ホントウの勇者

さとう

ネールク樹林/白姫の行方・変な女



 休みの最後の一日はの~んびり過ごした


 エルルとクルルの頭を撫でたり
 アウラとこれからの予定を話したり
 外に食事に出てお店ではなく屋台巡りをしたり
 4人で集まってお喋りしたり…


 とても平和な一日だった……しかし


 「なーんでわらわがおぬしと一緒の部屋なのじゃ!!」
 「しょうが無いだろ…エルルとクルルが言い出して聞かないんだから」
 「むむむ……しかし」
 「何にもしないし、イヤなら外に出てるからよ…」
 「ま、待つのじゃ……そこまでせんでもよい。分かったのじゃ…一緒でいいのじゃ!!」
 「はいはい、ありがとよ」


 明日は〔ネールク樹林〕へ出発する
 そこを経由してから〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕へ向かうことになっている


 最終日の部屋割りで再びエルルとクルルが揉めた
 明日出発で早く休みたかったので、2人は一緒の部屋で寝て、俺とアウラが同室と言うことになった
 アウラと一緒の部屋というのは今まで無かったのでアウラが少し警戒している…なんだかんだでもう2月くらいの付き合いなので多少は慣れていると思ったけど


 とにかく明日は早い…もう寝よう


 「俺はソファで寝るから…おやすみー」
 「う、うむ…おやすみなのじゃ」


 電気を消してソファに横になる…すぐに眠気が襲ってきた


 この町ともお別れか。なんだかんだで楽しかったな……




───────────────


───────────


───────




 「おう来たね…よく眠れたかい?」
 「ああ、最高の朝だぜ」
 「そりゃ良かった」


 町の西出口にはレオパール達が待っていた
 人数はレオパールを含めて5人と少ない


 「朝メシは食べたのかい?」
 「いや、起きたばっかりだからな…」
 「眠いです~…」
 「ぐうう……んん」
 「わらわも眠いのじゃ…」
 「やれやれ…そういえばエルルとクルルは朝が弱かったね」


 レオパールはエルルとクルルの頭を撫でて、目元をごしごし擦った


 「ほら、しゃんとしな!! 魔導車の中でちゃんとご飯をたべなよ!!」
 「は~い…お母さん」
 「ママ~…眠い」


 レオパールは二人を怒りながらも声は優しい
 まるでホントのお母さんだ…


 レオパール達は大型魔導車が一台だけだ
 装備はキャンピングカーみたいな居住区と、トラックみたいな牽引車だ
 タイヤにはスパイクが付いているので、砂漠や沼地なんかも楽々進めるらしい


 レオパール達の目的は〔ネールク樹林〕に住み着いたSレートモンスターの討伐だ
 モンスターは〔グリーンドゥマダラ〕と呼ばれる巨大なヘビで、薬草を採りに来た冒険者や商人などを餌にしているらしい
 Sレートモンスターは基本的にAランク以上の冒険者や傭兵が集団を作って討伐するのが普通なのだ
 でもそうすると分け前が減るのは当たり前だ、だからSランク獣人傭兵団の〔激獣兵団シバテリウム〕が依頼を受けたらしい
 そして討伐の為にいろいろと準備を終えてやっと出発となったのだ


 モンスターを倒したらそのまま〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕へ向かいギルドへ報告…そしてまた〔大大陸中心交易都市エレメンツ〕へ戻る予定だとか、つまり……そこでお別れだ


 俺とアウラはそのまま〔王都グリーンカントリー〕へ向かう
 まぁしょうがないよね……淋しいけど


 俺以外の全員が大型魔導車の乗り込んだ


 「ん?…どうしたんだい、早く乗りな」
 「ああ大丈夫。俺は自前のがあるから」


 予め用意してた【流星黒天ミーティア・フィンスター】に乗る


 「へぇ…一人乗りの魔導車なんて初めて見たよ」
 「俺の愛車だからな、コイツで着いていくよ」




 そうして、〔大大陸中心交易都市エレメンツ〕へ別れを告げて出発したのだった




───────────────


───────────


───────




 「う~ん…気持ちいいですねお兄さん」
 「そうか~?…よかったな~」
 「は~い!!」


 現在、俺の後ろにはエルルが乗っている
 朝食を食べて完全に目を覚ましたエルルとクルルが、俺の【流星黒天ミーティア・フィンスター】の後ろに乗りたい…と騒ぎ始めたからだ
 取りあえず交換しながら後ろに乗せている。最初はクルルが乗り、だいたい1時間くらいでエルルに交換…というサイクルを繰り返していた


 「お兄さん…あの」
 「どうしたエルル?」


 エルルが淋しそうに言う


 「あの…〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕でお別れなんですよね?…一緒に…側に、いられないんですよね?」
 「………ああ。大事な仕事があるからな」
 「……はい。わたしも傭兵だからわかります…アウラお姉さんの事ですよね?」
 「そうだ。アイツを家まで送り届けなくちゃいけない」


 俺の大事な仕事…【緑】の【九創世獣ナインス・ビスト】、クライブグリューン・リベルラに会うためにはアウラの協力が必要だ
 だからエルフの地の首都、〔大樹都市ウェル・ティエリ-〕にアウラを送り届ける…しかし現在、エルフの国は王位争いでアウラの兄と姉が王位継承者であるアウラを始末する可能性がある。しかも、アウラの兄と姉が連れている戦力に昔の時代の〔神の器〕がいるというのだ
 やることが沢山ある…この間に俺のクラスメイトの誰かが仕掛けてこないという保証もない


 〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕を超えて〔王都グリーンカントリー〕に向かい〔果樹園の町ヘレルマート〕を目指す…そこからさらにエルフが守護する〔古代森ワウドゥ〕を抜けた先に〔大樹都市ウェル・ティエリ-〕がある。先はなげぇ……


 エルルは俺に抱きつきながら言う


 「わたし達はこの依頼が終わってエレメンツの町に戻ったら、【黄の大陸】に向かうんです」
 「へぇ…何でまた?」
 「はい。どうやらあちらで活動している〔激獣兵団シバテリウム〕の幹部の方が、王様から直々に依頼を受けたみたいで、だいぶ厄介な護衛任務らしいです」
 「厄介な護衛任務?」
 「はい」








 「なんでも…行方不明だった【白の大陸ピュアブライト】のお姫様を保護しているらしくて、その方を【白の大陸】まで送り届ける依頼だそうです………きゃあっ!!」










 俺は思わずバランスを崩して転倒しそうになった


───────────────


───────────


───────




 1000%の確立でブランだ…賭けてもいい
 シトリンが言ってたっけ、証拠が見つかったら【白の大陸】に行くって。じゃあブランの身元も分かったって事か


 「お、お兄さん!? 大丈夫ですか!?」
 「あ、ああ…ゴメン。少しビックリしてな」
 「えーと…お姫様の事ですか?」
 「あー…うん、多分その子はブランだ」
 「………え?」


 俺はエルルに説明した…シトリンと話したことを簡単に説明する


 「じゃ、じゃあ…わたし達はブランの護衛依頼を受けたって事ですか!?」
 「多分そうだな。よかったな、久しぶりに会えるじゃないか」
 「・・・~っ!! はい!!」


 エルルはうれしいのか、俺の背中にギュッと抱きついてくる
 もしかしたら……の話もしておこうかな


 「アウラを送り届けたら俺も【白の大陸】に向かう予定なんだ。もしかしたら会えるかもな」


 「ホントですか!? やったぁ!!…実はゼルドナでお別れって聞いて淋しかったですけど…また会えるかもしれないならもう淋しくありません!!」


 エルルは満面の笑みでそう答えた




───────────────


───────────


───────




 エルルはうれしそうに魔導車の車内へ戻っていった
 どうやらクルルに今の話をしてあげるみたいだ…そして


 「なんでアンタが乗るんだよ……」
 「まぁいいじゃないか。話しておきたいこともあるしね」
 「話……?」


 俺の後ろにいるのはレオパール
 背中合わせに座り、遠慮無く体重を掛けてくる


 「知ってると思うが…アタシ達はこの依頼を終えてゼルドナへ報告、ソレが終わったらエレメンツへ戻って今度は【黄の大陸】へ向かう……当然、エルルとクルルも一緒だ」
 「……エルルから聞いたよ。それで?」
 「いや…エルル達の事だからねぇ、アンタに付いていくなんて言い出しかねなかったが、そんな心配はなさそうだ」
 「ああ、友達に会えるかもしれないからな」
 「そうかい……」


 ふと会話が途切れる
 そしてレオパールは切り出した


 「エルルとクルルの両親の事は聞いたかい?」
 「ん?…まぁ少しな。【黄の大陸】の獣人の村だろう?」
 「……違う。その前の両親・・・・・・の話さ」
 「…………どういうことだ?」


 「推測も含めるが…あの子達の親は【黄の大陸】出身じゃない。恐らくは生まれてすぐに【黄の大陸】に連れてこられたんだ。その証拠にこの辺りに〔白牙狼びゃくがろう〕なんて部族はアタシの知る限り存在しない」
 「それで?……アンタ、そこまで言うには目星が付いてるって事だろ?」
 「まあね……恐らくだが」
 「どこだよ?……」




 「〔白牙狼びゃくがろう〕の出身地域は【白の大陸ピュアブライト】だ。アタシが【黄の大陸】の王様の依頼を受けたのも、エルルとクルルの事が大きい……もしかしたら、本当の両親がいるかもしれない…二人が望むなら……」




 レオパールはそれだけ言うと黙り込んだ
 俺はなんとなく納得がいかない


 「俺から見れば…生まれたばかりの娘達をどんな理由があろうと捨てるような親よりは……アンタみたいな、不器用だけど優しい母親の側にいた方が、あの姉妹は幸せだと思うぞ……お母さん・・・・


 「フン……うるさいよ、ガキが生意気言うんじゃないよ」


 それきり俺もレオパールも黙ってしまう…けど






 「……ありがとう」






 何か聞こえたけど……聞こえなかったフリをした




───────────────


───────────


───────




 そのまましばらく走ると〔ネールク樹林〕の入り口に着いた
 エレメンツから約一日…意外と近い距離だ


 「さぁ、ここからが本番だよ。エルル、クルル、気合いを入れなよ!!」
 「「はいっ!!!」」


 エルルとクルルも真剣そのものだ
 ちなみに一緒に同乗してきた獣人達は魔導車の運転手で戦闘には参加せずに車の護衛がメインの仕事のようだ


 「……ふむ。レオパール、あちらから強いモンスターの気配がするのじゃ」
 「へぇ…エルフの探知能力かい?……わかった、信用しよう」


 アウラの案内で樹林の中を進む…すると


 「ココを見てみな、〔グリーンドゥマダラ〕が移動した後だ…近いね」


 たしかに…何か引きずったような跡がある。
 ってゆうかデカい…幅1・5メートルはあるぞ
 レオパールは少し考えて全員に言う


 「よし、ここで組み分けをしよう」


 魔導車と俺はこの場で待機
 レオパール・エルルとクルル・アウラがこの引きずった跡を進む…という組み分けになった
 大丈夫かな…心配だ


 「心配しなさんな、あの子達は強い…それに、アタシはもっと強い」
 「お前はともかく、エルル達は大丈夫なのか? 仮にもSレートモンスターだろ?」
 「あんまりあの子達を見くびるなよ、バケモノの首を持ってきてやるよ」


 うーん……俺としては一応アウラの護衛だから、側を離れたくないんだけど


 「まぁ任せるのじゃ。ふっふっふ…腕がなるのじゃ!!」
 「お前マジで調子にのんなよ? 真っ先にやられるパターンだぞ?」
 「う、うるさいのじゃ、バーカ!! ここで留守番してるのじゃ!!」


 そう言って4人は樹林の奥へと進んでいった
 しょうがない…のんびり待ってるか


───────────────


───────────


───────




 俺は魔導車の外で周囲を警戒していた
 運転手の4人の獣人は、全員疲れてたために仮眠を取っている…1人づつ見張りをすると言ったが俺が辞退した…この先もあるし少しでも魔力を回復させた方がいい




 そのまましばらく経過すると…何かが聞こえてきた




 「ジャァァァァァッッ!!!」




 ここからそう遠くない…レオパール達が遭遇したんだな
 一瞬、この場から離れて加勢することを考える…が、すぐにやめた
 レオパールに任された以上、ココを守るのが俺の仕事だ




 「あのー…少しいいでしょうか?」




 聞き慣れない声…獣人ドライバーの声じゃなく若い女の声
 警戒していたのにあっさり近づかれた…ウソだろ!?
 そこにいたのは…ん?


 「えーと、その…傭兵の方ですよね?」
 「え、ああ…うん、そうです」


 16歳くらいの女の子だった……何だコイツ


 顔立ちはかわいい、髪型は緑色のショートカットで眼鏡…いや片眼鏡モノクルをしている
 服装は緑を基調としたシャツとロングスカートに、首には長い緑のマフラーに汚れた白衣を着ている。背中には大きな鞄を背負っていて、植物のような物がパンパンに詰まっている
 どことなくマフィと似た雰囲気を感じる
 するとその子が質問してきた


 「あのー…もしかして〔王都グリーンカントリー〕まで行かれますか?」
 「え…なんで?」
 「いえ、その…出来たら一緒に連れて行って欲しいなぁ……なんて」


 何だコイツ……怪しすぎる
 俺の視線で何かを感じたのか、変な女は慌てて言う


 「あ、あたしは怪しい者じゃないです!! 王都を抜け出してプラントハンティングしてたらこんな所まで来ちゃって…帰りたくても帰り道がわかんないし、この森は真っ暗だし、怪しい気配はするし……」


 ヤバいなんか泣きそうだ…なんで俺ってこう女運が悪いんだろう
 って言うかここから王都までってかなりの距離だぞ。それを歩いてきたってのかよ…はぁ、しかたないな


 「この傭兵団のボスは今はこの奥でモンスターの討伐をしてる。それが済んだら〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕に向かって後はエレメンツに戻る。俺ともう一人のツレはそのまま王都に向かう予定だ」
 「えーっと…つまり貴方は傭兵じゃないけど王都に向かうと…?」
 「まぁそういうこと。今はこの傭兵団に便乗してるだけ」
 「なるほど…じゃ、じゃあ、貴方に付いていってもいいですか!? もちろんお礼もします!!」


 うーん……どうしよう
 怪しさ満点、素性不明、もしかしてアウラの命を狙ったエルフの国の暗殺者か?




 「ジャァァァァァッッ……」




 再び大きなうなり声が聞こえてズズン…と揺れを感じた
 恐らく決着が付いてヘビが倒れた音だろう…良かった、勝ったんだな
 俺は変な女に向き直り告げる


 「取りあえず、この傭兵団のボスに話してみよう。もし魔導車の同乗許可が出たらそのまま一緒にゼルドナに行こう、その後は俺で良ければ王都まで案内してやる」


 そこまで言うと変な女は笑顔でガッツポーズした……変なヤツ


 「おーいジュート!! 手を貸しとくれ、バケモノの解体をするぞ!!」


 レオパールの声が聞こえる…さて、コイツも連れて行くか


 「あ、あの…どんなモンスターの討伐だったんですか?」
 「え?…〔グリーンドゥマダラ〕だけど」
 「マジですかっ!!!!!!」
 「うおおっ!!」


 メチャメチャ食いついてきた!!…しかも俺の胸ぐらをつかんで顔を近づけてきた


 「〔グリーンドゥマダラ〕…【緑の大陸】では危険視されているSレートモンスターの一体ですね。その牙にはあらゆる生物に効くと言われている猛毒が仕込まれていて、アゴの下にある毒袋は市場では2000万ゴルドはくだらない毒剣、毒薬の材料と言われています。さらに〔グリーンドゥマダラ〕の瞳は蛇水晶といわれて加工すれば6000万ゴルドの値が付く宝石に生まれ変わると言われています…さらにその皮には……」
 「おい、待て!! 落ち着け!!」


 何だよコイツは!! マジでやべぇぞ……


 「はっ…す、スミマセン…あたし、植物やモンスターの事には目がなくて。よろしかったらあたしにも解体を手伝わせてもらえませんか?」
 「あ、ああ。というかついでにボスの所へ連れて行こうと思ってたから」
 「そうなんですか?」
 「そうだ、じゃ、じゃあいくか」
 「はい!! あ、そうだ」


 変な女は手をポンと叩き笑顔で言った
























 「あたしは【緑】の【特級魔術師】エメラルディア・エピドートと申します。よろしくお願いしますね!!」






 ……マジでもう勘弁してくれ





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く