ホントウの勇者

さとう

ダナード村①/〔デッドストライカー〕・クッキング



 俺とクロはいま【流星黒天ミーティア・フィンスター】で街道をひたすら走っている
 同じように魔導車ですれ違う冒険者達がいたり、前を魔導車で走ってたり。この先に何か有るのかな?


 「なあクロ、〔ダナード村〕ってどんなとこなんだ?」
 《確かあそこは近くに宝石がとれる鉱山があったワネ》


 宝石か、正直興味ないな


 《宝石は高値で売れるからネ。冒険者がこぞって集まるノヨ。デモ、鉱山にはAレートのモンスターの巣になってて高ランクの冒険者しか入れないと言われてるワネ》
 「へぇ。なんか面白そうだな、入ってみるか?」
 《何デ?》
 「いやお前ネコだし、光りモノ好きだ……あいててて!? ひっかくな!!」


 とまぁこんな感じで平和に進んでいた




 なんかこういうの久しぶりだな




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 そのまま走ること3時間。村が見えてきた


 まず驚いたのが村の入り口が駐車場のようになっていて様々な種類の魔導車が止めてあった
 ワゴンタイプ、乗用車タイプ、オープンタイプと種類が豊富でびっくりした。コレ全部鉱山発掘の冒険者の乗り物かな?


 村の中に入ると、穏やかな雰囲気に包まれていた


 「おお、いい雰囲気だな」


 建物は木造建築で2階建ての建物が多い
 村の中には川が流れていてそこには澄んだ水が流れ、村の中央には毎度おなじみの冒険者・魔術・商人・傭兵ギルドに各商店・露店に宿が並んでいる
 ガタイのいい冒険者やなぜか身なりの良さそうな女性が多い。宝石目当てだなこりゃ


 この村は小麦や大麦がメインの農作物で、町にはパン屋や酒屋が沢山あり、鉱山発掘で疲れた冒険者でものすごく賑わっている
 すると頭の中で声が聞こえる。これはアグニか


 《オイジュート!! ウマい麦酒をいっぱい買っとけよ!!》
 《わたしも甘いパンが食べたいな~》


 ハイハイわかってますよ、アグニとルーチェの好みは押さえてあるからな
 まずは宿を押さえてから買い物かな


 俺は近くにあった宿屋、〔ふわふわ亭〕にやって来た
 なんかウマそうな名前につられてしまった。すると受付から女性が出てきた


 「いらっしゃいいませ~、〔ふわふわ亭〕へようこそ~、お泊まりですか~?」


 20歳くらいのうさ耳獣人お姉さんが出てきた
 この人もなんかふわふわしてんな、そういうスタイルなのか?


 「はい。一人と……ネコは大丈夫ですか?」
 「もちろん大丈夫ですよ~、あららカワイイネコちゃん、おいでおいで」


 うさ耳お姉さんがクロを捕まえようとしたがあっさり逃げられた
 クロは俺の肩に避難している。コレも久しぶりだな


 「あらら残念~、おっと仕事仕事!!」


 受付を済ませて支払いをする、そして部屋へ案内されて一息ついて再び村へ出るか
 そう思い部屋を出て受付に行くと、うさ耳お姉さんが受付に飾ってある花に水をあげていた
 うさ耳お姉さんは俺に気づくとにっこり笑って言う


 「お客さんも鉱山へ宝石取りに来たんですか~?」
 「いや、そういうわけじゃないんですけど」
 「あら~そうなんですか。この村に来た人はみ~んな宝石取りに〔ミルマイン鉱山〕に登って行くから~、私のダンナもよく登るんですよ~」


 こ、このお姉さん結婚してたのか。何かチョット複雑


 「ああ~申し遅れました~、私この〔ふわふわ亭〕の女将のコニーニャです~。よろしくね~」


 うーん、かわいい。とても人妻には見えない




 取りあえず俺も挨拶して宿を出た。買い物しよ




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 この村は麦、すなわちパンとビールとウィスキーが有名だ
 例によって酒屋で酒を大量に買い、パン屋でパンを沢山買った
 驚いたのはガレナのドライフルーツパンが売っていたことだ
 店の定員に聞いてみたらこのパンは〔砂漠の町デゼルト〕の腕利きパン職人オリジナルのパンで、【黄の大陸】で徐々に広がりつつあるらしい
 〔砂漠の町デゼルト〕ではすぐに売り切れてしまうために、ガレナが作り方を教えて広めているらしい。味の独占よりもみんなに食べて貰いたい、そんなガレナの気持ちがこもってる気がした


 買い物も一通り終わると腹が減ったので、露店で腹を満たすことにした
 選んだのは〔オークバーガー〕。この町のパンに焼いたオークの肉を挟んで食べるハンバーガーだ
 俺とクロのぶん2つを買ってベンチに座る。ついでにジュースも買って一息ついた
 気になるコトもあって俺はクロに聞いてみた


 「なぁクロ、この世界にはとんかつって無いのか?」
 《……なにソレ?》


 やっぱりないのか
 だって、卵に小麦に豚肉に油にがあるからさ、普通あるって考えるじゃん!!
 パン粉はパンを乾燥させて細かくすればできるしな
 やっべぇ、考えたら食いたくなってきた。取りあえず材料を沢山買っていこう
 パン屋に聞いたら古くて乾燥したパンも貰えた、こんな物どうすんだっていわれたけどね




 宿に帰ったらコニーニャさんに頼んで厨房貸して貰おっと




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 とんかつはお楽しみに取っておいて冒険者ギルドを覗いてみる
 依頼を受ける気は無いけど一応冒険者だしね、どんな依頼があるかぐらいは


 冒険者はやっぱり5~6人のグループに分かれていた
 ギルド内にはかなり人がいる。50~60人くらいかな?
 依頼掲示板を覗いてみると、依頼のほとんどが宝石採掘の依頼だった。しかも依頼者は大富豪や商人ばかり
 まぁしかたないか。鉱山の村でしかも良質な宝石がとれるならな
 依頼のランクはほとんどAレート、〔ミルマイン鉱山〕は強力なモンスターが住み着いているためにA級冒険者でないと入ることが出来ないらしい。と言うことはここにいる冒険者は全員A級冒険者と言うことだ
 俺はその中に一つだけ、Sレートの依頼があるのを見つけた


  〔イエローダイノレックス〕討伐・Sレート・報酬2000万ゴルド


 ほう? Sレートか。ふむ、せっかくだし受けてみるか
 俺はこの依頼を受けることにした
 依頼書をはがし受付で依頼を受諾する
 周りがざわついているが気にしない。なれたもんだぜ


 依頼を受けて外に出る。今日はもう帰ろう、とんかつとんかつ!!
 すると1組の冒険者が俺に近づいてきた


 「やあお兄さん、腕に自信があるようだね?」
 「A級冒険者みたいだけど、Sレートモンスターはねぇ」
 「しかもソロよ。フフッ、死にたいのかしら?」
 「まぁいいじゃねえか。よっぽど腕に自信があるんだろ?」
 「やめなってば、うふふ……かわいそうよ」


 なんだコイツら? 邪魔だな、どけよ


 「あのー、邪魔なんですけど」


 俺がそう言うと5人組の冒険者は顔を合わせて大笑いし始めた
 ええー、なんかめんどくさそう。スルーして帰るか


 「おいおいまてよ。キミは旅の冒険者だろう? 僕たちS級冒険者チーム〔デッドストライカー〕に挨拶もなしで帰れると思っているのかい?」
 「はぁ」
 「いやそうじゃない。この【黄の大陸】最強のチームである僕たちを差し置いてSレートの依頼をキミが受ける? そりゃおかしいだろ」
 「はぁ」
 「まぁ、キミが死んだらその依頼を受け直すとしよう。何が言いたいのかと言うと、身の程を知れ、と言うことかな」
 「はぁぁぁぁ……ふあぁぁ」
 「……まぁいい。精々無様に挑んで逃げ帰るといい。ボク達は別のSレートの依頼を受けさせて貰うとするよ」


 そう言って5人は行ってしまった。最後にあくびしたのばれちゃったかな?
 すると周りの冒険者さん達がいろいろ行ってきた


 〔デッドストライカー〕は【黄の大陸】で最強のS級冒険者チームだ


 まずリーダーで俺に話しかけてきた剣士・クリフ
 若干20歳の天才剣士で〔王都イエローマルクト〕の武具大会で15歳から18歳の3年間連続優勝を果たし、その腕を見込まれて冒険者となった。冒険者になってわずか1年でSレートモンスターを10体以上駆逐して王都が正式に認めたS級冒険者になる。多彩な剣術と【緑】属性を合わせたオリジナル剣術は見切れる者はいないと言われている


 二人目が上級魔術師の女性・フール
 年齢は19歳の上級魔術師、属性は【赤】の魔術師
 上級魔術師に昇格したのは16歳の時で、この時すでに数々の実戦を経験していた戦闘魔術師として名を馳せていた。王都でクリフと知り合って冒険者になったらしい


 三人目も上級魔術師の女性・ポーラム
 年齢は19歳の上級魔術師、属性は【青】の魔術師
 彼女はフールと同期でライバル関係の魔術師で、相反属性同士なのでいつもフールと争っていたらしい。魔術の腕は互角で一緒にクリフに冒険者に誘われたために、どちらが先にクリフを射止めるか競争中。この話は冒険者達の間で有名らしい。しかしクリフは二人と関係を持っているらしく勝負は永遠に付かないだろうと言われている


 四人目は大剣士のリボック
 年齢は34歳の大剣士で、元騎士団の中隊長で15歳から15年間騎士団で剣を振るっていた歴戦の剣士だ。クリフに剣を教えていた事もあるらしく年の離れた弟のようなヤツだといって可愛がっているらしい。しかしその剣の腕は【黄の大陸】では最強クラスで、かつてドラゴンの首を両断したこともあるそうだ


 五人目は弓士の女の子・リピール
 この子は【緑の大陸グレングリーン】から来たハーフエルフの少女で歳は17歳。ハーフエルフはエルフの劣化種族と言われていて魔力が中級魔術師程度の力しか出ない。しかしその視力は非常に優れていて人間よりも遙か遠くを見ることが出来る。故郷の村を出て旅をしていたところをクリフにスカウトされた


 このチームには共通点がある。それは、弱い人間を見下し、自分たちの力を周りに見せつけたがる所だ。なので周りとトラブルになり、けんかを売った冒険者などが再起不能に陥ることもそれなりにあったらしい
 同族嫌悪と言う言葉があるが、この五人は総じて弱者を見下すために非常に仲がいい。実力がある分ギルドなんかは見て見ぬふりをするしかない


 周りの冒険者が熱心に解説してくれた
 目を付けられたらヤバいから気を付けろとみんな注意してくれた
 A級冒険者さんたち、いい人達ばっかじゃん




 ……っていうかこの情報役に立つのか?




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 俺は〔ふわふわ亭〕に戻ってきた
 あのSランク冒険者五人の説明を聞くのは疲れた


 「おかえりなさ~い。早かったですね~」


 間延びした声が俺を出迎えてくれた。何か安心するなぁ


 「ただいまです。コニーニャさん」
 「は~い。ネコちゃんもお帰り~」


 コニーニャさんはクロを再度捕まえようとしたがやはりクロは逃げてしまう
 すると、受付の奥からうさ耳の男の人が現れた
 20歳くらいのイケメンだ。顔は優しいが体はだいぶ鍛えられているのが服の上からでもわかった


 「いらっしゃい、ボクは〔ふわふわ亭〕主人のアルナブだ。よろしくね」


 なんとも優しい自己紹介だ。俺も挨拶する
 イケメンに美女のウサギ夫婦か。ホントにお似合いの二人だな
 おっとそうだ、厨房を借りるお願いをしてみよう


 「あの、お願いがあるんですけど」
 「お願い? なにかな?」
 「えと、厨房を貸していただけませんか?」
 「厨房~? お料理するのかな~?」
 「はい、この町の食材で作ってみたい料理がありまして」
 「ふむ、まぁいいだろう。ただしボクにも見学させてもらうよ」
 「は~い、わたしも~」
 「はい。ウマく出来るかわかりませんけど、出来たら是非味見もお願いします」
 「ははは、それは楽しみだね」
 「うんうん~、期待してるわよ~」




 よっしゃ!! 許可は貰ったし調理開始だ




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 とんかつなんて調理実習以来だな。確かレシピは


 1・最初に豚肉であるオーク肉の筋を切るんだっけ
 そのまま揚げると反り返っちゃうんだよな、スッスッスッと。こんな感じか、ホントはなんかタレとかに漬け込むんだけど、覚えてないからいいや


 2・付け合わせの野菜を切る。この世界のキャベツは甘くておいしい、コイツを千切りにしてっと、ストトトトトトっと。これでどうよ


 3・えーと、次はたしか肉を小麦粉、溶き卵、パン粉の順番でころもを付けるんだよな。ヤバい、自信がなくなってきた。ちなみにクロは危ないのでコニーニャさんに抱っこして貰ってる。クロはコニーニャさんの巨乳に埋もれていた……うらやましい


 4・油を温めていよいよ揚げるんだよな。油の温度なんてわかんねーぞ
 まぁ適当でイイか。だいたい中温から高温くらいだったような……えーい投入しちゃえ!!


 5・たしか五分ぐらいで揚がるんだよな?
 うろ覚え過ぎてわからん。ちなみに米も炊いてあるし、野菜スープも作ったのでとんかつが出来ればすぐにご飯に出来る。他の泊まり客は全員酒場に行ってしまったので今日は俺とアルナブさんとコニーニャさんの三人でご飯だ・そろそろいいかな?


 出来たけど、見た目はとんかつだ


 「味は……うまい!!」


 いいねいいねとんかつじゃん!! 大成功だ!!


 俺は器にご飯を持ってキャベツを敷く、その上になんとソースを掛ける
 実はこの世界にもソースがあったのだ。材料はトマトやら砂糖やらよくわからなかったが、味はちょっと甘いソースそのものだった
 そして大きめに切ったカツをのせてソースを掛ける


 「う、うんまそ~。ヨダレ出そうだ」


 スープをよそって、完成!!
 アルナブさんとコニーニャさんの生活スペースで一緒に食べることにした


 「いい香りだ。こんな料理は初めてだ」
 「おいしそ~、さぁたべよ~」
 「はい、それじゃあ」


 「「「いただきます」」」


 それではとんかつをモグモグっと


 「うんまぁ~~」


 この世界では焼いた肉だけだったからなあ。余計にうまく感じる


 「な、なんだこの食感は!? なんだこの旨さは!?」
 「お・お・お・おいし~~い!!」


 二人も感動してる、よかった
 クロも美味しそうにモグモグ食べてる
 今度アグニとルーチェにも作ってあげよう




 俺たちは楽しく食事の時間を過ごした




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 「いやぁジュートくん。こんな美味しい料理を本当にありがとう、ぜひレシピを教えてくれないか?」
 「もちろんです。米は無いのでパンに挟んで食べてもおいしいですよ」
 「ほう、それはいい考えだ!!」
 「ねぇアナタ~、この〔ふわふわ亭〕の新しい看板料理にしましょうよ~」
 「そうだな。コニーニャ、キミの腕に掛かってるぞ」
 「ふふ~ん、がんばるわ~」


 そのあとにコニーニャさんに作り方を伝授した
 油の温度などよくわからない所はコニーニャさんの感覚で揚げたらあっさりと出来た
 さすが主婦。俺とはレベルが違う
 そんな感じで俺たちの夜は更けていく


 明日は〔ミルマイン鉱山〕でSレートモンスター退治だ
 実は俺にはやりたいことがあった




 とんかつ食べてゲン担ぎも出来たし・・明日もがんばろう!!





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