ホントウの勇者

さとう

閑話 式場夜刀・【刀神シェイヴァレイザー】

 
 式場しきば夜刀やと  九神高校2年組 17歳


 彼女は今、【黒の大陸トレマブラック】にある〔ネレイスの黒森〕を一人で歩いていた
 その周囲にはモンスターの山…全てAレート、Sレートそしてはぐれ【神獣】と呼ばれるSSレートの怪物が文字通り山になっていた


 彼女は、つまらなそうに息を吐いた


「全然たりないな…」


 そして彼女は漆黒の剣…刀を鞘に収める
 返り血すら拭わずに森の更に奥へ歩いて行く


「もっと強いのに会いたいな…」


 彼女は呟く


「ジュート…逢いたいな」


 恋する乙女のように…




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 式場しきば夜刀やとはかなり浮いている人間だった。


 それもそのはず…彼女は、とても美しかった。


 腰まであるロングストレートは濡羽色に煌めき、その顔立ちは誰もが近寄りがたいくらい美しかった。彼女の家は古い剣術道場で、彼女も祖父から剣道では無く「剣術」の手ほどきを受けていた


 しかし彼女は普通の友達がほしかった。彼女は自分が美しいなんて思ったことはないし、自分が話しかければ男女ともに恐縮する…みんなが自分に何を求めているのか本当にわからなかった


 心を許せる友達が出来ないまま彼女は高校生になり、更に孤独になっていく。周りは自分を綺麗な子、近寄りがたい子、などと言って近づいてこないし男子は遠巻きで噂をしてる。かわいいだの、付き合いたいだの。告白もされたが彼女は断った。周りは彼女には不釣り合いなどといろいろ噂をしていたが、真実はちがう




 恥ずかしかったからである






 彼女は恋愛経験が無い。なのでいきなり知らない男子に告白されて恥ずかしくて逃げてしまい、周りが変な勘違いをしたせいで彼女は更に孤独になった


 彼女はもう諦めていた


 彼女の引っ込み思案な性格のせいでもあるが、自分には友達が出来ないまま高校生活は終わる。そう考えていた




 無月銃斗に出会うまでは─────────




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 彼女が銃斗と出会ったのは、高校入学から3ヶ月後の放課後だった


 教室の机の中に携帯電話を忘れてしまい取りに戻った時のことである。どうせ家族の番号しか入っていないから明日でいいかなと考えていたが、なんとなく教室に取りに戻ったのだ。そして出会う────


 誰もいない教室で無月銃斗は自分の席で本を読んでいた 


 彼女が教室のドアを開ける音で彼女の存在に気づき、声を掛けてきたのである




「あ、あれ? もう放課後?」
「え、あ…うん、そうだよ」
「いつのまに…やっば、帰んないと」
「…………」
「式場さんは? どうしたの?忘れ物?」






 彼が自分の名前を知っている事に少し驚いた。まぁ自分は悪い意味で有名だからなと彼女は思い、自分の席にある携帯電話をつかむ




「これ…取りに来たの」
「ああ、ケータイか」
「うん…じゃあ帰るね」




 ここで分かれて家路につく、そう思っていた




「じゃあさ、一緒に帰らない?」




 こんなことを言われるまでは




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 彼女は出会って数分の名前も知らないクラスメイトと一緒に帰っていた


 隣では彼が、今日あった事、授業のこと…式場しきば夜刀やとの事などをいろいろ聞いてくるが、彼女はろくな返事を返せなかった


 彼女はどうしても気になった。なぜ一緒に帰ろうなどと言い出したのか。下心があったのか、それとも…


 考えるとキリが無く、彼の話に適当に相づちを打ちながら歩いていると、自宅近くまで来てしまった。彼もどうやらこの辺りで別の道を行くらしい


「じゃあ俺こっちだから!! また明日ね!!」


 そう言って彼は去って行く


「あ…あの、まって!!」


 彼女は彼を呼び止めていた




「……どうしたの?」
「あ、あの…どうして一緒に帰ろうって?」




 どうしても聞きたかった事だ。何故自分に?…まるで、友達のように




「う~ん…こんな事言うと怒るかもしれないけど」
「……なに?」














「式場さん、いつも一人で淋しそうだったから。俺なんかじゃ話し相手にならないかもだけど、同じクラスの友達として、その…ほっとけなかったんだ」












 友達…彼女がほしかったもの


 自分のセリフが恥ずかしかったのか、彼は赤くなっている。そんな彼がおかしくて、面白くて…






 彼女は初めて心から微笑んだ




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 この日から彼女は、無月銃斗に挨拶するようになった。朝の挨拶、帰りの挨拶。ふとしたきっかけで会話したり、彼からお菓子をもらったり、お返しにお菓子をあげたり…彼女の高校生活は、無月銃斗のおかげで楽しくなった


 休みの日に買い物に出かけ、偶然彼に出会った事があった。彼は難しそうな本を購入して、これから自宅で読書する。よければ一緒にどうだ?と言って彼女を誘ってきた。彼女は迷わず誘いに乗り、初めて異性の同級生の自宅にお呼ばれした


 彼の自宅は普通の一軒家で、家には誰もいなくて少し緊張したが、彼の家の書斎に案内されてその蔵書の数に驚いた。そして目を輝かせて本の説明をする彼を好ましく思い…愛しく感じた




「あの、無月くん」
「なに? あ、つまんなかった?…ゴメン式場さん」
「ううん違うの。その…名前」
「名前?」
「えと…その…夜刀で…いいよ」




 彼女は顔を赤くして、人生最大の勇気を振り絞って言った




「…ははっ、わかったよ!!夜刀。俺もジュートでいいよ!!」
「うん!…じゅ…じゅーと…くん」「いや呼び捨てで」
「ええ!! じゅじゅ…じゅー…と」
「…………」
「う~…ジュート!!」
「よし!! オッケー!!」






 初恋…彼女の心は温かかった────────




























 異世界という地獄に召喚されてしまうまでは────────




























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 彼女は森をひたすら歩く────────




 無月銃斗に逢うために─────────




 愛する彼を殺すために─────────




 胸の痛みに耐えながら─────────








【刀神シェイヴァレイザー】の〔神の器〕








英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列第1位・式場しきば夜刀やと






 彼女は今日も・・切り続ける─────────


 

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コメント

  • ノベルバユーザー322523

    一位きたー

    1
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