ホントウの勇者

さとう

狩猟の村ウッディペンダ①/大陸情勢・ダークエルフ族



 【黄の大陸】と【緑の大陸】を繋ぐ関所を超えて、俺とクロは【流星黒天ミーティア・フィンスター】を飛ばしている…すると、風景が変わってきた


 まず街道は整備されているが、周りの木々が生い茂り、真昼なのに薄暗い
 街道から少しでも逸れるとすぐにそこは森の入り口だ。どれもコレも長い木ばかりで陰が出来てしまい、バイクを飛ばすのは少し肌寒く感じる


 《このママしばらく進むと村があるワネ。確か…〔ウッディペンダ〕だったかしらネ?》
 「よし。じゃあ今日はそこまで行って宿を取ろう」




 俺はそのままスピードを上げて街道を飛ばしていった




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 村は案の定森に囲まれていた。なんとなく予想した通りの村だった
 驚いたのは、村の入り口に大きな熊の毛皮が飾ってあった事だ…なんじゃこりゃ?


 村の中に入ると…今までに無い作りの家…見た感じログハウス風の家が並び、村の中央には各ギルド、商店、宿屋がならんでいる
 不思議に思ったのが家一軒一軒にモンスターの毛皮が飾ってあった事だ
 まるで大きさを誇示してるような…そんな雰囲気を感じた


 更に驚いたのはここにいる人たちだ
 ここにいる人たちはほぼ全員が浅黒い肌で筋骨隆々の大人ばかり、女の人もムキムキでまるでボディビル会場に迷い込んだかのような雰囲気の村だった
 全員がデカい弓に矢筒を装備して腰には剣を装備している…なんか、冒険者っぽくないな
 冒険者や傭兵なんかは普通の人たちなんだけどな…




 とりあえず宿屋に行こう…






 俺が入った宿屋は〔ミドリの森の宿〕という落ち着いた雰囲気の宿屋だ
 3階建ての大きなログハウス、中は魔道具のおかげで適温が保たれているし、インテリアなどは全て木で出来ている。木を削って作った彫刻、丸太を組んだテーブル、イスなど森の中にある家をイメージしてるのかもしれない……こういう雰囲気は初めてかもな


 「いらっしゃいませ!!〔ミドリの森の宿〕へようこそ!!」


 元気な声で挨拶してきたのは、15歳くらいの女の子…この子は普通の人間だな


 「お兄さんお泊まりですね? お一人様で?」
 「はい、あとネコは大丈夫ですか?」
 「ネコ?…ああ、大丈夫ですよ」
 「ありがとうございます…じゃあお願いします」


 料金を払い部屋に案内して貰う…部屋の中は12畳ほどでなかなか広い、ここにもベッドのほかにハンモックがつるしてあった。インテリアにも見えるし実際に寝ることも出来る


 「お兄さん、旅の方…ですよね? どちらからいらしたんですか?」
 「ああ、俺は【赤の大陸】から来たんだ、そこから【青・黄の大陸】と来て今日【緑の大陸】に入ったんだ」
 「ほえ~……ずいぶん長旅ですね~……」


 ちょうどいいや、この子にいろいろ聞いておこう


 「よかったらこの辺りの事や【緑の大陸】の事、簡単に教えてくれないかな?」
 「もちろんいいですよ!! いやぁ…緊張しますね。あ!! 私はミロと申します」
 「俺はジュート、よろしく」


 そしてミロはいろいろ教えてくれた……しかもかなり詳しく




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 ミロはまずこの辺り事を教えてくれた


 この村は〔狩猟の村ウッディペンダ〕と呼ばれていて、その名の通り狩猟を生業として生活をしている
 村の裏は広大な森林になっていて、そこに現れる〔グリーンベア〕・〔グリーンウルフ〕・〔グリーンラビット〕・〔グリーンガゼル〕などのモンスターを狩り、それらの肉や素材などを商人に卸して生計をたてて生活をしている
 この村の住人の9割が狩猟経験者で、家の前に飾ってあった毛皮は、その家で狩った最高のケモノらしい。大きければ大きいほど尊敬されるし、腕を見込まれて商人などからも狩猟の依頼が来るなど、この村では権力の象徴でもある
 ちなみに住人の残り1割は商店やギルドの職員ね


 そして、俺がここに来る前に見た浅黒い肌の筋骨隆々の大人は〔ダークエルフ族〕らしい
 この大陸では5つの種族がある。この大陸は6割が森林で残り4割が平地の土地…それぞれ2割ずつ種族ごとに大地が管理されている


 エルフ族
 ハーフエルフ族
 ダークエルフ族 
 人間族
 獣人族


 の5つだ…ちなみにココはダークエルフ族の管理する土地


 それぞれの種族には特徴がある


 エルフ族は他の種族と一切交流がない閉ざされた種族
 中でもハーフエルフ族とダークエルフ族はエルフでは無いと見下していて、昔から結構いざこざが絶えないらしい。そのせいか今では自分たちの土地からほとんど動かずに、大規模な結界を張って多種族の侵入を拒んでいる
 エルフは総じて魔力が高く、その魔力量は人魚族に匹敵するほど強い。子供でも中級魔術師ほどの強さを持ち、大人になると全員が上級魔術師以上の魔力を持つと言われている。さらにエルフ族にしか使えない【精霊魔術】という特殊な魔術を使うことが出来る…なるほど


 ハーフエルフ族はエルフが他の種族と交わって生まれた種族だ。
 他の種族とは、人間獣人ダークエルフ族ハーフエルフ族などで、まぁ混血児の事だ
 ハーフエルフ族はエルフ族ほどの魔力は持たないが、多種族との交わりを繰り返したことで、様々な能力を持つ事が多い、たとえば獣人の力を持った魔術師や、人間の器用さを兼ねたハーフエルフ族など、どちらかと言えば技術が栄えている種族だ


 ダークエルフ族はエルフ族の真逆で、魔力をほとんどもたない。初級魔術師程度の魔力しか持たないが、代わりに筋力や体力がものすごく発達している。子供でも大人になるにつれて特にトレーニングなどしなくても筋骨隆々の大人になるらしい…すごいな
 なのでその体を最大限に生かした狩猟で生計を立てている
 たしかにこの村はダークエルフ族がほとんどだった


 エルフ族以外の種族は交流が盛んで、基本的に町の出入りは自由。ただしエルフ族はその領地に進入する事は死と同義語、と言われるほど侵入者に容赦しないらしい……頭がカタい種族だ


 ちなみにミロの家は全員人間族。家族でこの村に引っ越してきたらしい
 父親が料理人で、この村で取れた肉料理に感動して、自分でも料理をしたくなってココに宿をオープンしたらしい。ミロもここの自然は気に入っているので引っ越しできてうれしかったそうだ


 以上が【緑の大陸グレングリーン】のおおまかな構成です…つかれた




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 「……ってな感じですかね」
 「……いやぁ……こんなに説明してもらえるなんて、ありがとう」


 いやマジでわかりやすかった…精々この村の事くらいかと思っていたけど、まさかこんなに詳しく教えてもらえるとは思っていなかった


 「おお、そろそろ夕食の時間ですね。ジュートさんは1階の食堂で、ネコちゃんは申し訳ないけどお部屋で食事をお願いします」
 「わかった。すぐいくよ」


 俺はさっそく1階へ降りる…すると、肉の焼けるいい匂いがしてきた
 受付の隣が定食屋のような席になっていて、どうやら夜はここが居酒屋のようになるらしい…今の時点でも客が5~6人酒を飲んでいた
 俺は1人なのでカウンターに座る。すると


 「はーいおまたせです、こちら〔山の獣定食〕でーす!!」


 来た来た!! ネーミングはともかくウマそうだ!!
 まずメインは肉を挟んだパン、この肉は何だ?…ウサギっぽいな。お次に野菜のサラダに、豆がたくさん入ったスープ、さらにパンの肉とは別にステーキが一枚ドンと置かれてる
 俺も食べ盛りの17歳、こんなに肉があって正直うれしい……よし!!


 「いただきます!!」
 「はい、召し上がれ。あ、ネコちゃんにはこれからご飯持って行きますね」
 「うん、お願い」


 パンにかじり付き、ステーキを食べる。胃が重くなってきたらサラダでリフレッシュ。肉を食べながらスープを飲みまたパンをかじる……ふう、お腹いっぱい


 食事を終えて部屋に戻る…クロに【緑】の【九創世獣ナインス・ビスト】の場所を聞かないとな


 部屋に戻るとクロは……何故かハンモックの上にいた
 クロが動くたびにゆらゆら揺れてる……気持ちいいのかな? まあいいや
 それより聞きたいことがある


 「クロ、【緑】の【九創世獣ナインス・ビスト】はどこにいるんだ?」


 《クライブグリューンは…チョット厄介ね、あの子がいるのはエルフ領なのヨ…》
 「マジかよ…さっきの話だとエルフ領に入る種族は容赦しないんだろ?」


 《そうネ…しかもあの子がいるのはエルフ領の首都、〔大樹都市ウェル・ティエリ-〕の頂上の〔聖樹メーディアス〕ヨ…エルフ王の許可がナイと入る事すら出来ないワネ……」


 何でそんな所にいるんだよ……会いに行く身にもなれよ
 マフィの転送で行っちまうか?…でも無断で入るのはなぁ


 「どうする?……流石に無断で入るのは」


 《……そうネ、とりあえずエルフ領の入り口まで行きまショ。エルフ領はここから東の〔バンベール樹海〕を超えて〔メイプリアの森〕を抜ける、その先にある〔果樹園の町ヘレルマート〕を超えた先に入り口があるワネ》


 「…………遠いな、まぁそんな気はしてたけど」


 すると隣にアグニ・ルーチェ・モルが現れた


 《オイ、ジュート…〔果樹園の町ヘレルマート〕ではウメぇ果実酒を作ってるハズだぜ!! たまには甘い果物の酒を味わいてえぜ》
 《ねえねえ、美味しい果物いっぱい買ってね!! ああ楽しみ!!》
 《もぐもぐ!!》






 モル以外はわかった…マジでモルと意思疎通できる方法探そう……




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 翌朝…朝食を食べに下に降りるとなんだか騒がしかった…なんだろ?
 ちなみにクロはまだ寝てる…


 「薬を!!……」
 「手当を……早く!!」
 「チクショウ…なんで…!!」
 「まさかSレートモンスターが…」


 冒険者や狩人…ハンターが騒いでいる…コレはひどい
 宿屋には怪我人が溢れていた…10人くらいか?…何があった?


 「あ!! ジュートさん!!」
 「ミロ?……何があったんだ?」
 「……実は」


 ミロの話を聞くと、どうやら森にSレートモンスターが出たみたいだ
 早朝に狩りに出たハンター約10名が、Sレートモンスターの〔グリーンワイルドベア〕に襲われたらしい。このモンスターは夜行性で早朝には現れないと思っていたらしく、完全に油断…連携も取れずに襲われ命からがら帰ってきたらしい


 最悪なのは、このハンター約10名がこの村で最強のメンバーらしく、このまま村が襲われたらひとたまりも無いらしい。各ギルドの上級魔術師は現在1人だけで他は留守。他のハンターは精々Bレートのモンスターしか相手にしたことがない。


 こりゃ俺が出るしか無いか…その前に


 「ミロ、怪我人は?」
 「え?……1階の大部屋が臨時の救護室で、そこで手当してるけど」
 「じゃあ行くか」
 「え?…あ、うん」


 ミロは状況がよくわかっていない…とにかく行こう
 部屋に到着しドアを開ける…するとそこはひどい血の臭いがした
 男性が6人女性が4人のハンターで、全員が重傷みたいだ。体は包帯だらけでそこからすでに血がにじんでいる。四肢を失った人もいるらしくその部位が体の側に置いたあった。
 中では冒険者が何人もせわしなく動いていて、口元に薬を持って行き飲ませたり、声を掛けて元気づけたりしていた。その光景にミロは口を押さえていた
 ハンターは全員ダークエルフ族か……


 俺の視線は何より……怪我をしたハンターの側で泣いている子供に目がいく
 子供もダークエルフ族で、親の敵を討とうと弓を持ち出て行こうとしてる男の子が冒険者に押さえられたり、親の手を握って泣き続ける女の子などがいた……


 こんなの見せられて黙ってられるかよ……


 俺は一番近くにいる親の両手を握る女の子の側に行き、その頭を撫でて言う


 「大丈夫…安心して、パパは良くなるぞ」
 「え?……」


 女の子の目は真っ赤で俺の言った意味がわかってないみたいだ
 とにかく……


 「【白】の上級魔術【無垢なる光セイファート・ライフ】!!」


 柔らかい光が男性を包み込む…四肢もくっつき傷が全快した
 その光景をその場にいた全員が驚愕の表情で見ている
 俺はみんなを安心させるために大声で言った




 「怪我人は俺が治す!! 俺は【白】の上級魔術師だ!!」




 その声に全員が歓喜の声を上げた




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 全員の怪我を治して俺はミロに言う


 「怪我は治したけど、失った血は戻らない。食欲があるなら肉やスープを食べさせてあげて」


 俺の言葉にミロは姿勢を正して言う


 「は、はい。わかりました魔術師様!!」


 いや、ジュートでいいんだけど……まぁ後にしよう
 俺は冒険者やハンターから感謝されまくった
 子供達も俺にお礼を言ってきた……よかったな


 そして俺がSランク冒険者と知って、さらに全員驚いていた
 とにかく俺はこのままモンスター討伐に出ることにした


 場所はこの〔狩猟の村ウッディペンダ〕の裏の森


 敵はSレートモンスター〔グリーンワイルドベア〕


 朝からヘビーな戦いだ……まぁ、やるか!!






 俺は一人で裏の森へと掛けだしていった……



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