ホントウの勇者

さとう

花の町ガルファーノ②/新装備・アウラの決意



 そんなわけで買い物タイム···
 必要なのは食材かなぁ···あ、そうだ


 「なぁアウラ、お前さ···魔術以外の武器あんのか?」


 ここに来るまでにモンスターとも何度か戦った
 アウラは【緑】の上級魔術師くらいの力は持っている。【精霊魔術】は条件付きでしか使えないし、詠唱時間も長いので戦闘では使えないらしい
 エルフは確か視力が優れてるんだよな···


 「武器か、わらわは弓なら使った事がある。昔···兄上が教えてくれたのじゃ」


 どうやら余り触れてはいけない所らしいな···
 しかし、いざという時のために武器はあった方がいい。ナイフ1本あるだけで全然違うしな


 「よし、じゃあ武器屋に行くか。弓じゃなくても一応護身用の武器はあった方がいい。それでいいか?」
 「分かったのじゃ。なるべく使いやすいので頼むのじゃ」


 よし。じゃあ行きますか‼






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 俺とアウラは町の中央にある武器屋へやって来た
 店の大きさは学校の教室くらいの広さで壁には高そうな剣が飾られて、樽の中には大量生産されてそうな安物の剣が刺さっている。ショーケースの中にはナイフやら鉄甲などが展示されていた


 「さーて、何がいい?」
 「やはり無難に弓とナイフがいいのじゃ。わらわは剣など握った事すらないからの」
 「分かった。そうする·········」






 俺の視界に1つの武器が写った
 こ、これって······






 「どうしたんじゃ、ジュート?」
 「こ、これは······」


 俺の様子を見た武器屋の親父がニヤリと笑う


 「ほう。兄ちゃん、そいつに目を付けるとはなかなか見どころがあるじゃねーか」


 「親父さん、これって······解説してくれますか?」


 俺はこの武器はきっとアウラにピッタリだと思った。ついでに俺もほしい······値段は関係なく買うつもりでいた


 「おう。こいつは【紫の大陸ノイエパープル】で開発された最新武器〔マルチウェポン〕だ。これ一つでナイフ、短弓ショートボウ、アンカーショットの武器が内蔵されている」


 か、カッコいい······まるで中二病みたいな武器だ


 見た目は手首から肘までを覆うスマートな篭手だ。これなら服の袖に隠せるだろう。腕を上に向けてレバーを引くと、骨組みが左右に展開して小さなボーガンになり、そのまま矢を装填して放つ事が出来る。腕の腹には飛び出しナイフが装備されていて手首を上には逸らすと、筋肉の動きに反応してバネ仕掛けのナイフが飛び出す。長さは40センチほどで隠し武器みたいだ。アンカーショットは腕の左側に装備されていて、レバーを引くとアンカーが飛び出す。極細のピアノ線みたいなのが伸びて先端に可動式の3本の爪が付いている。もう一度レバーを引き魔力を込めると自動で鋼線が巻き戻り、150キロぐらいまでなら一緒に持ち上げることができる…………コレしかない!!!


 「アウラ!! コレにするぞ!!」
 「えー……なんかダサいのじゃ…」
 「ダメだ!!! コイツにするぞ!!!」
 「ひいっ…わ、わかったのじゃ……」


 ちなみに1つ50万ゴルド、色も選べる仕様だった
 俺はブラック、アウラはグリーンを選んだ…さっそく装着
 俺とアウラは左腕に装着………か…かっこよすぎる


 手首を反らすと…何も出てこない
 強めに反らすと……40センチの刃が飛び出す
 力を緩めると……刃は引っ込んだ
 コレなら日常で刃が飛び出すなんてことはなさそうだ


 短弓ショートボウはなかなか使い道がありそうだ
 俺の投げナイフは射程が精々2~30メートルだが、この短弓ショートボウは50メートルは届きそうだ…練習しよう


 アンカーショットは高いところを登るのに役に立ちそうだ。なんか忍者みたいだな……っていうかそんな場面あるのかな?


 アウラは刃を出したり引っ込めたりして遊んでいる……怪我すんなよ
 よし!! 取りあえず武器はこれでいいな!!


 〔マルチウェポン〕……いい買い物したぜ!!




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 さて…次は買い物だな。食材を仕入れに道具屋に行こう
 俺とアウラは道具屋を目指して歩き出した


 道具屋はスーパーマーケットみたいな大きさで、中では何でも売っている
 食材から小道具、食器や石けん…とにかく多種多様。どの町にも必ず一つはある総合施設だ


 さっそく食材を選ぶ……あれ? アウラ?


 「おおお……スゴい、スゴいのじゃー!!」
 「……何やってんだよお前」
 「だ、だって見たこと無い物がたくさんあるのじゃ!!」
 「エルフの国には無いのか?」
 「……ない。食べ物はモンスターの肉や薬草スープやキノコと木の実ばっかりだし、甘味なんて殆どないし……エルフ族は本当に閉鎖的な種族じゃ……」


 アウラは沈んでいる……コイツも苦労してんだな






 「ならさ、お前が女王になって変えればいいじゃん」






 「……え?」


 「だから、お前が女王になってさ、他の種族ともっと交流すればいいんだよ。ハーフエルフの技術で甘~いお菓子もいっぱい作れるし、ダークエルフの狩猟の技術でもっと強くてウマいモンスターの肉も食えるだろ?」




 アウラは俺の言葉を聞いて愕然としている……
 俺、何か変なこと言ったかな?………すると






 「そ…そうか…その手があったのじゃ…多種族との交流…わらわは今までエルフ族の中に捕らわれすぎていた……ははは…こんなにも答えは簡単だったのじゃ…反発ではなく受け入れる……エルフ族の新しい未来…そうか、そうだったのじゃ」




 ん?……アウラがブツブツ何か言っている?……大丈夫か?




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 買い物を終えて町の中央のベンチに座る…アウラが話があると言って引っ張ってきたのだ


 「ジュート!!……わらわは決めたぞ!!」
 「はい?……何が?」


 「わらわはずっと考えておったのじゃ…父上の後を継いで女王になって何をすればいいのか…国の為に何が出来るのかを。こんな半端なわらわより、国の事を考えて王を目指す兄上と姉上の方がよっぽど相応しいんじゃないのかと。でも…いま、そなたの言葉でわらわの中で何が出来るのかわかった、そして決めたのじゃ!!」


 アウラは真っ直ぐ俺を見て語る…その顔は決意に満ちた表情だった


 「わらわの目指す王は……閉鎖では無く解放じゃ!! 国を覆う結界を解いて多種族との交流を目指す。それがわらわが目指す新しいエルフ族じゃ!! だからこの旅で多種族の事をもっと知りたいのじゃ!!」


 ……アウラは自分の道を見つけたようだ
 後はそれに向かって進んでいくだけだ


 「当然……俺は付いてくぜ。お前を家まで送るのが俺の仕事だからな……っていうか国は大丈夫なのか? 親父さんと妹が捕まってんだろ?」


 「それは大丈夫なのじゃ。投獄といっても牢屋ではなく部屋に監禁という意味じゃ。流石に現在の王を殺すなどという暴挙は犯すまい……王位継承権を持つわらわの命を狙うならわかるがの」


 「その辺は俺が守るから大丈夫だ……なぁアウラ、お前は強くなりたいか?」


 「強く……当然じゃ。兄上や姉上と闘わなければならないかもしれないのじゃ……弱いままでいられん。兄上は剣術と格闘技の天才、姉上は弓術と魔術の天才なのじゃ……今のわらわでは太刀打ちできん」


 「なら…俺が鍛えてやる。ついてこれるならな…どうする?」


 「……条件があるのじゃ」


 「……なんだ?」


 「一切手加減しないでほしいのじゃ……わらわは本気じゃ」


 「わかったよ、そのかわり遊ぶときは遊ぶ、修行は修行だ。町や人を見るのもお前の修行だからな」


 「うむ!! じゃあ今日は遊ぶのじゃ。ジュート、わらわをエスコートするのじゃ!!」


 「わかりましたお姫様…まずはあそこの露店で買い食いでもしてみるか?」


 「おおっ!! ナイスアイデアじゃ!!」




 アウラの決意に俺は感動した…
 俺に出来る事はアウラを鍛えること
 ナイフ、弓、魔術、体術……アウラを強くするためのメニューを考える




 でも今は……笑顔のアウラと町を楽しむ




 それだけを考えて俺は歩き出した



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