ホントウの勇者

さとう

BOSS BATTEL/【槍神】・【氷神】・【糸神】・【鎚神】VS【銃神ヴォルフガング】/決意の心・【土竜神化】



 時は少し遡り、只野槌男たちが〔ファーナ砂漠〕入った頃


 「だりーなぁ……」
 「だね……」


 只野槌男と皆木颯賀はだれていた
 しかしその体は汗一つかいていない


 「ありがとね~、氷寒ちゃん」
 「……別に」




 高名氷寒の手には一本の歪な片手剣ショートソードが握られていた


 刀身はは氷を彫刻したような長さ80センチほどの透き通るような水色の刃
 鍔の部分は雪の結晶のようなデザイン
 グリップは持ちやすいように握りが付いている
 柄頭は短い鎖が垂れ下がり先端に青い宝玉が付いていた


 この歪な片手剣ショートソードを握る彼女が周囲の温度を調節して熱を遮断し、砂を微妙に凍らせてみんなが歩き疲れないようにしている
 高名氷寒はこの【神器ジンギ】の力によって【氷】を操る


 【氷神リディニーク】の神器・【零氷姫の凍剣スティーリア・イスベルグ


 勿論、本来の力は戦闘に使う
 これからSSレートのモンスターと闘うのにみんなが疲れてしまっては元も子もない、彼女なりの配慮だった


 「オウ、雑魚モンスターはお前らに任せるぜ。〔イエロードラゴン〕はオレが始末する」


 只野槌男はそう宣言した
 それに対して皆木颯賀と鳴戸括利は


 「わかったよ……」
 「え~、ズルい~」


 当たり前のように、不満を露わにした


 「何だよ、文句あんのか? 相手になるぜ、かかってこいよ」


 只野槌男はニヤニヤ笑いそんなことを言う
 自分が負けるはずが無い、そう思っている顔だった


 「そ、そんなことないよ、雑魚は任せてよ」
 「……ふんっ」
 「分かればいーんだよ、分かれば。さっさと行くぞ」


 そう言って先行して歩く
 そんな彼の後ろをつまらなそうに皆木颯賀と鳴戸括利は歩く
 その光景を見て高名氷寒は思った


 こんな状態で、無月銃斗に勝てるわけが無い
 先日、鳴戸括利と話した言葉が頭の中に響く




 無月を殺す気は無い・・・・・・・・・んじゃないかなぁ・・・・・・・・・
 無月を鍛えて強く・・・・・・・してるみたいな・・・・・・・・・




 自分たちは本当にこのままでいいのだろうか
 この憎しみはぶつけるべき物なのだろうか
 自分は本当に正しいのだろうか


 無月銃斗は、悪なのだろうか?
 高名氷寒はこの時気づいていなかった




 彼女の人間の心が、神の力を押さえ始めていたことに




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 「おい、来たぜ」
 「わかった、僕が行くよ」
 「よろしく~」


 〔イエロードラゴン〕の生息地の手前でモンスターが現れた
 〔イエローハイコボルト〕と呼ばれるAレートのモンスターが、約40匹


 このモンスターは〔イエローコボルト〕の上位種で群れで現れて狩りをする
 石の斧や木を削って作った弓矢、殺した冒険者から奪った鎧や剣などで武装している厄介なモンスターだ


 上級魔術1発で一掃できるが、皆木颯賀はそうしなかった
 ここまでの鬱憤を晴らすことにしようと直接手を下す事に決めたのだ


 「『神器発動ジンギはつどう』」


 次の瞬間、皆木颯賀の周りに風が巻き起こる
 そして、彼の左腕に刻印された〔神紋〕が輝き空中に紋章が展開される
 そして、1本の武器が現れた


 形状はヤリ、強いて言うなら突撃槍ランス


 その最大の特徴は、棒の両端に巨大な装飾の入った刃が装備されていた
 棒の部分の長さは2メートル、刃の大きさは1.5メートル、全長5メートルの巨大な武器だった
 刃の形状は三角形で、切る、突く、薙ぐに特化している
 武器の属性は【緑】で、空気の流れを操作することができる能力だ


 皆木颯賀の属性は【緑】・【黄】・【時】
 魔術は苦手で体術に力を注いだ典型的なファイター


 しかし彼には彼だけの力、【固有属性エンチャントスキル】を持っている


 【緑】・風の力と神器の力を合わせて高速移動
 【黄】・あらゆる地面の干渉を受けず、砂地だろうが岩場だろうが彼にとっては普通の地面と何ら変わらない


 それら2属性を融合し、突撃槍ランスで闘う魔槍術・『風地連槍ブリーズ・ドゥメール
 これが彼の力の全て




 【槍神ラスタランケア】の神器・【烈風双烈凪突槍ゼヴィント・ランゼランサー】の力だった




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 たかが40匹程度の雑魚、彼の敵では無い


 彼はランスを振り回し風を起こしながら威嚇する
 【獅子神レオンハルト】の訓練を得て彼の槍術は熟練レベルに達している
 モンスターは逃げることも出来ずに後ずさった


 「逃がさないよ」


 その一言で戦闘が始まる
 彼は一瞬でモンスターの側に移動してランスを横薙ぎする
 それだけでランスの刃と風の刃が〔イエローハイコボルト〕の首を10匹ほど両断した


 追撃も出来たが彼は敢えて待つ
 そして体勢を整えた〔イエローハイコボルト〕が5匹ほど矢を放つ
 しかしその矢はあっさりと風にたたき落とされる
 そしてランスを薙ぐと無数の風の刃になり、弓矢のコボルト5匹と、それ以外に弓を構えていたコボルト10匹がバラバラに切り裂かれた


 残りのコボルトは15匹
 全部が近接武器しか持っていない
 合図などは無く、やけくそなのかもしれない
 モンスターは一斉に飛びかかってきた


 「甘いね」


 そう答えランスを両手で握り力を加える
 すると、槍は中央で分離し2本の剣……双剣に姿を変えた


 向かって来るコボルトを1匹ずつ確実に始末する
 首を切断、胴体を両断、心臓を一突き


 1分と掛からずに〔イエローハイコボルト〕は全滅した


 「わ~お」
 「ほう、やるじゃねえか」
 「……お疲れ様」


 三者三様の感想
 ここだけの話、皆木颯賀は自分の実力は【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】レベルだと自負している


 「よし、行こうか」


 しかしそれはどうでもいいこと
 彼が闘うのは【魔人エルレイン・フォーリア】の……【歌神ローレライ】の為
 それ以外はどうでもいいことだった




 〔イエロードラゴン〕はすぐそこだ




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 「ここが中心みてぇだな」
 「なんもないね~」
 「噂では、秘宝があるんじゃなかったっけ?」
 「……」


 砂漠の中心地についたが、何も無い
 岩場は無数にあるが、古代遺跡などカケラも無い


 「……もしかして地下かしら?」
 「その可能性はあるね。砂に埋まっているのかも」


 高名氷寒と皆木颯賀は同じ意見みたいだ


 「おいおい、オレは〔イエロードラゴン〕をぶっ殺しに来たんだぜ? 遺跡なんてどーでもいいっての」
 「あたしはチョット気になるけど~」


 そんな時だった


 「グオォォォォォッ!!」


 地面から巨大な甲殻に包まれた生物が現れたのだ


 「おお!! 来やがったな!!」
 「でも~、あれって~?」


 〔イエロードラゴン〕は2匹で現れた


 「ガアォォォォォッ!!」
 「はっはああああ!! おもしれぇ、そっちは任せたぜ!!」
 「は~い、まぁやるかぁ」


 只野槌男と鳴戸括利は飛び出した


 「あ、ちょっと!!」
 「……任せましょう」
 「なんか冷静だね!?」




 皆木はいつの間にかツッコミ役になっていた




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 鳴戸括利は〔イエロードラゴン〕の前に出た
 その距離50メートル


 「たぶんコレが最後かなぁ……・」


 彼女は疲れたように言う


 「『神器発動ジンギはつどう』」


 彼女の体、正確には手首と背中を灰色の紋章が包む
 彼女の両手首に金属の装飾された籠手が装着され、背中には10本の細長い、まるで蜘蛛の足のような物が装着されていた


 「んじゃ~いくよ~!! 『糸の世界グリナ・ドゥレーヌ』」


 彼女はまず両手から極細の銀の鋼線を出し辺りに結界を築く
 それを見ていた〔イエロードラゴン〕は構わず突っ込んできた


 「いらっしゃ~い、1名様ごあんな~い」


 糸が絡み合い〔イエロードラゴン〕を包み込む
 どうやらこのドラゴンの知能は低いらしい


 「『粘着アルジッラ』」


 そう呟くと背中の足から糸が伸び、蜘蛛の巣のような形状になる
 彼女はそこに飛び乗り空中を移動する
 〔イエロードラゴン〕の真上まで移動して両手を巧みに動かし呟く


 「『襟巻縛コレットワール』」


 糸が無数に集まりまるでマフラーのように伸びる
 そして、〔イエロードラゴン〕の体に巻き付き拘束した
 彼女は右手を掲げ思い切り振り下ろす


 「『蜘蛛餌食スピン・テララーニャ』……はいおしま~い」


 〔イエロードラゴン〕の巨体はいきなり空中に持ち上がった
 そしてとどめの一撃が襲う


 「じゃ~ね~、『空殺巻ベンフィーロ』」


 〔イエロードラゴン〕に巻き付いた糸が急激に縮小
 一瞬でバラバラに切断され無数の肉片が空中を舞う


 彼女に捕らわれれば脱出は不可能
 これが【糸神ドゥレヌアラクネ】の神器・【怨恨の魔蜘蛛クロシュテルン・シュプレッセ】の力だった


 彼女は落下する肉片を見ても考えてしまう


 こんなに強いに、自分では無月に勝てない
 4人いても勝てないかもしれない
 もし負けて【神器ジンギ】を失えばどうなる?


 彼女の頭に浮かんだ言葉
 それは、実験動物
 彼女は知っているのだ


 【神器ジンギ】を失った仲間が、【薬神ナーカティック】から何度も投薬を受けて【神器ジンギ】を復活させようとしていることを


 彼女にはそれが、実験にしか見えなかった
 無月に負ければ自分も同じ目に遭う
 それだけはゴメンだ


 彼女はこの瞬間決意した




 彼女もまた、自信の神を押さえつつあった




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 「おらおらぁぁ!! 楽しませろやぁぁぁ!!」


 只野槌男は素手で〔イエロードラゴン〕を殴っていた
 〔イエロードラゴン〕の大きさは全長30メートルほどの4足歩行のトカゲ、しかしその体は硬い甲殻に覆われていて魔術でも傷は深く付けられないだろう
 そんなドラゴンの顔面を殴る。明らかに楽しんでいた


 恐ろしいのはドラゴンだった
 あまりの威圧感に逃げることも出来ずにやられるまま
 1発殴られるごとに体が揺さぶられる
 ドラゴンは少ない知性で、恐怖していた


 「んーだよツマんねぇなぁぁぁ!! ビビってんじゃねーぞコラぁ!!」


 只野槌男の属性は【黄】・【白】・【時】の3種類
 魔術を覚えるつもりはほとんど無く、格闘ばかり習っていた
 しかし、彼は一つだけ魔術を習得していた


 【白】属性の力で身体強化
 【黄】属性の力で大地の力を吸収して自分の力に変える


 【白】と【黄】の融合・・【固有属性エンチャントスキル】、『豪腕力ドルクマッスル
 普通の人間の数十倍のパワーを出せる体になっていた




 「もぉいいわ、死ねや」




 黄の紋章が輝き地面から武器が現れる
 それは、超巨大なハンマーだった
 縦の長さで20メートル、ハンマーの部分で10メートルはあるバケモノ鈍器
 恐ろしい早さでそれを振り回すと、その勢いで轟音、豪風が舞う


 これが【槌神マルトスピューラ】の神器・【衝撃の大槌マーレウス・インパクト


 只野槌男は強化された身体能力でジャンプする
 その高さ約30メートル。そして自信が回転しながら勢いを付けて〔イエロードラゴン〕に向かってそのハンマーを振り下ろした


 「『大大撃撃打バスク・ゴルペアール』!!」


 冗談抜きで、地震が起きた
 ハンマーの直撃を受けた〔イエロードラゴン〕は、爆散した


 「ぎゃあぁぁぁはぁ!! 終わりだぁ!!」




 戦いは、実にあっさりと終わった




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 戦いが終わり4人は集まっていた
 只野はまだ【神器ジンギ】を抱えている


 「楽勝だったなぁ、物足りねぇぜ」
 「まあいいじゃん。無月とやり合う前の準備運動でしょ?」
 「まぁそうだな、じゃあ〔王都イエローマルクト〕で殺しまくるか!!」






 次の瞬間、只野槌男の【神器ジンギ】が爆散した






 【神器ジンギ】を破壊されたショックで只野槌男は白目をむいてその場に倒れた


 何が起きたか3人は全く理解できない
 倒れた只野槌男を見下ろすだけ


 何が起きた? どうして? 何で?
 最初に立ち直ったのは皆木颯賀だ
 周囲を確認して【神器ジンギ】を発現させる


 そして気づいた
 黒い物体・・・・がこちらに飛んで来るのを


 慌てて【神器ジンギ】を構えて風を起こし、周囲をガードする


 そして、黒い物体の声を聞いた




 「【九創世獣ナインス・ビスト魂融ソウルエンゲージ】!!」




 黒い物体・・・・の色が、黒を基調とした黄色に変わるのを見た




 「【土竜神化ソウルオブトレパモール】!!」




 そしてそれはこちらに何かを構えていた




 「【炸裂地石砲ヴェルディ・グラナーデ】!!」




 それは、回転式炸裂砲グレネードランチャー
 黄土色に輝く装飾されたパーツが組み込んである兵器
 銃口が向けられ引き金が引かれる
 彼は思う、自分の風なら耐えられる


 しかし、発射された岩石のような砲弾は、彼の風の障壁に触れた瞬間爆発
 障壁はあっさり破られた


 皆木颯賀は爆発の余波で吹き飛ばされ体勢を崩す
 そして一瞬で体勢を整え前を見た


 そこに、双剣を構えた無月銃斗が眼前にいた


 彼はランスを構えようとし、一瞬で【神器ジンギ】は切り刻まれ破壊された
 皆木颯賀は無意識に【ゲート】を開き、只野槌男と共にこの場から消えた


 高名氷寒と鳴戸括利は最後まで動けなかった


 次元が違いすぎる


 濡羽色の装備に戻った無月銃斗は、『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』を二人に向けて構えた その表情に一切の油断は無い


 そして、鳴戸括利は両手と背中の【神器ジンギ】を外して銃斗の前に放り投げ、高名氷寒も片手剣ショートソードの【神器ジンギ】を同じく放り投げた


 「降参で~す……」
 「……負けを認めるわ」




 戦いは、実にあっさりと終わった



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