ホントウの勇者

さとう

魔術都市ウィルエンデ④/姉妹の涙・【はぐれ神獣】



 そんなこんなでやって来ました学園長室
 

 「気を引き締めていくか……」


 クレアとミレアに案内してもらった学園長室は〔ウィルエンデ魔術学園〕の最上階にあった
 通常この階層は魔術学園の教師しか立ち入ることが許されず、一般生徒は近づく事も出来ないある意味聖域のような場所らしい。大げさじゃね?


 クレアとミレアは案内は終わったけど帰っていいのか悩んでるらしい
 俺は取りあえず目の前の豪華なドアをノックする
 すると、中から声が聞こえた


 「どうぞ~入っていいですよ~」


 どこか間延びした声
 よし、行くか。と…二人はどうしよう?


 「あ、案内の女の子も一緒でもイイですよ~」


 見透かされていた
 クレアとミレアは驚き半分、好奇心半分みたいな表情で俺を見る
 早くドアを開けろってか、はいはい今開けますよ


 ドアを開けて中に入ると……いた
 机の上で書類整理?やってる。こうやって見ると先生にしか見えないな
 俺と3つしか違わないんだよなぁ


 部屋はかなり広い
 窓は半面がガラス張りで外の景色がよく見え、執務用の幅2メートル以上のコの字型の机に豪華な肘掛け椅子、シャンデリアみたいなランプ魔道具に、高価そうな調度品が沢山飾られている
 どこかに繋がるドアがいくつかあるので、その先は仮眠室やら風呂やらあるのかもしれない
 窓際には来客用のテーブルとソファーが置いてあり、サイドテーブルにはティーポットも準備されている


 「さぁ、どうぞどうぞお座り下さいな。クレアさんもミレアさんも遠慮しないでね」


 そう言って来客用ソファーを進めてくる
 クレアとミレアは自分の名前が何故知られているのか本気で驚いていた
 俺は思わず聞いた


 「クレアとミレアの事、知ってるのか?」


 するとサフィーアは何故そんなことを聞くのか? と言う表情で俺の質問に答えた


 「わたしはこの学園の学園長ですよ? ふふ、生徒全員の名前を知ってるのは当たり前じゃないですか」


 と、にっこり笑って言う
 クレアとミレアは顔を赤くして涙ぐんでいた。本当にうれしかったらしい


 取り合えず3人でソファーに座ると、サフィーアが書類整理を中断してお茶の準備を始める
 クレアとミレアはガチガチに緊張していた
 俺はクロをクレアの膝の上に座らせる、するとクレアはクロの頭をなで始めた…少しは落ち着いたかな?
 ミレアは頭を撫でてやった……よしよし、かわいいヤツめ


 サフィーアがお茶とお菓子を俺たちに出す
 俺は礼を言って一口飲んだ


 「あ、うまい」
 「おいしいですか? 私が煎じた薬草茶です。ふふ、今回のは自信作なんですよ?」
 「ああ、確かにうまい」


 一応、毒には警戒してる
 しかし今の俺には毒は効かない、ルーチェの加護のおかげで液体に溶かされた毒なら完全に無効化できるのだ。サンキュールーチェ


 クレアとミレアも紅茶を飲み、クッキーみたいなのを食べる
 俺はクッキーには一応手は付けないで本題を切り出した


 「さっそくだけど頼みたいことってなんだ?」
 「いきなりですね。その前にちょっといいですか? クレアさん、ミレアさん」


 そしてサフィーアは立ち上がり、執務机の中から何か小箱を取りだし再びテーブルに戻ってきた
 いきなり名前を呼ばれた二人は硬直し、サフィーアの動きの1つ1つを食い入るように見てる
 そして小箱を開けると、そこにはバッジのような物が入っていた


 「お二人は昇級試験に合格しました。クレアさんを上級魔術師に、ミレアさんを中級魔術師に任命いたします。後に正式に任命書が渡されると思いますが、うれしいことなのであなたたちがここに来たらこの〔階位紋章〕だけでも渡したくって。おめでとうございます」


 ってことは、サフィーアはクレアとミレアがここに来ることを知っていた?
 やっぱり油断しない方がいいかもしれないな


 クレアとミレアはあまりのことに呆然とし、そしてボロボロ泣き出した。そしてサフィーアから〔階位紋章〕を受け取ってローブに付ける
 〔階位紋章〕はそのまま魔術師の位を表す紋章で、クレアの18歳という年齢での上級魔術師はかなり早いほうであるらしい
 ちなみに今回の上級魔術師試験で参加者は58人で、合格者は3人だけだったそうだ
 狭き門ってやつだな


 中級魔術師は魔術師を目指す者には通過点に過ぎず、上級魔術師へのスタートラインに過ぎないらしい
 それでもうれしいものはうれしい




 クレアとミレアの姉妹は、俺を挟んでうれしそうに微笑みあっていた




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 「さて。そろそろ本題に入らせてもらいますね」




 二人に激励を送っていた俺を見てサフィーアが言う
 いけね、肝心なことすっかり忘れてた


 「ジュートさんにお願いしたいこと、それはモンスター退治です」
 「は?……モンスター討伐?」


 なんで俺に特級魔術師が?


 「もちろん只のモンスターじゃありません。そのモンスターは意思を持った凶悪なモンスターで、この【青の大陸ネレイスブルー】の首都〔王都ブルーヴェルト〕の近くにある古城、〔ダルフィン城〕を根城にし、周囲のモンスターを統率しています」


 サフィーアは疲れたように言う


 「王都はそのモンスターが神によって作られた獣…【神獣】であると判断し、かつての神々と〔勇者ヴォルフガング〕の戦いで逃げ延びた【はぐれ神獣】であることを突き止めました」


 マジかよ。【銃神ヴォルフガング】から逃げ延びたって……?


 「討伐レートSSの強力なモンスターです。わたしも王都に出向を命じられていまして、腕の立つ護衛を探していたんです」




 「お願いしますジュートさん……わたしと一緒に闘って頂けませんか?」




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 なるほど……【神獣】か
 まだ闘ったことはいけど、いつか必ず闘わなくちゃならない相手でもある
 それにこの町じゃあまり情報収集できなかったし……〔王都ブルーヴェルト〕か
 行ってみる価値はあるかもな……よし 


 「わかった。引き受けるよ」
 「はぁぁ……よかったぁ。あ、もちろん報酬は用意します」
 「ああ、まぁ適当でいいよ」
 「いやいやそんなワケに行かないですよ。まずはその〔エリクシルペンダント〕を前金で差し上げます」
 「このペンダントをか?」


 俺はペンダントを取り出して掲げてみる
 すると、隣で硬直していた2人が慌てたようにしゃべり出した


 「サフィーア様!! 〔エリクシルペンダント〕はこの【青の大陸】に1つしか無い秘宝のですよ!! それを…さ、差し上げるだなんて!?」
 「そ、そうですよ!? 売れば100億ゴルドどころの金額じゃありませんよ!!」


 これってそんなにすごいもんなのか?
 まぁくれるんなら貰うけど…と、思っていたらサフィーアが言う


 「残りの報酬は依頼の終了後に……そうですね、あなたが満足するまでわたしを好きにして頂いて構いません。わたしでご不満で無ければですが」


 いきなり何言ってんだコイツ


 俺は思わずサフィーアを見る
 服の上からはわからないが、ミレアはスタイル抜群だって言ってたっけ


 「ほぅ……いてててて!?」
 「……何を考えてるのかしら?」
 「ジュートさん?」


 最恐姉妹ここに誕生
 クレアが俺の足を踏みつけミレアが腕をつねってきた
 マジですいませんでした。もう変なこと考えません


 「いやこのペンダントだけでいい。お宝みたいだしな!!」
 「そうですか、わかりました…出発は2日後です。宿にお迎えを出しますので準備をよろしくお願いしますね」


  話は終わりそのまま学園長室を出た
 するとクレアが


 「上級魔術師としてこの国の危機は放っておけないわね。私も行くわ」
 「私も参加します!!」


 言うと思ったよ
 そもそもクレアとミレアの前でこの話をしたのだ
 サフィーアは最初からこの二人を参加させるつもりなのかもしれないな……仕方ないか




 このまま学園の外に出て2人と分かれる。そしてそのまま宿へ帰った




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 宿に戻り〔セーフルーム〕に入ると、アグニとルーチェが待ってましたと言わんばかりに話しかけてきた


 《聞いてたぜ、【はぐれ神獣】だってな。ヴォルにとっちゃ雑魚だけどよぉ、人間が相手すんならかなり厳しいと思うぜ? そもそも【神獣】ってのは神が神を倒すために作ったモンスターだ。属性は【時】を備えてるから死ぬことはねえし、意思を持ってるって事は【神獣】を従えてた【魔神獣】だろーな》
 《そうだね。【魔神獣】は神様より強いときがあるしモンスターを従えるのも得意だから。ジュート、気をつけてね》


 アグニとルーチェがアドバイスをくれる


 「久々の強敵か……」
 《間違いなくアナタのクラスメイト3人より強いワネ。【神器ジンギ】を使わないと勝てないカモ。大丈?》


 クロが言う「大丈夫」は人前で【神器ジンギ】を使えるか? と言うことだ
 当然だ、俺はもう迷わない


 「ああ、ヤバくなったら使う」
 《ソウ……わかったワ》


 クロは優しい声で言う
 そういえば、聞いてみたいことがあったんだ


 「なあ、【神獣】て神様が作ったんだろ? 【九創世獣ナインス・ビスト】と同じ神獣なんだよな?」


 《バカ野郎!! あんな紛いモンと一緒にすんじゃねぇよ。いいか…神獣ってのはな、俺たち【九創世獣ナインス・ビスト】を模倣して神が作った魔獣なんだよ!!》
 《そうだよそうだよ!! それに私たちの方がず~~~っと強いんだからね!! まぁ今はホントの力がだせないけど……くすん》
 「わわ、ゴメンゴメン。悪かったよ」


 悪いことを言ってしまったみたいだ
 確かにモンスターと一緒にされたらイヤだよね




 とにかく2日後には出発だ。ゆっくり休んでおこう




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 2日後。朝食を済ませ宿の外で待っていると、クレアとミレアが荷物を持って歩いてきた
 どうやらここで一緒に迎えを待つらしい。するとクレアが


 「任命書も頂いたしこれで私は正式な上級魔術師よ。この大陸の為に闘うわ、あなたと一緒にね」
 「私もです。中級魔術師ですけどジュートさんに鍛えて貰ったんです!! こんな所で負けません。それにダンジョンも制覇してませんしね!!」


 二人ともやる気満々だな
 そんな風に雑談をしていると迎えが来た
 サフィーアが窓から体を出して手を振っている……子供かよ


 「おはようございま~す。ジュートさん、クレアさん、ミレアさん。さぁ早く乗って下さい、出発しますよ~」


 俺たちの前には1台の魔導車が止まった
 しかしデカい、キャンピングカーみたいだ。大人数での移動だからかな?


 魔導車に乗り込むと中は広かった
 テーブルに備え付けの椅子、小型の魔導冷蔵庫に水道まである


 「ここから〔王都ブルーヴェルト〕までは約1日掛かります。それじゃ出発しましょうか」


 そしてそのまま〔王都ブルーヴェルト〕へ出発した




 敵は【神獣】か……頑張らないとな





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