ホントウの勇者

さとう

大大陸中心交易都市エレメンツ③/先払い・血の契約書



 「エルル? それとクルル……だよな?」


 「お兄さん?……ウソ」
 「お兄ちゃん?……本物?」


 エルルとクルル…だよな…でも、俺が知ってる姿と違う
 なんか…成長してる


 エルルはたしか10歳くらいの少女だったけど…今、目の前にいるのは15歳くらいの少女に見える。長い髪をポニーテールにして頭頂部にはピンと立った犬耳、顔立ちは成長したエルルだけど…
 装備は薄手のキャミソールの上に皮の胸当てを付けていてその上に茶色のジャケットを着ている。足はスパッツの上に短パンをはいて健康的でワイルドなスタイルだ。腰にはポーチのついたベルトを装備して腰の後ろには2本のナイフが交差して差してあった…俺に似ている
 さらに腰には犬シッポが生えている…懐かしいな


 クルルもたしか8歳くらいだったよな?…どうみても14歳くらいだけど。髪型が緩い三つ編みという以外はエルルと殆ど同じ装備だ。
 シッポはやっぱりふわふわしてる、かわいいな


 俺は笑って言う


 「元気だったか二人とも…強くなったな」


 そう言うと二人は涙を流し、身体を震わせた…そして


 「お兄さーん!!!」
 「お兄ちゃーん!!!」
 「何か久しぶりっだぁぁぁぁぁ!!!」


 巨大化した二人を受けきることが出来ずにぶっ倒れた
 二人は的確に急所を突いてくる


 「ふんふん…間違いないよ、お兄さんの匂いだぁ…」
 「ほんとだぁ…ふんふん…ぺろぺろ…」
 「ちょっ…おい、クルル…舐めるなよ」


 二人は俺の胸に顔を埋めて匂いをかいでいる
 クルルは俺のほっぺをぺろぺろ舐めていた…くすぐったい
 皮の胸当て越しでも分かる…この二人かなりの巨乳だ…ヤバい


 アウラとレオパールは余りの出来事にぽかんとしてる
 出来たら助けて欲しい…


 俺の視線にレオパールが我を取り戻した


 「ほらエルル、クルル…みっともない所みせるんじゃないよ」


 エルルとクルルは引き離される…助かった
 サンキューレオパール


 「アンタら知り合いだったのかい? 驚いたよ」
 「…………」


 アウラはまだ硬直してる…ほっとこう


 俺はレオパールに事情を説明した


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 場所は変わってレオパールの部屋


 俺とアウラ、エルルとクルルはレオパールの部屋で食事をごちそうになっていた
 メニューは野生溢れる食材ばかり…焼いた肉の塊、塩焼きの魚、パンが沢山、サラダは山盛り、飲み物は水と酒が樽でドン!!
 腹も減っていたので遠慮無く頂く
 ちなみに席順は、エルル・俺・クルル、反対側にアウラ、レオパールだ
 エルルとクルルが俺の両腕をガッチリロックしてるので非常に食べづらい、しかも二人は装備を外しているのでその巨乳がもろに腕に来る…しかもこの二人全然気にしていない。恐ろしい子や…


 「くっつきすぎなのじゃ……」


 アウラはイライラしてるし……


 「お兄さん、あーん」
 「お兄ちゃん、こっちもあーん」
 「あ、あーん…もぐもぐ」


 エルルとクルルはかなりうれしそうだ
 犬耳はピコピコ動いてるしシッポはパタパタしてる


 レオパールは何故かニヤニヤしてるし…


 さ、さっさと食べてアウラの用事を済ませよう




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 「それで? あんたらの用事は何なんだい?」
 「うむ、実は······」
 「ちょっと待った‼······アウラ、ちょっと来い」


 俺はアウラを部屋の隅に引っ張る


 「何なのじゃ一体···?」
 「お前の目的はコネを作る事だよな? エルフの国の事情を話すのか?」
 「······うむ、話すのじゃ。この者達には戦えとは言わん。全てが終わってわらわが王女になった時にいろいろ協力して貰うのじゃ」
 「······そうか」
 「うむ。戦いになればきっと、兄上達の〔神の器〕が出て来るはずじゃ。いくらこの者達が強くても勝てんじゃろう···そ、それに······」
 「それに······?」


 「わ、わらわには······おぬしがおるしの」


 「お、おう···そっか」


 アウラの顔は赤い
 俺もきっと赤くなってるだろう


 「おい。まだなのかい?」


 レオパールが面倒くさそうに言う


 「う、うむ。今話すのじゃ‼」


 アウラはまくし立てるように話出した






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 「なるほどねぇ···噂で聞いていたがエルフの国も大変なんだねぇ」
 「うむ、わらわが王女になった時にはぜひ協力していただきかい。我らエルフは閉鎖的な種族じゃ、開国をした時に他の部族を招いた時に無用な争いが起きぬよう強い獣人の力が必要なのじゃ‼」


 アウラは帽子を取り自分の耳を見せた
 レオパールは少し驚き···考え込んでる


 「いいだろう···その時が来たら連絡しろ、お前の依頼を受けてやろう。ただし、お代はきっちり頂くがね」


 まぁ当然だよなぁ
 俺はエルルとクルルの手を解き立ち上がり、レオパールの座ってる執務机に近づき聞いてみた


 「時期はまだ未定だけど···前金でいいか?」
 「あん?···いくら出すつもりだい?」


 俺は財布からゴルドカードを一枚取り出す
 ニヤリと笑いそれを机に叩きつけた




 「前金で1億ゴルドだ···これで足りるか?」






 レオパールとアウラは固まり、エルルとクルルも驚いていた
 今の俺の財産ならどうってことない




 「フ、フフフフフ···アーッハッハッハ‼···お前みたいなバカは初めてだよ。会ってまだ2時間程度のアタシに1億だと? しかも依頼内容はエルフの国の再興の手伝いと来たもんだ‼」


 「どうなんだよ、足りんのか?」
 「ハッ···お釣りがくるよ」
 「じゃあとっとけ、騒ぎを起こした迷惑料だ」
 「くくく、アンタに本気で惚れたよ。ウチに入団しないか?」


 その言葉にエルルとクルルが反応した
 耳がピコンと立ち上がり、しっぽがパタパタ揺れる
 でも······悪いな


 「悪いな、今の俺はお姫様アウラ専属の傭兵なんだ」
 「ハッ···商売敵ってわけかい、ならしょうがないね」


 レオパールはあっさりと諦めて机の中へから一枚のA4サイズの紙を取り出し、その紙にサインをした
 さらに自分の親指を噛み血が流れた。その血を紙に垂らすとA4サイズの紙が一瞬で赤く染まった
 その紙を折りたたみ、豹の紋章が入ったケースにしまい俺に渡して来た


 「〔血の契約書〕だ。この契約書をギルドに出せば我々〔激獣兵団シバテリウム〕にとっての最重要依頼として処理される。使いたい時に好きに使え、これがアタシからの信頼の証だ」


 「ああ、ありがとな」


 ケースを受け取りアウラに渡す
 成り行きでここまで来たけど、コネを作る事はできたか
 しかし···気になる事がある


 「お兄さんっ、久しぶりに遊んで下さいっ‼」
 「お兄ちゃん遊ぼー‼」


 エルルとクルルがじゃれてくる
 それはいいけど···あんまりくっつかれると恥ずかしい
 アウラの視線もなんか怖いし
 うーん···一応聞いてみるか


 「あのさ、そのー···疑う訳じゃないけど、エルルとクルルはもう少し幼かったよな?···本物だよな?」


 エルルとクルルはコテンと首を傾げる
 俺の質問に答えたのはレオパールだった


 「ああ、お前···獣人の成長速度を知らないんだね?」
 「成長速度?」
 「そうさ、お前達···アタシが幾つにみえる?」
 「そうじゃな···25〜6ぐらいかの?」
 「俺もそう思う」


 レオパールはそれを聞いて笑いだした


 「ハッハッハ‼ 残念、アタシは52歳さ。よく若いって言われるけどねぇ、立派なオバサンさ」


 「「うそぉ⁉」」


 どう見ても20代、顔は化粧で誤魔化してる···なんて事はない。この女は筋金入りの傭兵、化粧する暇があったら武器の手入れをしてそうな女だ


 「獣人族ってのは特別でね、身体は12歳までに成長しきる。あとは60代くらいまでそのままで、あとはゆっくりと老化していく。魔術が苦手な分、戦闘力は死ぬまで衰えないのさ」


 「エルルは11歳、クルルは10歳だ。もうすぐ成長も終わり大人になる。しかもこの子たちは獣人族最強部族の〔白牙狼びゃくがろう〕だ。いずれアタシより強くなってこの傭兵団の看板となってくれるだろうさ」




 〔白牙狼びゃくがろう〕?···確かにエルルとクルルの耳やしっぽは白い
 俺は未だに抱き着いてる二人の頭を撫でてやる


 「くぅ〜ん···わふ」
 「わふうぅぅ···」


 気持ち良さそうだ…最強ねぇ…


 とにかく用事はすんだな


 「ジュート、そろそろいくのじゃ」
 「ああ、エルル、クルル、また今度遊んでやるからな」
 「まて、お前達はまだこの町に滞在するのか? それと次の目的地はどこだ?」


 「そうだな···どうするアウラ?」
 「そうじゃな···あと2〜3日はいよう。おぬしはその者達と遊んでやれ、久しぶりなのじゃろ?」
 「いいのか?」
 「うむ、次の目的地は〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕じゃ、急ぐ理由はあるまい?」


 俺達の会話を聞いていたレオパールが口を挟んできた


 「ほう、丁度いい。〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕へ行くなら手を貸してくれないか? 他の部下にはちと荷が重い仕事でね、〔ネールク樹林〕を経由して行くルート何だが···もちろん報酬は払うし、エルルとクルルも一緒に行く」


 エルルとクルルも一緒か
 俺に断る理由は無い···アウラは?


 「構わんのじゃ、大勢で行くのもたまには良かろう」
 「そうかい、じゃあよろしく頼むよ。出発は2日後だ、それまでエルルとクルルはお前達に預けるよ」
 「わかった」
 「やったぁ‼ ありがとうお母さん‼」
 「お母さん大好き‼」


 娘に大好きと言われてレオパールはまんざらでもなさそうだ


 「ありがとうお姉さん、一緒に遊ぼうね‼」
 「おねーちゃんどこ行きたい〜?」
 「ええ⁉ わ、わらわも一緒なのか⁉ おいジュート‼」
 「いいだろ? みんなで遊ぼうぜ」


 エルルとクルルはアウラの両腕にしがみついて喜んでいる
 アウラは突然の事にオロオロして困ってる




 たった2日だけど···楽しくなりそうだ
 

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