ホントウの勇者

さとう

王都イエローマルクト②/ブランの宝物・逆鱗

 
 俺達はさっそく城を出て町へ向かった


 ちなみにクロはルーチェに引っ張られてモルと3匹で寝てる
 ルーチェはモルを抱きしめながら更にクロも抱きしめる。モルが窒息しないといいけど


 俺とブランは手を繋いで町を歩いてる
 まだお昼には早いがブランが言った


 「お兄さん、お腹空いた」
 「ハハハ、じゃあ何処かで食べるか。何が食べたい?」


 もちろん今日の支払いは全部俺持ち
 50億ゴルドもあるし欲しい物はなんでも買ってやるつもりだ


 「じゃあ、〔カリー〕が食べたい‼」
 「〔カリー〕? なんだそれ?」
 「今、王都で流行ってるご飯だよ。〔コメ〕にスープをかけて食べるんだって、しかも味はピリ辛で一度食べたらもうやみつきらしいよ‼」


 米にスープ、カリー……まさかな




 ブランに案内して貰って店へと繰り出す事にした




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 ブランに案内された店はアジアン風の店だった


 店内は涼しくインテリアも洒落ている
 椅子は水草を編み込んで作ってあり、机は硬いシンプルなデザイン、照明は竹みたいな植物を加工して作ったカバーがしてあるし、bgmも店にマッチした物が流れている


 う〜ん、いいね
 10歳の少女と来る店じゃないけど


 まだお昼には早いせいか客は俺たちだけだった
 メニュー表をブランと一緒に眺める
 この世界では写真が無いため、文字のみのメニューなのでイメージしにくい
 仕方ないので〔本日のおすすめ〕を頼む事にした
 ブランも同じのを頼んだ。するとブランは


 「お兄さんとご飯久しぶり。うれしい‼」 
 「はは、俺もうれしいよ」


 ブランはにっこり笑ってる
 俺も笑い返す。すると客がいないせいか、すぐに料理が運ばれて来た


 「わあ〜、おいしそ〜」
 「確かに美味そうだ。これって……」


 運ばれて来たのはやっぱりカレーだった


 しかしこれはどちらかと言えばスープカレーだ
 米は皿に盛られていて、深い器に野菜と肉がたっぷり入ったスープカレーが盛られている
 付け合せにさっぱりしたサラダが付いていてお腹が鳴った。よし、食べよう


 「よしブラン、準備はいいか?」
 「はーい‼」




 「「いただきます‼」」




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 まず最初にスープカレーをひと口
 うん、辛い。味はカレー、スパイスをたくさん使ってこの味を出している
 俺はご飯をスープカレーに全投入してお茶漬け風にして食べた
 熱いカレースープとご飯が混ざり合い絶品だ、そこに野菜の食感が加わり更に味が深まっていく。美味い


 ブランを見ると汗を流しながら食べている
 俺はハンカチでブランの汗を拭ってやった


 「えへへ、ありがとお兄さん。美味しいね」
 「うん、すごく美味い」




 俺達はそのまま楽しく食事をした




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 「さーて、買い物でもするか。欲しいのなんでも買ってやるぞ?」
 「ホントに⁉ じゃあ、ぬいぐるみが欲しい‼」
 「おおいいぞ、好きなだけ買ってやる」
 「やったぁ‼ お兄さんありがとう‼」


 さっそくブランと雑貨屋へ
 子供向けのアクセサリーやぬいぐるみ、おもちゃの剣などが売られている
 ブランはその中からピンクのウサギのぬいぐるみを手に取って俺に突き出した


 「これがいいな」
 「よーし、買おう。それだけで良いのか?」
 「うん、お兄さんありがと。大事にするね」


 ブランはぬいぐるみを抱きしめて笑顔で言う
 俺はその頭を優しく撫でた


 「お兄さんからのプレゼント……エルルとクルルには悪いけどすごく嬉しい。お兄さん、二人に会ったらプレゼントしてあげてね」
 「そうだな。今度ガルベインに行ったらちゃんとプレゼントを送るよ」


 俺がそう言うとブランは不思議そうに言う


 「え? お兄さん、ガルベインに戻るの?」
 「いや、エルルとクルルはガルベインにいるだろ?」
 「違うよ?」


 はい? どういう事だ?


 「エルルとクルルは旅の傭兵団に誘われて旅に出たよ? お兄さんを探して文句を言うって出て行ったみたい。イエーナお姉ちゃんの手紙に書いてあったよ」
 「なんですと!?」


 マジかよ
 あの二人は泣くと思ったから何も言わないで出て来たのに、まさか追いかけて来るとは。強くなったもんだ
 いつか何処かで会うかもな、その時はちゃんとプレゼントしてやるか




 俺はそんな事を考えながら店を出た




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 ブランとお喋りしながら楽しく町を歩いている


 ブランは左手でウサギのぬいぐるみを抱えて右手は俺と手を繋いでいる
 暫く歩いていると、ふと声をかけられた


 「そこのキミ、やはり腰抜けインチキくんか。今日はモンスター退治ではなく子供の世話か……やはり身の丈にあった依頼が似合ってるよ」


 若い剣士の男がそう言うと、他の4人は笑いだした
 こいつら、昨日会った冒険者か?
 すると女魔術師が楽しそうに言う


 「あたし達はSレートモンスターを退治してきた所よ。楽勝だったわ‼」
 「私達〔デッドストライカー〕の前で舐めたマネをしたアンタに分からせてあげたくてね」


 〔デッドストライカー〕って……?


 「ああ⁉ 思い出した‼」


 コイツら〔ダナード村〕であったsランク冒険者チームだ‼
 そういえばコイツらが失敗した〔イエローダイノレックス〕討伐を俺があっさり倒しちゃったからなぁ。気に入らないのも当然か


 俺はため息をついて無視する。ブランが怯えて俺の後ろに隠れてしまった
 俺のため息に5人がぴくりと反応した


 そのままブランの手を握り通り抜けようとすると、大剣士のリボックと弓士のリピールが道を塞ぐ
 さらに後ろには剣士のクリフと魔術師のフールとポーラムが立ち塞がる


 ブランは俺にしがみつく
 はぁ、何なんだよ


 「あのー、何か?」
 「いやぁ、その態度は頂けないな」
 「あたし達をナメてんのかしら?」
 「この【黄の大陸】最強の冒険者チームを相手に随分余裕ね?」
 「ここで潰しておくか? オラたちの恐ろしさを周りに見せつけてやろうぜ」
 「フフっ……バカなやつ」


 5人は俺を囲んで意気込んでいる
 よく見ると周りの人が円形に俺達を囲んでいる
 巻き込まれないように見て見ぬふりをしてる
 さて、どうすっかな


 「ああっ⁉」
 「はいいただき〜」


 魔術師フールがブランのウサギのぬいぐるみを取り上げた
 ニヤニヤしながらぬいぐるみを弄んでいる


 「かえしてぇ‼ お兄さんがくれた私の宝物なのぉ‼」
 「ブラン⁉ まてっ‼」


 ブランはフールに向かって行く
 しかしあっさりかわされてそのまま転んでしまった
 5人はそれを見て大爆笑している


 「そんなにコレが大事なのか……よし、返してあげよう」
 「ふふふっ、そうね」


 フールはぬいぐるみをクリフに向かって投げる
 そして、一瞬の斬撃でぬいぐるみをバラバラにした


 「はーい返してあげる。よかったねぇ」
 「あ、あ……」


 5人は再び大爆笑




 そして、俺はブチ切れた




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 俺は右拳を本気で握り締めてフールの顔面をぶん殴った
 その衝撃で前歯が砕けて鼻がへし折れて右目が飛び出し地面に激突
 ピクピク痙攣してる……1人目


 その光景に残った4人は一瞬動揺したがすぐに俺を敵として認識、戦闘体制を取る
 流石Sランク冒険者。だが遅い


 俺は投げナイフを両手に持ちポーラムに投擲、両手両足に2本ずつ刺さり絶叫が上がる
 そのまま頭を掴んで膝蹴りで顔を潰した
 ぐちゅっ、と水っぽい音がしてポーラムは倒れる……2人目


 3人目、と思いリボックに顔を向けた瞬間、矢が飛来した
 リピールが放った矢が正確に俺の顔面を狙うが俺はそれをキャッチ、大剣を振り下ろしたリボックの斬撃を体を横にして回避して、そのまま持ってた矢を両腕を貫通させるように突き刺した
 リボックは苦痛に顔を歪めて大剣を地面に落とす
 俺はそれを拾い上げて振りかぶり、野球のスイングで剣の腹をリボックの顔面に叩きつけた。3人目


 4人目、リピールは背を向けて逃げ出した
 その光景を俺は冷めた目で見つめて思った。逃がす訳ねぇだろ、と


 俺は持っていた大剣を水平に構えて本気でぶん投げた
 大剣は地面を這うように高速回転してリピールに迫り、そしてリピールの両足がキレイに切断され地面に転がった
 響く絶叫、それを無視して俺は近づく
 俺は両足の傷口を踏み潰して失血死しないようにした
 その痛みでリピールは気絶。4人目


 5人目、俺は固まって動けなくなってるクリフにゆっくり近づく
 クリフは既に戦意を喪失して泣きそうな顔をしてる


 「わ、悪かった……ゆ、許してくれ‼」
 「喧嘩を売ってきたのはソッチだろ? 最後まで遊んでくれよ」


 俺は優しく微笑んでクリフに近づく


 「ヒ、ヒィィ⁉ 済まなかったぁぁ‼ 許してくれぇぇ‼」
 「お前が謝るのは俺じゃないだろ?」


 俺はそう言ってブランを見る
 ブランはバラバラになったぬいぐるみを抱きしめて泣いていた
 その光景が再び俺を熱くする


 「殺しはしないよ、怪我も後で治してやる……だから苦しめクソ野郎」 


 俺は両手で本気の連打ラッシュを繰り出した
 顔面が陥没し、鼻が砕け、腕が折れて、足が折れて、肋骨が砕け、200発ほど殴りクリフは沈んだ
 これで最後、5人目


 この間2分40秒




 実に胸糞悪い勝利だ




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 周りで見てた奴らが通報したのか、兵士が3人と何故かシトリンが現れた
 シトリンが先頭になり、俺達の間に割って入って来た
 俺を見てシトリンは驚いていた


 「あなたは……一体何が? ブラン⁉」


 シトリンは泣いてるブラン、実力はあるが素行に問題のあるSランク冒険者、ブランの両手にあるバラバラのぬいぐるみ、そして俺に視線を合わせて全てを理解した表情になった


 「……そういう事」
 「そういう事だ」


 シトリンは少しだけ微笑んで言う


 「あなたの宿はどこ?」
 「……〔海のオアシス亭〕」
 「後で行くわ、ここは任せてブランと一緒に宿に戻りなさい」
 「分かった。でもその前に……」


 俺は呪文を唱えるフリをする、そして


 「【白】の上級魔術・【無垢なる光セイファート・ライフ】」


 【白】の魔術が5人を包み込み怪我を癒やす
 シトリンだけじゃなく周りの人間全員が驚いていた
 俺はそれを無視してブランの所へ行く


 「お兄さぁん……」
 「……行こう」




 俺は生活魔術でブランの汚れを落とし、手を繋いでその場から歩き出した


 
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 宿屋について部屋へ入るとブランは俺に抱きついてきた


 「せっかく、お兄さんに買って貰ったプレゼント……ボロボロになっちゃったよぉ……うぇぇ」


 俺はブランを優しく抱きしめて、ぬいぐるみの残骸を見る
 見事にバラバラだ、魔術でもこういうのは直せない


 そのまま暫くブランを慰めているとドアがノックされた
 一度ブランから離れてドアを開けると、予想通りの人物がいた


 「入るわよ」


 そこにいたのはシトリンだった。手に小さなバスケットを持っている


 「……シトリンお姉ちゃん」
 「ブラン……可哀想に、お姉ちゃんに任せなさい」


 シトリンはブランを撫でながら優しく言って、手に持っていたバスケットを開ける
 そこに入っていたのは裁縫道具だった


 シトリンはぬいぐるみの残骸を見て、ピンクの糸を取り出し繕い始めた
 ぬいぐるみはあっという間に形を取り戻していき、最後に綿を詰めて仕上げをした


 「はい、できたわよ」


 そこにあったのは完璧なウサギのぬいぐるみだった
 よく見ないと縫った跡すらよくわからない。職人技だ


 「お姉ちゃん、すご〜い‼」
 「マジかよ……!?」


 ブランはぬいぐるみを抱きしめて喜んでいた
 俺は思わずシトリンを見つめた


 「な、何よ、こういうのが得意で悪い⁉」
 「誰もそんな事言ってないだろ……」


 何故かシトリンはご機嫌ナナメだ
 するとブランが嬉しそうに言う


 「お姉ちゃんありがとう‼ お兄さんも守ってくれてありがとう‼」




 俺とシトリンは顔を合わせて、ブランに優しく微笑んだ




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 結局シトリンはブランのおねだりに負けて夕食を一緒に食べる事になった


 宿屋のレストランで3人分の料理を注文してみんなで食べる
 ちなみに料金は問答無用で俺が払った


 シトリンから聞いた話では、あの冒険者5人組は実力こそ【黄の大陸】で最強の冒険者チームだが素行に問題があり町では悩みのタネだったらしい
 飲食店で料金を払わなかったり、他の冒険者の妨害をしたり、道具屋や雑貨屋から商品を無断拝借したりとやりたい放題だ
 これを気に少しは変わってくれるといいが、というのが正直な意見だ
 俺もちょっとやりすぎたかも。でも許す気はない


 食事を終えて部屋に戻ると、ブランはベッドにダイブした
 ぬいぐるみを抱えてすぐに寝息を立て始める


 「……寝ちゃったわね」
 「はは、疲れたんだろ」
 「そうね」


 それっきり会話が終わる、するとシトリンが言った




 「ねぇ、少し話さない?」




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 「あなたがブランに【無垢なる光セイファート・ライフ】を教えたのね。あの後、町は大変だったのよ? 【白】属性なんてほとんどいないから、町中から治療の依頼が入ってるらしいわ」
 「そりゃ悪かったな」
 「仕方ないわ。あの場で治療しなかったらあの5人は死んでたかもしれないし、ブランの事はまだ秘密だからね」
 「秘密?」
 「ええ、もしかしらブランは〔白の大陸ピュアブライト〕出身かもしれないからね。ヘタに人前には出せないわ」


 今、王都ではブランの身元を調査してるらしい
 最有力なのが【白の大陸ピュアブライト】の出身説だ
 白の大陸は【白】の魔術師が多いので、そこから奴隷商人に連れて来られたのではないか? と考えているらしい


 俺はブランを見る
 体を丸めるように寝てるのでパンツが丸見えだ


 「あなたはどこから来たの?」


 シトリンの質問タイムが始まった
 とりあえず俺は【赤の大陸】出身という事にした
 シトリンの質問に無難な回答をして、今度は俺がいろいろ聞いてみた


 「シトリンは王様の娘なんだよな?」
 「ええそうよ」




 シトリンは自分の事を話してくれた



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