ホントウの勇者

さとう

バンベール樹海/姫君・契約



 〔狩猟の村ウッディペンダ〕を出発して3日···


 俺とクロはひたすら街道をバイクで進み先を目指した···そして、ついに〔バンベール樹海〕の入口に到達して驚いた


 〔バンベール樹海〕って言うからまたジャングルみたいな所かなと思っていたら、想像の遥か上だった···だって、これ






 竹林だよな·····?






 俺の目の前にあるのはどう見ても竹林、竹藪にしか見えなかった。道は獣道で砂利のような道になっていて、竹林を縫うように曲線の道が伸びている
 竹はどれも太く硬い、質感もまんま竹だ。
 まさかこの世界で竹を見られるなんて······ちょっと感動


 俺とクロはバイクから降りて歩き出した。砂利道だし、竹がいたる所に生えている···ここを走るのは危険だ




 さーて、行きますか···




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 暫く歩いてると何かの気配を感じる


 ────敵か


 前方に2体、後方に2体···〔グリーンゴブリン〕か


 手には細い竹槍を全員構えている
 飛び道具は···なさそうだ
 距離は前方5メートル、後方5メートル
 俺の出方を伺ってる···アホかこいつら


 わざわざ姿を見せないで奇襲でも何でもすればいいのに
 まぁ···さっさと終わらせるか


 俺は投擲ナイフを両手に2本づつ持ち、振り向きざまに後ろに投擲···狙い通り脳天にヒット
 さらに身体を反転させて投擲···脳天にヒット


 この間2秒···


 4匹はほぼ同時に崩れ落ちた




 「へへん、楽勝らくしょー‼」




 俺はモンスターとの戦いの余韻に浸っていた
 すると······
















 「いやぁぁぁっ‼」


















 女の子の叫び声が聞こえてきた






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 女の子の声が聞こえた場所へ急ぐ···
 そこにいたのは〔グリーンゴブリン〕が3体、それと全身ボロ布を纏った人だった···この人がさっきの声の主かな?
 ゴブリンの一体がボロ布を纏った人に覆いかぶさり乱暴しようとしている


 ···まぁいいや、とにかくさっさと始末するか‼


 俺は投擲ナイフを抜き3本同時に投げた···
 ナイフは綺麗にゴブリンの頭に吸い込まれ、その命を奪う
 ゴブリンは倒れて動かなくなった


 俺は怯えてる人···意外と小さいな···に話しかける


 「大丈夫?···怪我はない?」
 「ヒッ···に、人間···いやぁ···」


 明らかに怯えてる···人間ってことは他種族かな?
 尻もちをついたままゆっくりと後ずさりする···ん?


 後ずさりする事で足の布が捲れ上がり、白く細い足があらわになる···酷いな、擦り傷だらけだ。きっと何度も転んだんだな
 それに···見た感じ、子供みたいな足だ


 俺の視線に気づいて足を隠す···が今度は腕が見えてしまう
 やはり腕も傷だらけだ···


 俺はなるべく優しく言う


 「大丈夫。何もしないよ···怪我を見せてごらん?」


 そしてボロ布の少女?は強気に言う


 「う、ウソじゃ‼ 動けぬわらわに、ら、乱暴するつもりじゃな‼ 人間め···騙されんぞ‼」


 えー···わ、わらわって···ヤベッ笑いそうだ···ぷっ‼


 「き、貴様ぁ、何を笑っておる‼ わらわを侮辱···イタっ‼」


 少女が腕を抑えて呻く···やっぱり怪我してんじゃねぇか


 「いいから見せろ···ってええ⁉」
 「きゃあっ‼」


 少女の腕を捲り肌を露出させた···勢いがついて頭を覆っていた布も外れて素顔があらわになる


 歳は16歳くらいの髪はサラサラの銀髪ロングストレートに物凄く整った顔立ち、瞳の色は緑···いや、エメラルドみたいな輝きをし深い緑
 何より一番驚いたのは···耳


 少女の耳は···横長に伸びていた。まさかこれって




 「······エルフ族?」
 「······っ‼」


 少女の身体がビクッと強張った
 まぁとにかく······




 「そんな事より・・・・・・怪我をみせろよ・・・・・・・


 「············はぁ⁉」


 「大きな怪我はないな? よし、待ってろよ」


 「【白】の中級魔術、【聖母祝福オラトリオ・キュアー】」


 少女の身体を光が包む···よし、怪我は治ったな
 ついでに生活魔術で身体を綺麗にしてやった


 「えーっと···お前一人か? ツレはいないのか?」


 少女はポカンとしたまま俺を見る···
 多分コイツは一人だな、なんていうか雰囲気が高貴な感じだ。こんなカッコしてるのもきっと訳ありなんだろうな
 するとエルフ少女が俺を睨みつける


 「な、何故じゃ⁉」
 「は?」


 「何故···人間がわらわを助ける‼ わらわはエルフじゃぞ‼ 疎まれ、恐れられても情けをかける理由はないはずじゃ‼」


 「んな事言っても···俺はこの大陸の事情なんて知らないし、怪我した女の子がいたら普通に手当するだろ?」


 「そうか···おぬし、わらわの身体が目当てじゃな‼ おのれ人間め···欲望の化身とはよく言った物じゃな‼」


 何かコイツメンドくせぇな···もう放置して行っちゃおうかな


 「ハイハイ分かった分かった···じゃあここでサヨナラー」
 「ま、ま、まてー‼」


 んん?······ははーん···コイツまさか···


 「何? そろそろ俺は失礼させて貰うよ?」 


 「そ、そうじゃな、助けて貰った礼がまだじゃな‼ うむ。いくら人間でも助けて貰ったのは事実、誇り高きエルフ族として借りは返さねばならん‼」


 「結構です」


 「ななななんじゃと‼ わらわの礼がいらんというのか‼」


 「······じゃあ何くれんの?」


 「うむ‼ そなたには〔わらわを守り、わらわを家に送り届ける権利〕をやろう‼ どうじゃ、嬉しいだろう‼」


 「さよなら」


 「ああああ‼ ウソ、ウソなのじゃあ‼ お願い話を聞いてくださいぃぃぃっ‼」




 「最初からそう言えよ···」


 《何か面倒くさいワネ···》


 俺も同感だ······




 とりあえず俺とクロはエルフ少女の話を聞くことにした




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 「で…お前、迷子なのか?」
 「ぐううっ…わ、わらわは…その…家に帰りたいのじゃ」
 「んで…家はどこだ?」
 「…………」
 「言えないのか?…それとも、言いたくないのか?」
 「…………」
 「お前、エルフなんだろ? じゃあエルフ領まで送ればいいのか?」
 「…………そうじゃ」
 「ならちょうどいいや。送ってやるよ」
 「え…で、でも……」
 「その代わりと言っちゃ何だが…俺をエルフの首都〔大樹都市ウェル・ティエリ-〕に連れてってくれないか? あそこの頂上の〔聖樹メーディアス〕に用があるんだ」
 「な!?…な、何故人間がその名を知ってる!? あそこはエルフの聖地!! 人間は名前も知らないはずじゃ!!…貴様…一体何者じゃ!!」


 さて…どうすっかな
 ホントの事言うか?……いや、コイツの素性がわからない以上ダメ
 ごまかすか?……理由が難しいな
 うーん……よし




 「お前の事を教えてくれたら…俺も話すよ」


 「……おぬしは…何故…わらわが恐ろしくないのか?」


 「……なんで? どう見てもお前俺より弱いじゃん」


 「ぐぬぬぬぬっ………はぁぁぁ……おぬしは不思議な人間じゃ、エルフを恐れぬどころかわらわにこんなに突っかかるとは…こんな経験初めてじゃ」


 「そりゃどーも…で?」


 「わかった。おぬしを信じよう…改めてわらわの話を聞いてくれ。そして……わらわをエルフ領の首都〔大樹都市ウェル・ティエリ-〕まで送り届けて欲しい。報酬は必ず払う」


 「……わかった。契約成立だな…俺はジュート。よろしくな」


 俺は右手を差し出す…するとエルフ少女は俺の手を握り挨拶を返した














 「わらわは〔エルフ王 ラウド・フィールディング〕の第三子にして次期王女。アウローラ・フィールディングじゃ…よろしく頼む。親しい者達はわらわをアウラと呼ぶ…そなたにも許そう」






















 ……マジかよ、コイツ…ビルゴさんが言ってた行方不明のエルフの姫様!?
 なんでこんな所に…しかもこんなカッコで?


 「エルフのお姫様って訳か?…何でこんな所にこんなカッコで?」


 「おぬし本当にキモが座っておるの…まぁ頼もしいが」


 「理由は今から説明する……実はわらわは【精霊魔術】で飛ばされてきたのじゃ…」


 「飛ばされてきた?……何で?」


 「エルフの国は今、王位継承権を巡って身内での争いが絶えぬのじゃ。継承権を持つのは4人、兄と姉と妹…そしてわらわの4人じゃ」


 「王である父は、王位はわらわに譲ると宣言した。そしてそのことで兄と姉が反発し、それぞれの支持派を率いて争いを始めたのじゃ」


 「父上はわらわの身を案じ【精霊魔術】でこの地へ飛ばした…しかし妹は…投獄されてしまった。わらわは帰らねば!! 父を…妹を救わねば!! わらわは…次期王女なのじゃから…」


 アウラは…ポロポロ涙をこぼし始めた
 悔しくてたまらない、でも自分には何も出来ない…逃げるしか出来ない
 そんな自分が情けないのかもしれない
 そして……


























 「兄と姉は戦力として〔神の器〕を連れてきたのじゃ…エルフの精鋭部隊はそいつらにやられて全滅したのじゃ……」




























 俺の呼吸が止まりそうになった






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 「か…〔神の器〕だって!?…おいアウラ!! どんなヤツらだった!?」
 「きゃあっ!? お、落ち着くのじゃ!!…」
 「あ…す、スマン」


 俺はアウラに詰め寄りその両肩を抱き揺さぶっていた
 しまった…冷静になれ……落ち着け


 「ゴメン。それでアウラ、どんな奴だった?」


 「ふむ…たしか男と女で年齢は…20歳後半くらいだったかの? 兄は女を連れて、姉は男を連れてやって来たのじゃ。今は共同管理で国を仕切っているが、兄も姉も虎視眈々と王の座を狙っておるのじゃ」


 20歳…後半?
 どういうことだ?
 年齢をごまかす魔術でも使ってんのか?
 そんなことして何の意味があるんだ?
 クロ……どういうことだ?


 《……可能性とシテは…以前に召喚された〔神の器〕かもネ》


 どういうことだ?…召喚に失敗した〔神の器〕は死んだんじゃ無かったのか?


 《恐らく…漏れたんでショ。神も万能ジャないワ、召喚シテ管理されなかった〔神の器〕がいてもおかしくないワネ〕


 マジかよ…クソっ


 「どうしたのじゃ、黙り込んで?」
 「いや…何でも無い」


 こりゃますますエルフの国に行く必要があるな…
 その〔神の器〕の事を調べないとな


 「なぁアウラ…お前は国に戻ってどうするんだ? 兄と姉を倒して王女になるのか?」


 「……いや、まずは兄上と姉上と話をする。それでもダメならば…闘うしかないのじゃ!!」


 「相手は〔神の器〕だぜ? 勝ち目はあるのか?」


 「……ないのじゃ!! でも…逃げるわけには行かぬ!! わらわはエルフの国の次期王女じゃからな。どうせ死ぬならエルフの誇りを守って死ぬ!!」


 「…………そうか」


 コイツは本気だ…大事な物を守るために闘おうとしてる
 命をかけて……


 「だからジュート!! わらわをエルフの国まで送ってくれ、〔聖樹メーディアス〕までの道はわらわが必ず用意する…たのむ…」


 今にも泣きそうな声で嘆願する
 俺の答えは……とっくに決まっている


 「アウラ…お前は死なないよ」


 「え?……」


 「〔神の器〕が相手だろうとお前は必ず勝つ…なんて言っても俺が付いてるからな!!」


 「な、何を言っておる!! いくらおぬしが強くても〔神の器〕相手では…」


























 「『神器発動ジンギはつどう』!!」






 俺の姿が濡羽色の装束に変わり、顔半分に仮面、右手に『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』が装備される
 その姿を見てアウラは仰天していた




















 「な!?……お、おぬしも…〔神の器〕!?」


 「これが俺の秘密だ…約束する、お前をエルフの国に送り届けて一緒に闘う。お前は兄と姉を倒して、両親と妹を救う、俺は2人の〔神の器〕を相手にする……完璧な作戦だな!!」


 「……は、ははは…そ、そうじゃな!! 完璧じゃ!!」


 「よし!! 改めてよろしくな、アウラ」
 「うむ。よろしくなのじゃ、ジュート」






 こうして俺は新たな仲間のアウラを加えて、エルフの国の〔大樹都市ウェル・ティエリ-〕を目指すことになったのであった





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