ホントウの勇者

さとう

ダナード村③/〔神結晶〕・コロッケ



 鉱山を下山しようと思った時に思いついてしまった


 マフィにこの虹の鉱石のことを聞く
 そのまま町に転移する
 あら不思議、道中を短縮できる


 素晴らしい考えだ。俺って天才?
 さっそく右手のバンドに魔力を集中させ転移する。すると、地面に穴が開いてそのまま落下した




 今度はビビらないで行くぜ!!




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 前みたいにソファの上に転移だな


 「よし、到……」


 なぜか着水。しかも温かい


 「ぶはっ!? 何だこりゃ!?」


 俺はパニックになっていた
 だって前みたいにソファの上かと思ったら、水の上に落ちたんだぞ!?
 ん? 水じゃなくてお湯? なんで?


 んで、この柔らかいのは何なんだ?
 俺の両手は柔らかい何かをガッチリつかんでいた




 「久しぶりに来たと思ったら何のつもりだ? 私とシたいのか? それなら時と場所を選べ」




 もの凄く聞き覚えのある声。まさか……うそ




 そこにいたのは全裸の美少女、【戯神マレフィキウム】ことマフィだった




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 どうやらここは風呂場みたいだ


 俺の両手はこの美少女のムネをガッチリつかんでいる
 見た目は14歳くらいの少女だが、それなりにムネはある
 どうやら俺は湯船の縁にもたれ掛かるようにこの少女を押さえ込んでるらしい
 どう見ても犯罪者だな。じゃなくて


 「おい、いい加減にどけ。ヤるならベッドに行くぞ」
 「しねえよ!! じゃなくて、すすすすまんマフィ!! まままさか風呂場に落ちるなんて!?」
 「べ、別に構わん。それより何か用か?」


 そう言ってマフィは何事も無かったように湯船の縁に手をかける
 ああ、実は……じゃなくて!?


 「と、とにかく風呂上がったら話すよ!! ホントゴメン!! あとでなマフィ!!」




 そう言うと俺は風呂場から飛び出した




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 俺は以前に来た応接室でお茶を飲んでいた


 目の前には科学者風の14歳くらいの美少女
 風呂にはいったのに何故かボサボサのロングヘアに眼鏡、紺色のワンピースに白衣を着た神様
 【戯神マレフィキウム】ことマフィがいた


 「なぁマフィ、神様なのに風呂に入るのか?」
 「ま、まあな。考え事をするのに風呂は最適だ」
 「ふーん。あ、今日はマフィに聞きたいことあったんだ」
 「そ、そうか」


 なんか様子がおかしい。風呂のことやっぱり怒ってんのかな?


 「なあマフィ、大丈夫か? 体調悪いなら出直すけど」
 「も、問題ない」
 「じゃあどうしたんだ?」
 「いや、その。お前の呼び方が……その、慣れなくて。私を愛称で呼ぶヤツなんて生まれてから一度も無かったから」


 マフィは顔を赤くしてそっぽ向いてしまう
 なるほど。コイツはマフィって呼び方が恥ずかしいのか? かわいいとこあるじゃん


 「いやならやめようか?」
 「いや、やめなくていい。そのうち慣れる……イヤ、慣れてみせる!!」
 「そ、そうか」
 「ああ、それで何のようだ?」




 ここでやっと本題に入ることが出来た




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 「ほう、コレは珍しい。〔神結晶しんけっしょう〕だな」


 虹の鉱石を見たマフィはすぐにその正体を看破した
 〔神結晶しんけっしょう〕なんだそりゃ?


 「うむ。神は肉体が滅びても魂が滅びる事は無い、魂はこの世界と別世界の間を彷徨い、長い年月を掛けて肉体を再生させる。しかしコレは本当に時間が掛かる。なので召還の儀式を行いお前達異世界人の体に魂を半融合させて復活する〔神の器〕が生まれたのだ」


 「しかし、神にもいろいろいるのさ。本当にわずかだが自らの意思で魂の死を願う神がいた。長い年月で生きることに飽きたのか、神が死ぬとどうなるのか試してみたかったのかわからんがな。そのときに神の力は全て【創造神ジェネシック・バオファオー】に返還される」


 「そして残った神の肉体が結晶化した物、それが〔神結晶しんけっしょう〕だ。それ自体はたいした物では無い。まぁ非常に純度が高い魔力の結晶だ。売れば金になるぞ」


 どうやらお宝はお宝らしい
 まぁあとで商人ギルドにでも持って行くか


 「ふーんなるほど。わかった、ありがとな」
 「ああ、いつでも来い。お前との会話は楽しいからな」
 「はは、そうか。また来るよ」
 「うむ」
 「じゃあな、マフィ」




 俺は再び転送した。今度は鉱山の入り口をイメージしながら




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 鉱山の入り口についた。何か疲れた
 さっさと冒険者ギルドに報告に行こう。そんで商人ギルドでSレートモンスターの素材を買い取りして貰おう


 俺が〔イエローダイナレックス〕の血やら心臓やらを取ったのは売れるからだ
 〔砂漠の町デゼルト〕のショールさんにいろいろ聞いて、高ランクのモンスターは血と心臓は必ず高値で取引される、爪や牙がある物は武器防具の素材として使えるので、これから先、高ランクモンスターに出会ったら必ずできる限りの解体をしろ。と言われたのだ


 でも正直俺はグロいのは勘弁して欲しい
 すると隣にクロが現れた


 《ふう、やっとルーチェミーアが離れてくれたワ。マレフィキウムには会えたんでショ?》


 俺はクロに結晶の真実を伝えてやった


 《ナルホドね、死を望んだ神……》


 クロは淋しそうに言う




 さて、ギルドに報告に行こう!!




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 冒険者ギルドには仲良し五人組、思い出した〔デッドストライカー〕だ。がいた
 全員少なからず傷を負っている。鎧などにもヒビが入っていてかなり疲れ切っていた
 五人が俺に近づいてきた。まためんどくさそうな予感


 「やぁ腰抜けくん。その姿を見るとやっぱり逃げ出してきたんだね!! フフフ、安心したまえ。〔イエローダイナレックス〕はボク達が始末してきてあげるよ。キミもコレに懲りたら身の丈にあった依頼を受けることだね。ハハハハハハッ!!」


 五人は笑い出す。うっとうしいな
 俺は五人を無視してカウンターに行く。受付は女の人だ


 「依頼完了しました。コレが〔イエローダイナレックス〕の牙と爪です」
 「はい、確認します。それではタグをこちらに……はい、確認終わりました」


 受付のお姉さんは、別室を手で指し示す


 「それでは別室にて報酬の受け渡しを致します。こちらへどうぞ」
 「はーい」


 そう言って受付のお姉さんにクロと一緒について行く
 後ろで仲良し五人組がボーゼンとしてるのが目に入った


 待合室に通されてしばらく待っている。暇なのでクロを膝に乗せてなで回していると、ドアがあいてそこからイケメンの男性が現れた
 30歳くらいのワイルドなイケメンだ。両腕はむき出しでかなり鍛えられているのがわかる、この人は剣士じゃなくてきっと拳闘士だな


 「おう、お前が〔イエローダイナレックス〕を討伐した冒険者か。オレはこの〔ダナード冒険者ギルド〕のギルドマスター、バンギー・モリエールだ。よろしくな!!」


 ニカッと笑い手を出してくる。なんかフレンドリーだな
 でも嫌いじゃない。俺も握手してあいさつする


 「さーて報酬だな。ゴルドカード持ってるよな? ほれ」


 俺の目の前にはカードをスキャンする魔道具が出された
 これにゴルドカードを通して報酬が支払われる仕組みだ
 スキャン完了!! コレで2千万ゴルド入ったはずだ


 「よし、それにしても助かったぜ。〔イエローダイナレックス〕には困ってたんだよ。〔デッドストライカー〕に討伐を頼んだんだが失敗しちまってなぁ、最悪オレと雄志の冒険者で倒しに行くつもりだったんだ。まさかAランク冒険者がソロで倒すとは思ってなかったがな」
 「いやぁ、運がよかったんですよ」
 「はははっ、そうかい。運も実力のうちか、面白いなお前」


 なんか気に入られたっぽい。そろそろお暇させて貰おう


 「すみません、モンスターの素材を売りに行きたいんで」
 「おお、すまんな。所でどんな素材だ?」
 「えーと、心臓と血です。あと宝石」
 「うむむ。見せて貰っていいか?」
 「いいですけど」


 俺は持ってきた革袋から血と心臓を取り出す
 どちらも薬の材料になるらしい


 「ほおお、すごいな。コレが〔イエローダイナレックス〕の心臓と血か」
 「はい、取り出すのに苦労しました」


 肉体的にも精神的にもね


 「なぁ、物は相談なんだが、コイツをこの冒険者ギルドに売ってくれないか? 商人ギルドよりは安くなるが薬の材料だし是非購入したい。売ってくれればオレの権限でお前のランクをS級に上げることも出来る。どうだ?」


 と言われても、まぁ別にいいか。金には困ってないし、商人ギルドだとここじゃ無い所で売られてしまうかもしれない。だったらここで薬を作って役に立った方がいいよね


 「いいですよ。是非役立てて下さい」
 「ホントにいいのか!? おおお、ありがとな!!」


 バンギーさんは俺の手を取ってブンブン上下に振る。チョット痛い


 「宝石は商人ギルドで買い取りだな。任せとけ、イロ付けてもらえるようにオレから言っておいてやるからよ」
 「いいんですか? ありがとうございます!!」


 なんかラッキー、いいことすると気分がいいなぁ。じゃあ早速いきますか


 「よし、行こうぜ。商人ギルドはこの建物の隣だ」




 あ、一緒に行くのね




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 バンギーさんの顔パスであっさりと商人ギルドの待合室まで進めた
 俺の隣でバンギーさんはお茶を啜っている。するとドアが開き、そこから細身の男性が現れた


 たぶんバンギーさんと同じくらいの歳かな
 どことなく冷たい印象の表情に長い青髪、体の線は細いが決して華奢ではない
 切れ長の瞳が俺を見据える


 「はじめまして、私は〔ダナード商人ギルド〕のギルドマスター、ナイル・カナリーと申します」


 喋ってわかった。この人、恐い人じゃない。バンギーさんとおんなじ雰囲気を感じる


 「おっす、ナイル」
 「ハァ、バンギー、アナタはいつも突然やって来ますね」


 知り合いなのか? 俺が二人を交互に見るとナイルさんが言う


 「子供の頃からの腐れ縁ですよ。いい加減切りたいんですけどね」
 「そうつれねぇこというなよ、お前との決着はまだついてねぇんだからよ」


 この二人は王都出身の貴族で、年も近かったためにお互いライバルのような関係らしい
 バンギーさんは拳、ナイルさんは剣が得意で二人でSランク冒険者まで上り詰めてギルドマスターに就任したそうだ


 さて、本題だ


 「買い取りを希望でしたね?」 
 「おう!! コイツには恩がある。高値で買い取ってやってくれ」
 「何故アナタが言うんですか。済みません、こんな奴で」
 「いえいえ、仲がいいんですね」
 「そう見えるか? はっはっは!!」
 「全く。話が進まないのでアナタは黙っていて下さい」


 俺は袋から〔神結晶しんけっしょう〕を取り出した


 「コレなんですけ……」


 俺は最後まで言葉が出なかった
 なぜなら、二人がものすごいアホ顔だったからだ


 「あ、あのー……?」
 「……」
 「……」




 まだ硬直してる。よし


 「あのー!! バンギーさん!! ナイルさーん!!」
 「はっ、済みません。まさか、しかし……これは」
 「お、俺も初めて見たぜ」
 「しかもこのサイズ、あり得ない」
 「どうすんだよ、イロなんて付けたらこの村の金庫全部空っぽになっちまうぞ」
 「たしかに、まさかこの目で〔神結晶しんけっしょう〕を見るコトが出来るなんて」
 「伝説の鉱石、神の魔力の結晶、こんなモンが〔ミルマイン鉱山〕に眠ってたなんてな」
 「七色に輝きし鉱石、この村では伝説の鉱石として扱われて、10センチの結晶が今は王都の地下宝物庫で保管されていると聞きます。コレを持って行ったら大騒ぎですね」
 「ああ。コレを持って行ったら間違いなくこの村に冒険者や商人は殺到するぞ。くくく、そうなれば村じゃなくて町として認可される。町ももっと拡大するぜ」


 俺、完全に置いてきぼりなんですけど
 するとナイルさんは俺を見て言う


 「申し訳ありません、ここでは買い取りは出来ません。これを買い取る資金がまったく足りないのです。よろしければ王都までご足労願えれば」
 「しょうがねえな、伝説の鉱石なんてこの村の金庫程度で買えるワケねぇしな」


 やっぱりそうか。〔王都イエローマルクト〕に行けば買い取ってもらえるのか
 正直金には困ってないしスルーしてもいいけど、【青の大陸ネレイスブルー】では王都に入ってもすぐに王城で町を見られなかったし、それに王城に行けばブランにも会えるかもしれない


 よし、王都に行くか!!
 でもその前に〔ウースタイン洞窟〕でトレパモールの所に行かなきゃな。そのあとに王都に行こう


 「私が王へ紹介状を書きましょう。それを見せればきっと買い取ってくれますよ」
 「オレも書くぜ!! 高く買い取れってな!!」
 「……やめなさい。品性を疑われますよ」
 「そうか? はははははっ!!」


 バンギーさんとナイルさんのやりとりを聞いて紹介状をもらう
 正直お金はどうでもいい、ブランが元気か確認するついでだ




 俺はバンギーさんとナイルさんに別れを告げて宿に戻った




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 俺は〔ふわふわ亭〕に戻ってきた、するといい匂いが店の中に充満していた


 「おかえり~」
 「やぁジュートくん、おかえり」


 アルナブさんとコニーニャさんが二人で料理を作っていた
 メニューはとんかつ。でも作りすぎじゃね?


 俺の目の前の大皿にとんかつが山盛りになっている
 アルナブさんとコニーニャさんは楽しそうにカツを揚げていた
 近くには魔導温蔵庫が設置してあるし、コレにしまうのか?


 「あの~、作りすぎじゃないですか?」
 「ん? あぁいいんだ。実は宿の前に露店を出そうと思ってね、このとんかつを売ろうと思うんだ」
 「きっと大繁盛よ~、ふふふっ」


 なるほど。よし、俺も協力しよう
 とんかつが作れるならコロッケも作れるはず
 じゃがいも、肉は挽肉にして、タマネギもあるぞ


 「アルナブさん、コニーニャさん、俺も手伝います!! 実はまた思いついたんですよ」
 「な、なにっ!? まだあるのか!!」
 「わ~お!! びっくり~」


 めっちゃ期待してる。ふふふ、いくぜ!!




 コレが俺のコロッケだ!!




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 まぁ無難なのが出来ました
 母さんが作ったコロッケには遠く及ばないが、アルナブさんとコニーニャさんはバクバク食べている


 「素晴らしい!! 実に素晴らしい!! コレは売れる、売れるぞ!!」
 「う~んおいしい~!! 癖になりそ~」


 それからはコニーニャさんは料理を作り、アルナブさんにいろいろアドバイスをした
 たとえば、手が汚れないように料理用のペーパーで包むとか、油っぽいのでお茶を一緒に販売するとか
 まあ俺が思いつきそうな簡単なコトだが、アルナブさんは感動していた


 その日の夕食はとんかつとコロッケだった。うまいけど米がほしい!!




 明日は出発の日だし、いっぱい食べておこう




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 「もう行ってしまうのか。キミには本当に世話になった」
 「また来てね~、アナタなら大歓迎よ~」


 次の日の朝、宿の前にはアルナブさんとコニーニャさんが見送りに来てくれた
 二人の露店が見れないのは残念だけど、俺も旅を再開しなきゃな


 「また来ます、そのときは美味しいとんかつとコロッケを食べさせて下さい」
 「もちろんだ、任せてくれ!!」
 「腕によりをかけるわよ~」


 言い笑顔だ。きっと最高のコロッケとトンカツが出来るだろう


 「それじゃあ、お世話になりました」
 「また会おう、ジュートくん」
 「クロちゃんも元気でね~」


 二人に見送られて俺は町を出た
 さて、次はいよいよ〔ウースタイン洞窟〕だ
 【九創世獣ナインス・ビスト】の一匹、【トレパモール・イエンシュー】がいる洞窟に向けていざ出発だ




 そうして俺は【流星黒天ミーティア・フィンスター】で走り出した




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 こうしてこの〔ダナード村〕に新しいグルメが誕生した


 「とんかつ」と「コロッケ」という今までに無い食感の食べ物はこの村から広まっていき後に王都や他の大陸でもブームを巻き起こす


 開発者のウサギ獣人夫婦はさらに料理をアレンジして、宿屋〔ふわふわ亭〕の隣に揚げ物専門店〔さくさく亭〕をオープンし大成功を収めたそうだ


 ダナード村は後に町となり名前を変え〔鉱山都市ダナーディア〕として冒険者や商人が集う町になり発展していく


 〔さくさく亭〕は規模を拡大して【黄の大陸】のみならず他の大陸でも見かけるような一大有名店として成長して行くのは、もう少し後のお話




 〔さくさく亭〕の全ての支店の看板には、この店のマスコットキャラクターが印刷されている






 どういうわけかそれは─────黒猫だったという







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