わらわの事情を話すべきか悩むのう…のうジュート、おぬしはどう思う?」


 「そうだなぁ……いきなりエルフの事情を話しても信用されないかもしれない。かといってお前の正体を明かせばどういう扱いを受けるかは分からない。なら…まずはこの国のエルフの認識を聞いてから判断した方がいいな。友好的にしろ、そうじゃないにしろ判断の材料になる」


 ちなみにエメラルディアにはある程度の事情は話してある
 込み入った事情を話せば無関係では無くなるし、戦いに巻き込む恐れもあるため、アウラは次期エルフの女王で、見聞を広めるため…そして他国との交流を目指しているために旅をしている……という設定だ
 エメラルディアはこの国の、しかも王様に近いポジションだが、アウラはエメラルディアにはなるべくウソをつきたくないみたいだったのでギリギリの範囲で話したのだ。もちろん王様やこの国のお偉いさんには喋るなと言ってある


 「なぁエメラルディア……って」


 俺はエメラルディアの方を向く…すると


 「どうしようどうしよう……レネット騎士団長に怒られ…いやお仕置き…いや殺され…ああああ、なんであたしこんなのんきに旅してたんだろう……ああああああ!!」


 ダメだこりゃ…全然俺たちのこと見えてない
 アウラも俺も肩をすくめていた…そして


 「失礼いたします…王がお呼びでございます。あなた方も同席するように、との事です」
 「ひいい!?」


 鎧を着けた騎士団の隊員が告げる…さらにエメラルディアが震え上がった


 「それではこちらへ…ご案内いたします」
 「はい」
 「うむ」
 「……終わった」


 エメラルディアはほっといて行こう…王様か、どんな人だろ


───────────────


───────────


─────── 




 兵士さんに案内されて謁見の間に入る
 そこに居たのは王様と数人の付き人、壁際には武装した兵士、あと···王様の隣に豪華な鎧をつけたブロンドの女の人がいた。まさかこの人が騎士団長?


 周囲からはピリピリした空気を感じる
 ······こりゃ間違いなく怒ってんな


 すると王様がにこやかに話し始めた


 「さて、エメラルディアよ···訳を話してくれるか?」


 うーん···王様だけは怒ってない
 むしろ周りが怒ってるから自分だけは優しくしよう、そんな雰囲気を感じる


 「は、はい。えーとですね、あの、どうしても行きたい所がありまして、それですぐに行って帰って来れば大丈夫かな〜···なんて、そうしたら迷子になってしまって···こちらのジュートさんとアウラさんに送って貰ってやっと帰って来れた···と言う事です」


 「そうか、大変だったのだな···それで、目的は果たせたのか?」
 「は、はい‼ おかげ様で素晴らしい成果を残す事ができました‼」
 「そうかそうか···良かったな」


 王様は優しい···微笑を浮かべてエメラルディアを見る姿は、どこか娘を見守る父親を感じる


 「いやー、実にいい経験でした。まさか〔グリーンドゥマンバ〕の解体に関われるとは思いませんでしたよ‼···さらに残った身を皆さんで頂いたんですけどこれが絶品で‼·······」


 












 「この大馬鹿者ォォォォォォォ!!!!」


 「ひいいぃぃ⁉」




 突然、王様の隣に居た騎士の雷が落ちた
 まぁそんな気はしてたよ、王様と喋ってる間ずっと隣でピクピク震えてたしな······わかっていたけどビビった、怖え‼ アウラも俺の腕にしがみついてるし


 「貴様ァ···【特級魔術師】としての職務を放り出し薬草採取だと‼ 趣味を捨てろとは言わんが限度がある‼ しかも無断で10日以上行方不明になるとはどういう事だ‼ 貴様の捜索ですでに100人以上の兵士がほぼ不休で駆り出されているんだぞ‼」


 「ううう···ご、ごめんなさい。反省します」


 エメラルディアは涙目で俯く 
 どうやら事の重大さを理解したらしい···すると騎士団長は頭を抱えて深いため息をついた


 「ハァァ······とにかく、無事で良かった」
 「うっ···うぇ···ううう〜っ···」


 エメラルディアはとうとう泣き出してしまった
 アウラが近づき優しく抱きしめると、さらに泣いてしまう


 騎士団長はこれ以上怒る気になれなかったのか、視線を俺に移して来た


 「冒険者殿、この度は我らの【特級魔術師】の移送と護衛···誠に感謝する」
 「い、いえ。俺達もエメラルディアには凄く助けられました」


 騎士団長は頭を下げた···すると、隣で成り行きを見守っていた王様が俺に言う


 「そなた等には感謝してもしきれん、褒美を取らせよう···何か望む物はあるかね?」


 望む物······俺はアウラに視線を送る
 アウラはエメラルディアを抱きしめながら頷いた
 どうする?······行くか?


 すると、アウラがエメラルディアを俺に預けて前に出て話し始めた


 「閣下、初にお目に掛かります。いくつかご質問をよろしいでしょうか?」
 「む?···構わぬ」


 王様だけでなく、騎士団長や周りの兵士や付き人も首を傾げていた。きっと予想外だったに違いない


 「ありがとうございます···閣下はエルフについてどこまでご存知でしょうか?」
 「エルフ?······エルフは遥か昔からこの【緑の大陸】に存在する部族だ。他の種族を認めず、閉鎖された土地で静かに暮らし、一切の交流を拒否している。我らも何度か使者を送ったが···全ては無駄であった」


 王様は悲しそうに語る
 エルフそのものを嫌っている訳ではなさそうだ


 「そうでございましたか······しかし閣下、もし···もしも、エルフ族との交流を図る機会が有ったとしたら······如何なさいますか?」
 「ふむ? 質問が理解出来ぬが······そうだな、もしそんな機会があれば是非、話を聞いてみたいな。エルフ族とて我らと同じ大地に生きる者、共に手を取り合い生きていけるはずだ」


 ······この王様は懐が広い
 アウラを見ると口元が嬉しさで歪んでいる
 しかしそれは一瞬の事で、すぐに口元は引き締まり表情も変わる。俺と旅をしてるちょっと抜けた感じのアウラではなく、エルフの国の王族としてのアウラに


 「閣下······名乗らせて頂きます」


 「ふむ?······‼」


 王様もアウラの表情を見て態度を変える
 アウラの瞳から何かを感じ取ったようだ




 「私はエルフの国〔大樹都市ウィル・ティエリー〕時期王女、アウローラ・フィールディング···全エルフを代表し閣下にご挨拶させて頂きます」


 「·········なんと⁉」




 辺りは喧騒に包まれた


───────────────


───────────


───────




 アウラが名乗ると辺りの兵士が騒ぎ出す
 騎士団長が王様の前に出てアウラを威嚇する
 それに合わせて周りの兵士達も構えを取り始めた


 当然、俺も黙っていない


 アウラを庇うように前に出て騎士団長に殺気を送る
 しかし、騎士団長は怯まずに睨み返してくる···面白ぇ
 するとアウラが俺の腕を掴む


 「やめるのじゃ‼」
 「やめよ‼」


 アウラと王様が同時に叫ぶ
 それと同時に殺気が霧散した


 「アウローラ殿···そなたを時期王女と···エルフと証明出来る物はあるかね?」


 王様がそう言うとアウラは帽子を取り、銀髪を翻し、長い耳を露出させた
 周囲から今度は違う驚きの声があがる
 この世界で長い耳を持つのはダークエルフのみ、しかしその肌の色は赤黒い肌というのが特徴だ
 アウラの透き通るような白いの肌に、輝くような銀髪は王様だけでなく騎士団長や周りの兵士すらも黙らせる


 「証明はできません······しかし、私の顔を覚えておいて頂きたい。私は常に疑問に思っていました···閉鎖的なエルフの国の現状を」


 「私は様々な都市や人とふれあい感じました。人や獣人、ハーフエルフにダークエルフ···種族の壁を超えてこんなにも仲良く暮らしている···その輪の中にエルフは入る事は出来ないのか···ずっと考えていました」


 「私が女王になったら、全ての種族、都市と手を取り合い、助け合い生きて行きたい。新しいエルフの時代を作って行きたい···そう考えています」




 俺はこの瞬間···アウラに王の器を感じた
 王様も、騎士団長も、エメラルディアも、アウラの話しを聞いている


 「なるほど······して、そなたの望みは何だ?」


 王様は再びアウラに聞く
 それはエメラルディアを助けた礼とは別の意味だと言う事は俺でもわかった


 「何もございません···今はまだ私は王ではありません、ただ近い将来、私は王女となります···その時に私の話しを思い出して頂けたら···と」


 王様は目を閉じて顔を伏せる···そして


 「いいだろう···今の言葉、心に留めておこう」
 「······ありがとうございます、閣下」




 アウラは深く一礼した




───────────────


───────────


───────




 俺とアウラはそのまま城を出た
 アウラは帽子を被り直し、表情は引き締まっている
 門を出て近くの広場のベンチに座ると、急に脱力した


 「ふぁぁ〜···緊張したのじゃ〜」
 「お疲れさん、カッコ良かったぜ」


 近くに露店があったので、飲み物と肉の串焼きを買って2人で食べる


 「なかなか好感触だったな、これならお前が王女になって、王都の力を借りるのも難しくなさそうだ」


 アウラは串焼きを食べながら頷く


 「んぐ···そうじゃな。確実に前に進んでおるの。もうすぐエルフの土地じゃ、気を引き締めんとな」


 そのまましばらく串焼きと飲み物で身体を潤す···すると、遠くから声が聞こえてきた


 「ジュートさ〜ん、アウラさ〜ん‼」


 声の主はエメラルディアだった
 手を振りながら近づいてくる


 「ハァ···ハァ···よかった、また会えて」


 エメラルディアは息を整えながら言う
 そういえばちゃんと礼を言ってなかった


 「ああ、エメラルディア···いろいろ世話になったな。本当にありがとな」
 「うむ、そなたのおかげでいろいろ楽しかったのじゃ。本当に···ありがとう」


 エメラルディアは顔を上げて微笑む


 「あたしの方こそワガママばかり言って困らせちゃって···でも、とても楽しかったです。本当にありがとうございました‼」


 俺達はそれぞれ握手する
 エメラルディアは懐から小さな箱を取り出してアウラに渡した


 「アウラさん、これ···王様から」
 「······なんじゃコレは?」


 箱の中に入っていたのは小さなメダル
 細かい装飾と何かの紋章が刻まれていた


 「これは王家の紋章です。これを持つ者は王の加護を得た人間として扱われます······それと、王様から伝言です」
 「······なんじゃ?」




 「エルフの国との交流を楽しみにしてる······だそうです」




 アウラは紋章を抱きしめ涙を流す
 俺とエメラルディアは顔を合わせてお互いに笑う




 アウラの想いは届いた。それがたまらなく嬉しかった
 

「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く