ホントウの勇者

さとう

閑話 火等燃絵・【爆神ピュロボルス】



 ここは【緑の大陸グレングリーン】の〔ヒアル海岸〕
 【赤の大陸】を迂回し【緑の大陸】の最西部にある海岸である


 火等かとう燃絵もえは苛ついていた


 「ここで牛地ぎゅうじと待ち合わせなんでしょ? アンタらのどっちかが呼んできなさいよ!!」
 「いや、予定だとすぐに来るからさ…少し落ち着けよ」
 「ああん!? アンタ…燃やされたいの?」


 冗談抜きで彼女の周りには炎が巻き起こる
 その瞳には獰猛な光が宿り、仲間の刺兼さしがね都鍼とばりにすら一切の容赦はない


 「わ、わかった、わかったって!! 行く、行くから落ち着けって!!」
 「じゃあサッサと行きなさいよ!!」
 「は、はーい…なぁ岩木いわき、行こうぜ」
 「…………んぐんぐ……あ?」


  岩木いわき石堂せきどうは話を全く聞いていなかった……彼は持参した食料を食べながらボーッと海を眺めていた


 「お、おい 岩木いわき…」
 「おい刺兼さしがねぇ…サッサと行けって言うのが聞こえないの?」


 再び火等かとう燃絵もえから炎が上がる


 「は、はぃぃぃ!! いってきまぁーす!!」


 刺兼さしがね都鍼とばりはそのまま走って行ってしまった




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 火等かとう燃絵もえ鳴戸めいと括利くくりは入学式で出会った
 なんとなく話しかけ、なんとなく一緒に帰り、なんとなく一緒に遊んだ。ただそれだけ
 休みの日に一緒に買い物したり、ランチをしたり…いつの間にか不良グループみたいな扱いをされていたが、別に気にしなかった
 何か特別な出来事があったわけじゃない
 それでも彼女は……親友だった


 だからこそ許せなかった


 「無月……【銃神ヴォルフガング】…」


 決してナメては掛からない
 ヤツは【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】に匹敵する強さを持っている
 絶対に……負けてなどやるものか


 「よう、燃絵もえ
 「!!……牛地ぎゅうじ?」


 海岸の後ろにある森から誰かが出てきた
 そこにいたのは粗某そぼう牛地ぎゅうじ
 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】の序列7位
 そして…… 火等かとう燃絵もえの幼なじみでもあった


 「なーにイラついてんだよ。お肌に悪いぜ?」
 「う、うっさい!! ああもう、くっつくな!!」


 粗某そぼう牛地ぎゅうじは彼女の肩を組んでいた
 小さい頃から仲がよかったのでこれくらいはなんてこと無い


 「……鳴戸の事だろ?」
 「……うん」


 この幼なじみには隠し事はしても無駄だ
 彼女の心情を理解してくれる…それがありがたく、うれしかった


 「カタキを討ちたい気持ちは分かる…でも、無月は強い。報告だと只野を瞬殺したんだろ? でもアイツは調子に乗ってたからなぁ…きっとお前らの方が強いと思うぜ」
 「あたしもそう思う…だから」
 「だから直接戦うのは俺だ。過信はダメだ、お前達はサポートに回れ」


 粗某そぼう牛地ぎゅうじは彼女の気持ちを汲んでなお自分が戦う…そう言った


 「……わかったよ…アリガトね牛地ぎゅうじ
 「オウ、気にすんなよ。岩木いわきもそれでいいよなぁ!!」
 「……んん?…ああ、いいよ」


 砂浜に横になり眠っていた彼が起きて言う
 そう言うと再び眠ってしまった








 「アンタ・・・もそれでいいよな?」










 粗某そぼう牛地ぎゅうじはその人物に確認を取る
 すると、遠くから声が聞こえてきた






 「お~い……」






 「ん?…あれって刺兼さしがねか? あいつあんなとこで何やってんだ?」
 「さぁね。散歩でもしてたんじゃない?」




 刺兼さしがね都鍼とばり……彼はとっても苦労人だった


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 「はぁ…はぁ…それで、これからどうする?」
 「お前大丈夫か?」
 「うっとうしい…早く息を整えなさいよ」
 「ふあぁぁ~……」
 「……よし、大丈夫。それでどうするの?」


 刺兼さしがね都鍼とばりは全員を見回しながら言う
 すると、粗某そぼう牛地ぎゅうじがにやりと笑った


 「実はさ、ここに来る前に静寂しじまから通信があったんだよ。どうやら無月は【九創世獣ナインス・ビスト】っていう【神獣】を集めているらしい」
 「【神獣】?……そうか、そういうことだね」
 「ま、そういうことだ」


 火等かとう燃絵もえがイラつきながら言う


 「どう言う事よ!! 説明しろよ!!」
 「わわわ…落ち着けって」
 「ははは、相変わらず燃絵もえはバカだなぁ」
 「何だと!!!」
 「あちちっ!! 落ち着け、頼むから!!あと粗某そぼうも余計な事言うなよ!!」
 「おう、悪い悪い」


 刺兼さしがね都鍼とばりは疲れた表情で言う


 「要するに無月は【九創世獣ナインス・ビスト】とかいう【神獣】を狙ってるんだ。だったら俺たちが先にそいつを奪うか潰せばいい」


 「ま、そういうことだ」
 「……なるほどね」


 火等かとう燃絵もえは理解したのか頷いている
 岩木いわき石堂せきどうはぼんやりしながら聞いていた


 「それで、場所は?」


 粗某そぼう牛地ぎゅうじが言う








 「エルフの土地…〔大樹都市ウェル・ティエリ-〕さ」




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 「じゃあそこに行けば無月が来るのね……」
 「そーゆーこと。よかったな燃絵もえ
 「ああ、アイツはあたしが……」
 「燃絵もえ、アイツは俺がやる。お前らはサポート…そう言っただろ?」
 「……うん。ゴメン」


 火等かとう燃絵もえはうなだれる
 悔しくて仕方ないのだろう


 「とにかく行こうぜ、ここから南下すればいいはずだ…さっさと終わらせようぜ」
 「そうだな、早く帰りたいぜ」
 「フン!! 早く行くよ!!」
 「…………うん…その前にメシにしよう」


 4人はそうして歩き出した…その後をゆっくりと着いていく人間が1人


 「…………もう少し」










 彼らは、自分たちの運命を知らなかった







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