ホントウの勇者

さとう

花の町ガルファーノ③/アウラの才能・蕾の危機



 町の探索…もとい観光を終わらせ宿に入る
 夕食は町の大衆食堂で済ませ、後は寝るだけだ
 アウラはクロを連れて部屋にいる…きっともう寝てしまっただろう。クロの抱き枕はどこでも人気だ、今度はモルもセットにしてアウラに渡そう……ルーチェが寂しがるかもしれないな……それはともかく


 明日からしばらくこの町を拠点にして、アウラを鍛えることにした


 俺が考えているのはアウラの戦闘スタイル
 弓を使っての遠距離攻撃、魔術との併用で更にそれは強力になる。問題は体術…身体を見た限りでは鍛えてあるようには見えなかった。とりあえずどのくらい動けるか見る必要がある


 俺はこの時、〔水中迷宮都市ラビュリント〕で鍛えた4人…フリック・ミコト・グリュー・ミレアのことを思い出して、そのときの鍛錬方法を思い出した
 実力を見てそこを伸ばし、弱点を見つけ補強する。そして冒険者ギルドで高レートのモンスター退治をして度胸を付ける……
 あの時は4人いたから多少の無茶は出来たけど今回はアウラ一人。俺が付いてないとダメだ…アウラは強くなりたいって言っていたしせめて一人でA~Sレートのモンスターを倒せるようになるまで強くなって貰おう…手加減しないって言ったしな


 アウラの目的……多種族の交流を目指し国を開放する。そのためにいろいろな種族を見る、と言うことになったので旅のルートを大きく変更した


 まずココ…〔花の町ガルファーノ〕でしばらく鍛えて、本来なら〔メイプルの森〕を抜けて〔果樹園の町ヘレルマート〕を経由してそのままエルフ領の首都〔大樹都市ウェル・ティエリ-〕へ向かう予定だったが


 新ルートでは…〔花の町ガルファーノ〕でしばらく鍛えてから北上して4大陸の中心都市〔大大陸中心交易都市エレメンツ〕へ向かう。そこから西へ向かい〔傭兵駐屯都市ゼルドナ〕に向かう、そこからさらに西へ向かい〔王都グリーンカントリー〕を経由してようやく〔果樹園の町ヘレルマート〕に着いて最後に〔大樹都市ウェル・ティエリ-〕へ向かいゴールとなる……ほとんど【緑の大陸グレングリーン】を一週するルートだ……結構キツい、でももうやるって決めてしまった


 アウラの目的とは別に、俺も純粋に楽しみだった
 大冒険……冒険者らしいルートだ




 よーし…明日から頑張ろう!!




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 「おはようアウラ…忘れてないよな?」
 「愚問なのじゃ……でもその前に」
 「ああ、まずは朝ごはんだ!!」
 「なのじゃ!!」


 アウラはクロを抱っこして現れた
 クロがぐったりしてるのはきっと気のせいだろう……そうに違いない
 とりあえず、宿の朝ご飯を食べてから特訓開始だ!!


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 俺とアウラは町から出て、近くにあった岩場に来ていた


 「さて、アウラ…これから特訓を始めるけど、お前の経験値が全くわからない。どんな小さな事でもいいから戦闘やモンスター退治の事を教えてくれ」
 「う、うむ……そうじゃな、兄上が狩りに出かけて時にわらわも着いていった事がある。そのときは兄上が剣を振ってわらわは後ろで魔術を放っておったな…あとは兄上との狩りで弓を使った、自慢では無いが1発も外さなかったのじゃ」
 「なるほど…エルフ族は視力がいいんだよな?」
 「そうじゃ、わらわは特に視力がいい。本気を出せばここから1キロ先も見えるのじゃ。それ以外でも気配を読むのが得意じゃな、なんとなく悪意がわかる」
 「なるほどな…身体を動かすのは得意か?」
 「うむ。苦手では無い、得意でも無いが……体力はそんなに自信がないのじゃ……」


 なるほどな……だいたい方針は決まったな


 まずは弓を使わせてみて問題が無いようならナイフを使った体術…後は魔術だな


 「よし。とりあえずいろいろやってみるか」




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 とりあえずいろいろやってみた結果……アウラは天才の領域だった


 まずは武器になれて貰おうと〔マルチウェポン〕を理解して貰う…
 コレは簡単だった。ギミックナイフを出す力加減や短弓ショートボウの動作手順や発射までのプロセスの理解…アウラは頭が良くあっさりクリアした
 ギミックワイヤーはまだ使い道が無い。高所の移動や上空に移動しての奇襲なんかには使えるかもしれないが今は必要ないな


 短弓ショートボウは練習の必要が無いくらい完璧だった
 止まった的・遠距離の的・動く的・不意打ちの的……どれも百発百中だった
 動きながらの的も全く問題無い、本人曰く的が止まって見えるそうだ…なんてヤツだよ
 短弓ショートボウへの矢の装填もスムーズで、こんな事を言っていた




 「普通に弓を構えるより断然楽じゃな。これを見越してこの武器を選んだのか…さすがじゃな!!」




 いえ違います、純粋にかっこよかったからです……なんて言えない雰囲気で、ごまかすのに少しだけ心が痛んだ…純粋な瞳が眩しい


 体術はまだまだだった……しかし、エルフ族の特徴なのかアウラの個性なのかは知らないが、アウラの身体は非常に柔らかく、バレエダンサーのような動きも簡単にできた。コレは本当に才能の塊だな、正直恐れ入った


 なので、アウラのメニューは体力作りと体術の特訓がメインとなった
 体力は古典的だが走り込み、体術は腕よりも足技をメインに据えて鍛える、ギミックナイフは止めようにして、武器屋でレガースを買って装備して特訓した
 足技を教えるために、俺は〔カマクラハウス〕でアグニから特訓を受けてアウラに伝授した。おかげで俺も強くなった


 魔術は問題無かった。と言うかエルフ族は魔力が高く、しかも次期王女のアウラの魔力は飛び抜けて高い。その魔力量は68000ほど、ルビーラの4倍、クレアの30倍だ……マジかよ
 魔術詠唱も早く魔術規模も広いので問題が無い。しかもアウラのヤツ……短弓ショートボウの矢に風を乗せて矢の飛距離とスピードを伸ばす技を開発した……なんてセンスだよ




 〔花の町ガルファーノ〕を拠点にして15日…アウラの成長スピードは半端じゃなかった




 そろそろモンスター狩りをしてもいい頃合いだな




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 とある朝…いつものように宿屋で朝食を取り、修行のために外に出る
 すると……広場の真ん中にある巨大な蕾の周りに人だかりが出来ていた
 俺とアウラは顔を見合わせ首をかしげる……こんなこと今まで無かったのにな


 「何かあったのかのう?」
 「さぁ……ん?…おいアウラ、あの蕾…様子がおかしいぞ」
 「え?……あれは…ジュート、行くのじゃ!!」
 「お、おいアウラ!!」


 アウラは広場へ走り出す
 仕方ない…俺も行こう。何があったのか気になるしな




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 近くまで行ってやっとわかった……


 巨大な蕾は…枯れかけていたのだ


 周りは柵で囲まれているために近づけないが、茎の周りの葉っぱが所々茶色く変色している。茎の部分も力なく垂れ下がりこのままだと折れてしまうかもしれない。蕾は相変わらず開く気配は無くこのままではあと数日もしないうちに朽ちてしまうのがわかった


 「な…何故こんな…ひどいのじゃ……」
 「おいアウラ…ここだけじゃないぞ」
 「え?…どう言う……!?」


 よく見るとこの巨大蕾だけでは無い
 蕾の周りに咲いている花……周りを見ると、宿屋の周りや各商店…至る所の花が枯れている
 一体何が……ん?


 よく見ると地面にも亀裂が入っている……なんだこれ?
 まるで干からびてるような……


 「おいジュート、あそこを見るのじゃ!!」
 「ん?…冒険者ギルド?…あと、傭兵ギルドか?」


 冒険者ギルドと傭兵ギルドの前には人が大勢いた
 あれは全員冒険者と傭兵か? 一体何が……?


 「行ってみるのじゃ。この原因がわかるかもしれん!!」
 「ちょっ…おい待てよアウラ!!」


 アウラは走って行ってしまう
 アウラはこの町の花をとても気に入っていた
 あの巨大な蕾が開く瞬間を見たいといつも言っていた…だから、この現状が気になって仕方ないのだろう。その気持ちは俺にもわかる
 とにかく、原因を解明しないと……


 俺はアウラを追ってギルドへ走り出した




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 冒険者ギルド内は、大勢の冒険者で賑わっていた
 その理由はすぐにわかった…なぜなら、モンスターが町の西側の森、つまり〔メイプルの森〕から現れた、と言う情報が入ったからだ
 そのモンスターは遙か昔から存在し、数十年に一度目覚めて周囲の養分を求めて根を張り、木々や植物に甚大なダメージを与えて再び眠りにつく厄介なモンスター


 SSレートのモンスター 〔グリーンバイオヴェノムプラント〕


 神が作りし【はぐれ神獣】だった


 【神獣】には種類が存在する
 まずは【神獣】を統率するために神によって意思を与えられた物
 もう一つは意思を持たない強力なモンスタータイプ
 今回のは意思を持たないタイプ、しかも【神獣】は全員【時】属性なので永遠の時間を生きる…神の指令を見失い本能のまま暴れれば流石に力が尽きる。なので【はぐれ神獣】は長い眠りにつき数十年に一度目覚めて養分を求めて暴れ回り再び眠りにつく…そんなサイクルを繰り返している内に、人々からは伝説のモンスターなんて呼ばれるようになった


 今回のは巨大な植物のバケモノらしく、冒険者や傭兵がこぞって集まり討伐の依頼を受けている。中には恐怖で逃げ出す人もいたし…すると


 「ジュート…わらわ達もやるぞ!!」


 まぁ言うと思ったよ……でも


 「お前…実戦は未経験だろ? それに初実戦がSSレートのモンスターなんてキツすぎる。今回は俺に任せて……」


 「イヤじゃ!!……わらわは……」


 アウラは俯き……泣きそうな顔をしている


 「わらわは…世界を知らなかった。エルフの国の中で満足していた…でも、世界はこんなにも美しく広く…優しい。この気持ちはきっと他のエルフにはわからない、わらわの大切な気持ちじゃ。だから…許せない、この町を…ここの人たちを困らせるモンスターを許す訳にはいかぬ!!」


 アウラの気持ちは痛いほど理解できた
 アウラはこの2週間で町にだいぶ慣れてきた
 一人で買い物をして雑貨屋のおばちゃんと仲良くなり初めてサービスをして貰った事。短弓ショートボウの矢を買いに武器屋に出かけて、武器屋の親父にからかわれて顔を赤くしたこと。行きつけの露店が出来て修行の帰りに買って食べたこと……アウラはこの町で身体や技術だけでなく心も成長した
 アウラは自信の思い出が詰まったこの町を守りたい…そう考えている
 初めてこの町に来たときのオドオドした感じはもうない


 ここにいるのは……一人の戦士、アウラだった




 俺の答えは決まった






 「わかった。行くぞ……アウラ」


 「うむ!! ありがとうなのじゃ!!」




 俺たちは町を飛び出した……行き先は、〔メイプルの森〕だ!!




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 俺とアウラは【流星黒天ミーティア・フィンスター】で街道を突っ走っていた
 SSレートのモンスターを他の冒険者や傭兵が来る前に倒しておきたかったからだ
 俺は最悪【神器ジンギ】を使って戦う、その光景を見られたくないし、他の人たちが死ぬ所も見たくない
 モンスターが確認されたのは早朝……


 サッサと行ってサッサと終わらせる…これしかない!!


 「アウラ!! 俺が正面で戦うからお前は後方で援護を頼む!!……これだけは絶対に譲れない。わかったな!!」


 「わかっておる!!…悔しいが今のわらわにはそれしか出来ん…頼むぞジュート!!」


 自分の実力を理解して自分の役割を果たす。その気持ちがあるだけでアウラはまだまだ強くなれる




 俺は内心で笑みを浮かべて、そのままスピードを上げた





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