ホントウの勇者

さとう

傭兵駐屯都市ゼルドナ①/姉妹の別れ・勝負の約束



 「あん?…おいジュート。そいつは誰だ?」
 「え、えーっと……」


 おいおいレオパール…そんなに睨むなよ。俺だってワケわかんねーんだからよ
 いきなり現れた変な女…【緑】の【特級魔術師】エメラルディア・エピドート
 王都から抜け出して薬草探しにここまで来ました……なんて言って信用してくれんのかね?


 「おおおおーっ!!! コレが〔グリーンドゥマンバ〕ですか…素晴らしい!!!」
 「オイお前まず最初にする事があんだろーが!!」


 目を輝かせながらモンスターを見上げる変な女に俺は怒鳴る
 アウラもエルルもクルルも、突然現れた変な女を警戒してる


 「おっと失礼しました、あたしは【緑】の【特級魔術師】エメラルディア・エピドートです。実は…………」


 エメラルディアは事情を説明する……すると


 「「「「…………」」」」


 やっぱりな。メチャクチャ怪しんでる
 それどころか魔術師って所もなんか胡散臭く感じてきた


 「うううーっ…信じて下さいよぉ。あっ、そうだ。何ならココであたしの【特級魔術】を披露しちゃいましょう!!!」


 すると、エメラルディアは詠唱を始めた
 そして全員が感じ取った
 エメラルディアから濃密な魔力が噴き荒れ始め、周囲にプレッシャーを与えている
 ……ヤバい、コイツは本物だ!!!


 「わかった、信じる!! だからやめろ!!」
 「…っと、よかったぁ。信じてくれたんですね!!」


 うわぁ…この笑顔、なんかムカつく


 「と、とにかくお前の事は後だ。レオパール、蛇を解体しようぜ」
 「そ、そうだね…エルル、クルル、やっちまうよ」
 「はーい、お母さん」
 「ねぇママ、このお肉食べられるの?」


 クルルの質問に何故かエメラルディアが答えた


 「もちろん食べられますよ、味は淡泊で栄養も豊富、一口食べればもうやみつきですよ!!」
 「ホント!? わぁ、食べてみたい!!」
 「ちょ、ちょっとクルル!?」
 「なぁレオパール、ホントに食べられるのかの?…わらわは不安じゃ」


 アウラとエルルが不安になってる
 しかし、レオパールは


 「ほう、よく知ってるね。実は余ったらみんなで食べようと思っていたんだ。良かったらアンタも食べていくといい」
 「い、いいんですか!? やったーっ!!」
 「やったーっ!!」


 エメラルディアはクルルと一緒に喜んでいる
 うーん…悪い奴じゃないのかなぁ




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 結局、エメラルディアは解体作業も手伝った
 皮のはぎ方、牙の抜き方、毒袋の抜き方に保存法…レオパールも知らない方法で見事に解体をしてみんなを驚かせた
 クルルはすでにエメラルディアに懐いてしまった
 魔導車に戻り火を起こす。そして、蛇の白身を串に刺して焼いてみる…すると


 「う、うまそうなのじゃ……」
 「お、おう……いい匂いもするぞ」
 「ふっふーん!! どうですかあたしの知識は、役に立ったでしょう!!」


 少し調子に乗り始めてる……しかもクルルだけじゃなくてエルルも懐いてるし


 白身が焼けてみんなで食べる
 串を手にとって一口食べる……ぱくり……こ、コレは!!


 「う、うんまぁっ!!!」
 「なんじゃこれはぁっ!!」


 絶品だ……!!
 白身はほくほくフワフワ、口の中でハラハラとほぐれる。味は濃厚だけど淡泊でいくらでも食えそうだ


 そのまま全員ほぼ無言で食べた……ウマかった




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 「あのー…それであたしは連れて行ってもらえるんでしょうか…?」
 「……まぁいいだろう。ただし、妙な動きをしたら放り出すからね」


 レオパールのありがたいお言葉
 エメラルディアはビクリと身体を強ばらせ、曖昧に笑った


 そのまま俺とアウラ以外魔導車に乗り込み出発した
 アウラは俺の後ろに乗っている


 「なぁアウラ、アイツは王都に帰りたいんだとよ。だから王都へは3人でいくぜ」
 「うむ。多分そうだろうと思っていたのじゃ」


 話が早い…一応危険についても話しておく


 「タイミング的にエルフ族の刺客かとも考えたけど正直分からん。警戒はしておこう」
 「……うむ」
 「心配すんな、お前は俺が守るからよ」
 「……っ!!……あ、ありがとうなのじゃ」


 背中合わせで座るアウラはさらに体重を預けてくる


 出口まではもう少しかかりそうだ




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 〔ネールク樹林〕を抜けて開けた街道に出た。そのまま西へ向かうと〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕に到着する
 アウラを後ろに乗せたままゆっくり進む
 街道の外れにはモンスターがいる、〔グリーンウルフ〕や〔グリーントレント〕などの雑魚だが基本的には無視。魔導車の大きさにビビって襲いかかって来ないからだ


 アウラとは特に会話もない
 アウラの背中の暖かさを感じ、風を切りながら走るのは、何だかとても心地良かった


 そのまま走ること2日


 さすがにバイクだけでは疲れるので、俺も魔導車に乗せて貰ったりして進む。町へ近づくにつれてエルルとクルルが俺から離れなくなり始めた······寂しいのか


 「お兄さん、もうすぐ町です······」
 「お兄ちゃん······」


 二人とも俺の両サイドをガッチリと掴んでいた
 耳としっぽもうなだれてる


 「エルル、また会えるって言っただろ?···ブランに会うんだろ?」
 「······はい」
 「クルルも、話したい事たくさんあるんだろ?」
 「······うん」
 「だったら、ちゃんと俺とは笑顔で別れて、いつもの笑顔でブランに会いに行くんだ。俺はお前達と笑顔で別れたい。きっとまた会えるからな」


 エルルとクルルはポロポロ泣き出した
 俺の胸に顔を埋めて声を殺して泣いている
 アウラとレオパールは何も言わず、エメラルディアはオロオロしてる
 俺は町へ着くまでずっと、二人の頭を撫でていた




 町が······見えてきた




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 〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕は、町というよりも傭兵達の拠点やアジトなどが集まって出来た集落である
 なのでこの町には傭兵ギルドしか存在しない。町には各商店が充実してるが宿屋が少ない、何故なら傭兵達の拠点に居住区が存在するため需要が少ないからである
 当然、観光施設など存在しないし、この町に訪れるのは、王都までの途中休憩か仕事の依頼くらいなのだ


 そんな町の中心に存在する巨大な建物···横長の2階建て、レンガ積みの頑強な作りの〔激獣兵団シバテリウム〕のアジトに来ていた


 「アタシ達はギルドに報告したらすぐにエレメンツに引き返す。アウラ、コイツは報酬だ」


 レオパールはアウラにゴルドカードを渡す


 「うむ、確かに······世話になったのじゃ」


 アウラはカードを握りしめ寂しそうに言う
 そしてそのままエルルとクルルに向き直る


 「エルル···おぬしはクルルのお姉さんじゃ。かわいい妹をしっかり守るのじゃぞ」
 「はい······アウラお姉さん」


 アウラはエルルを抱きしめる···短い間だったがアウラの中ではエルルとクルルも妹だったに違いない


 「クルル、おぬしも妹だからと言って甘えすぎてもいかんのじゃ。お姉さんをしっかり支えてやるのじゃ」
 「うん。分かったよ、アウラお姉ちゃん」


 そのままクルルを抱きしめた
 アウラの瞳には涙が溢れている


 「二人とも······また会おう」


 アウラはエルルとクルルの別れを済ませた


 「ううう······感動の光景です〜」


 エメラルディアはハンカチ片手に泣いていた
 おまえ······ぶち壊しだよ


 「お兄さん‼」
 「お兄ちゃん‼」
 「うおおっ······は、はい‼」


 いきなりの大声にビックリした
 な、なんでしょう?


 「わたし、もっと強くなります‼···お母さんよりも、もっともっと強くなります‼ だからお兄さん、今度会ったら······」


 「お兄ちゃんがくれたナイフ······大事にするね。わたしも強くなる。だから、今度会ったら······」


 二人は息吸い、同時に言った




 「「わたしと勝負してください‼」」




 えーと······勝負って、戦えって事?


 「は、はい。わかりました」


 思わず敬語で答える
 想像のナナメ上を行く発言だった


 「やったぁ‼ 約束ですよ‼」
 「よ〜し‼ 強くなるぞ〜‼」


 二人はそのままアジトの中へ走って行った
 訓練でもするのかな······ははは


 「やれやれ······騒がしい奴らだよ。ジュート、世話になったね」
 「ああ、こっちもな」
 「アタシらは傭兵だ、次に会える保証はないが······また会おう」
 「ああ、元気でな」


 レオパールは軽く手を振ると行ってしまった


 きっとまた会える······それは間違いなさそうだ






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 「さて、どうしましょうか。すぐに王都へ向かうんですか?」


 エメラルディアがそんな事を聞いてくる
 そういえばその辺考えてなかったな


 「ふむ、そうじゃの···この町に見るべき所はなさそうじゃな、補給をしてすぐに出発するかの?」
 「そうだな、なぁエメラルディア」


 俺の声にアウラとエメラルディアが振り向く


 「ここから王都まではどのくらいかかる?」
 「え? そうですね···魔導車で5日ってとこですね」
 「なるほど···徒歩じゃ無理か。仕方ない、この町で魔導車を手に入れよう、俺のバイクじゃ3人は乗れないからな」


 今までは2人だったから【流星黒天ミーティア・フィンスター】でも行けたが3人だとそうは行かない


 「うう···あたしのせいですよね···すみません」
 「あー、いや、そう言う意味じゃなくて···アウラ頼む」
 「おぬしは女の扱いがなっとらんの······」


 アウラがエメラルディアと何か話してる
 ここは任せよう······女の扱いかぁ、難しいな
 二人を見ると楽しそうにお喋りしてる。歳も近いし通じる物があったんだろうか


 「ジュート、まずはゴハンじゃ‼」
 「はいっ‼ 美味しい物食べに行きましょう‼」
 「え?···ちょ、ま、待てよ⁉」


 二人にそれぞれ腕を引っ張られながら歩き出した
 なんか仲良くなってないか?




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 この辺りの店はワイルドな飲食店ばかりだった
 傭兵がたくさん集まるからなのか、基本的に酒場しかない。あっても大衆食堂みたいな感じのオシャレとは無縁の所だ


 「いや〜···あたしこういう所初めてです。王宮ではシェフが作った高級感ある料理ばかりでしたから」
 「うむ。わらわもその気持ちはわかるのじゃ、庶民の食べる料理はどれも絶品なのじゃ」
 「アウラさん······‼」
 「エメラルディア······‼」


 二人は手をがっしり握り見つめ合う
 あー···なーに食べよっかなー


 よし、あそこの定食屋にしよう
 コイツらはもう放っておこう


 「おい、あそこの定食屋に入るぞ」
 「はいっ」
 「うむっ」


 仲良くなっちゃって
 ま、とにかくメシの時間だ


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 「いやー美味しかったですねー。あたし、塩味だけのお肉なんて初めてですよ。しかも量が多い、最高です‼」
 「うむ、これが庶民の味じゃ。恐れ入ったか?」
 「はいっ···王宮に戻ったらシェフに作らせます。王様もきっと気に入ると思いますよ‼」


 うーん···いろいろ言いたい事あるけど面倒だ
 とにかく魔導車を買いに行こう


 「エメラルディア、魔導車ってどこで買えるんだ?」
 「えーっとですね、魔導車は〔魔導車整備工場〕で購入できますよ。魔導車の整備、修理、販売を一手に担っています。どの町にもあるのでここにもあるでしょう。では探しましょうか」


 エメラルディアは楽しそうに歩き出す
 その隣をアウラが並んで歩く




 魔導車か······どんなのがあるんだろう





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