ホントウの勇者

さとう

王都イエローマルクト①/天才少女・【黄の特級魔術師 シトリン・アングレサイト】



 「おお、あれが〔王都イエローマルクト〕か」


 【流星黒天ミーティア・フィンスター】にまたがりながらゴーグルを上げて王都を見つめる


 俺が今いるのは崖の上。王都が見下ろせる位置にいる
 〔王都イエローマルクト〕は周囲が砂漠になっていてその中心にオアシスがある
 オアシスを囲むように大都市が広がり、上から見た感じ円形の町だ
 円の真ん中がオアシスで、オアシスの北側にアラブ風の王宮が建っている
 気温も高く日差しがきつい、さっさと町に入ろう




 俺は再び【流星黒天ミーティア・フィンスター】で砂漠に向かって走り出した




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 砂漠だが王都に向かって街道が延びているので移動は楽だった


 すれ違うのは商人の魔導車ばかり
 その人達を守るように傭兵達が隊列を組んでいる
 バイクタイプの魔導車はやっぱり存在しないのか、【流星黒天ミーティア・フィンスター】は注目されていた。恥ずかしい
 しばらく走って町へ到着。そのまま門をくぐって町に入った




 さて、まずは宿屋かな




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 【流星黒天ミーティア・フィンスター】から降りてクロと一緒に町を散策する


 ちなみにモルはルーチェが抱えて一緒に昼寝をしてる
 アグニは相変わらず酒盛りだ。ホント好きだね
 そういえば、モルって好きな物ものあるのかな? 今度聞いてみよう


 町は商人だらけで非常に活気があった
 町は円を描いている作りなので、オアシスに沿って歩くだけで町を見て回れる


 街道には露店が沢山あった
 宝石商・画商・飲食店・服屋・武器屋・防具屋。まだまだあってキリがない。周りは客引きの声や冒険者の声で賑わっている


 町の中央。王宮とはちょうど反対側には各ギルドに宿屋が集中してる
 俺はそのうちの一軒の宿屋、〔砂漠のオアシス亭〕に決めた
 宿の中は涼しくて、雰囲気はアジアン風。今までにないスタイルだ


 受付をして部屋に入る


 「おお、すごい」


 部屋はブルー系の色で統一されて爽快感がある、ソファやベッドなどは木を編み込んで作ったような感じで涼しげだしヤシの木みたいな植物も飾ってあり雰囲気もいい
 さらに窓際にはハンモックまで用意してある。ここは大当たりだ




 よし、部屋も押さえたし買い物に行きますか




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 町に出て食材やらお酒やらお菓子やらを大量に買う
 商人が集まる町なのでどれも種類が豊富にあった
 酒は米酒・葡萄酒・ビール・ウィスキーなどタップリ買いアグニはご機嫌だった
 お菓子はクッキーやパンや飴など沢山種類があった。勿論いっぱい買う


 買い物を一通り終えて町をぶらついていると、なんか見覚えのある人影が


 「おや、キミは身の程知らずクンじゃないか。まぐれでSレートモンスターを倒していい気になってるそうじゃないか。実に腹立たしい」
 「たしかにね。フン、ねえクリフ早くギルドに行こう」
 「そうよそうよ、こんなヤツに構ってる暇ないわ」
 「ふん。胸糞わるいぜ」
 「······ペッ」


 なんだコイツら? 俺のこと知ってんのか?


 男2人に女3人の冒険者チームか。どっかで見たような?
 若い男の両腕に魔術師の女2人がくっついている、デカい剣をもったおじさんは腕を組んで俺を見てるし、俺と同い年くらいの女の子······エルフか? は、地面にツバを吐いた


 全員俺を見て敵意を振りまいている。なんで?


 「さて、ここで失礼させて貰うよ。Sレートモンスター討伐の依頼が山ほど入っているんでね。ふふん、忙しいったらありゃしないよ」


 5人は俺を嘗めきったような視線を投げかけて去って行った。わけわからん


 露店で適当に食事を済ませてその日は宿に戻った
 高級宿ってすげえ落ち着く。雰囲気最高だぜ


 部屋でまったりしていると【九創世獣ナインス・ビスト】全員出てきた
 なになに? どうしたの?


 《今後のコトを話しておこうと思ってネ》
 《そうだな、次は【緑の大陸グレングリーン】だな》
 《次はクライブグリューンだね!! そうすれば〔四大魔素エレメンツ〕勢揃いだね》
 《もぐもぐ!!》


 うーん、こうしてみると個性豊かなヤツばっかだな
 黒猫・トカゲ・幼女人魚・モグラ。次はなんだろう、気になる


 《ジュート。次は【緑の大陸グレングリーン】にいる【緑】を司る【九創世獣ナインス・ビスト】、クライブグリューン・リベルラの元へ行くワヨ》
 《アグニードラ、ちゃんと謝らないとダメだからね!!》
 《確かに喰おうとしたけどよぉ、一番悪いのはナハトオルクスだぜ。アイツが酔っ払ってオレの口の中にクライブグリューンを詰め込んだんだぞ》
 《ソレはソレ、コレはコレ!!》
 《もぐもぐもぐ!!》
 《アナタたち······ハァ》


 コイツらが集まると一段と騒がしい
 でも悪い気はしない、むしろ楽しい


 《ジュート、用心しておきなサイ》
 「え?」


 《アナタの友達、仕掛けてくるかもしれないワヨ》
 《そうだな。次に仕掛けてくるとしたらこの辺りだろ。確信は無いが予感がする》
 《うん、〔時の大陸クローノス〕から船で〔黄の大陸〕に来るとなると一月はかかるからね。用心しておいたほうがいいよ》
 《もぐ》


 確かに。次に来るとしたら誰だ?
 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】の誰かか?
 剣吾か、静寂さん、弓島さん。それか羽蔵さんか、高名さんか。はは、女子ばっかだな


 そういえば最近【神器ジンギ】を使ってない
 いざという時のために使っておいた方がいいかな


 そういえば昼間の5人組がSレートモンスター討伐依頼が山ほど入ってるって言ってたっけ




 明日、王様の所へ〔神結晶〕おいたあとに覗いてみるか




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 次の日。俺は王宮の前に来ていた


 目的は〔神結晶〕を王様に買って貰うこと、それとブランの様子を確かめてみること


 「ブラン、元気かな」


 俺はバンギーさんとナイルさんの紹介状を門番に見せた 
するとあっさりと通過


 「こちらへどうぞ」
 「あ、ども」


 門番さんに案内されて城の中に案内される
 なんとそのまま〔謁見の間〕まで案内された


 毎回思うけど展開早すぎぃ!!


 謁見の間の作りはドコも似たような感じだ
 一段高いところで王様が俺を見下ろしている
 王様は40歳くらいの筋肉質のおじさんだ。なんか威圧感がある


 その隣には黄色いローブを着た強気そうな女の子が俺を見ていた
 その子は俺と同い年くらいで髪型は金髪のボブカットで、髪の一部が編み込んでありおしゃれな感じだ。顔は間違いなく美少女で、驚いたのはローブから見える服装だ
 服、というか上半身は黄色いビキニしか付けていない
 胸は大きく目のやり場に困る。下半身はミニスカートで下にスパッツを履き、肌はほんのりと健康的に焼けていて、白よりは黄色に近い日本人みたいな色だ。もしかしてこの子


 「旅人よ。なにやら買い取って欲しい品があると言うことだが」


 おっと。王様の話が始まったな
 よし、練習した通りに話してみよう


 「はい。私が〔ミルマイン鉱山〕の最深部で見つけた鉱石であります。ギルドでは買い取り不可と言うことでこちらにお持ちいたしました」
 「どれ、見せてみよ」
 「はい、こちらです」


 俺は袋からボーリング玉サイズの〔神結晶〕を取り出す


 「な!?」
 「ウソ!?」


 おお、王様も女の子も驚いて声が出ないみたいだ
 俺の隣に来た兵士に〔神結晶〕を渡す。するとそれは王様の元へ運ばれた


 「まさか、コレは〔神結晶〕!?」
 「こんなサイズの〔神結晶〕が存在していたなんて······間違いない、本物です!!」


 女の子のお墨付きが出ました
 王様は俺を見てうれしそうに言う


 「コレを我が王国へ持ち込んだこと、誠に感謝する!! さぁ希望の金額を言うがいい」


 王様は上機嫌だ。っていうか希望の金額!?
 全然考えてなかった


 どうしよう······一千万? それとも五千万? だめだ相場がわかんねー!!
 俺が黙っていると、王様が金額を提示してくれ






 「悩むのか? ふむ、では50億ゴルドでどうだ?」






 今なんて言った? 50······オク······!?
 オクって······億かよ!?
 50億ゴルド!? 冗談だろ!?


 「ふむ、足りぬか? なら」
 「いやいや十分です!! ありがとうございます!!」


 やべぇ、大金すぎる。これ以上増やしてたまるかよ!!
 王様が兵士に目配せすると、兵士がゴルドカードを10枚持ってきた。どうやらあれに5億ゴルドずつ入ってるらしい


 やべえよ、大金持ちになっちまった


 「うむ。この〔神結晶〕はこの王国の宝として大切に保管しよう。して旅人よ、他に望みはあるかね?」


 王様は俺を見ながら上機嫌に言う。王様にとって50億ゴルドははした金なのか。一人で緊張してる俺がアホみたいだ
 せっかくだしブランのコト聞いてみるか、ついでに会わせてもらえないかな?


 「あのー、この城にブランという女の子がいると思うんですけど。会わせていただけませんか?」
 「ブラン? ああ、あの天才少女か。そなたとはどういう関係かね?」
 「ガルベインで少しの間一緒に暮らしてました。きちんとお別れできなかったので、挨拶だけでも」
 「なるほど、いいだろう。シトリン、案内してあげなさい」
 「はい父上。では旅の方、ご案内いたします」


 シトリンって、やっぱり【黄の特級魔術師 シトリン・アングレサイト】か
 っていうか父上って、王様の娘!? マジで!?


 シトリンは俺の前を歩き始める




 俺は驚きつつも後をついていった


 
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 長い廊下を二人で歩いているとシトリンが話しかけてきた


 「あなたが「お兄さん」ね?」
 「え?」
 「ブランがよくあなたの話をするのよ。美味しいご飯をいっぱい作ってくれたり、魔術を教えてくれた大好きなお兄さんだって」
 「そっか、元気でやってんのか?」


 年も近いので俺はタメ語で話すことにした
 シトリンも最初からタメ語だったしな


 「ええ、彼女は天才よ。【白】魔術にかけてすでにこの大陸で太刀打ち出来る者はいないでしょうね。なぜあんな子供が孤児に」


 それは俺も思う、【白】属性なんて【エレメンツ大大陸】よりも【アンチフォース列島】の方が沢山いる
 ブランも孤児になった経緯を全く覚えてないし、もしかしたらこの【黄の大陸】出身じゃないかもしれない、ってイエーナと喋ったっけ


 そんなことを考えながら歩いていると、シトリンが歩みを止めた


 「ここは······資料室?」


 するとシトリンはゆっくり扉を開けた
 中は図書館のように広く、階段があり2階にも本棚が広がっている


 「あ······ブランだ」


 読み書き用のテーブルの一つにブランが座っている
 机の上には大量の本が積み上げられていてどれも凄く分厚い
 そのうちの一冊をブランは楽しそうに読んでいた


 ブランは【白】の魔術師だからか、白を基調にしたワンピースに白いローブを着ている。髪の毛は膝下まで伸びているがキチンと整えられていてとてもキレイだ
 楽しそうに読書するその顔は間違いなく美少女でかわいらしさで溢れている


 俺は静かに声を掛けた


 「ブラン」
 「え·······あっ!?」


 ブランは俺を見て硬直した。しかし次第に泣き顔になっていく


 「久しぶり。がんばってるな」
 「お、お兄さん?」
 「ああ、元気だったか?」
 「お兄さぁぁん!!」


 ブランは泣きながら本を投げ捨て駆け寄ってくる
 その顔は涙で濡れていた


 「おっと、ははは······よしよし」
 「うあぁぁぁん······会いたかったよぉぉ!!」


 ブランは俺の胸に飛び込んでくる
 俺はそれをガッチリ抱きしめ頭を撫でた




 俺はブランが泣き止むまで頭を撫でてやった




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 その後、泣き止んだブランといろんな話をした


 シトリンから魔術の基礎を習っていること
 礼儀作法や食事マナーを習っていること
 中級魔術試験を受けるために勉強していること
 今度、シトリンが出す小テストに合格したらガルベインに連れて行ってもらえることなど


 ブランは全てが楽しくて毎日充実してるらしい
 よかった、本当によかった


 ブランの話を聞きながら俺も話をした
 ダナード村でのこと、〔ミルマイン鉱山〕で採れた〔神結晶〕のこと、それを売るために〔王都イエローマルクト〕へ来たことなど


 俺の話を聞くとブランは笑い、喜ぶ。俺もうれしくなっちゃうよ
 するとブランは少し悲しそうに言う


 「お兄さん、用事が済んだら行っちゃうの?」
 「うん。次は【緑の大陸グレングリーン】に行こうと思う」
 「そっか······」
 「また会いに来るよ。ブランが立派になった姿を見たいからな」
 「うん。ねぇお兄さん」
 「なんだ?」
 「今日は一緒に寝ていい?」


 いいよ、と言いたいけど俺は町に宿を取ってるしな
 するといつの間にかシトリンがいた


 「なら今日は休みにするわ。久しぶりにお兄さんに甘えてきなさい」
 「シトリンお姉ちゃん、いいの!?」
 「ええ、いつも頑張ってるブランへのご褒美よ」
 「やったぁ!! お兄さん、町に遊びに行こっ!!」
 「よーし行くか!! シトリン、ありがとな」
 「ブランのためよ。明日になったら城まで送り届けてね」
 「ああ、わかった」


 シトリンと別れ、俺とブランは町へ繰り出した


 さーて、一日お兄ちゃん、がんばりますか!!



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