ホントウの勇者

さとう

砂漠の町デゼルト②/自己満足・出会いは運命



 〔リベルオアシス〕は〔砂漠の町デゼルト〕の近くにあるモンスターが住み着いてるオアシスだ


 そこは町のオアシスよりも広く緑も多いため、薬の材料となる葉っぱや木の実等が豊富で薬剤師にとってはまさにオアシスであると言える


 この世界では怪我や病気になると基本的には薬に頼る
 薬の種類は少なく効果も余り高い物ではないが、安価で手に入れやすく庶民には欠かせない物だ
 お金持ちや貴族は薬に頼らず、魔術ギルドが管理する教会で専属の【白】の魔術師に治して貰う
 魔術だと確実に治る···しかしとても高価で庶民には手が出せない金額らしい


 この世界での薬は、怪我をすれば〔治癒薬ポーション〕、病気になれば〔快気薬ディスシック〕で治療するがその効果は薬剤師の腕できまる
 精製する時の純度で効果が決まり、腕の良い薬剤師の薬は魔術に匹敵すると言われている


 ショールさんの腕前は、魔術には敵わないが一般的な〔治癒薬ポーション〕よりも高い回復力があると言われていて、流れ者の薬剤師としては有名人らしい
 ちなみに俺を治した〔治癒薬ポーション〕はクロが作った物だ


 そして俺は今〔リベルオアシス〕に向かっている




 ここに現れたSレートモンスターイエロースコーピオン❳が、薬草採取中のショールさんを襲うかも。急がないと‼ 




───────────────


───────────


───────






 しばらく走ると平地になったのでを【流星黒天ミーティア・フィンスター】を出して飛ばす


 「見えてきた……」


 〔リベルオアシス〕の入口に到着
 入口は雑木林みたいで中は薄暗い、周囲の景色から見ても全然オアシスには見えない
 しかもジメジメして蒸し暑くて気持ち悪い、さっさとショールさんを見つけて帰ろう
 そう思い右手に魔力を集中させて魔術を使う


 「【黄】の上級魔術【土壌探索グランサーチ・ソナー】‼」


 俺は魔術を発動させて周囲を探索する


 「モンスター、モンスター……モンスター……いた‼」


 ここから1キロ先の水場、周囲にモンスターはいない
 俺は少し大きな反応を感じた


 「この反応、こいつが〔イエロースコーピオン〕か?」




 でかい反応がショールさんの2キロくらい先から感じる、気づかれる前に行こう




───────────────


───────────


───────






 「ショールさん‼」
 「君は……何故ここへ?」
 「話は後です、早くここから離れましょう‼」
 「待ってくれ、どういう事だ?」 
 「近くにSレートモンスターがいるんです‼ ここは危険です‼」
 「しかしまだ材料が……」
 「わかんねぇ野郎だな!! 死んだらどうすんだ!!」


 俺の口調も荒くなる
 さっさと逃げないと面倒なことになる


 「……わかった。ここまでに……!?」


 ショールさんが固まる
 その視線の先にはSレートモンスター〔イエロースコーピオン〕がいた


 「嘘だろ!? いくらなんでも早すぎる!!」


 そのサソリは全長5メートルはある、しかも巨大なしっぽが3本もありその先端から緑色の液体が垂れ流しになっている
 腕には巨大なはさみが2対あり挟まれれば間違いなく死ぬ
 よく見るとこいつの後ろには巨大な穴が開いている


 「そうかコイツ、地面を進んできたんだ!!」
 「シャァァァァァァァァァァ!!」


 俺とショールさんを餌と認識したのか、ヘビみたいな声を上げて威嚇してきた。


 「仕方ない、さっさと終わらせるか」


 俺の思考が戦闘モードに変化する
 ショールさんが俺の変化に驚き息をのむ気配がするが、俺は完全に無視して目の前のサソリを始末することに意識を向けていた




 「さぁて、やるか」




───────────────


───────────


───────






 はっきり言ってこの世界のモンスターは俺の敵じゃ無い
 あのSSレートモンスターの豚だって勝つことが出来た
 このサソリがあの豚より弱いなら楽勝だ


 大きさは約5メートル
 体の色は黄色
 足の数は12本
 約2キロの距離をこの短時間で移動してきた
 腕のはさみは地面を掘り進むのと攻撃用
 しっぽは3本、長さは約5~7メートルと結構長い
 毒は緑色のヘドロ状の液体。触れるのもマズイな
 全身が甲殻で覆われている、打撃斬撃は期待できない
 コイツの属性は【黄】


 結論─────【緑】魔術で攻撃


 敵の分析が終わり右手に魔力を込める
 サソリは俺の様子を伺って威嚇してる


 「終わりだよバーカ、【緑】の上級魔術・【翆玉斬刃エメラルド・ストライサー】‼」




 緑色の無数の鎌鼬がサソリを襲う
 サソリは何もすること無く一瞬でバラバラになった




 「はい、おしまい」




───────────────


───────────


───────






 「大丈夫ですか、ショールさん?」


 ショールさんは口をあんぐり開けたまま、サソリの死骸をみて俺を見る


 「き、君は上級魔術師!? Aランク冒険者で、すごい···‼」
 「ショールさん? あの」
 「あ、あぁ済まない。そしてありがとう。もう一度聞くが何故ここに?」
 「さっきも言いましたけど、Sレートモンスターが出たって町で騒ぎになって、それでガレナが真っ青になってアナタのことを心配してたんで、俺が様子を見に来たんですよ」
 「そうか。しかし前にも言ったが、君に支払う対価はない」
 「そんなモンいりません。馬鹿にしないで下さい」
 「······どういうことだ?」
 「アナタが前に言った通りコレは俺の自己満足です。アナタのことをガレナが心配してる、でもそれを確かめる術が無い、だから俺が様子を見に来た······それだけです」
 「·········」
 「Aランク冒険者だとか、対価とか報酬とかの前に俺は人間です。誰かを助けるのに理由なんて必要ない。俺は今までそうやって前に進んできた。自己満足だろうが何だろうが、この想いは俺の誇りです。もう一度言います、俺はショールさんを助けに来ました」


 俺は目をそらさずにショールさんに言う
 言いたいことは言った。俺の想いは通じたのか、それともやっぱり分かり合えないのか
 するとショールさんは笑いだした


 「ははははは!! 私もだが君も相当のガンコ者だな。いや、似たもの同士なのかな」
 「ショールさん?」
 「私の負けだ。そこで改めてお願いするよ、このまま薬草採取を手伝ってくれないか? そうだな、お礼に町で食事くらいはおごらせてくれ」
 「はははっ、いいですよ。けど俺、結構食べますからね!!」
 「そ、そうなのか? お手柔らかに頼むよ?」


 お願いされたら手伝うしかないよなぁ




 さーてやりますか!!




───────────────


───────────


───────






 その後ショールさんと一緒に薬の材料を大量に集めて、ショールさんの持っていた皮の袋に入れる
 俺はこっそり異空間に収納した······町でこっそり出そう


 サソリの死骸を放置して帰ろうとしたら、ショールさんが慌てて回収しないのか聞いてきた
 別に興味ないのでと言ったら愕然としていた······どうやらSレートモンスターはの討伐はかなりの金額になるし、その体の部位も高額で取引されるそうだ
 とは言ってもいらないしなぁ


 なのでショールさんに全部あげた
 そしたらものすごく拒否されたが、無理矢理押しつけて帰ることにした
 ショールさんの馬車は〔リベルオアシス〕の外に巧妙に隠してあり、そこにサソリの死骸の毒液やら心臓やらしっぽのトゲなんかを積んで町に帰ることにした


 俺も馬車に同乗してショールさんと一緒にお喋りしながら町を目指す




 お互いの旅の話をしながら楽しく帰ることが出来た




───────────────


───────────


───────






 町に着きガレナのいる宿へ向かう
 そこで待っていたのは、泣きまくるガレナの熱い抱擁だった


 ショールさんはカワイイ妹をあやす兄そのもので、兄弟がいない俺には新鮮に写った


 そして約束の食事タイムである


 俺たち3人は町の中にある安価な食堂に入って料理を注文していろいろな話をした
 料理を食べながらこれからのことや将来のことを話す
 俺はショールさんに、サソリを売って資金にしてこの町で店を出したら? と言ったらすごくノリノリだった
 ガレナもこの町が気に入ってるらしく、賛成してくれた


 そして次の日、サソリを一緒に換金しに行った
 冒険者ギルドで依頼掲示板を見たら、やっぱりあった


 〔イエロースコーピオン〕討伐・Sレート・報酬1200万ゴルド


 これって、倒したあとに持って行ったらどうなるんだろう?


 俺はショールさんとガレナに聞いてみると、おそらく報酬は支払われないと言われた
 なのでそのまま商人ギルドへいってサソリの部位を下取りして貰う


 商人ギルドに所属していないと商品の卸しや買い取り、交換なんかが出来ないので全てショールさんに任せる
 そして受付に行きしばらくすると別室に案内されそれぞれの部位の報酬が支払われた


 サソリの心臓・2000万ゴルド
 サソリのしっぽトゲ・1200万ゴルド
 毒液・1瓶500万ゴルド×5=2500万ゴルド


 トータル・5700万ゴルド


 なかなかの儲けだった
 ショールさんは完全に硬直してるしガレナは気絶してしまった
 っていうかショールさんは値段知らなかったんだ。あのとき持って帰って正解だったな


 商人ギルドの担当者が、サソリを倒したのが俺だとわかると冒険者ギルドに連絡して討伐報酬を持ってきた
 ラッキー!! タナボタじゃん


 そして換金が終わりショールさん達は復活した
 善は急げと言うのは異世界でも同じなのか、早速店を出すための物件を探すために商人ギルドで話を聞くと、町の中央に3件ほど空き物件があると言われ下見に行く
 そしてショールさんとガレナが気に入った物件を早速購入した
 行動早すぎだろ⁉


 そしてその日は購入した物件に入れる家具などを買い、一日が終わった




 その日は俺も新しい家に泊まらせて貰い、ガレナの作った料理をみんなで食べながら大いに騒いだ




───────────────


───────────


───────






 次の日には店の準備をした


 お店は薬を扱う治療院。〔治癒薬ポーション〕や〔快気薬ディスシック〕、ガレナが作る携帯食品なんかも販売する
 この町は冒険者や傭兵も多いのでかなり儲かるだろうな、ちなみに薬品倉庫には材料が保存されている
 ここにこっそり異空間にしまった分の材料を補充した。たぶん10年は大丈夫だろう
 その間に信頼できる材料の業者を見つけてほしい


 ショールさんは商人ギルドにお店の営業許可証を貰いに行っている
 俺とガレナは店の準備。ここは元お店だったのでショーケースなんかは常備されていたので、ある程度配置を換えたり掃除したりで簡単に終わった


 ガレナの作る携帯食料は、ビスケットや固く日持ちするパン、干し肉などのオーソドックスな物
 調理場には魔導レンジがあったので、俺は昔作ったことがあるドライフルーツを提案してみた
 するとこの世界にはドライフルーツはないのかガレナはぽかんとしてたので、実際に試してみる


 この世界のリンゴやバナナやみかんやキウイなどを薄切りにして、魔導レンジに何回かかけてみると成功した
 しかもうまいし、ガレナもびっくりしてる。


 コレを固いパンに入れて焼いたりしたらうまいんじゃね? と思い試したらメチャクチャうまかった
 帰ってきたショールさんにも食べて貰うと感動していた


 営業許可も取れたのでショールさんが薬を作り始めようと倉庫に入ったとたん悲鳴が聞こえてきた
 行ってみるとショールさんは知らない間に材料が増えていることに驚いていて、俺にいろいろ聞いてきたがすっとぼけて知らんぷりした


 なんやかんやで薬は完成してガレナの携帯食品も完成して陳列する
 そして俺たち3人は肝心なことを忘れていた。


 店の名前と看板を作っていなかった······なんてこった
 俺たち3人は苦笑いをして名前を考える




 「店の名前かぁ。開店準備に忙しくて考えてなかったですね」
 「そうだね。ううん······ガレナ、何かいい案はないかな?」
 「そうだなぁ······あ、〔ベール薬品店〕って言うのはどう?」
 「ベール? そうか〔出会い〕か。いい名前だね、そうしよう」
 「よっしゃ!! 早速看板作りましょう!!」


 この世界の古い言葉で「ベール」というのは「出会い」という意味らしい
 2人に兄妹と俺との出会いに感謝をこめて、とガレナは言っていた。なんか恥ずかしい


 家具屋に看板を作って貰いいよいよオープン


 
 この兄妹と出会って2週間後の事だった




───────────────


───────────


───────






 「ジュート君。君には感謝しても仕切れない。初めて会ったときは本当にすまなかった、君がいなければここまでの事は出来なかった。本当に感謝している」
 「私からも、兄を救って頂いて、それと私も救って頂きました。本当にありがとうございます」






 二人に感謝されて照れくさいが俺も楽しかった




 さて、オープンは明日だ。頑張ろう!!




───────────────


───────────


───────






 そしてオープン当日、お店は大盛況だった!!


 まぁオープン初日と言うこともありセールなんかもしたからだが、一番売れたのがガレナのパンだった


 パンにドライフルーツを挟んで焼いたパンはおいしく、あっという間に口コミで広がり町中から人が押し寄せてきたのだ
 そして数時間で完売。薬もあっという間に売れてしまい半日で「本日閉店」の看板を出してしまった


 ガレナはもともと料理が好きでいろいろレシピを考えていたらしい
 この〔ベール薬品店〕で稼いでいつか自分の店を出せたらいいな、なんて言ったら2人とも「その手があったか!!」なんて顔してた
 おいおいマジかよ、まぁいいけど


 それから3日ほど店を手伝った
 店も落ち着いてきたので俺もそろそろ自分の旅を再開しなきゃな
 そのことをショールさん達に言い、そして出発の朝


 「ふう、やはり淋しくなるな」
 「ジュートさん、本当に行ってしまうんですか?」
 「はい、俺には目的がありますので行かなくちゃ行けません。ショールさん、ガレナ、今までありがとうございました。とても楽しかったです」
 「わかった、この町に来るようだったら必ず寄ってくれ。そのときはまた食事をごちそうさせてくれ」
 「そのときは必ず。ガレナも元気でな、ガレナのパン、すごくおいしかった」
 「はい。おいしいパン、沢山作っておきます!! また食べに来て下さい!!」
 「ジュート君、君の旅の無事を祈らせて貰うよ。元気で」
 「また絶対来て下さいね!!」
 「二人とも元気で、さようならー!!」


 そして俺は町を出て次の目的地へ向かう
 するとクロとルーチェが久しぶりに出てきた


 「っていうかクロ、お前いつの間にかいなくなってやがったな」
 《仕方ないじゃナイ、暑いんだモノ》
 《わたしも暑いのにがて~。ねぇジュートぉ、ジュースなくなっちゃったよぉ》
 「おまえら······ハァ、ジュースは次の町まで我慢しなさい!!」




 コイツらホントにマイペースだな
 俺の苦労を少しは感じてくれよ






 俺は頭を抱えつつ、次の町に向かって歩き出した




───────────────


───────────


───────








 その後〔砂漠の町デゼルト〕では品質のいい薬屋〔ベール薬品店〕があるといわれ、冒険者達や傭兵の評判となる
 そして、薬屋で買い物をした客は隣のお店から漂う美味しそうな匂いのするお店、〔ベール・ベーカリー〕でおいしいパンを買って行く
 仲のいい兄妹のお店はこの町の名物となりこれからもずっと共に繁盛していくことだろう






 妹のガレナは首に掛かる母のペンダントを見て思う






 黒服の少年の出会いはきっと、運命だったのだと





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く