ホントウの勇者

さとう

王都イエローマルクト④/白の少女・王の娘



 「…………」
 「う…んん」
 「う~ん…じゅーとぉ~…」


 俺は今大きなベッドの上で体を半分起こしていた…全裸で
 左右には全裸の少女…高名氷寒たかなひょうか鳴戸括利めいとくくり
 つい数時間前まで彼女達と一つになっていた…


 「……ふう…まぶしいぜ」


 意味のわからない独り言を呟きながらベッドを降りる…そして部屋の窓を開ける、するとそこには絶景が広がっていた
 確かここってマフィの作った空間だよな?
 なんでこんな景色が?……まあいいか


 俺は……卒業した
 彼女達を助ける、という大義名分があったがそんなことは忘れて、ただひたすら二人を求めた。初めてだったが二人も喜んでくれたし、時間を忘れて楽しんでしまった
 あれから何時間…いや、何日経ったんだ?
 多分2・3日経ってるはず…我ながら凄い精力だ
 二人のカラダは素晴らしかった…柔らかく、とろけるような甘い声、締め付けるような愛おしさ…ヤバい、思い出したらまた……


 「おはよ~ いい朝だねぇ~」
 「……お、おはよう」
 「うおおおおおお!!」


 ヤバい、いきなり裸で二人が抱きついてきた!!…柔らかいモノが当たり一気に体が熱を取り戻す


 「あらら~元気だねぇ…」
 「あ、あんなにしたのに…!?」


 二人は俺の下半身を見て驚いてる…そして俺の腕を引っ張りベッドに誘導してきた


 「ほ~ら…楽にしてあげる」
 「まだ…出来るから…うう、恥ずかしい…」






 結局…起きたのは昼が過ぎた頃だった




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 あの後結局二人を抱いた…チクショウ、俺ってヤツは…
 風呂に入り着替えをしてマフィの部屋に戻ってきた
 部屋には【九創世獣ナインス・ビスト】が全員とマフィがいる


 クロはソファの上で香箱座りでのんびり
 アグニは部屋の隅で酒盛り
 ルーチェは宙に浮きながらお菓子をモグモグ食べ
 モルは部屋をごろごろ転がっていた
 マフィは半透明のディスプレイをいじり何かをしていた


 「いやぁ…お楽しみだったな。まさか3日もヤってるとは思わなかった。映像を録画したから後で上映会を行おう」


 「『神器発動ジンギはつどう』!!」


 「じょ、冗談だ!! 落ち着け!!」


 俺の本気の怒りをよそに、氷寒と括利はクロ達の側に行く


 「わ~…カワイイ、こんにちは人魚さん。あたし鳴戸括利めいとくくり、お名前は?」
 《ルーチェだよ!! よろしくね、くくり!!》


 「……ネコ?……かわいい」
 《……なにかシラ?》
 「!?…しゃ、喋った!?」


 「コッチのモグラ?さんもかわいい~…おいでおいで」
 《もぐもぐ?》
 「……つかまえた」
 《もぐ?》
 「や~んかわいい~!!」


 《オレんトコには来ねぇのかよ…別にいいけど》
 「……トカゲ?」
 《違う!! 俺は龍だ!! ドラゴン!!》
 「え~……」
 《何だその反応はぁ!! ぶっ飛ばすぞ!!」


 楽しそうで何よりだ…それよりもマフィに聞きたいことがある


 「なぁマフィ…」
 「安心しろ、お前と二人の間にパスは結ばれている」
 「そっかぁ…よかった。あとさ…女の子の場合はさ…だ、抱けばいいけど、男の場合はどうすればいいんだ?」
 「そんなの決まってるだろう?……覚悟は出来てるんだよな?」
 「…………」
 「そうなりたく無ければさっさと『左腕』を目覚めさせるんだな」


 マジで早く目覚めさせよう…大至急!! 起きろ俺の『左腕』!!
 すると氷寒がおずおずとマフィに聞いていた


 「……あの、聞いてもいいですか?」
 「なんだ?」


 「私達はもう…戦えないんですか?」


 「そうだな…魔術は問題無く使えるが【神器ジンギ】は使うな。何がきっかけでキミ達の神が暴れるかわからないからな。大方ジュートの旅に同行したいなんて言うつもりだったんだろう?」
 「……はい」
 「やっぱりバレちゃってたか~」
 「やめておけ…足手まといだ。キミ達には治療の報酬としてココで私の助手をして貰おう。異世界の建造物や道具、知識などを私に教えて欲しい」


 気持ちはうれしいけど…マフィの所なら安全だな
 氷寒と括利は残念そうに肩をすくめる…俺はその肩に手を置いた


 「マフィの所にいれば安全だ。俺はみんなを助けるから二人はここで待っててくれ」
 「……うん、わかった」
 「気をつけてね~…」


 俺は二人とキスをする…やっぱまだ慣れないな
 すると氷寒が思い出したかのように言う


 「あの…マフィ…さん、私と括利の居場所はバレないんですか?」
 「……何故だ?」
 「今更だけど…書華ちゃんがあたし達によく通信を送ってきてたから…ここにいることバレたらヤバいかも~」


 マフィは特に気にすることも無く言う


 「安心しろ。私の【戯れの世界よパラケルスス・マキナ我が手の中に・エルガステリオン】は絶対不可侵の領域だ。たとえ【魔神】だろうと侵入はできない」


 薄い胸を張って自信満々に言う…まぁここまで言うなら大丈夫だろう


 さて…行く前にコレはどうしても聞かないといけない
 俺自身に関わる重大なことだ


 「なぁマフィ…聞きそびれたけど、俺の中の【銃神ヴォルフガング】は俺を乗っ取ろうとしないのか?」


 「……大丈夫だ。絶対に」


 「?…何で言い切れるんだ?」


 マフィの言葉にクロ達が沈む気配が感じられた…どうしたんだ?






 「【銃神ヴォルフガング】の意思はすでに消失してる。あるのは【神器ジンギ】だけだ。意思はないがその強大な力そのものが魂となってお前に宿っている…だから大丈夫だ」




 「そっか…わかった」




 なるほど…じゃあなんで俺は〔神の器〕になれたんだ?
 神に意思がないなら人間に憑依する、なんてこと出来ないんじゃ?
 それに…俺に【神器ジンギ】をくれた『俺』は誰だったんだ? 俺はアイツが【銃神ヴォルフガング】だと思ってたんだけど…
 まぁ考えても仕方ないか…


 そろそろ【緑の大陸グレングリーン】に行かないと…その前に王都に行ってブランとシトリンに挨拶しないとな


 「クロ、一度〔王都イエローマルクト〕に戻ろう。それから【緑の大陸グレングリーン】に入ろう」
 《わかったワ…じゃあ行きまショ》


 クロは俺の側に来てジャンプして肩に乗る
 クロはそのまま俺の顔に体をこすりつけてきた…カワイイやつめ


 「じゃあ行ってくる…留守番よろしくな」
 「気を付けてね~ あとお土産よろしく~」


 括利はマイペースだ、そんなところもカワイイ…すると氷寒の様子がおかしいことに気付いた


 「氷寒?…どうした?」
 「ジュート君…あの」
 「ん?」






 「式場さんには気を付けて…」






 「……何で?」
 「……この【黄の大陸】に入る前に一度会ったんだけど…なんて言うか…凄く恐かった。静寂さんや弓島さんも…羽蔵さんも怯えてた…私達とは何か違う、そんな気がしたの」
 「…………」
 「ご、ごめんなさい…上手く言えなくて…」
 「……大丈夫だよ」
 「え…?」










 




 「夜刀やとはそんな子じゃない。ただの恥ずかしがり屋だよ」


















 「え?……う、うん」


 「じゃあ…行ってきます!!」




 バンドを起動させて、俺は王都へ転移した






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 俺は〔王都イエローマルクト〕近くに転移された
 王都は目の前にある…歩いても10分掛からないだろう
 そして…思い出した


 式場しきば夜刀やと───────


 多分クラスで一番の美少女
 その雰囲気と美貌で男女ともに近づきがたい存在と言われていた
 でも……俺は知ってる
 彼女は・・・夜刀やとは、ただの恥ずかしがり屋だ
 雰囲気でそれが見えないだけ
 俺はよく夜刀やとと喋る
 学校も一緒に帰る事もあるし、家に上がったことも、来たこともある
 だから夜刀やとは助けたい…


 たとえ…闘うことになっても───────




 そんなことを考えながら、王都までゆっくり歩き出した




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 王都は以前と変わらずに騒がしい
 俺とクロは露店で買い食いしながら王宮を目指した
 俺の手には露店で買ったクッキーがある。ブランとシトリンのお土産だ


 王宮入り口に到着して門番さんにブランとシトリンに会いたいと言う
 すると門番さんは俺を確認するかのように上下を見回す…そして


 「ジュート様ですね。ご案内いたします」


 そのままあっさり通してくれた…何でだろう? 全身黒い少年を通せ、とでも言われたのかな?
 まあとにかく案内してくれるならいいや




 今回はいきなり資料室…ブランの勉強部屋へ案内された
 部屋をノックすると…


 「はーい!! どうぞー!!」


 カワイイ声で返事が返ってくる…ブランの声だ
 俺はドアを開けて中に入る…そこには


 「あー!! お兄さん!!」
 「あら…こんにちは」


 ブランとシトリンがいた
 ブランはイスに座り机の上で本を開きメモを取っている、そしてシトリンはその脇に立って本を構えている。どうやら今はブランの授業中らしい
 するとブランが立ち上がり俺に抱きついてきた…よしよし


 「お兄さん…」
 「よしよし…がんばってるな」
 「うん!!」


 俺はシトリンに顔を向けて、手に持ったクッキーを見せながら言う


 「お茶にしようぜ」
 「……そうね、ブランも疲れたでしょう?」
 「うん!! お腹空いた、おやつにしよっ!!」


 そうしてお茶会が始まったのである…




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 俺たちは資料室のベランダに移動した
 ここのベランダはとても広く、テーブルやイスも備え付けてあるためお茶を飲むには最適だ
 俺が買ってきたクッキーをお茶請けにしてシトリンが紅茶を入れてくれた。俺はミルクを入れて、シトリンはストレート、ブランは砂糖とミルクに輪切りレモンまで入れていた


 お茶を飲みながら他愛ない話で盛り上がる…
 お茶が無くなりクッキーも無くなったタイミングで別れを切り出した


 「今日は…お別れを言いに来たんだ」
 「……うん、なんとなくわかってた」
 「そうね…寂しくなるわね」
 「俺は【緑の大陸グレングリーン】に向かう。そしてその後に【白の大陸ピュアブライト】に渡ってそのまま他の大陸を制覇するつもりだ…しばらく会えないな…」
 「うん…さみしいけど、大丈夫!!」


 そう言うとブランはウサギのぬいぐるみを取り出す


 「この子が一緒だから、がんばれるよ!!」
 「ブラン……」
 「お兄さん、ちょっと待ってて!!」


 そう言ってブランは飛び出していった…なんだ?
 するとシトリンがしゃべり出した


 「ジュート…今のうちに言っておくわ」
 「……何だよ? 改まって…」
 「ブランの身元がわかった……かもしれない」
 「……かもしれない?」
 「まだ確証は無いわ……でも、可能性は限りなく高い」
 「どこなんだ?…近いのか?」
 「いえ…場所は【白の大陸ピュアブライト】よ。あなたがそこを目指しているなら一応、頭の中に入れておいて…」
 「……ヤバいのか?」










 「ええ…ブランは【白の大陸】の〔王都ブライトネーション〕の王族の血縁者である可能性が高いわ」










 【白の大陸ピュアブライト】は【青の大陸ネレイスブルー】と同じく魔術が栄えている大陸だ
 そこにもたしか魔術学園があったよな…


 「時期を見てブランを【白の大陸ピュアブライト】に連れて行くわ。もし会えるなら…いえ、あなたにはあなたの冒険があるものね、もしあなたが【白の大陸】に行った時に会えたなら力になってくれない?」


 答えなんてとっくに出ている。流石に俺の目的をないがしろにしてブランだけの為に動くことはできない…でも、また会える気がする。そのときは力になる


 「当たり前だろ…ブランは俺の大事な妹だからな!!」
 「……ふふ、ありがとう。そう言うと思ったわ」


 そんな話をしているとブランが戻ってきた


 「ただいまー!!…お兄さん? 何かあったの?」
 「いや…ブランはカワイイ妹だってシトリンと喋ってたんだ」
 「ホント!?…妹…えへへ…うれしい!!」


 ブランは本当にうれしそうだ。【白の大陸ピュアブライト】の王族の血縁者……もしそれが本当だったら、なんで【黄の大陸】の奴隷に?……なんだか知らない闇がありそうだな


 「お兄さん…コレ、受け取って」


 そう言ってブランが差し出してきたのは…ぬいぐるみ
 ちょっと歪なクロネコのぬいぐるみだ…これってもしかして…


 「シトリンお姉ちゃんに教わってわたしが作ったの…お兄さんの旅のお守りにって」
 「ブラン…」
 「お兄さん…気を付けてね。危ないことしないでね…わわっ」


 俺は思わずブランを抱きしめていた
 ブランの心が…優しさが…とても温かかった


 「ありがとう、ブラン…大事にする」
 「お兄さん…うん、エルルとクルルに会ったらよろしくね」
 「ああ、ちゃんとブランの事も伝えておくからな」
 「うん!!」


 俺はブランを抱きしめながら頭を撫でる…


 シトリンは優しい瞳で俺たちを見守っていた




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 ブランとシトリンに別れを告げて、俺とクロは【流星黒天ミーティア・フィンスター】で街道を走っていた


 「次は【緑の大陸グレングリーン】か…どんな所だろうな」


 《【緑の大陸】は別名森の大陸と呼ばれてるワネ。大陸面積の6割が木や森に囲まれているワ、それと森には〔エルフ族〕・〔ハーフエルフ族〕・〔ダークエルフ族〕が住んでいるワネ》




 エルフかぁ……またトラブルが起きそうな予感がする……












 その予感は的中するのだが……俺はこの時点ではわからなかった





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コメント

  • キリン

    これって銃斗事態が元神って事か?

    0
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