ホントウの勇者

さとう

貴族都市ガルベイン⑥/全然たりない・【白】の才能



 子供達に朝食を作る
 お菓子をいっぱい置いて留守番をお願いし、再び俺は城にやって来た
 すると城の入り口にイエーナが立っていた……その表情はとても明るい


 「おはよう。いい顔してるじゃん」
 「ふふ、何言ってるのよ。私はいつもと同じよ」


 嘘つけ、そんなにいい笑顔じゃ無かったぜ
 今は凄いキラキラしてる。素直にカワイイと思う


 「パパとほとんど徹夜で話したわ。奴隷のことも、私のことも」
 「イエーナ、大丈夫なのか?」
 「うん。パパと約束したわ……ママと話してこの都市を変えてみるって。今までは迷ってたけど、もう迷わないって」
 「ああ、がんばろうな!! 子供達のために」
 「うん。パパから手紙を預かってるの、ママに渡してって」
 「そっか……じゃあ行くか!!」
 「うん、行こう!!」




 俺とイエーナは、反対側の城に向かって歩き出した




───────────────


───────────


──────






 昨日とおんなじ流れで今は待合室の中に居る


 今更だがエンダイブ家とナルシス家の争いは、あくまでも家の争い
 領民同士は仲が悪いと言うことは無い
 きっかけさえあれば、全てを元に戻す事は不可能じゃない


 後で聞いた話だが、ナルシス家の時期当主が暗殺された時も領民は大して関心は無かったらしい
 ジャスミンの兄は素行が悪く、時期当主としては望まれていなかったのでジャスミンを時期当主にする声がかなりあったと言う


 しかしジャスミンは留学して不在
 ジャスミンの兄の当主の座はほぼ決定的、領民は悲観に暮れた所での暗殺騒ぎ
 ナルシス家の領民は内心エンダイブ家に感謝していた。これでジャスミンを呼び戻す口実が出来たから


 流石に暗殺騒ぎがあったので両家は断絶。領民以外の交流は一切なく今に至る


 もう時間もだいぶ経ったし、イエーナをきっかけにして全てをやり直すいい機会だ




 父親の手紙を握り締めて表情を引き締めるイエーナを見て、俺はそう思っていた




───────────────


───────────


──────






 俺とイエーナの面会の順番が来た


 イエーナは緊張してる……俺が先に行くか


 「イエーナ。俺が最初に行く」
 「お願い、まだ緊張して……」
 「ああ。ドア越しに聞いてろよ」


 俺は領主室のドアをノックして静かにドアを開けた


 部屋の間取りはエンダイブ城とほぼ同じ
 調度品の種類や配置が違うだけのおんなじ部屋って感じだな


 執務机の上で書類整理をしてる女性……この人か


 「いらっしゃい。初めての方ね? 私はジャスミン・ナルシス。このナルシス領の領主よ」


 イエーナの母親
 それにしても凄い美人だ
 イエーナが大人になったらこんな風になるんじゃないか?って感じの容姿に髪は栗色、服の上からでもスタイル抜群なのがわかる。大人の色気……これが人妻か


 ……って俺は何考えてんだ


 「どうかしましたか?」
 「い、いえ。なんでもありません」
 「そうですか。それでは本日のご用件は?」


 さて、本題に行きますか
 俺は昨日と同じ話をジャスミンさんにぶつける


 「わかっています。奴隷の扱いの酷さを」
 「しかし私の力だけ・・ではどうしようもありません。ナルシス領だけで規制を掛けたら反発が起きるのは間違いありません……それに、エンダイブ家とは、もう」


 ジャスミンさんは辛そうに顔を伏せる
 エンダイブ家の名前。間違いなくナギットさんの事だ


 「大丈夫ですよ」
 「え……?」


 俺の言葉にジャスミンさんが顔を上げる






 「もう、話はついてますから」






 手紙を握り締めたイエーナがドアを開けた




───────────────


───────────


──────






 「ママ……」
 「イ、エー……ナ?」
 「うん……」


 並んで見ると、二人はそっくりだ
 イエーナの髪の色だけがナギットさんの色
 間違いなく、二人は親子だ


 「昨日、パパに会って来たの……パパ、ママを……今でも、愛してるって」


 イエーナの顔が歪み、瞳に涙が溢れていく


 「ママァ……逢いたかったよぉ‼」
 「イエーナぁ!!」


 ジャスミンさんは立ち上がり走り出す
 立ち上がった衝撃で机の書類が散乱したが気にも止めない


 そして、二人は抱き合う


 再会の感動と、二人の涙声が混ざり合う
 やべぇ……俺も泣きそうだ




 俺は静かに部屋を出た




───────────────


───────────


──────






 昨日と同じく待合室でのんびりしてると、イエーナが出て来た


 イエーナが部屋に入ってから暫くしてから「本日の面会は終了です」なんて係の人が言ってたからなぁ、イエーナも今日は母親と過ごすんだろう


 家族が全員揃うのも時間の問題だな。良かった


 「よう。大丈夫か?」
 「うん。今日はママと過ごすわ」
 「そっか、じゃあ俺は帰るわ」
 「まって、明日……3人でパパに会いに行くわ。あなたも一緒に」
 「俺はもう必要ないだろ、家族の問題だ」
 「……うん、そうだよね。ゴメンなさい、甘えちゃって」
 「俺じゃ無くて、ちゃんと甘える相手がいるだろ?」
 「うん、ありがとう。明日、話が終わったら一度皆に会いに行くね」
 「ああ。皆で待ってる」


 イエーナは笑顔で部屋に戻っていく
 まだまだ時間はあるしゆっくり話せるな




 さて、俺は帰るかな




───────────────


───────────


────── 






 俺は買い物をして地下に戻った


 そして、エルルとクルルのタックルをガッチリ受け止める
 ふふふ、3度も同じ手は喰わないぜ


 俺は二人の頭をわしわし撫でてやる


 「ふわわ……」
 「わふぅ……」


 二人は気持ちがいいのかトロンとした顔でシッポをパタパタさせている
 よしよし、なでなで……なんか俺も気持ちいい


 って、他の子供達の視線がなんかまったりしてる
 よし。他の子も皆撫でてやる


 俺はみんなの頭を平等に撫でてやった


 さて、ご飯の準備だ


 今日はめでたいのでステーキを焼く
 〔イエローオーク〕の肉を20枚同時に焼き、タレはこの世界の醤油とニンニクを混ぜて作った。以外とうまい
 付け合わせにご飯とサラダを作り完成!!


 肉の匂いが部屋いっぱいに広がり、そこにタレを加えるとなんとも言えないすてきな香りが……やべえ、めっちゃウマそう
 獣人の子たちは全員しっぽ振ってるし、ちょっと待ってろって


 「よし完成!!」


 全員に配りテーブルに着席する……よし


 「いただきます!!」


 俺の合図で全員食べ始まる


 「うんめ~~!!」


 ご飯にもめっちゃ合うしマジやばい
 今度クロやアグニ達にも作ってやろう


 食べ終わって片付けも終わり寝る時間になってきた
 今日はエルルとクルルだけじゃ無く他の子供達も俺の側に来た


 「おにいさん……」
 「おにいちゃん……」


 子供達はみんな俺のそばで寝息を立て始めた
 なんか俺が保護者みたいだ。まだ17歳なのに




 不思議と悪い気はせずに、俺も静かに眠りに落ちた




───────────────


───────────


──────






 次の日は出かけること無く皆と過ごすことにした


 イエーナが帰ってくるからな。今日は皆と遊ぼう


 俺はエルルとクルルに本を読んであげたり、子供達に生活魔術を教えてあげたりして時間を使った
 間におやつの時間を入れたりして休憩を挟みながら教えていると、人間の子供達は体や服をキレイにする生活魔術、【清潔リフレッシュ】を覚えることが出来た


 さらに、それぞれの魔術属性を探ってみると、なんと1人だけ【白】属性の女の子がいた


 エレメンツ大大陸では基本的に【赤青黄緑】が一般的で、【白黒紫灰】属性はそんなにいない
 統計的に見ると、各大陸に【白】属性は約5人程度しかいないのだ
 なので【白】属性の魔術師は非常に重宝される


 魔術師の才能は何故か「女性」によく現れる
 男の魔術師もいることはいるが、大陸の魔術師は8対2くらいの割合で女性が多い
 その分「男性」は戦士や傭兵などが圧倒的に多いのだ


 【特級魔術師】も全員女だって言うし、まあそんなことより【白】の女の子だな


 「あの、お兄さん……あたしはヘンなの?」
 「いや違う。ブランの魔術は珍しいからね、ホントにすごいよ」
 「えへへ、お兄さんに褒められた」


 いや、マジで凄い
 ブランは10歳で人間の女の子。ぱっちりした瞳に伸びっぱなしで膝下まである黒髪の笑うとカワイイ普通の子だ
 俺を初めて見たときは怯えて全く前に出てこなかったが、お菓子をあげたり本を読んだりしてあげるとたちまち懐いた。と言うかココの子供達は皆懐いた
 驚いたのはその魔力量、俺が出会った中でもトップクラスかも


 順番で言うと


 ミレア    1200
 リアさん   2000
 クレア    2200
 ルビーラ  16000
 サフィーア 22000
 ブラン   36000


 このくらいの数値だ、クレアとミレアは最初の頃に比べると少し上がっていた
 ブランは間違いなく【特級魔術師】の器だ
 鍛えるべき所で鍛えれば間違いなく最強の魔術師の1人になれる


 孤児の中で魔術の才能があったのは5人、でも並の魔術師程度の才能だ
 でもブランはあっさり生活魔術をマスターした
しかも感覚で【白】の魔術の一つ【白光ポアライト】と言うライト代わりの光球を30コ以上出して平然としてる
 この子に上級魔術の呪文を教えたら間違いなく発動する。試してみるか


 「なぁブラン。俺の言う通りに呪文を唱えてみて」
 「ふぇ?……わかった。何か楽しそう」


 俺は自分の手にこっそりナイフで軽く傷を付けてブランに呪文を教える
 ブランは歌うように呪文を紡ぐ


 「【無垢なる光セイファート・ライフ】~っ!!」


 俺の体を光が包む


「……マジかよ」


 怪我は、治っていた
 ブランはにっこり笑って周りの子達とはしゃいでる


 間違いない。本物だ


 ルビーラ以上の才能かもしれない
 俺はブランに提案してみた


 「なぁブラン。魔術師になりたくないか?」
 「魔術師? うん、なりたーい!!」
 「うん。きっと凄い魔術師になれる!! 俺が保証する」
 「ホント!? やったあ!! お兄さん大好き!!」


 そう言ってブランは俺に抱きついてくる
 そしてそれを見たエルルとクルルが


 「むむむ……おにいさん、わたしも!!」
 「おにいちゃーん!!」


 負けじと飛びついてくる。ちなみにエルルとクルルは魔術の才能は無かった
 この世界の幼女はなんで抱きついてくるんだろう?
 まぁ、カワイイからいいけどね


 俺が子供達をあやしていると、後ろから声が聞こえた


 「楽しそうね。私も混ぜてもらえないかしら?」


 声の主はイエーナだった
 子供達がみんな笑顔で駆け寄る
 俺も笑顔で挨拶した


 「おかえり。イエーナ」
 「ただいま。ジュート」


 イエーナは明るい声で子供達一人一人に声をかける
 すると突然イエーナのお腹の音が響き渡った
 イエーナの顔は赤くなり子供達と俺は大笑い


 「よし、ご飯にするか!!」




 久しぶりに全員でご飯の時間だ


 
───────────────


───────────


──────






 俺はイエーナが帰ってきたらやりたい料理があった


 それは、「鍋」である


 大きな鍋を5つ用意してそこにタップリ肉と野菜を入れて煮込む。固い野菜を先に煮込んで、肉は最後に入れる。味付けはこの世界の醤油で


 ご飯をタップリ炊いて完成。うーん、いい匂い


 テーブルに布を引いて、その上に鍋を置いて冷めないうちに食べよう


 「いただきます!!」


 初めての料理にみんなどうすればいいか迷ってる
 俺は食べ方を教えてあげると、みんな少しずつよそって食べ始めた


 味は……うん、ちょっと薄味だがウマい
 少し冷めると食べやすくなり、あっという間に無くなった


 食器と衣服と体をブランが生活魔術でいっぺんにキレイにした
 やっぱりこの子は凄い逸材だ


 そしてみんな眠りにつくと、やっと俺とイエーナは話すことが出来た


 「それで、どうだった?」
 「うん、パパとママといっぱいお話しした。私の奴隷生活のこと、この地下の孤児達のこと……あなたに救われたこと」
 「お、俺は何もしてないぞ?」
 「そんなこと無いわ。それでね、明後日パパとママは領民達に演説をするわ」
 「演説?」
 「うん。この都市を有るべき形に戻そうって……そこで私のことを紹介するって」
 「おお、ついに来たか!!」
 「奴隷達の扱いも、その場で法律を変える宣言をするって。その地の法律を決めるのは領主だからね、反対なんてする人はいないし、奴隷商人には保証金も出すように手配するって」
 「やったな!! ついにここまで来たか」
 「うん!! あとね、孤児院を作るって!!」
 「マジか!?」
 「ええ、身寄りの無い子供に教育を与えて自立の手助けをして、攫ってきた子供達はみんな親の元に返すようにするそうよ。もちろん賠償金はタップリ払うそうよ。許してもらえるかわからないけれどね」
 「たしかに。謝って許してもらえないかもな」
 「でも、謝るしかできないし……」
 「うん、そうだな。俺も謝るよ」
 「え、なんで?」
 「この都市に初めて来たときに奴隷商人を助けたんだ。その商人を襲っていたのがたぶん、攫われた子供達の親だったかもしれないんだ」
 「……そっか」
 「俺は、ちゃんと謝りたい」
 「うん」


 そこまで言うと少し静かになる
 イエーナは俺の決意をしっかりと感じてくれた


 そして最後に一つ付け加えて喋り始めた




 「最後に、パパとママの本気を見せるって行ってたわ」
 「本気?」
 「うん、パパとママは上級魔術師だからね」
 「何をする気なんだ?」
 「うん」








 「2つの城を破壊するって」
 「……はい?」










 俺はそう聞かずにはいられなかった







「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く