ホントウの勇者

さとう

大大陸中心交易都市エレメンツ⑤/属性武器・1対3



 その武器店は外観同様、店内も古めかしい感じだ


 展示してある武器は全て壁に掛けてあり、槍とかグラブ、レガースなどは一切ない。あるのは剣やナイフだ
 しかも種類が少ない···
 壁に掛けてあるのは10本もないし、ショーケースの中にも精々ナイフが5〜6本
 こんなんでやっていけんのかね


 店主は還暦を超えたくらいのおじいさんだった
 この世界の新聞を読んでいて、眼球だけで俺をジロリと睨み、下から上になぞるように観察してる
 おじいさんは短いため息を付いた


 「······帰んな」
 「······はい?」


 いきなりの拒絶···さすがにイラッと来る


 「ここはアンタみたいな若い冒険者の来る店じゃない···表の通りにもっといい店がある。そっちに行きな」


 新聞から目を離さずにそんな事を言う
 ヤル気ない店だな···でも俺のカンが言ってるんだよなぁ···この店に何かあるって


 「そんな事言わないで見せて下さいよ」
 「······」
 「ひと目で分かりましたよ···かなりの業物だって」
 「······ほう、若造が武器を語るか」


 ここで初めておじいさんは新聞を置いて俺を見た


 「······ふむ、それなりに修羅場は潜ってるようだな」
 「まぁそれなりに」
 「ふん、生意気な若造だ···お前の武器は···ナイフか。ほしいなら売ってやる、さっさと選べ」


 客に対する態度じゃないな···別にいいけど
 とりあえず見てみるか


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 見た感じ、確かに良い武器が揃ってる···けど、【死の輝きシャイニング・デッド】や【雄大なる死グロリアス・デッド】に比べたら格段に劣る
 一応神様が作った武器だしな···普通の人間が作るレベルではこれが精一杯って事か


 これらの武器はきっとおじいさんが作った武器なんだろう
 おじいさんは顔は年齢を感じさせるが、身体は凄く若々しい。特に手が凄い···何度も火傷や骨折を繰り返した様に皮膚はボロボロで指は凄く太くなっている
 俺の視線を感じたおじいさんが言う


 「······どうした、買わないのか」
 「う〜ん······ここにあるので全部ですか?」
 「······どう言う意味だ」
 「いや···その」


 どうしよう···正直に言うか?
 気のせいかおじいさんの視線が鋭い
 まぁいいや、言っちまえ‼






 「おじいさんの腕前なら···もっといい武器があるんじゃないかなーって······」






 おじいさんは完全に新聞を折りたたみ俺に向き合う、そして真剣な表情で聞く


 「何故、オレが作ったと······?」
 「そんなの体付きやそのボロボロの手を見れば分かりますよ···かなりの腕前だ。恐らくこの町で最高の鍛冶職人だと思います」
 「ほう······」
 「それで···あるんですか?」


 おじいさんはニヤリと笑いカウンターの下から古めかしい横長の箱を取り出した
 顎をしゃくる···こっちに来いって?
 俺がカウンターに近づくと、おじいさんは箱を開けた


 そこには···ナイフが4本入っていた




 「コイツは俺の最高傑作の武器、〔属性武器マテリアルウェポン〕だ」




 そのナイフは、長さは同じだが細部は微妙に違う4色の武器だ
 刀身がそれぞれ赤、青、黄、緑で、それぞれ透き通るような···まるでガラスのような刀身だ···キレイだな


 「魔力を少し流してみろ」


 おじいさんに言われた通り赤いナイフに少し魔力を流す···すると


 「おお···⁉」
 《ヘェ···スゴいワネ》


 赤いナイフから炎が吹き荒れた


 「···おい、そのままコイツに向かって刃を振ってみろ」


 おじいさんは窓を開けてそこに小さな板を置いた
 この感じ···まさか


 「よし···おりゃっ‼······おお‼」


 ナイフから炎の刃が飛び出して板を真っ二つにし、そのまま燃え上がり板は消し炭になった


 〔属性武器マテリアルウェポン〕は属性が付与された武器で、少ない魔力で初級魔術と同じ効果を得られる武器だ
 しかし···その素材は全てSレートモンスターの牙や爪でできており素材の調達は困難、さらに武器を作るのに熟練の鍛冶の腕と魔術の腕と知識が必要となり、大陸中探してもこのレベルの職人はほぼ存在しないと言われている
 しかし···俺の目の前にその職人がいる


 「どうだ?······これがオレの最高の武器だ」
 「なるほどね······」


 確かにスゴい武器だ
 けど···やっぱり【死の輝きシャイニング・デッド】や【雄大なる死グロリアス・デッド】には劣る···エルルやクルルが使うには丁度いいかな
 あの二人は魔術が使えない。ほんの少しの魔力でこれだけの威力が出せるならかなり戦術の幅が広がるはずだ···しかし
 俺の態度におじいさんは苛立っていた


 「おい···まだ不満なのか。これだけの武器を作れるのは4大陸でもオレだけだ。何が気に入らない?」


 おじいさんは俺を認めてこの武器を出してきた
 なら俺も正直になろう


 「いや、素晴らしい武器だと思いますよ···俺の武器には劣りますけどね」
 「······なんだと⁉」


 とうとうおじいさんがキレた
 俺は【死の輝きシャイニング・デッド】と【雄大なる死グロリアス・デッド】を抜いてカウンターに突き刺した


 「······⁉···な、何だこれは⁉···う、美しい···」
 「ね?」


 黒の煌めきと銀の輝きがおじいさんの目を釘付けにする
 なまじ腕前がいいから分かるその刀身の美しさ
 おじいさんは震える手で刀身に指を這わせる


 「ば、馬鹿な···か、完璧だ···コイツは完璧過ぎる···人間が作れる領域の武器じゃない、これは神の領域だ‼」


 正解です···とある戯れの神様が作った物です
 まぁそこまで言わないけどね


 「なんてこった···こんなモン見せられちまったら確かにオレのナイフはオモチャにしか見えねぇだろうな」
 「そんな事ないですよ、そのナイフ···俺に売ってくれませんか?」
 「あ?···何故だ?」
 「俺の仲間2人が二刀流のナイフ使いなんです。おいくらですか?」
 「······くっくっく、いいだろう。金はいらん、持っていけ」
 「え···ええ⁉」


 そりゃマズイでしょ···


 「いい物を見せて貰った礼だ。その武器、その刀身···覚えたぜ······引退を考えてたがまだまだオレはやれそうだ。ハハハ、この歳になってまだまだオレは未熟だって事が分かった、ありがとよ、若造」


 おじいさんは俺にナイフの入ったケースを渡してきた
 ここまで言われて貰わない選択肢はないな


 「分かりました。ありがたく頂戴します」
 「おう。気に入ったぜ若造、また来な」
 「はい、ありがとうございました」


 俺は一礼して店を出た






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 俺はベンチに座りケースを開けた
 クロに時間停止魔術をかけてもらい、ナイフを見る
 お、柄に名前が彫ってある···どれどれ


 【赤い牙レッドタスク
 【青の咀嚼ブルーバイト
 【緑の千切グリーンカット
 【黄の噛咬イエロートゥース


 な、なんてセンスだ···あのじいさん、やりおる


 よし、エルルとクルルのプレゼントは出来たな




 「おにーさーん‼」
 「おにーちゃーん」




 お、きたきた···ってあれ?
 あんなに試着してたのに荷物が袋1つだけ?


 「おかえり、それだけしか買わなかったのか?」
 「うむ、気に入ったのを1つだけ買ったのじゃ」
 「はい、アウラお姉さんからのプレゼントです」
 「お兄ちゃんにも後で見せてあげるね‼」


 満面の笑みを浮かべる三人
 アウラが俺の荷物に気が付いた


 「ん、おぬしも買い物をしたのかの?」
 「ああ、エルルとクルルのプレゼントをな」
 「えっ⁉ ホントですか⁉」
 「やったぁ‼」


 二人はしっぽをパタパタさせて喜んでる
 でも、ここで出す訳にはいかないよなぁ···そうだ‼


 「よし、ちょっと移動しようか」




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 やって来たのは〔激獣兵団シバテリウム〕の本拠地
 よし···睨んだ通りだ、ここには修練所がある


 門番に挨拶して中に入り、エルルとクルルに修練所に案内してもらう


 「えへへ···プレゼント」
 「たのしみ〜」


 エルルとクルルはずっとご機嫌だ
 場所が場所なだけに何を貰えるかは想像がついてるらしい
 5分と歩かないうちに到着した


 修羅場は屋外の体育館って感じだ···中にはゴツい獣人があちこちで模擬戦闘をしてる···ん、あそこにいるのは?


 「ん?···お前たち何してるんだこんな所で。遊びに出かけたんじゃないのかい?」
 「お母さん‼」
 「ママ‼」


 レオパールだった···って言うかママって


 「アンタこそ何してる··ってやる事は1つか」
 「ま、そう言う事だね」


 レオパールの周りにはガタイのいい獣人が何人も倒れていた
 ここでやる事といえば訓練だよな


 「······やっぱり強いのじゃ」


 今のアウラじゃ厳しいな
 でも···可能性が無いわけじゃない
 と、その前に······


 「エルル、クルル···これが俺からのプレゼントだ。使い易いといいけど」


 俺はケースをあけて二人に、ついでにアウラと近くに来たレオパールにも見せる


 「わぁぁぁ···すごいです」
 「きれー···」
 「美しいのじゃ···」
 「これは···まさか〔属性武器マテリアルウェポン〕⁉···初めて見たよ」


 みんなの目が釘付けになってる
 とにかく装備装備!


 エルルは【赤い牙レッドタスク】と【青の咀嚼ブルーバイト
 クルルは【緑の千切グリーンカット】と【黄の噛咬イエロートゥース
 を装備した···うん、似合ってる


 「二人とも、それに魔力を通して振ってごらん」
 「はい、わかりました」
 「魔力···こうかな?」


 するとエルルのナイフから炎の刃が
 クルルのナイフから風の刃が飛び出した


 4人とも仰天してる···すると


 「これを使いこなせればまだまだ強くなれるぞ、がんばれよ」
 「はいっ。ありがとうお兄さん‼」
 「お兄ちゃんありがとう‼」


 エルルとクルルは俺に飛びつく
 危ないからナイフはしまってからにして‼


 「面白いね。エルル、クルル···試し切りがしたいだろう?···かかっておいで」
 「ふふっ···今日こそはお母さんに勝ちます‼」
 「よーし、負けないよ、ママ‼」


 そのまま模擬戦闘を始めてしまった···何か血の気が多くなってないか?
 そのまましばらく戦闘が続き、エルルとクルルの息が上がってきた···するとレオパールは


 「アウラ、アンタも混ざるかい?···ウズウズしてんだろ?」
 「···初めて会った時から一度手合わせしたかったのじゃ‼」


 アウラが飛び込みギミックナイフで斬りかかった
 さらにエルルとクルルが復活して1対3の戦いになる


 「ふふふっ···やっとアタシの訓練が出来そうだね」
 「ふん、面白いのじゃ‼」
 「血が滾ってきました‼」
 「ううう〜行くぞ〜‼」


 レオパールは獣のような獰猛な笑みを浮かべる


 アウラ達が一斉に飛びかかった






 あれ?······俺、忘れられてる?






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 結局、アウラ達は勝てなかった
 途中何度かレオパールが危ない場面はあったが、それでも決定打を入れる事が出来ずに勝負は終わった


 戦いが始まるといつの間にか修羅場に大量のギャラリーが集まり応援合戦まで繰り広げられていた
 エルルとクルルはこの傭兵団のアイドル的存在で、そこに銀髪の美少女が混ざり、さらに相手は団長のレオパール···そりゃ興奮するよな
 この戦いは団員の刺激になったらしい、レオパールは別れ際に感謝していた


 俺達は今、宿に戻ってる最中だ
 夕食は〔レッドオーク〕の焼肉食べ放題で済ました。お腹が減っていたのか三人ともすごい食べていた···アウラがすごい恥ずかしそうにしてる


 「わらわとした事が···あんなに食べてしまったのじゃ···」
 「美味しかったです〜。お兄さん、ごちそうさまです」
 「お兄ちゃん、ごちそうさま〜‼」


 宿屋について部屋に入る
 今日はエルルと一緒の部屋だ
 ソファに座るとエルルが隣に来た


 「おに〜さん‼ 頭をお願いします‼」
 「よしよし···おいで」
 「えへへ···ふあぁ···」


 エルルの頭を撫でる···ふわふわして気持ちいい
 犬ミミも撫でる···なんかふにふにする


 「んんん···ふぅぅ」 


 気持ち良さそうだ···眠くなってきたのか目が虚ろだ


 「···くぅぅ···すぅぅ···」


 寝てしまった···よしよし
 俺はエルルをベッドに移して···まぁいいか、一緒に寝よう  
 俺も一緒のベッドに入り目を閉じた




 明日はどうしようかなぁ···





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