ホントウの勇者

さとう

閑話 刺兼都鍼・【針神アクスエギーユ】



 刺兼都鍼さしがねとばりは〔クローノス城〕の一室に呼ばれていた


 彼は10度目の【神の箱庭サンクチュアリ】から帰還したばかりで、正直眠たかった…しかし【王ノ四牙フォーゲイザー】の、しかも【歌神ローレライ】の呼び出しとあれば行かないわけにはいかない…彼は若干期待をして部屋のドアをノックした


 「すんませ~ん……刺兼都鍼さしがねとばりで~す…入っていいっすか?」
 「……どうぞ」


 中からはローレライの声が聞こえる
 彼はドアを開けて……顔をしかめた


 「……なんすかコレ?…何が始まるんすか?」


 そこにはクラスの友人が2人


 岩木石堂いわきせきどう火等かとう燃絵もえの二人が立っていた




 岩木石堂いわきせきどうは相撲部の巨漢。身長190センチ、体重120キロの相撲部のエース。地元の相撲部屋にすでに誘いを受けているらしく、その見かけによらぬ愛嬌もありみんなからは横綱と言うあだ名で親しまれていた
 ぼんやりした表情で刺兼都鍼さしがねとばりが部屋に入ってきたにも関わらずそちらを見ようともしない……理由は簡単だった
 彼も眠かったのだ…その証拠に何度もあくびをしてる


 火等かとう燃絵もえはガムを噛みながら爪を弄ってる
 目の前に【歌神ローレライ】がいるのに全く気にしていない……ある意味大物だ
 彼女は、身長は165センチくらいで少し高め、髪型はショートのウェーブヘア。顔立ちもよく女子の中ではそこそこ人気があった
 しかし彼女は最近苛立っている。その理由は……


 「揃ったわね…」


 ローレライが微笑を浮かべて3人を見る
 そして、静かに語り出した


 「あなた達はもう知ってるわね?……鳴戸括利めいとくくりちゃんと高名氷寒たかなひょうかちゃんのこと」


 その名前が出た瞬間…3人の表情が変わった


 岩木いわき石堂せきどうは眠そうな顔が消え去りローレライを睨み付けるような表情に変化した…彼は本気で怒っていた


 火等かとう燃絵もえは額に青筋がたち、弄っていた右手から炎が出る…殺気が漏れて今にも爆発しそうだった


 刺兼さしがね都鍼とばりは怒りつつも冷静になった。ここで怒ってもしょうが無い…冷静に今の状況を分析し答えを出す。第3陣の壊滅…そして呼ばれた3人の〔神の器〕


 「俺らが第4陣…ってワケっすか」


 「……そうよ。都鍼とばりクン」


 ローレライは3人の怒りを受け流し優しく語り出す


 「あなた達には第4陣として【緑の大陸グレングリーン】に向かって貰います…任務はそこにいる【銃神ヴォルフガング】の殺害…メンバーはあなた達3人と現地で 粗某そぼう牛地ぎゅうじクンと合流してね。その後の行動は任せます」


 刺兼さしがね都鍼とばりはしばらく考えて質問する


 岩木いわき石堂せきどう火等かとう燃絵もえは話は聞いているが頭に血が上っている。だから彼は冷静になれた


 「あの~…無月のヤツは皆木と只野を瞬殺したって聞いたんですけど…そんで……」






 












 「高名と鳴戸を・・・・・・をぶっ殺した・・・・・・んですよね・・・・・


















 その言葉に岩木いわき石堂せきどう火等かとう燃絵もえが爆発した






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 「殺す!!!!!!」


 岩木いわき石堂せきどうの上げた大声が部屋を揺らす
 右足を持ち上げて降ろす……それだけで床に亀裂が入る
 もう一切殺気を隠すこと無く震えている


 「違う……殺すのはあたしだ!!!!!!」


 火等かとう燃絵もえが対抗するように叫ぶ
 その瞬間…周囲が燃え上がり床の絨毯に火が付いた




 「ちょっ…お前ら落ち着けよ!! あちっ!!」


 「うるせぇ!!! アイツは…無月は、括利くくりを殺しやがったんだ!!! あたしが必ずぶっ殺す!!!」


 「うぎぎぎぎ…高名さん……カタキは僕が必ず…うーつ!!!」




 岩木いわき石堂せきどう高名氷寒たかなひょうかに恋心を抱き
 火等かとう燃絵もえ鳴戸括利めいとくくりの親友だった


 この二人が怒るには理由がある
 こんな状態なのもしょうが無い…彼はそう考えたがこのままでは部屋が崩壊するのは時間の問題だ


 「だから落ち着けって!! あちちっ…火を消せ!! これから俺たちが【緑の大陸】に向かって無月をぶっ倒しに行くんだ、こんなとこで暴れてもしょうがねーって!!」


 その言葉に二人はピタッと止まる


 「落ち着いたかしら……?」




 ローレライは何事も無かったように笑顔で話を続けた




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 刺兼都鍼さしがねとばりはため息をついた
 彼は今現在自室に戻っている…準備をしてすぐに出発する予定だ


 この爆弾みたいな2人と一緒に【緑の大陸グレングリーン】を目指す…はっきり言って不安だった
 実力的には申し分ない。はっきり言ってこの二人…自分も含めてだが、只野槌男より強いと思っている
 事実、この3人は【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】レベルの強さを持っている、とローレライのお墨付きだった


 「はぁ…」


 無月銃斗はかなりレベルの高い〔神の器〕らしい
 ここまででやられた仲間は9人…盾守堅硬と達俣土丸は【神器ジンギ】をほぼ破壊されて修復には時間が掛かる…実に仲間の三分の一が再起不能にされた


 しかも……第3陣ではついに死者が出てしまった


 高名氷寒と鳴戸括利
 彼は殆ど喋ったことはないが、共に異世界に来た大事な仲間だ
 その大事な仲間を…かつてのクラスメイト…無月銃斗に殺された


 この事実はクラス全員に伝えられ、ある者は悲しみ、ある者は怒り狂った


 岩木いわき石堂せきどう火等かとう燃絵もえは完全に後者の人間だった


 彼だって怒りを感じてる
 許せない気持ちがある
 無月銃斗を倒す機会があるなら……自分で始末を付ける




 彼は静かに決意した


 無月銃斗を……必ずこの手で始末することを




 
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 刺兼さしがね都鍼とばりは待ち合わせ場所の大ホールに向かって歩いていた


 ここまで来たらもうやるだけ
 あの二人をなんとか説得して共に戦うように言い聞かせるしかない
 後は…【緑の大陸】で合流する粗某そぼう牛地ぎゅうじ
 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】の序列7位…彼の力があればいくら無月のヤツでもきっと苦戦するはず……自分たちはそこを叩けばいい


 思考を巡らせながら歩いていると、通路の先に誰か立っていた


 眉をひそめてその人物に近づき話す


 そして…… 






































 「へぇ……アンタも一緒に戦ってくれるって?」









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