ホントウの勇者

さとう

大大陸中心交易都市エレメンツ④/お買い物・煤けた武器屋



 〔激獣兵団シバテリウム〕のアジトから出て歩き出す


 メンバーは俺、アウラ、エルル、クルルの4人
 時刻はそろそろ夕方···宿に戻らないとな


 「今日は宿に帰ろう。エルルとクルルも一緒にな」


 「そうじゃな」
 「わかりました、お兄さん」
 「はーい‼」


 宿屋はここから15分ほど歩いた所にある
 俺は先頭を歩く、後ろを見ると···女三人が仲良くお喋りしながら歩いている。こんな光景も悪くない


 そういえば、ブランと約束したっけ···エルルとクルルにプレゼントを買ってやるって


 宿についたらそれとなく話してみるか




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 宿について部屋を取ろうとしたらちょっとモメた


 現在部屋は満室
 空いてるのは俺とアウラの部屋
 エルルかクルルが俺と一緒···ここで姉妹はケンカを始めた


 「わたしがお兄さんと一緒‼」
 「おねえちゃんズルい‼」


 受付でケンカするもんだから注目を浴びてる······おいおい、恥ずかしいって


 「コラコラ、ケンカはダメなのじゃ······そうじゃな、2日あるのじゃ、最初は妹のクルル、次は姉のエルルの順じゃ。エルル、お姉さんなら妹の為にガマンするのじゃ」


 「······わかりました、それでいいです。ごめんなさい、クルル」
 「お姉ちゃん···ありがとう‼」


 アウラの機転でケンカは終わった
 俺の視線に気付いたアウラが懐かしそうに言う


 「わらわにも妹がおるからの···エルルの気持ちも分かる、だからこそ姉はガマンなのじゃ」
 「そっか、アウラは偉いな」
 「······そんな事、ないのじゃ」


 アウラはちょっぴり沈んでる···
 故郷の妹···家族を思い出したのかもしれない




 部屋割も決まりとりあえず部屋に入る


 「わーい‼ お兄ちゃんと一緒だ〜‼」


 部屋に入るなりクルルはベッドにダイブ
 やれやれ···俺と一緒がそんなに嬉しいのか


 俺は部屋に備え付けのロングソファに座る
 すると、クルルがベッドから飛び起きて俺の隣に来て座り、腕を抱く。白い犬ミミとしっぽがパタパタ動き出す


 「お兄ちゃん撫でて〜···わふうぅぅ」
 「ほら···ヨシヨシ」


 リクエスト通りに頭を撫でる
 本当に犬···いや、狼なのかな?
 暫く撫でていると突然部屋のドアが開く


 「あーっ‼ やっぱりですっ。お兄さん、わたしも撫でてくださーい‼」


 エルルが飛びかかるように俺の隣に来る
 やれやれ···ヨシヨシ


 「くぅ〜ん···お兄さんの手は気持ちいいです」


 マジか、俺の手はゴットハンドなのか?
 するとアウラが部屋に入って来た


 「明日の予定を決めようと思っての、案の定こういう事になったか···」
 「ま、まぁ勘弁してくれ。頭を撫でてやるのも久しぶりなんだ」
 「わかっておる······大事なのじゃな」
 「まぁな···」


 とりあえず明日の予定を立てよう


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 話し合いの結果…明日は普通に買い物と食事をする事にした


 単純だが意外にコレが難しい
 エルルは武器屋に行きたいそうだ。エルルとクルルの戦闘スタイルは2刀流…しかもナイフ
 彼女達は俺が闘っている所を見たことは無いが、俺の腰に装備したナイフ、ジャケットのような【友情の約束プロメッサ・アミティーエ】など俺の装備をマネして今の形になったらしい


 武器屋で買ったナイフはすぐに折れてしまいもう何本も買い換えているのが悩みどころらしい
 よし…新しく買ったナイフにクロの魔術を掛けて、時間を止めれば壊れることはないはずだ
 俺からのプレゼントにしよう


 「よし、エルルとクルルに俺が新しいナイフを買ってやろう!!」
 「ホントですか!? うれしいです!!」
 「やったあ!!…明日がたのしみ!!」


 大いに喜んでる…うんうん、いい笑顔だ


 「気にするな。ブランとも約束したからな」
 「ブラン?…どういうことですか?」
 「ああ、実はな……」


 俺は【黄の大陸】であったブランの話をする
 二人で王都で遊んだこと、一緒に買い物をしてプレゼントをしたこと
 話が終わると二人はうれしそうに言う


 「ブラン…がんばってるんですねぇ…会いたいなぁ」
 「うん…イエーナお姉ちゃんにも会いたいね」


 二人はちょっとホームシックだ


 「いつか会えるさ…そのときに話が出来るように明日は楽しもうな」
 「はい、お兄さん…アウラお姉さんもよろしくお願いしますね」
 「ああ、任せるのじゃ」
 「ふふっ…たのしみ…ふぁぁぁ…んむむ」


 クルルが大きなあくびをした…眠いのかな?


 「そろそろ寝るか…明日は朝から出かけよう。美味しい朝ご飯を食べにな」


 そのまま解散して今日は寝る
 俺はクルルをベッドに運び、俺はソファに横になる
 意外と幅が広いので落ちる心配はなさそうだ…


 今日は疲れた…もう寝よう 




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 ……なんだろう……柔らかくていい匂い
 フワフワの感触が俺の身体を包んでいる…気持ちいいな
 俺はゆっくり目を空ける…すると


 「う~ん…ふぁ…おにいちゃん…」


 クルルが裸で抱きついていた
 暑いから脱いだんだな…やれやれ、仕方ないヤツだ


 俺は体勢を変えて頭を撫でてやる


 「んんん…う~ん…んあ…」


 気持ちいいのかカワイイ声で鳴く
 よしよし…いい子いい子


 裸だが不思議と変な感情はわかない…それはきっとクルルが俺の中で妹というカテゴリーに入っているから、後は氷寒と括利を何度も抱いているので、ある程度の女の免疫がついているから…かな?


 「……ん…あ、おにいちゃん…おはよ」
 「おはようクルル…ほら着替えて…ご飯に行こうな」
 「はーい……ふあああ」


 クルルが背伸びをすると胸が揺れる…
 やっぱりチョット目に毒だな


 着替えて部屋を出る、そしてそのままアウラの部屋をノックすると、すでに準備を終えたアウラとエルルが出てきた


 「おはようなのじゃ」
 「おはようです。お兄さん、エルル」
 「ああ、おはよう」
 「おはよ~……」


 クルルはまだ眠そうだ…よし


 「さーて…朝ご飯は何食べる? おすすめの店があったら教えてくれ」
 「おすすめ…そうですね、【赤の大陸】側においしい焼きたてパンを出してくれる喫茶店があります、みんなで行きましょう」
 「焼きたてパン……ゴクリ」
 「ふむ…楽しみなのじゃ!!」
 「よーし、じゃあ行くか。エルル、クルル、案内頼むぜ」
 「はいっ!!」
 「うんっ!!」




 クルルも完全に目を覚ましたみたいだし…行きますか


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 この町の人間…商人、冒険者、傭兵にとって朝なんてあってないような物だ
 この町は4大陸の中心に位置してるため、旅をする冒険者にとっては都合がいい。なぜなら4大陸それぞれの武器防具が手に入りなおかつダンジョンもそこそこ近い


 4大陸には、マフィが趣味で作ったダンジョンがある
 各大陸に1つずつと言われていたが、実はけっこうな数が存在し、その中でも一番規模の大きなダンジョンが各大陸に1つずつ……と言う意味らしい


 【赤の大陸】には〔迷宮火山バンテス〕
 【青の大陸】には〔水中迷宮ラビュリント〕
 【黄の大陸】には〔迷宮鉱山ダンマール〕
 【緑の大陸】には〔森の迷宮グルーシフ〕


 これらがマフィの作った4大陸のダンジョンだ
 中にはマフィ特製のお宝やモンスター。最深部には強力な武器防具に財宝などを安置してあるらしい
 強いモンスターは「対峙した人間・集団が本気を出して倒せるレベルのひとつ下」に設定してあるらしく、頑張れば攻略は夢ではない。勿論イレギュラーも存在するが…
 マフィはそんな人間の頑張りを観察するのが趣味のひとつだ…今はボードゲームに夢中になっているけど


 まぁそんなことはどうでもいい
 今は朝食を食べに喫茶店へ向かっている
 エルルとクルルはうれしいのか先頭を歩き、俺とアウラはその後ろを並んで歩く
 そのまましばらく歩くと見えてきた


 「ここか…」
 「ほう、いい雰囲気なのじゃ」


 ついたのはモダンな喫茶店…外にはオープンテラスも設置されてる
 中に入ると…焼きたてのパンの匂いが鼻孔をくすぐる


 店の雰囲気は全体的に赤っぽい…コレはテーブルや壁に使われてる木の材質が赤いからそう見えているんだな
 飾りは観葉植物やレトロな絵画、柔らかい感じの音楽が流れていて、ここでコーヒーを飲みながら読書をしたい気持ちになる
 俺たちは4人がけのテーブルに座り、モーニングセットを4つ頼んだ


 「さて、今日回るのは…武器屋と…あとはどうする?」
 「そうじゃの…わらわは服や雑貨などを見たいのじゃ」
 「わたしは美味しい物巡りがしたいです」
 「わたしはお兄ちゃんと一緒ならどこでもいいよー!!」


 やっぱり昨日話したまんまの答えだな…
 エルルとクルルは女の子らしいこと…洋服や小物なんかには全く興味を示さなかった
 傭兵団に引き取られてからずっと訓練や戦闘ばかりで着飾る余裕は全く無し
 行くお店は武器・防具屋がメイン、後は道具屋
 依頼達成のご褒美にレオパールがよく飲食店に連れて行ってくれたらしい
 まぁ仕方ないか…お、来た来た


 「お待たせしました。こちらモーニングセットでございます」


 ウェイターさんが運んできた料理は焼きたてパンがバスケットに入り、各種ジャム、サラダにスープにハムにスクランブルエッグ。なんと希望すればナポリタンも出してくれるらしい
 アウラ以外はみんな頼んだ…どんな味だろう


 焼きたてパンはふわふわで、ジャムを付けずにそのまま食べても美味しかった
 モーニングを食べ終えるとナポリタンが出てくる
 こちらも絶品…チョット味が濃かったが


 食事が終わると飲み物がサービスされる…オレンジジュースか紅茶だ
 俺とアウラは紅茶、エルルとクルルはジュースを飲んで一息つく


 「よし。行くか」


 俺の一声で出発する事にした……ごちそうさまでした!!




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 まだ朝早いが店はほとんどオープンしている
 すぐに店には入らずに、腹ごなしの為に暫く散歩しながら辺りを回った


 「なぁ、ジュート」
 「ん?······どした?」


 俺の隣を歩くアウラが微笑を浮かべながら言う


 「平和じゃな···こうやって町を歩くだけでわかるのじゃ。種族なんて関係なく、この町には笑顔が溢れておる······わらわにも、こんな風に笑顔溢れる町を作る事が出来るのか···少し不安じゃ」


 「······出来るよ」


 「······え?」


 「お前ならきっと出来る。だから今はしっかり世界を見ろ······頑張れアウラ」


 「······ふ、そうじゃな···ありがとう」


 アウラは前を見ながら礼を言う
 その先にいたのはエルルとクルル


 「おにーさーん‼」
 「おねーちゃん、早くー‼」


 いつの間に先に行ってしまった二人を追いかける様に、俺とアウラは歩くスピードを上げた






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 暫く目に付いた店を散策しながら歩いていた
 今はなかなか広く種類も豊富な洋服店を見つけて、エルルとクルルがアウラによって着せ替え人形と化していた
 二人はスタイルもよく美少女なので、アウラだけでなく店員さん達もこぞって着替えさせている
 エルルとクルルは最初は乗り気出なかったが、だんだんとオシャレに目覚めて来たのか、いろんな服を着て楽しんでいた
 こりゃまだまだかかりそうだな···


 アウラにはゴルドカードを渡してあるので問題はない···俺は外でまってるか




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 外に出て近くのベンチに座る
 今日は天気もよく相変わらず沢山の人がいる
 

 《······気持ちいいワネ》
 「おう······っておお⁉」
 《何ヨ、ビックリしたじゃない》
 「そりゃこっちのセリフだ‼ どこ行ってたんだよ」
 《散歩ヨ···あの姉妹は苦手なのヨ》
 「そうなのか?······ネコだからか?」
 《·············》
 「すみませんでした」


 クロは相変わらずネコ扱いすると怒る
 アウラと二人の時は一緒にいるけど、エルルとクルルが来てからは〔セーフルーム〕に引っ込んでるんだよなぁ···


 暫くクロと会話していると、一軒の建物が目に付いた


 「あれは······武器屋かな?」
 《ソウみたいネ···気になるノ?》
 「うん、ちょっとな···」


 その建物は灰色のレンガの建物で、ボロいと言うよりは古い
 壁にはコケやツタが絡みついてるし、看板は煤けてる
 パッと見ると武器屋には見えなかった


 何か気になるな···入って見るか


 「よし、入ってみるか。行くぞクロ」
 《仕方ないワネ···》




 俺とクロはその古ぼけた武器屋に入ってみる事にした





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