ホントウの勇者

さとう

ドワーフの隠れ穴フーユーン①/殺戮の意思・神との出会い



 俺は今岩石地帯を歩いて……いや、登っている


 砂漠を越えて、蒸し暑い湿地帯を越えた先には岩石地帯が広がっていた
 一応街道は整備されていたが、最近体がなまっていたので敢えて岩を登って進んでいる


 この辺りの岩は非常に固く杭なども通らないために、街道の整備などには非常に苦労したらしい
 なので街道以外の岩石群は手つかずで道らしい道はまったくない
 俺はそんなところをジャンプして、手を引っかけて登り、出っ張りに足を掛けてジャンプして、を繰り返して進んでる……確かパルクールって言うんだっけ?


 この辺りにはモンスターもいないので集中して進める
 クロ達は相変わらず〔セーフルーム〕でくつろいでいる。気温はまだ高く、だいたい27~30度くらいの気温かな? 照りつける太陽はキツいが風が吹いているので気持ちいい
 俺はそのままスピードを上げて進んでいると、水の音が聞こえた


 その場所に行ってみると、岩場の間に隠れるように川が流れている
 しかも岩や砂で濾過されているのか凄く澄んだ綺麗な水だ、試しに一口


 「う、うまい!!」


 水は冷たく気持ちいい、俺は顔を洗い水を更に飲む
 ああ、俺にとってはここがまさにオアシスだ。すると隣に紺色の紋章が輝きクロが現れた


 《ハァ、やっとルーチェミーアが寝たワ。あの子は一度寝るとなかなか起きないから、今はアナタと一緒にいるワ》


 そう言ってクロは水を飲み始める……俺の心にイタズラ心がわき上がる


 「暑いんだろ? くらえっ!!」
 《ニャっ!! にゃにするのヨ!!》


 俺は両手で水をすくい、クロの真上からシャワーのように浴びせる
 するとクロは水を被ってずぶ濡れになりぷんすか怒っていた


 ひとしきり笑ったあとにクロの体を拭いてやり、食事にする
 今日のメニューはガレナが作ったフルーツパンでございます


 「うん、やっぱりうまい!!」
 《そうネ、おいしいワ》


 保存食なので焼きたてではないが、ドライフルーツがふんだんに使われているのでカンパンみたいな食感と果物の甘さが交わりお菓子みたいな感じ
 しかも栄養も豊富。こりゃ売れるわ


 クロももぐもぐ食べているし気に入ったのだろう
 ガレナもかなりの量をくれたので移動中やたまの間食なんかにはいいかもしれない


 「このまましばらく休憩するか……昼寝しよ」




 俺とクロは川べりの岩場の日陰で横になり、そのまま目を閉じた




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 目が覚めると鎖でグルグル巻きにされていた
 What? なぜ? どうして?


 「ここはドコだ……?」


 とりあえず俺は辺りを見回し、自分の状況を確認する


 【雄大なる死グロリアス・デッド】と【死の輝きシャイニング・デッド】は鞘から抜かれて無くなっているし、袖のナイフも抜かれている
 身体に異常は特にない。手首が体の後ろでグルグル巻きにされているくらいか


 「この場所は……牢屋か?」


 見た感じここは洞窟みたいだ
 洞窟の一角に鉄格子をはめて牢屋のようにし、近くには水がめがあり中には水がたっぷり入っている
 天井の高さは4メートルくらいで、魔導ランプの光がともっていてそこそこ明るい


 「あれ、クロは〔セーフルーム〕か?」


 さてどうするか
 魔術を使えば鎖は簡単にちぎれるし、脱出も出来る
 しかし【雄大なる死グロリアス・デッド】と【死の輝きシャイニング・デッド】はなんとか回収したいな




 仕方ない、どんな奴が俺を捕まえたのか見てみるか。対応は相手の動き次第で決める




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 目が覚めてから1時間ほどすると、こちらに誰か向かってくる気配がした


 「ついにお出ましか、って……ええ!?」
 「目覚めたか、不届き者め」


 そこにいたのは子供みたいな大人だった


 人数は5人でみんな身長は1メートルちょいぐらいで体には鉄の鎧を着けて兜も被っている
 顔はひげもじゃで目付きは鋭くかなりの敵意を帯び、4人は槍…いや、突撃槍を持っていて最後の一人は斧を持っている。コイツがリーダーか?


 するとリーダー各の男が俺を睨み付けて言う


 「この土地は我らドワーフ族にとって神聖な土地。この【黄】の大陸の王と不可侵条約を交わした事を知らないのか? 貴様の目的はなんだ?」


 そうだったのか……まあたしかにあんな岩場を進もうなんて考えるヤツはいないよなぁ
 とにかくありのままを言うしかない。説明しよう


 「ふん、そんな話信じられるワケがなかろう。貴様もアレを狙ってきたのだろう、我らドワーフ族に伝わる秘宝をな。馬鹿な冒険者どもめ……我らがいる限り〔地底神殿ルペスカーラ〕には近づく事すら出来ぬと言うのにな」


 アレって何だ? 秘宝?
 っていうかどうでもいいからさっさと帰らせてほしい


 「あの、俺は秘宝なんて興味ないんで帰らせてくれませんか?」
 「……我らドワーフ族の秘宝を侮辱する気か!!」


 えー、じゃあなんて言えばいいんだよ
 「興味津々です!!」とでも言えばいいのかよ


 「ふん、まぁいい。珍しい武器を持っていたから一応拘束したが、もう用はない」


 ドワーフ族はもう俺に興味が無いのかつまらなそうに言った。






 「あの黒猫のように・・・・・・・・始末してやるわ・・・・・・・






 俺の思考が停止した




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 「…………」
 「さて、貴様にもう用はない。この場所を知られたからには死んで貰う」
 「…………」
 「何だその顔は? ははは、ネコを殺されたのがそんなにショックだったか?」
 「…………」
 「はははっ安心しろ、貴様も同じ場所に─────────」






 「【赤】の上級魔術・【爆炎爆破エクスプロード・ブレイズ】」






 爆音が轟き鉄格子が粉砕される
 俺は手首の力だけで鎖をねじ切った
 爆風で吹き飛んだ5人のドワーフ族に本気の殺意を叩き込み、俺は言う






 「皆殺しだ……!!」






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 クロが死んだ
 目の前で震えているコイツらに殺された


 「ん、人の気配……今の音で増援が来たのか?」


 まぁどうでもいい
 今日でドワーフ族は滅びるからな


 さーてどう料理するか?
 一人一人血祭りに上げるか、コイツらが守ってる秘宝とやらを徹底的に破壊し尽くして絶望させるか悩むな……ん?


 ドワーフ族の一人が突撃槍を構えて突っ込んできた


 「待てよ、今考えてんだから焦るなよ?」


 俺は【爆裂炎弾バーンストライク】をたたき込む
 するとドワーフ族は火だるまになり壁へ突っ込んで動かなくなる




 「慌てんなって、どう料理するか今考えてるからよ」




 残った4人のドワーフ族は殺気に当てられて動けなくなっている
 そして増援が到着するが、俺の殺気に当てられて全員動けなくなった


 思えば、この世界に来てこんなに頭が来たこと無かった
 こんなにも殺してやりたいなんて考えたこともない。悲しみはまだ無いけど……クロ


 「ただ殺すんじゃつまらない。お前らの大事な秘宝とやらを徹底的に破壊させて貰うぜ。お前らを始末するのはそのあとでな」


 俺は笑顔でドワーフ族に言う
 恐怖のあまり全員が白くなっていたが、どうせ死ぬんだしまぁいいか


 頭の中にひとつの魔術が流れていく
 この感じ……そうか
 俺は笑顔のまま移動を始めた




 目指すのは、この真下だ




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 俺はゆっくりと歩きながら下を目指す
 途中で【雄大なる死グロリアス・デッド】と【死の輝きシャイニング・デッド】を見つけたので回収した


 どうやらここはドワーフの隠れ家みたいだ
 たぶん地上に穴が開いていてそこからアリの巣みたいにいくつも小部屋が分かれているみたいで、階層の真ん中に1本の巨大な支柱が立ってそこからはしごが伸びている
 この真下にあるモノをこのドワーフ族は守っているらしい




 だからどうした?




 不思議と心は落ち着いている
 今ならこの魔術も使えるはず




 支柱のはしごを使わずにそのまま飛び降りた




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 最下層までノンストップで落下していくと、地面が見えてきた


 俺は魔術を使いゆっくりと着地する……そこはかなり広い空間だった


 空間の広さは野球場くらいか、地面はキレイに舗装されていて歩きやすい
 何より目を引くのが目の前にある巨大な建物は、まるで国会議事堂みたいな立派な作りの建物だ


 俺はそこまでゆっくりと歩いて行く


 「……こんな地下に何でこんなモノが?」




 俺は建物の入り口まで近づきさっそく破壊を試みた










 「おや、いらっしゃい」










 真後ろで声がした




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 俺は振り向くことが出来なかった


 嘘だろ!? 俺が気づかないなんて!?
 何モンだ!? 敵!?
 動くと殺られる……死!!
 そうだ、【神器ジンギ






 「安心しろ、何もしないからコッチ向け」






 その声は呆れたように言う
 俺はゆっくり振り返ってその姿を見た


 「………は?」


 その姿は女の子だった
 たぶん14歳くらいでボサボサのロングヘアーに眼鏡を掛けているがかなりの美少女だ
 身長は俺の胸下ぐらいで服装は紺色のワンピース、更にその上に白衣を着ている
 なんか科学実験室にいそうな感じのイメージだ




 《彼女は敵じゃないワ》




 その脇からクロが現れた


 「クロ!? 生きてたのか!!」
 《エエ、ドワーフ族がワタシをココへ放りこんだのヨ。彼らはワタシを殺すつもりだったみたいネ》
 「よかった……本当によかった」
 《ニャ、心配かけたワネ。所でアナタは何故ココに?》
 「おーーーい……私を無視するなーーー」
 《アァそうね。ジュート、紹介するワ》










 《彼女は【戯神マレフィキウム】ヨ。この世界の神様ネ》










 俺の思考は再び停止した





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