ホントウの勇者

さとう

大大陸中心交易都市エレメンツ②/激獣兵団・総団長レオパール



 アウラはご機嫌ナナメだった


 まぁ当然だよなぁ···着替え中に部屋に転移してさらには生乳を素手で揉んじゃった訳だし···なんとか機嫌を取らないと


 「アウラ···ごめん」
 「···········」


 アウラはほっぺたを膨らませてそっぽむいてる
 美少女のアウラがこんな事をするとなんかかわいい


 「何でもするからさ、許してくれよ」 
 「·········何でも?」


 お、反応した······もうひと押しだ


 「ああ、約束する」
 「······むう」


 するとアウラはため息をつき振りかえる 
 そして······ニッコリ笑った


 「仕方ない···許すのじゃ」




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 「んで······今日の予定は?」
 「うむ、今日はギルドの仕事を見るのじゃ」


 アウラ曰く、俺達は冒険者ギルドの事しか知らない
 他のギルドの職務形態を勉強しよう···と言う事らしい


 「まずは商人ギルドにいくのじゃ‼」
 「へいへい·····」
 「······」
 「はいわかりました‼」


 アウラに睨まれて商人ギルドへ歩き出した
 メンドくせぇ···なんて思ってナイヨ?


 ちなみにクロはお昼寝中…こうなるとなかなか出てこないんだよな
 モルが入ってからは尚更だ…べつにいいけど




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 と言う訳で商人ギルドへ着いた
 4大陸の中継地点と言うだけあってかなり広い
 建物だけでお城みたいだし、高さはビルみたいに高い
 とりあえず入って見るか······


 中はかなり広いな···受付が単純に見ても100以上ある
 俺達はその中の一つに向かい話を聞く事にした
 受付は···若い女の人だ


 「すみません、いいですか?」
 「はい。本日はどのようなご用件でしょうか?」
 「はい、ええっと······」
 「商人ギルドについて教えてほしいのじゃ‼」
 「···って、おいアウラ‼」


 受付のお姉さんが困ってんだろ
 とりあえずカウンターに上がんな、降りろ


 俺はアウラを引っ張ってカウンターから下ろし、軽く頭を小突く


 「にゃうっ‼ 何するのじゃ‼」
 「落ち着け‼ 受付のお姉さんが困ってんだろ‼」


 お姉さんは苦笑いで俺達を見る


 「そ、それでは商人ギルドについて説明しますね」


 すんません、苦労をかけます 


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 商人、と言うのは販売業や宿屋などの商品やサービスを提供して報酬を貰う仕事の事だ
 商人になる為には必ず商人ギルドに登録してライセンスを発行してもらわないといけない。これは8大陸共通で、これが無いと大荷物を持った商人は町に入ることも出ることも出来なくなってしまう


 ギルドは全て国で管理してる。それは何故か?
 国の流通や物価などを管理する為である
 もし、ライセンスが無い状態で商売をすると厳罰が下される。財産没収、投獄、最悪の場合は処刑なんてのもある


 商人にはランクは存在しない
 ギルドで登録すれば誰でも商人になれるのだ
 例えば、鉱山で100個の石を手に入れて売ろうとする
 その前に商人ギルドで石を100個売る···と登録する
 石は1個1ゴルドで100個売れたから100ゴルドの儲けだ
 ここで売上の5%の5ゴルドをギルドに収める
 これで残りの95ゴルドが儲けとなる···
 これがこの国の流通システムだ


 「······という事です」
 「···なるほどのう」
 「なるほどね」


 これが商人か···面倒だし俺には合わないな
 アウラは凄く真剣に聞いている


 「うむむ···我らの国に流通の流れを作るのは大変じゃな。この大陸の王の力が必要じゃな···」
 「王か···難しいな」
 「うむ。じゃが諦めんぞ」
 「分かってるって」


 とりあえず商人ギルドを出るか···


 「次は?」
 「魔術ギルドじゃ‼」






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 お次は魔術ギルド···やっぱり城みたいだ
 さっそく中へ入ってみましょう‼


 ここは商人ギルドほど受付は多くない
 周りには魔術師より冒険者が多く目立つな···なんでだ?
 とりあえず受付だな···やっぱりお姉さんか


 「こんにちは、魔術ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
 「うむ、このギルドについて教えてほしいのじゃ‼」
 「はい、畏まりました」


 このお姉さんは、アウラのやかましい声に動じる事無く仕事をしてる···プロだな


 お姉さんはマニュアルを読むように語りだした




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 魔術ギルドはその名の通り魔術師を管理するギルドである
 魔術師はこのギルドに登録することにより魔術師として名前を残せるし、魔術師としてのランクを上げる試験を受けれるのもギルドと魔術学園だけである


 このギルドに登録すると、冒険者からの誘いも掛かるようになる。登録時に希望を出せば魔術ギルドを訪れた、仲間を集めている冒険者や傭兵に紹介して貰う事もやっている


 あとは上級魔術師の個別指導や膨大な魔術資料の閲覧許可など、魔術師を目指す人間は必ず登録する


 「以上です」
 「ふ〜む······」
 「なるほどな」


 アウラはさっきと同じ顔をしてる
 多分俺もだな······


 「魔術か···わらわ達エルフは皆【緑】属性じゃ。魔術ギルドを作って他の魔術師を呼べばあらゆるモンスターに対応出来るようになるのじゃ‼」
 「確かに···」
 「だが···やはり難しいのじゃ」
 「ああ、大変かもな···でも」
 「うむ。やりがいがあるのじゃ‼」


 まぁそう言うと思ったよ
 さて、最後は


 「じゃあ傭兵ギルドに行くか」
 「うむ。これが終わったらご飯なのじゃ‼」


 へいへい······




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 傭兵ギルドはやっぱりでかい
 そして中には人が沢山いる…しかし


 「な…なんか恐いのじゃ」
 「お、おう…静かにしてようぜ」


 傭兵……というか、なんかヤクザみたいな人達ばっかりだ


 ガタイのいい連中に恐ろしい目つきをした人
 筋骨隆々の大人
 ダークエルフ族の戦士


 それぞれが一塊になって集まっている…コレが傭兵か、冒険者とは雰囲気が違う


 「取りあえず受付に行こうぜ」
 「う、うむ…」


 アウラは俺の腕にガッチリ抱きついている
 胸の柔らかさを堪能しながら受付へ行く…そこには


 「こんにちは、本日のご用件は?」
 「えっと、傭兵ギルドについて教えて下さい」
 「はい畏まりました…あの、そちらのお嬢さんは大丈夫ですか?」
 「ああ…気にしないで下さい」


 アウラは俺の腕にくっついたままだ
 カワイイ…なんか撫でたくなる
 Sレートモンスターを一人で瞬殺するくらい強くなってるのに、あのヤーさんは恐いみたいだ


 アウラを安心させるために受付のお姉さんは優しく語り出した




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 傭兵ギルドの基本的な仕事は3つある


 戦闘・護衛・討伐


 冒険者との違いは戦闘の熟練度の違いだ
 冒険者はダンジョンや山脈・渓谷や砂漠などの過酷な環境にあるお宝なんかを求めて旅をする。当然モンスターとの戦いも避けられない


 傭兵はその逆だ。傭兵の旅は基本的に護衛、商人や要人の長距離移動の為に行われるのでお宝なんてないし、モンスターとの戦いは仕事の一つだ
 S~SSレートモンスターの討伐依頼は、冒険者と傭兵どちらのギルドにも同時に出されるが、討伐率は傭兵が圧倒的に多い。報奨金の多さや戦闘の経験値などを積むのに持って来いだからだ


 傭兵は基本的にグループを作る
 一つの傭兵団を作り、その傭兵団の名前で様々な依頼をこなす。討伐依頼、護衛依頼を同時にこなし成功させれば、その傭兵団の名前が売れて信用される、と言う寸法だ


 「と、この辺りですかね…」
 「ふ~む……」
 「な~るほどね」


 俺には合わないな…
 だって【神器ジンギ】はあるし、全属性の魔術だって使うし…秘密が多い
 すると、受付のお姉さんが


 「この町には【緑の大陸】最強のSランク獣人傭兵団〔激獣兵団シバテリウム〕の本拠地があります。たしか各大陸の護衛依頼が終わって幹部が集まるみたいですよ」


 ふーん……別に興味ない
 するとアウラが


 「【緑の大陸】最強の傭兵団か……ふむ。是非話を聞きたいのじゃ」
 「イヤ無理だろ、向こうも忙しいだろうし」
 「でも…ここでコネを作っておけば後に便利じゃ!!」
 「そうだけど……」


 アウラの言うことは一理ある
 でも…最強の傭兵団がいきなり会ってくれるのかねぇ


 「とにかく…本拠地とやらに行ってみるのじゃ!!」
 「やれやれ…わかったよ」


 傭兵ギルドを後にして〔激獣兵団シバテリウム〕の本拠地へ向かうのだった


 アウラのヤツ…急に元気になりやがった




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 俺たちはそのまま〔激獣兵団シバテリウム〕の本拠地に来ていた
 本拠地っつーか…要塞みたいだな


 レンガを積んで作った巨大な建造物
 建物の中央には…なんだ?…豹?の紋章が刻まれている


 「ほえ~…おっきいのじゃ…」
 「ああ、傭兵団がこんなに大きな建物を所有してるなんて」
 「うむ…さて、どうするのじゃ?」
 「はい?…お前が行くって言ったんだろ…俺はノープランだぞ」
 「ぐぬぬ…使えん男じゃ」
 「何だと!? このノープラン女!!」
 「なにィィィ!! このスケベ男!!」
 「おい、おまえら」
 「アレは不可抗力だろ!!」
 「ウルサイのじゃ!!」
 「おい、聞いてんのか!!」
 「なんだとぉ!!」
 「なんじゃぁ!!」
 「おいお前ら聞けよ!!」
 「やんのかテメェ!!」
 「望む所じゃぁ!! 返り討ちじゃ!!」




















 「「「「「話を聞けぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」」」




















 「「あっ…」」


 俺とアウラはいつの間にか獣人達に囲まれていた




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 俺とアウラを囲むように周りには獣人達が沢山いた
 数は20人ぐらい、全員男の獣人で装備もきっちり固めている
 鎧にアジトと同じ豹?の紋章が入っていた
 しかも全員……めちゃくちゃ怒っていた…や、ヤバい


 「ふん、なんじゃおぬし達は? わらわは見世物ではない、散れ!!!」
 「ちょぉぉっ!! おまっ…何言ってんだ!?」


 このバカはいきなり何言ってんだ!?
 ほら見ろ!! 皆さん全員額に青筋入ってんじゃねーか!!


 「テメェらこそどこで騒いでやがる? ここは〔激獣兵団シバテリウム〕の本拠地だぞ。イチャつくんならよそでやれや!!」


 「イチャつく?……おぬしら目が腐っとるのか?……ん? おぬしらもしかして…」


 「おうよ、俺たちはSランク獣人傭兵団〔激獣兵団シバテリウム〕よ!! 分かったらサッサと消えろや餓鬼ども。ここはお前らの遊び場じゃねーんだよ!!!」


 「……ふん、丁度いい。おぬしらのボスを連れてこい。わらわは大切な話がある」


 その一言で獣人達の空気が変わる…こんのバカアウラ!! なにさらしとんじゃぁ!!!
 やべぇ…何人かはもう戦闘モードだ


 「ほう…面白い。相手になってぎにゃん!!」


 俺はアウラの頭をぶっ叩いた…結構強く


 「こんの大馬鹿アウラ!!! 火にガソリンぶっかけてどーすんだ!!!」
 「何をするのじゃ!!……がそりんってなんじゃ?」
 「んな事どーでもいい!! 皆さんに謝れ!!!」
 「イヤじゃ!!!」
 「謝れ!!!」
 「いーやーじゃぁぁぁ!!!!!」










 「「「「「いい加減にしやがれぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」」












 ギャアアアアァァァァ!!! マジギレぇぇぇぇ!!!
 何でこんな事にぃぃぃぃぃ!!!






























 「何の騒ぎだい?」
























 その一言で、獣人達は一斉に声の方に身体を向けた




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 そこにいたのは一人の美しい女性獣人だった
 年齢は20代後半くらい、ブロンドの乱雑に纏められた髪、切れ長の瞳に健康的な肌の色、頭頂部にはまだら模様の耳
 顔は野性的な美人だがどこか気品のような物を感じられる。にやりと笑った口には牙が生えていて、ソレが不思議と似合っていた
 装備は軽装だった。胸を覆う鎧に腰にはベルトにナイフが刺さっている。メインウエポンは背中の大剣だろう。腕や足はきわどい露出がしていたが、しなやかで鍛えられた筋肉がその強さを感じさせる
 そして極めつけは…ネコみたいなまだら模様のしっぽ
 この人は、豹の獣人だ……しかも恐ろしく強い!!


 アウラも感じたのか顔が険しい…今のアウラじゃ厳しい相手だ
 すると獣人が一斉に敬礼した


 「お疲れさまです団長!!」


 「「「「「「お疲れさまです!!!!!」」」」」


 うおっ!! ビックリした……っていうか団長?
 このワイルド美人豹獣人のお姉さんが?


 「おう…さて、何があったんだい?」
 「じ…実は…」


 そして視線は俺とアウラへ…ああ…なんてこった
 そのお姉さんはアウラを見て…俺を見た…そして


 ニヤリと笑って…俺の元へ歩いてきた




 「ウチの者が済まなかったね」


 「い、いえ…悪いのは───」






























 何か来る




































 お姉さんの左手にはナイフが握られており俺の首に向かって下から横薙ぎが来る


 俺は瞬間的に右手に【雄大なる死グロリアス・デッド】を握りソレを受ける


 左手に力を込め〔マルチウェポン〕のギミックナイフを起動


 その勢いに乗せお姉さんの首筋に刃を当てた


 この間…0・5秒












 「ほう……あたしの一手負けか…やるじゃないかボウヤ」


 「……何のつもりだ?」






 お姉さんの右手は腰のナイフに添えられていた
 少しでも動けば俺は首をかっ切るつもりでいた






 「いやなに…久しぶりに強そうな男を見つけたんでねぇ、味見をしたくってね」


 「ほう……じゃあ俺に喰われても文句は無いな?」


 「くくくっ…いい男だ、ホレちまいそうだよ。アタシの負けだ、その殺気を押さえてくれ…部下がチビっちまうよ」


 「………」


 俺はナイフを納めて殺気を解く
 周囲の獣人は全員汗びっしょりで、アウラもそれは同じだった


 「で?…あんたらは何なんだい。入団希望者かい? 悪いけどウチは獣人しか入る事が出来ないんだよ…どうしてもって言うならアタシの恋人って言うのはどうだい?」


 「……いや遠慮しておく。用があるのは俺じゃなくてあのバカ女だよ」
 「むがーっ!! 誰がバカ女じゃぁっ!!」
 「どう考えてもお前だろ…余計な騒ぎ起こしやがって」
 「ぐぬぬぬ……」


 「ふ~ん…よくわかんないけど気に入ったよ。話くらいは聞いてやる」


 「やったのじゃ!! タナボタなのじゃ!!」
 「お前それ意味分かってんのか?」


 「ははは…面白いな。よーし酒でも飲もう、着いておいで」


 俺とアウラはお姉さんに着いていく…するとお姉さんは振り返った


 「自己紹介がまだだったね、アタシはレオパール。この〔激獣兵団シバテリウム〕の総団長さ」


 「俺はジュートだ」
 「アウラなのじゃ」


 俺はなんとなくこの女…レオパールには敬語を使う気にはなれなかった


 そのまま本拠地の中に案内されることになった




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 少し歩くと大きな扉の前に来た


 「ちょっと待ってくれ…」


 レオパールは立ち止まる
 なんだ?……トイレか?


 「どうしたのじゃ?」


 「ああ、少し時間をくれ……娘達に会ってくる」


 「へぇ、あんた娘がいたのか?」


 「ああ、血は繋がっていないがな」


 「そうなのか?……不思議なのじゃ」


 「ああ、とある町で見つけた獣人の姉妹でな。二人でじゃれついて遊んでいる所をみて思ったんだ…この姉妹は化けるってね。後は交渉してアタシの娘ってことにしてる」




 何だろうこの感じ……獣人…姉妹…まさかな


 レオパールが扉を開けた
 するとそこには……




















 「あ!! おかあさ…………」
 「おかえ……り…………」


















 エルルと……クルル?


 俺は獣人姉妹と目が合った


 二人は完全に硬直していた








 傭兵団に誘われたってブランが言ってたけど…まさかここで会うとはな







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