ホントウの勇者

さとう

砂漠の町デゼルト①/商人の誇り・銃斗の誇り



 「ああああ~………ダルい」


 俺は今、砂漠を歩いていた


 今回は特に妨害もなく【黄の大陸ポアロイエロー】に入れたのだが、クラスメイト達や【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】とは別の脅威が俺を襲っていた


 大陸に入った当初は乾いた土地を歩いていたのだが、しばらく歩くと地面が砂になり気温もどんどん上がっていきいつの間にか完全な砂漠になってしまった。ヤバい


 食料や水の心配は全く無いし、疲れたら〔セーフルーム〕に入ればいい
 問題はメンタルだった


 「も~ヤダ~……死ぬ~ッ!!」


 暑いし、歩きにくいし、【流星黒天ミーティア・フィンスター】は使えないし、喉はすぐ乾くし
 っていうか高校生が一人で砂漠を歩くのってどう言うことよ、マジで


 ちなみにクロは歩きにくいから、と言う理由でここにはいない
 ルーチェと一緒に〔セーフルーム〕でお昼寝してる。なんかくやしい


 俺が今向かっているのは〔砂漠の町デゼルト〕っていう所だ
 トレパモールがいる〔ウースタイン洞窟〕までまだまだ先は長いので町を幾つか経由して行かなくちゃ行けない


 砂漠を歩き始めて5日……そろそろ着くはずなんだけど




 「ああ、冷たいアイス食べたい……」




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 そうして歩くこと数時間、ついに町が見えた


 「ああ、やっと着いた」


 腹減った……早速町に入ろう


 町の建物は砂の色と同じ建物がほとんどで、近くにオアシスが有るらしく町中を川が流れている
 町の中央にはギルドやお店が集中していて冒険者や傭兵で溢れていた
 【黄の大陸】では商人ギルドの規模が大きく町中には商人が沢山いる


 ちなみにそれぞれの大陸でギルドの規模が違うらしい


 【赤の大陸】・冒険者ギルド
 【青の大陸】・魔術ギルド
 【黄の大陸】・商人ギルド
 【緑の大陸】・傭兵ギルド


 が、それぞれ栄えているらしい
 とりあえず今日の宿と買い出しかな


 適当に宿を取り町を歩いてみる
 商業が栄えているだけあってかなりの店や露店が並んでいた
 とりあえず腹ごしらえを済ませて一番大きい魔導具屋を覗いてみる


 冷風魔道具や冷蔵庫魔道具、散水魔道具などの暑さ対策の物がかなり充実している
 特にめぼしい物は無いのでそのまま店を出ると二人の商人が言い争いをしていた


 「考え直して兄さん!! それは母さんの形見なのよ!?」
 「しかし金がなければ生きていけない!!  母さんもきっとこうすることを望むはずだ!!」
 「兄さん……うぅ」


 うーん。兄妹ゲンカだよな? 妹さん泣いてるし


 小さな幌付き馬車の側でケンカしてる
 兄はたぶん20歳くらい、妹は17くらいの兄妹商人? かな
 兄の手にはキレイなペンダントが握られていて、妹がそれを取り返そうと手を伸ばしてる
 妹は泣いているが兄の顔も辛そうに歪んでいる


 仕方ない……関わるか


 「あの、何かお困りですか?」
 「「………」」


 うん。まぁそうだよね……いきなり話しかけられたら注目するよね
 二人ともまさか話しかけられるとは思ってなかった、て顔で見てるよ
 タイミング不味かった……空気読めよ俺!!


 すると硬直から復活した兄が怒ったように言う


 「君には関係ない、邪魔をしないでくれ!!」
 

 ですよね。すみませんでした!! って訳にもいかないんだよなぁ
 泣いてる女の子を見て黙っていられるほど腐っちゃいないんで
 それに母親の形見って言ってたし


 俺は物の試しにAランク冒険者のドッグタグを見せつけて話を聞いてみることにした


 「あの、余計なお世話かもですけど事情を話してくれませんか? 力になれるかも」
 「……Aランク冒険者!?」
 「すごい……!!」


 兄は呆然として、妹は口に手を当てて驚いている


 「わかりました。話を聞いて下さい、冒険者様」




 すげぇ、印籠効果あったわ




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 「私は商人のショール、こちらは妹のガレナです」


 俺たちは近くにあった休憩所で休みながらお互い自己紹介をした。


 ショールさんは21歳の若手商人
 小さい頃から商人であった父の元で修行して18歳で薬を扱う商人だ
 薬の知識は医者であった母から叩き込まれた物で、薬の商人という今の仕事は彼の誇りらしい。しかし19歳の時に父の店に強盗が押し入り父と母は殺され店は燃やされてしまう
 その後強盗は捕まり処刑されたが、ショールさんに残ったのは父母から受け継いだ知識と母の形見のペンダント、そして最愛の妹ガレナだけだった
 ショールさんは残された妹を幸せにするために金を稼ごうと、辛い思い出の残る故郷を捨てて妹のガレナと旅をしながら、妹が幸せに生きていける場所を行商しながら探してるらしい


 しかし薬もタダでは無く、材料は冒険者に依頼して材料を取ってきて貰っていたらしいが、お金を渡したとたんに逃げられてしまい無一文になってしまったそうだ
 そこで母の形見を売ってお金を作ろうとしたらしい
 そして俺が登場して今に至る、と言うワケだ


 さて、ここで俺が取るべき行動は?


 1・お金を貸してあげる
 2・薬の材料を取ってきてあげる
 3・それは大変ですね。じゃあこの辺で失礼します


 1は簡単だけど何か違う気がする
 3は論外、ここまで話聞いてそりゃねーだろ
 じゃあ消去法で2かなぁ、取りあえず材料って何だろう?


 「薬の材料は何ですか?」
 「ああ、ダワー草とラヴィムの実だが?」


 聞いたこと無いな。まぁクロに聞けばわかるだろう


 「わかりました、俺が取ってきますよ。場所はどこですか?」
 「……なぜだ?」
 「だって、お金が無いからそのペンダントを売ろうとしたんですよね? でもガレナは嫌がってます。死んでしまった母親の形見を売るなんて間違ってますよ」
 「しかし、私たちは君に支払う対価がない」
 「それでも構いません。俺が好きでやることですから」
 「………そうか、わかった」


 よし。あとは俺が薬の材料を取ってくれば






 「悪いが話はここまでだ、行くぞガレナ」


 「え?」






 俺は笑顔のまま硬直してしまった




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 「に、兄さん?」
 「わずかだが〔治癒薬ポーション〕の在庫はある。コレを売ってお金にしよう、あとは私が自分で薬草採取に行く。ガレナ、私が戻るまでこの町で待っててくれ」


 ショールさんははじめから俺がいないかのように振る舞っている
 そしてそのまま立ち上がり幌付き馬車へ向かおうとする
 俺はそれを見て、思わず声を掛けた


 「ショ、ショールさん!?」


 その声にショールさんは振り向き、俺の背筋は凍り付く


 その目には敵意があった
 Sレートモンスターやクラスメイト達の殺意にも耐えてきた俺の心は本気で怯えた




 「これ以上、私を侮辱する気か?」
 「え……?」




 俺はカラカラに乾いた声でなんとか返す
 ショールさんは、本気で怒っていた




 「私は父から商人とは何であるかを叩き込まれて育った。労働には対価と報酬が存在すると言うことも、私は父の教えを誇りに思い今まで商人を続けてきた。たとえ騙されようともね」


 ショールさんの声は怒りに震えていた


 「私は商人だ、君の仕事に対する報酬を払うことは出来ない。しかし君は、君の自己満足のために私の誇りを侮辱した。君の本心はどうであれ君の優しさは理解できた、だからこれ以上は言わない」


 ほんの少しだけ、ショールさんは微笑んだ


 「話は終わりだ。さようなら」


 ショールさんは幌付き馬車から小さな木箱を持ち出し歩き出す
 ガレナも俺のことを気にしつつショールさんに付いていった






 俺はしばらくその場から動けなかった




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 気がつくと日が暮れていた


 俺は宿に戻らず休憩所で一人考えていた


 確かに俺の考えは自己満足だ
 ショールさん達はお金が無く冒険者が雇えない、なので薬草採取に行けず薬を作ることが出来ない、だからペンダントを売りお金を作り冒険者を雇って薬の材料を取ってきて貰おう
 でも、ガレナはペンダントを売るのを嫌がった


 だから俺が材料を取りに行けばペンダントを売らずに済む


 俺は別に見返りは求めない
 ガレナの涙を見たから、ショールさんの辛そうな顔を見たからなんとかしてやりたいって思った。本当にそれだけだ


 でも、この俺の想いがショールさんの商人の誇りを傷つけた


 たしかに労働には対価、報酬が存在する
 仕事をすればお金が貰える。俺の世界でも異世界でもおんなじだ


 俺がわずかでも報酬を求めていれば結果は違ったのかもしれない


「このままでいいのかな……」


 俺はショールさん達に謝りたい。そして言いたい






 自己満足の何がいけないんだ、と




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 俺はこの世界を守りたい
 困ってる人がいたら手をさしのべる、今まで俺はそうやって来た
 アカノ村、ヒマワリ防具店、メリッサ達、ラント武器店
 手を差し伸べたから救えた


 困ってる人を助ける、この想いは俺の誇りだ
 ただの自己満足だろうと言われても、この誇りを侮辱するヤツは許さない
 もう一度ショールさん達に会って謝ろう




 そして、俺の誇りを侮辱したショールさんに一言ガツンと言ってやる




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 次の日俺は町を散策していた……ショールさん達を探すために


 今日はクロも俺の肩に乗っている
 昨日は1日中ルーチェと遊んでいたらしく、心なしか疲れて見えた


 「あの幌付き馬車を探してガレナを探そう。ショールさんは薬草採取に行っちゃったかもしれないからな」


 そのまま探すこと2時間、ついに見つけた


 「……ん?」


 ガレナの様子がおかしい。話を聞いてみるか


 「ガレナ、おはよう。どうしたの?」
 「ああジュートさん、ああ……どうしよう」
 「落ち着けよ、何があった?」
 「兄が出かけた〔リベルオアシス〕に、Sレートモンスターが出たと冒険者の方が言ってて……ああ、兄さん、あぁぁ……」


 ガレナは動揺している
 顔は真っ青になっていて今にも倒れそうだ、とにかく落ち着かせないと


 「大丈夫。安心しろよ、俺が様子を見て連れ戻してくるから」
 「え? で、でも」
 「いいんだよ、それに俺もショールさんに言いたいことがあるからな」
 「ジュートさん……でも、報酬は支払えません」
 「いらねーよ、俺の自己満足でやるからな」


 俺は口調が雑になったが、気にしないでガレナに言う


 「ショールさんに言ってやりたいんだよ、自己満足の何がいけないんだ……ってな」
 「あ……」


 ガレナは呆然としてる
 別に分かって貰おうとは思わない……行くか




 俺はニヤリと笑い〔リベルオアシス〕へ走って行った





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