ホントウの勇者

さとう

花の町ガルファーノ①/服と帽子・大花の蕾



 俺とアウラは竹林をのんびり歩いていた


 アウラ曰く、アウラがこの〔バンベール樹海〕に飛ばされてきたのは1週間前、ちょうどエルフの姫君が行方不明になったと噂が広がり始めた頃だ。
 アウラはその間竹林の中を彷徨っていた。食べ物はキノコ何かで済ませて、水は朝露を集めて飲んでいたらしい。
 エルフは感覚が鋭敏なのでモンスターの気配に敏感で、近くにモンスターが現れた時は逃げてやり過ごしていたそうだ。しかしなれない竹林で疲れがたまり、モンスターに見つかってしまい俺に出会ったそうだ···間一髪だったわけか


 「じゃあお前、腹減ってんのか?」
 「······う、うむ」
 「じゃあメシにするか」


 アウラは顔を赤くしてそっぽ向く
 ちょっとデリカシーが無かったかな···反省


 俺は竹林の先にあった岩場を背にして調理の準備をした
 アウラは料理が出来ないらしく、俺の準備を見て目を丸くしてる
 魔術を使いカマドを作り火を起こす
 鍋をセットして湯を沸かし、野菜を刻んでスープを作る
 網の上で肉を焼いて塩で味付けする


 本日のメニューはパンと野菜スープと焼いた肉だ
 アウラの前にそれらを並べて俺も自分のぶんを並べる
 クロの前には千切ったパンにサイコロカットした肉を置いた


 「よし。アウラ、食べようぜ」
 「え、あ······う、うむ」


 「いただきます‼」
 「い、いただき···ます?」


 俺はまずスープを飲む···うん、シンプルな塩味だけど野菜の旨味が染み込んでうまい‼
 肉も···うん、こっちもうまい‼


 「どうだ美味いだろ、アウ······」


 俺はアウラを見た···味の感想が聞きたかったのだが
 アウラは···泣いていた


 「う、うう···おいじい···おいじいよぉ···」


 アウラはボロボロ泣きながらスープを飲み、パンをかじり、肉を食べていた
 口いっぱいに詰め込んで食べる姿は正直褒められた物ではない
 しかし···俺は何も言わなかった






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 食事が終わり食器を片付けて一服中···
 アウラはクロを抱きしめていた。どうやらさっきの姿が恥ずかしかったらしく、それを誤魔化すようにクロを抱きしめて顔を反らしていた


 《ニャっ⁉······チョット苦しいワ‼》
 「え、あ···す、すまんのじゃ‼」
 《モウ···気をつけなさいネ》
 「すまんのじゃ···クロ殿」


 はは、いつの間にか仲良く··········んん⁉


 「お、おいアウラ⁉ お前、クロの言葉がわかるのか⁉」
 「当たり前じゃ、この子は精霊であろう? エルフのわらわに聞こえるのは当然じゃ」
 《···ワタシは精霊じゃなくて【神獣】何だケド···》


 ま、まあいいじゃん。エルフ族ってスゴイな


 「アウラも【精霊魔術】を使えるんだよな?」
 「当然じゃ‼ わらわは【緑】の精霊の力を誰よりも引き出す事が出来るのじゃ‼」
 「へぇ···それってスゴイのか?」
 《【精霊魔術】は人間で言う【特級魔術】みたいな物ヨ。それにこのコはかなりの才能を持っているワネ、エルフの王の後継者に相応しいのは間違いないワネ》
 「ふふ〜ん‼」


 アウラは胸を張って威張る···薄い布一枚しか着けていないので、胸の形が丸分かりだった···意外とある
 とりあえず···コイツの服をなんとかしないとな


 「なぁアウラ。ここから一番近い町ってどこだ?」
 「うぇっ⁉···わ、わからんのじゃ···」
 「え?···」
 「だ、だって···わらわはエルフの国から外に出た事がないのじゃ···うう」
 「あー···」


 よく考えたらそうだよな···
 道がわかるならこんな竹林に1週間もいないよな
 俺はチラリとクロに視線を移した


 《ココから一番近いのは···ココを出た少し外れに〔花の町ガルファーノ〕があるワネ》
 「よし、まずはそこへ向かおう」
 「···え? 何でなのじゃ?」


 俺はアウラの身体を巻いているボロ布の見ながら言う


 「お前の服を買うんだよ···そんなカッコじゃイヤだろ?」
 「ふ、服···い、いいのか?」
 「ははっ··何遠慮してんだよ。お前を送り届けるまでは面倒見てやるよ、安心しな」
 「···う、うむ。あ、ありが···とう··なのじゃ」


 アウラは恥ずかしそうに礼を言う






 さて···そろそろ行きますか‼






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 竹林を抜けて外へ出る···するとアウラが


 「わぁぁ······ここが···外の世界···」


 笑顔を浮かべて辺りを見回していた
 辺りは平坦な道が続く街道で、少し歩くと別れ道がある。
 東へ行くと〔花の町ガルファーノ〕
 西へ行くと〔メイプリアの森〕···その先に〔果樹園の町ヘレルマート〕だ
 まずはアウラの服を買って···少し町を見るのもいいかもな


 本来なら【流星黒天ミーティア・フィンスター】を出して飛ばして行くけど······


 「わあ〜···アハハっすごいのじゃ‼」


 まぁ···少し歩いてからでもいいかな




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 そのまま数時間歩き流石に疲れてきたのか、アウラは口数が少なくなってきた。そろそろいいかな···
 俺は【流星黒天ミーティア・フィンスター】を亜空間から取り出す···すると


 「な、なんじゃこの黒いのは···?」


 アウラは【流星黒天ミーティア・フィンスター】の周りをグルグル歩いて観察してる


 「こいつは【流星黒天ミーティア・フィンスター】···まぁ乗り物だな。よーしのったのった!」


 俺が【流星黒天ミーティア・フィンスター】に跨がると、アウラは躊躇いながら俺の後ろに跨がる


 「よーし、しっかり掴まってろよ‼」
 「えっ?···なっ···なぁああああああ⁉」


 俺は少しずつスピードを出し始めた
 アウラは初めての経験に最初はビビっていたが···




 「アハハハハッ‼ スゴイのじゃー‼ 気持ちいいー‼」


 いつの間にかノリノリだった···っていうか耳元で大声出すなよ


 やかましいアウラの声を聞きながら、そのまま走り続けた






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 「お、あれが〔花の町ガルファーノ〕か」
 「おお···綺麗な所なのじゃ···」


 町からはまだ離れているがここからでも町の彩りが分かった


 〔花の町ガルファーノ〕は平地ではなく、やや斜面に建造物が建っている町だ。さらに家はログハウス風の木造建築がほとんどで家の周りには花がたくさん咲きそれが町を彩っている


 町に到着して中に入る···
 道はレンガ畳でキレイに舗装されている。建物はログハウス、道路はレンガで周りは花。不思議とマッチしていた
 アウラは顔をすっぽり隠して周りを気にしながら歩いてる
 すれ違う冒険者や傭兵にダークエルフがいると明らかに怯えてる


 「大丈夫か?···」
 「う、うむ。問題ないのじゃ‼」


 明らかに強がってる···
 箱入り娘でエルフの国から出た事が無いから、ダークエルフやハーフエルフについての知識が偏ってるってクロが言ってたっけ···俺が出会ったダークエルフはみんないい人だったけどなぁ


 ま、これから慣れてもらうしかないか




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 俺とアウラは町の中程にある1件の洋服屋に来ていた
 店主や店員は人間だったので、アウラはホッとしていた
 店の中へ入ると店員が出てくる


 「いらっしゃいませー‼·····ん?」


 まぁそうだよな···俺はともかく全身ボロ布を巻いたヤツがいればそういう反応するよね···
 面倒になる前に俺は札束を見せて言う


 「コイツに合う服を見繕ってくれ、金はいくらかかってもいい」


 このセリフ、イエーナの時も言ったっけ···
 何か成金っぽくて俺には合わないな、金は50億ゴルドあるけど


 店員はアウラを奥へ連れて行った···アウラは不安そうに俺を見ていたが、まさか俺が女の子の着替えに同席する訳にはいかない
 ヒマ潰しに店内を見て回る···コレは
 俺はある物を買ってアウラを待った




 暫くするとアウラが出てきた······おおお‼


 「ううう···恥ずかしいのじゃ···」


 アウラは耳を抑えて出てきた


 服装はアウラのイメージか全体的に緑を基調としている。アウラの希望を取り入れた動き安い服装らしい、下半身はミニスカートだが下はハーフパンツを履いてブーツを履いてある。上半身はシャツの上にオシャレなジャケットを羽織っている。髪はそのまストレートで流して腰にはポーチを付けていた
 ···正直メチャクチャ似合ってる


 「いやー···スゴイ似合ってる」
 「ううううるさーい‼ こっちを見るな‼」


 無茶いうなよ···
 支払いを済ませて店をでる···やっぱりアウラは耳を抑えていた


 この大陸で耳が尖っているのはエルフ、ハーフエルフ、ダークエルフの三種族だけだ
 ダークエルフは赤黒い肌に耳はエルフと同じくらいの長さ
 ハーフエルフは見た目は人間、耳は尖っているがエルフよりも短い
 エルフは銀髪にエメラルドの瞳、長い耳
 と、このように特徴が分かれている。エルフはエルフの土地にしかいないはずなので、ここで正体がバレるのは俺としても面倒だ·····なので


 「アウラ」
 「な、なんじゃ···わふっ‼」


 俺はアウラの頭に耳まで覆える帽子を被せる
 さっきの店で買っておいた緑の帽子だ
 アウラは種族間の事を気にしていたから念の為買っておいたけど···正解だったな


 「ジュート···コレ···」
 「これでもう気にしなくて済むだろ?」


 アウラは顔を赤くしてそっぽ向く···笑顔を堪えるような声で俺に言う


 「あー···その、感謝する··のじゃ」
 「おう、気にすんな」


 俺はアウラの態度が可笑しくてつい笑う···
 アウラがそれに噛みつき俺の腕を叩いてくる


 誰かと旅するのって···面白いな




 そんな事を考えながら町を歩き出した






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 「宿を取ったら次は買い物に行こう」
 「うむ。そなたに任せる」


 俺とアウラは再び町を歩き出した
 クロはアウラに抱っこされている
 花の町と言うだけあって辺りから花の匂いが漂い、何とも言えない雰囲気を醸し出している


 町の中央にはやはり各商店、ギルド、宿屋が集中していた。そこで俺達は妙なものを見つけた


 「何だ···あれ?」 
 「う〜む···蕾···かのう?」


 町の中央には巨大な花の蕾?があった
 それを囲むように周りには花が咲いている
 まるで······花達のボスみたいな?


 とりあえず宿屋に入ろう


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 俺達が入った宿屋は〔花花亭〕と書かれた宿屋だった
 ロビーは広く、花の町らしくプランターに沢山の花が咲いていた。早速受付に行く


 「二人と一匹でお願いします」
 「はい。一匹···というのは?」
 「ネコなんですけど···」
 「それなら大丈夫ですよ」
 「よかった···」 
 「お部屋は1室で?」


 あ、そっか···アウラも女の子だしな


 「いえ、2室でお願いします」
 「はい畏まりました」


 受付を済ませて部屋へ行く


 「アウラはこっちな···俺はこっち」
 「うむ。気が利くではないか、褒めてつかわす」


 そりゃどーも···


 俺とアウラは小休止した後に再び町へ繰り出した





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