ホントウの勇者

さとう

ダナード村②/〔ミルマイン鉱山〕・【黒・紫・灰】



 「ふぁぁぁ……おはよう」


 俺の目覚めは最高だった
 昨日はとんかつを作ってアルナブさんとコニーニャさんと一緒にご飯を食べた
 その時にアルナブさんがお酒を持ち出し、みんなで飲み始めたのだ。俺も少しだけ飲んだ
 未成年だから、と言って遠慮したら首をかしげられた。どうやらこの世界には飲酒の年齢は決まってないらしい
 そういえば〔人魚の町セレーヤ〕で酒を飲んだらしいが、よく覚えていないからノーカンだ


 俺が飲んだのはこの村の名産のビール
 始めて飲んだビールは、苦くてシュワシュワして変な味だったが不思議と飲めた
 しばらく飲むと顔が熱くなってぼんやりしてきたのでそのまま部屋に戻って熟睡してしまったらしい


 俺は魔術で体をキレイにして一階へおりる
 焼き立てのパンの甘い匂いがする


 「あら〜おはよう」 
 「おはようございます」
 「ふふ、今ご飯にするからね〜」


 受付の隣がラウンジになっていてそこで朝食を食べるようになっている。俺はあえてカウンターに座った


 「は〜いおまたせ〜、どうぞ召し上がれ〜」
 「おお、いただきます!」
 「ふふ、クロちゃんはこっちね〜」


 朝食メニューは焼き立てパン、ベーコン、サラダ、スクランブルエッグ、コーンスープ、オレンジジュースだ
 クロには細かく千切ったパンに魚と卵を混ぜた物だ


 「うん、やっぱりうまい」


 朝食を終えるとコニーニャさんはお茶を出してくれた


 「今日の予定は何かしら〜?」
 「はい、今日は〔ミルマイン鉱山〕でモンスター退治ですね」
 「あら〜、冒険者さんは大変ね〜」
 「いやぁ、所でアルナブさんは?」
 「まだ寝てるわ〜。昨日チョット頑張りすぎちゃって〜」


 聞きたいけどやめておこう。さ、さぁて行きますか


 「ジュートくん、これ持っていって〜」
 「はい?」


 コニーニャさんが蓋付きの大きなバスケットを差し出してくる。中を開けよう


 「これって……おおお!?」
 「今朝作ってみたの〜。美味しかったわ〜」


 そこにあったのはサンドイッチだった
 野菜やハムを挟んだ物に、とんかつを挟んだカツサンド、果物を挟んだフルーツサンドといっぱい入ってる


 「お弁当よ〜。ふふ、頑張ってね〜」 
 「ありがとうございます‼ 頑張ります‼」


 コニーニャさんの気遣いがとても嬉しかった




 さて、モンスター退治頑張りますか!!




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 「おや、キミは昨日の身の程知らずじゃないか」


 俺の目的地は〔ミルマイン鉱山〕そこにいるSレートモンスターの〔イエローダイノレックス〕だ


 「キミもこれから依頼をこなしに行くのかい? 悪い事は言わない、やめておきたまえ。キミが死ぬのは構わないがモンスターを刺激して暴れられると始末が面倒なんでね」


 〔イエローダイノレックス〕は鉱山の最深部に生息してると言われていて、縄張りに入った冒険者やモンスターなどをエサにしているらしい


 「ボク達はこれから東の岩石地帯に生息するSレートモンスター〔イエローロックタイタン〕の討伐さ、レートこそ同じだか強さはこちらのほうが上・分かっただろう? キミ一人でどうにか出来るモンスターではない」


 俺はこの戦闘で試したい事があった、それは魔術のレベル上げである


 「身の程知らずくん。キミみたいな無謀な馬鹿に鉱山を荒らされたくないんだよ、〔イエローダイノレックス〕にエサをあげに行くようなものだ。次にヤツを始末するボク達の身にもなってくれ」


 俺は〔四大魔素エレメンツ〕は上級魔術まで扱えるが、〔四高魔素アンチフォース〕はまだ【白】のみが上級レベルだ。なのでこの戦闘では【黒】【紫】【灰】の魔術を使って戦闘を行おうと思ってる


 「おいお前、聞いているのか‼‼」
 「え? あ、はいどうも」


 びっくりした。昨日の仲良し5人組じゃん
 確か名前は……なんだっけ?


 「貴様、ボク達をナメてるのか?」
 「ねぇクリフ、こんなのに構ってないでさっさと行こう」
 「そうよ、時間のムダだわ」


 二人の魔術師に言われてクリフは俺を睨みつけて舌打ちをする。そしてそのまま去っていった
 マジでなんだったんだ?




 まぁいいや、さっさと行こう




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 〔ミルマイン鉱山〕は村の入口の反対側にある
 入口は洞窟のようになっていて、特殊な鉱石が発光してるおかげで中はとても明るい
 宝石は、この洞窟の壁や岩を削るとその原石が現れる。上層に行けば行くほど良質な宝石が取れるがその分モンスターも強力になっていく仕組みだ 


 俺はさっそく鉱山の中に入る


 鉱山なので開発された後があり、ツルハシやスコップ、トロッコなどが放置されていた。頻繁に使われているのかボロっちい
 下層にはモンスターはそんなにいない、いても〔イエローバット〕みたいな40センチくらいのコウモリに〔イエローマンティス〕って言う1メートルくらいのカマキリだ。どちらもBレートのモンスターで大したことはない


 そのまま岩を登ったり、先人が残したハシゴやツタを登り中層まで来た
 この辺りから進める冒険者とそうでない冒険者に別れる。出て来る敵は全てAレート以上のモンスターの巣窟だ
 暫く進むと横穴を見つけた


 「よし、休憩するか」


 俺はコニーニャさんが作ってくれたサンドウィッチを取り出し、カツサンドを手に取る


 「クロは何にする?」
 《ソウね、フルーツサンドがいいワネ》
 「はいよ」


 俺達はゆっくり食べ始めた。すると目の前に青い紋章が輝きルーチェが現れた


 《ずるーい‼ 私も食べる‼》


 どうやらルーチェはクロのフルーツサンドが食べたいらしい。悪かったな、ほれどうぞ


 《やった‼ いただきまーす。んぐんぐ、ん〜おいし〜》


 ルーチェはもぐもぐ食べ始める
 俺達も負けじと食べてあっという間にサンドウィッチはなくなってしまった


 《お腹いっぱい、ごちそーさま。ふわわ、眠くなって来ちゃった……クロシェットブルム〜、一緒に寝よ〜》
 《ニャっ⁉ チョッとルーチェミーア⁉ もう!!》


 ルーチェはクロを抱っこしたまま消えてしまった




 ここからは俺一人かよ、仕方ないな




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 中層を一人で歩いてるとそこそこ大きな空間に出た


 「──────何かいる……上か‼」


 上を見上げるとそこには巨大な3メートルほどのコウモリ
 Sレートモンスター〔イエロージャイアントバット〕が俺目掛けて急降下してきた


 俺はその攻撃をバックステップで緊急回避する
 巨大コウモリはそのまま方向転換して再び上昇した


 「試して見るか……」


 俺は手に魔力を集中させて巨大コウモリの攻撃の瞬間を狙う
 コウモリが再び急降下してきた──今だ‼


 「【紫】の中級魔術、【雷公玉震レイディー・グラッツ】‼」


 俺を狙っていた巨大コウモリの真正面に紫の紋章が広がり、そこから紫の球体が飛び出し巨大コウモリを包み込む。そして球体の中で雷が巻き起こる


 「ギガガガガガガガ‼」


 巨大コウモリが苦しみ、そのまま地面に落下して動かなくなった
 体は所々焦げていてプスプス煙も上がっている
 Sレートモンスターなのに中級魔術で1発か。俺が強いのか、敵が弱いのか




 まだまだ検証が必要だな


 
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 そのまま進みやっと上層まで来た
 この辺りはほとんど開発されてないのか、人が手を加えた形跡がほとんどない
 冒険者も中層では2〜3組すれ違ったがこの辺からは気配すら感じない


 そのまま進むとモンスターが出て来た。〔ルビーマンティス〕、〔ダイヤバード〕、〔アメジストスネーク〕などの体が宝石で出来てるレアモンスターだ。倒して一応回収しておく


 そのまま歩くと最深部に着いた
 円形のドームみたいな空間で、奥に洞穴が開いている
 そこからモンスターの気配を感じる


 「ゴアァァァァッ‼」


 こいつが〔イエローダイノレックス〕か
 姿はまんまティラノサウルス、体は黄色で尻尾は透明な黄色の宝石で包まれている。あれで叩かれたらヤバイ
 腕と足も極太で爪が黄色い宝石になっていて、牙も宝石になっている。成金みたいだな


 恐竜は俺をエサと思ったのか口を開けて襲いかかってきた
 動きも速いが直線的だ
 俺は真横にジャンプして交わす
 すると、恐竜は急ブレーキを掛けてその勢いに乗せて尻尾でなぎ払いをしてきた


 「マジかよ⁉」


 俺は限界までうつ伏せになり何とか回避
 恐竜は早くも体制を立て直して再び向かって来た
 舐めんなよ、この恐竜め


 「【黒】の中級魔術、【床闇之沼ダスク・マーシュ】‼」


 恐竜が向かって来る先に黒い紋章が広がる


 「ゴガッ⁉ ゴガアアアアアアッ‼」


 恐竜が紋章に踏み込んだ瞬間、足元が闇の沼地へ変化した
 恐竜の体は足が完全に沼地に飲み込まれている
 上半身をバタバタさせてるが脱出は無理だろう
 さて、こいつでトドメだ‼


 「【灰】の上級魔術、【針釘乱刺ネイルギル・ソーン】‼」


 沼地で暴れる恐竜の周りに無数の灰色の紋章が囲み、その紋章から巨大な銀杭が飛び出す


 「ギャガッ!?」


 そして、恐竜の体を串刺しにした。あぁ哀れ
 うーん………グロいな




 とにかく、勝利だな‼




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 俺は恐竜の体の一部の牙、爪、尻尾の一部に、かなりグロかったが心臓と血液を回収した
 ナイフで心臓をえぐるなんて正直二度とやりたくない。うう、夢に見そうだ


 俺はそのまま帰ろうと思ったが、この恐竜が出て来た洞穴が気になり、進んでみることにした


 洞穴は真っ直ぐの道で奥に空間がある
 鉱山の本当の最深部、こういうのってお約束だよね


 「なんだこりゃ……?」


 そこには、虹色に輝く宝石? いや鉱石、原石? が埋まっていた
 それは自体が輝き辺りを眩しく照らしている


 「すげぇ……よし、掘り出そう」


 俺はナイフを使い慎重に掘り出した
 宝石の大きさはボーリング玉ぐらいで虹色に輝いている。重さは2キロくらいで全然軽い。これお宝なのかな? 


 頭の中でクロを呼ぶ。おーいクロさんや、出てきておくれ
 すると俺の横で紺色の紋章が輝き、クロが俺の肩に現れた


 《どうしたノ?》
 「いや、この宝石? 何かわかるか?」
 《……うーン。妙なチカラを感じるケド》


 クロは前足で鉱石をペシペシ叩きながら言う


 《こうイウのはマレフィキウムに聞けばいいんじゃナイ?》
 「ああ、その手があったか」


 これは依頼とは関係ないし、仕舞っておこう




 さーて、帰ってギルドに報告しますか





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