ホントウの勇者

さとう

〔ウースタイン洞窟〕/トレパモール・イエンシュー



 【流星黒天ミーティア・フィンスター】で走る事3日。ついに〔ウースタイン洞窟〕が見えてきた


 入り口に【流星黒天ミーティア・フィンスター】を止めて周囲を見る


 この辺りは人や魔導車の通りが全くない。街道からも外れているし、強いモンスターもいないので冒険者も近づかない
 周囲は枯れた木や岩に囲まれた寂しい感じの風景
 洞窟に入り口は縦3メートル、横4メートルくらいでそんなに大きくない
 中は真っ暗で明かりも無いし、忘れ去られた洞窟って感じだ


 「こんな所にホントにいんのか?」
 《エエ、感じるワネ》


 ふーん。まあ行けばわかるか




 俺は【白】の初級魔術・【白光ポアライト】の光球を10コほど出して周囲を照らしながら中へ入っていく




───────────────


───────────


───────




 洞窟の中は驚くほど何も無かった
 直進するだけでモンスターは全くいない、と言うか気配すら感じない
 曲がり角や地下への道があるわけでも無い、本当にただの横穴だった


 「なぁ」
 《なにヨ、疑ってるノ?》
 「そんなこと無いけど」
 《ナラ黙って進みなサイ》
 「はーい」




 疑ってるワケじゃ無いけど、ホントにいんのかなぁ?




───────────────


───────────


───────




 そしてついに、最深部へたどり着いた!!
 ソレは見事な行き止まりだった!!


 「………」
 《な、なにヨ!!》
 「……行き止まりなんですけど?」
 《オ、おかしいワネ?》
 「クロさーん?」


 俺がクロをジト目で見ていると急にソレは来た


 「なっ!?」
 《ニャッ!?》


 な、なんだ? 突然地面が揺れ出し地面に亀裂が入った!!
 立っていられないくらいの地震が起き、俺の足下の亀裂が広がって地面に穴が開く


 「おいおいマジかよぉーっ!?」
 《ニャァァァーッ!!??》


 俺とクロは突然の地震で起きた穴に落ちてしまった




 なんでこうなるんだよーっ!!




───────────────


───────────


───────


 「いてててて……クロ、大丈夫か?」
 《エエ、なんとかネ……アラ?》


 俺たちが落下した場所は広い空間だった
 足場は砂地で歩きにくい。この砂がクッションになったのか
 広さはかなり広い、真っ暗だな
 俺は【白光ポアライト】で周囲をまんべんなく照らす
 広さは幅100メートルくらい、天井は高さ50メートルくらいか?


 「出口は……見当たらないな。困ったな」


 すると俺の近くにアグニとルーチェが出てきた
 ちょうどいいや、出口を一緒に探して貰おう




 《久しぶりだな、トレパモール!!》




 そんなアグニの言葉が聞こえてきた




───────────────


───────────


───────




 「はい? トレパモールって……」


 俺は周囲を見回すがそれらしき生物はいない


 《変わらないね~トレパモール!! 元気だった?》
 《フフ、そうネ、相変わらずネ》


 クロ達は普通に喋ってる。俺には見えない何かなのか?
 俺は周囲を警戒し辺りを見回すがやっぱりいない
 どうなってやがる。アグニ・クロ・ルーチェの視線をたどる


 視線は足下。俺のすぐ近く


 「え……足下?」


 みんなの視線は俺の足下に集中していた
 俺は恐る恐る足下を見る………するとそこには、いた






 《もぐ?》






 とても小さな、1匹のモグラが




───────────────


───────────


───────




 そのモグラは大きさは20センチくらいでクロより小さい
 体はまんまモグラで体毛が黄土色。モグラは視力がほとんど無いと言われているが、俺を見上げるこのモグラは黒い瞳がぱっちり開いて瞬きもしてる。手足や鼻先は肌色で爪は黄色く鋭い。しかし一番目を引かれるところが、背中に背負っている甲羅?の部分だ


 このモグラは背中に濃い黄色の甲羅を背負っている
 しかし体は体毛に覆われているので構造上手足を収納するような物では無く、モグラの背中に甲羅がくっついている。そんな感じだ


 俺はモグラを見つめて固まっていた。どうすりゃいいんだ?
 するとルーチェがモグラ抱っこしつつ、俺の目の前に持ってきて紹介してくれた


 《紹介するねジュート!! この子が【黄】の【九創世獣ナインス・ビスト】、トレパモール・イエンシューだよ。かわいいでしょ!!》
 《もぐもぐ!!》


 いやわかんねえよ。もぐもぐ言ってるし。確かにかわいいけど


 《それにシテもトレパモール、あんな乱暴な案内シテ……ビックリしたワヨ》
 《もぐ~、もぐもぐ》
 《アラそうなの。フフフ、仕方ない、許すワ》
 《もぐ!! もぐ~もぐもぐ》
 《がっはっは!! そうか、力貸してくれんのか? 事情は話した通りだ。コイツはジュート、ヴォルの〔神の器〕だ》
 《も~ぐ。も~ぐもぐもぐ》
 《うん!! みんなでいれば楽しいよね!! ふふふ、あの頃に戻ったみたい!!》
 《もぐもぐもぐ!!》
 《エエ。アリガト》




 なぁ……俺、キレてもいいよね?




───────────────


───────────


───────




 俺を無視してケモノ達の話は進み、トレパモールはあっさり仲間になった


 やるせねぇ。そしてそんなトレパモールを俺は抱っこしている
 体の毛はすごくフサフサで触り心地が抜群だ。しかも20センチしかないので両手で収まるし、体重も2キロもないのですごい楽だ


 俺はトレパモールの言葉は理解できないが、トレパモールは俺の言葉を理解できるらしい
 いろいろ喋ってみたがちゃんと頷いてくれた


 《ねぇジュート、トレパモールにも愛称付けてあげて!!》


 ルーチェにそう言われたので考えてみる
 トレパモール、トレ、トレパ……モール。モル、うん


 「よし。今日からお前はモルだ!! よろしくな、モル!!」
 《もぐもぐ!!》


 モルはうれしそうに俺の周りをグルグルと四足歩行で駆け回る


 《モル……》
 《モル……》
 《モル……》




 おいそこ3匹ちょっと表でろ




───────────────


───────────


───────




 とりあえずここから出よう
 モルに出口の場所を聞くと、壁に向かって走り出す


 《もぐ!!》


 そして壁際まで来てその壁を見る。すると、壁に亀裂が入っているのが見えた。その隙間から出れそうだ


 俺はクロを肩に乗せて、反対側にモルを乗せて隙間を進み出した


 「うう、せまい……きつい」


 そのまましばらく横向きで進むと光が見えてきた
 ようやく出口だ。あーキツかった


 外に出るとちょうど〔ウースタイン洞窟〕の反対側の道でちょうど王都に繋がる街道が見えている
 さーて、このまま先に進んで王都を目指そう




 新しい仲間。【黄】の【九創世獣ナインス・ビスト】のトレパモール・イエンシューことモルを加えて、俺たちは〔王都イエローマルクト〕へ向かって歩き出すのだった





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く