ホントウの勇者

さとう

貴族都市ガルベイン①/貴族・奴隷



 【戯神マレフィキウム】との出会いを経て、俺は今〔貴族都市ガルベイン〕に向かって歩いている


 ちなみに俺一人。クロは最近ルーチェに引っ張られて〔セーフルーム〕で遊んだり昼寝することが多くなっていた
 いや、まぁ寂しくなんかないけどね!!


 天気はいいが少し暑い
 【黄の大陸】は全体的に気温が高い、全身黒の長袖長ズボンに防御のための鉄板が仕込まれているこの【友情の約束プロメッサ・アミティーエ】とは相性の悪い大陸だ


 今俺が歩いている街道は、きちんと整備された道で馬車や魔導車なんかとたまにすれ違った。たぶん冒険者や商人だろう
 そしてモンスターも少し出た……雑魚ばっかりだけど


 そんな感じでのんびり歩いていると、前方に魔導車が止まっていた


 かなり大きな魔導車で見た目はキャンピングカーだ
 何かを輸送しているらしく窓にはカーテンが掛かっていて何も見えない。そして運転手と商人らしき人物が立っていて両手を頭の後ろで組んでいた


 「……襲われている!?」


 獣人の強盗団?が10人ほどで武器を構えて商人を襲っている
 獣人の一人が剣を振り上げて振り下ろそうとしてる。首を切断する気か


 俺は反射的に魔術を放っていた


 「【灰】の中級魔術、【拘束巻鎖バインダー・チェーン】!!」




 剣を振り下ろそうとした獣人に無数の鎖が巻き付きそのまま地面に倒れる
 獣人軍団と商人が一斉に俺を見た
 俺は思わず叫んだ


 「やめろ!!」


 しかし当然その言葉は届かない
 俺の行動・言葉に頭にきたのか、獣人軍団は狙いを俺に定めて一斉に掛かってきた


 「ウルサイ!! 邪魔をするなぁッ!!」
 「お前から始末してやる!!」
 「人間共がぁぁぁぁ!!」


 怒み、恨み……全てを宿した目で俺を睨み付け9人全員が飛びかかってくる


 武器は剣と拳と斧
 獣人の種族は犬・ネコ・熊・狐・ウサギ
 スピードは速いな、獣人だからか?
 でも全員、周りが見えてない


 しかたない、全員眠らせるか




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 3分後。俺は全員を気絶させて鎖で縛り、街道へ放置した


 全員の動きが怒りのあまり単調で読みやすく、武器を奪ってみぞおちやアゴに強力な一撃をお見舞いしたらあっという間に全滅した
 俺は獣人強盗団を放置して商人の元へ向かう


 「大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」
 「おお、おぉぉぉっ!! ありがとうございます、まさかこんな……生きていられるとは」


 めちゃめちゃ感動してる。元気そうだしいっか
 すると商人が挨拶してきた


 「私は商人のゴロンと申します。旅のお方、是非お礼をさせて下さい!!」


 声でけえ!! うるせえ!!
 取りあえず俺も挨拶する。するとゴロンさんは〔貴族都市ガルベイン〕に向かう最中だそうで、護衛という名目で俺も一緒に乗せて貰うことにした
 ちなみに獣人強盗は放置した


 「いやぁ本当はBランク傭兵団を雇おうと考えていたのですが、いつも仕入れに通っている街道なのでつい節約を、と思ってたらこの状況でして。ハハハ、お恥ずかしい」


 俺はキャンピング魔導車の車体部分の後部座席にゴロンさんと座っていた
 まぁその気持ちはわかるよ、お金は節約したいもんね


 「まさかAランク冒険者様に助けられるとは。出会いという物はわからん物ですなぁ」


 しみじみつぶやくゴロンさん
 俺もいろいろ聞いてみるか


 「あのーゴロンさん。〔貴族都市ガルベイン〕ってどういう町なんですか? 俺はずっと旅をしてて初めて行く町なんでちょっと気になって」


 「おお!! そうでございますか。では簡単に説明させて頂きますね」


 俺はゴロンさんの話を聞く。概要はこんな感じか




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 この世界の貴族は1つの大陸に4つ存在する。この【黄の大陸】の貴族は


 エンダイブ家
 カナリー家 
 ナルシス家
 モリエール家


 この4大貴族がこの大陸では王の次に偉いのだ
 今向かってる〔貴族都市ガルベイン〕ではこのうちの2つ、エンダイブ家とナルシス家の納める都市でその大きさは【黄の大陸】の〔王都イエローマルクト〕よりも大きく、その力は王都よりも強いと言われている


 エンダイブ家とナルシス家は昔から仲が悪く、何故そんな不仲の家どうしがこの都市をまとめているのかというと、どちらかの家を潰せば実質この【黄の大陸】で最も強い力を持つことになるからだ


 カナリー家とモリエール家は穏健派で、貴族としての力は王の為にある物、と言う考えで〔王都イエローマルクト〕にて王を支えているらしい
 実際はエンダイブ・ナルシス家とカナリー・モリエール・王の2大勢力として【黄の大陸】は真っ二つに分かれ、それぞれ法律なども違うらしい。めんどくさいな


 噂ではエンダイブ・ナルシス家は悪い事にもずいぶんと手を染めているらしく、カナリー・モリエール・王の元に暗殺者を送り込んだりして暗殺を企んだこともあったみたいだ


 俺はそんなとこに向かっているのか


 そんな話をしていると見えてきた。でも、何だありゃ!?


 「見えてきましたな、アレが〔貴族都市ガルベイン〕です」


 ゴロンさんが説明してくれるが、俺にはアレが町には見えなかった
 まず目に付いたのは「城」が2つある事
 巨大な2つの城がにらみ合うように向かい合わせで立っている
 そしてその下に広大な町が広がっているが、真ん中には境界線のように1本の街道が引かれている
 まるで全く別の王都と城下町を無理矢理くっつけたかのような異様な光景だった


 「左の城がエンダイブ城、右の城がナルシス城です。町はエンダイブ城下町とナルシス城下町に分かれておりまして、中央が各ギルドや旅の出店などが集まる中央商店街ですな。私の店も中央商店街にございます」


 貴族なのに城なのかよ。仲の悪さも徹底してるんだなぁ




 そう思いながら町へ入った




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 町へ入り中央街道をゆっくり走っていると異様な光景だった


 まずは獣人がや人間が沢山いた
 そこまではいいが、皆着ている服がぼろ切れのような物で不潔な感じだ
 しかも多くは子供ばかりで俺と同い年位や小学生くらいのも沢山いた


 地面に横たわってうつろな目をしている獣人の子供
 傷だらけの人間の少年、死んだような瞳で綺麗な建物に入っていく少女
 よく見ると建物には〔娼館〕と書かれている。なんだよこれ


 「アレは奴隷ですな。罪を犯したモノ、親に捨てられたモノ、親に売られたモノなど様々います」


 俺の視線に気が付いたゴロンさんが、親切に説明してくれた


 「基本的に男は鉱山や戦闘奴隷として買われて使い潰して、女は性奴隷や娼館などに使われますな。中でも獣人は人気があります。男は強く長持ちし、女は性奴隷として最高の商品です。若ければ若いほど値が張りますがな」


 楽しそうに語るゴロンさんをぶん殴る事を押さえるのは結構大変だった
 正直この町は胸糞悪い


 奴隷、と言う物がこの世界にあるのはわかっていた
 赤の大陸や青の大陸にもいたがそれはほとんど犯罪者ばかり、奴隷には期間が定められていてその期間は罪を償う期間と言うことで何でもやらされる
 奴隷はほとんど山賊や泥棒ばかりで大半は鉱山発掘や家の建築手伝い、あとは復興支援とかそんなことばかりだった


 この町では子供を、少年少女を売り買いしてる
 コレがその町の法律なのか……ふざけやがって


 俺がそんなことを考えているとゴロンさんの店が見えた
 結構デカい、見た目は劇場みたいな2階建ての建物だ
 入り口は大きく豪華な扉になってる


 「ささ、つきましたぞ。ココが私の店です」


 俺は魔導車から降りて店を見上げる


 「なになに──────────え」












 「〔ゴロン奴隷会館〕……?」












 俺は首をギチギチ動かして魔導車を見る


 そこから降りてきたのは─────20人くらいの子供だった




 獣人の子供、人間の子供
 全員が小学校低学年から高校生くらい
 全員……女の子




 「いやぁ本当に助かりました!! 商品・・に傷でも付いたら値段が下がりますからなぁ。私は一度失礼します。お礼は後ほどで!!」




 ゴロンさんと少女達は店の中に消えて行った




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 俺はふと思った


 あの獣人集団は強盗なんかじゃない


 子供達を取り返しに来た親じゃないのか?






 俺はしばらく動くことが出来なかった







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