ホントウの勇者

さとう

魔術都市ウィルエンデ③/昇級試験・【青の特級魔術師サフィーア・サピロス】



 ミレアが帰宅して数10分


 いろいろ聞かれたが、抱き合ってたことについては目にゴミが入って取ってもらっていた······と言う苦しい言い訳でなんとかごまかした


 「ジュートさんとお姉ちゃん、知り合いだったんですね?」
 「ええ。【赤の大陸】でちょっとね、と言うかそれならジュートとミレアが知り合いだった事の方が驚きなんだけれど」
 「うん。私の冒険者パーティーを鍛えてもらったの。今の私はBランク冒険者なんだから!!」
 「び、Bランク冒険者⁉ ミレアが⁉」
 「うん。コレも全部ジュートさんのおかげです!!」


 そしてミレアがにっこり笑って俺の腕にしがみつく
 おいおい、ミレアってこんな積極的な子だったっけか?


 するとクレアがむっとしてミレアに言う


 「ちょっとミレア、あんまりベタベタしないで頂戴。埃が立つわ······と言うかあなた何しに帰ってきたの?」


 クレアがなんか怖い
 するとミレアは俺の腕にしがみついたまま思い出したように言う
 と言うか···おっぱい当たってる
 クレアの妹なだけあって結構ある


 「うん。私···中級魔術師試験を受けに来たの、使える魔術も規定数に達したし。魔術ギルドじゃなくて学園で受ければ、サフィーア様にも会えて魔術を見てもらえるから一時的にパーティーを抜けてきたの」
 「そうなのか。フリック達は元気か? それとサフィーア様って?」
 「はい、みんな元気ですよ。今は迷宮の55階層まで進んでいます。ジュートさんに教えを守って毎日訓練してます。またみんなに会いに来て下さいね」


 ミレアは本当にうれしそうに言う
 俺もその言葉にうれしくなり、なんとなくミレアの頭を撫でてやる
 するとミレアは目を閉じて気持ちよさそうにしてる。ネコみたいだ


 その様子を見ていたクレアが、若干不機嫌そうに俺のもう一つの質問に答えた


 「サフィーア様っていうのは【青の特級魔術師サフィーア・サピロス】様の事よ。〔ウィルエンデ魔術学園〕の学園長でもあるの」


 どうやらすごい人らしい
 ルビーラと同じ【特級魔術師】か、かなり強いんだろうな。


 「ねぇジュート。お願いがあるんだけれど」
 「私もお願いしたいことが······」


 クレアとミレアの姉妹が俺を見る
 改めて見るとホント美人姉妹だよな




 きっと学園じゃかなり人気あるだろーな




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 クレアとミレアのお願いはだいたい同じだった


 クレアは【上級魔術師】試験の付き添い、ミレアは【中級魔術師】の付き添い
 要は試験の日に学園に一緒に付いてきてくれ、と言うことだった。


 勿論俺に断る理由は無いのでOK
 ちなみに試験は明後日、これから最後の追い込み勉強をすると言うことで解散となった
 ミレアはクレアにわからないことを聞くために一緒に勉強するらしい


 俺はとりあえず宿に帰ることにした


 「そういえばクロ達何してんのかな?」




 帰ったら〔セーフルーム〕に入ってみるか




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 宿に戻り〔セーフルーム〕に入ると、クロしかいなかった


 アグニとルーチェは自分の空間で寝てるらしい
 久しぶりにクロと二人きりだな


 《何かあったノ? なんかスッキリしてるワネ》
 「まぁいろいろあってな。それよりそっちは何してたんだ?」
 《ムカシの話ヨ。【九創世獣ナインス・ビスト】が3匹も集まるなんテもう何百年も無かったからネ》
 「そっか、楽しかったか?」
 《エエ。ワタシ達【九創世獣ナインス・ビスト】は【創造神】に作られた神獣、本当に分かり合えるのは9匹とヴォルだけだからネ》
 「俺は?」
 《アナタはまだ全部の【九創世獣ナインス・ビスト】に会ったコトないじゃナイ。まだ早いワ》
 「まぁそうだけどな。これからに期待だな!!」
 《自分で言うのネ·····「》


 久しぶりにクロと一緒にお喋りした
 これからの予定や今までの旅の復習、アグニやルーチェの事や【神器ジンギ】の事




 なんだかんだで俺の一番の相棒のクロと一緒にいるのは、とても楽しかった




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 時間は流れ昇級試験当日


 俺とクレアとミレアは〔ウィルエンデ魔術学園〕の門の前に集まっていた
 今日はクロも俺の肩の上に乗っている
 久しぶりに会ったクレアとミレアが抱っこしたり、もふもふしたり、抱きしめたりした


 魔術師の昇級試験の手順は、魔術の使用個数のクリア・筆記試験の合格、そして実地試験の3つで構成される
 試験管はその大陸の上級魔術師が8人王都から派遣されて、6ヶ月に1度開かれる
 そして実地試験は2通りの方法があり、参加者が選ぶことが出来る。その方法は


 1・特級魔術師と手合わせをし、その実力を認めさせること
 2・上級魔術師3人と手合わせし、その実力を認めさせること


 大抵の参加者は【特級魔術師】との対戦を選ぶ
 なぜなら【特級魔術師】と戦える機会なんてそうはないからだ
 しかし、【特級魔術師】と戦う事が出来るのは、【上級魔術師試験】だけである


 以上がクレアから聞いた試験の手順である
 クレアは当然特級魔術師との対戦を選ぶそうだ


 俺たちは学園の中に入り試験会場に入った
 まずは筆記試験で、どうやら上級・中級は一緒の試験会場で席だけが違うみたいだな
 二人はそれぞれの席に着き最後の復習を始めるようだ
 俺は二人を激励して会場の外へ出た


 筆記試験会場のすぐ側は中庭になっていて、柔らかな日差しが降り注ぎ噴水からは綺麗な水が吹き出ている
 俺は近くのベンチに座りクロを膝の上にのせてその光景を眺めていた。すると


 「いいお天気ですねぇ······ふぁ」
 「あ、はい。そうですね」


 いつの間にか女の人がいた
 20歳くらいの女の人で、薄い青のサイドダウンヘアに白い肌、柔らかな水色の瞳に薄い唇、おしゃれな眼鏡も掛けている
 メチャ美人だ、服装は青いドレスに青のローブ、青いベレー帽をかぶった先生みたいな感じの人だ
 この人すごい魔力を感じる。強いな


 ルビーラと同じ···いや、この人の方がちょっと強いな
 もしかしてこの人がと思っていると、女の人が自己紹介してきた


 「そんなに警戒しないで下さいな。初めまして、私は【青の特級魔術師サフィーア・サピロス】と申します。よろしくお願いしますねぇ······あら、かわいいネコちゃん」
 「は、はい。俺はジュートです」


 女の人は俺の膝の上にいるクロの背を撫でる
 なんでこの人、俺に話しかけてきたんだろう?
 でもそういえば、ルビーラの時もいきなりだったしな
 俺って【特級魔術師】を引きつける体質なのかな?


 「あなたって不思議な感じがしますねぇ。匂い、と言うか? 雰囲気? と言うか。ついつい話しかけてしまいたくなると言うか······なんかすみません、うまく言えません」


 俺に言われてもな
 と言うかこの人、【特級魔術師】って事はこの学園の学園長だろ? しかも今日の実地試験の対戦相手でもあるんだよな
 こんな所にいてもいいのかよ


 俺がぱっと見た感じでも、上級魔術師試験の参加者は50人くらいいた
 ここから筆記試験でふるいをかけて、残った人がこの人と闘うってことでいいんだよな
 するとサフィーア、さんが話しかけてきた




 「不思議ですねぇ、あなたといると落ち着きます。それにあなた、すごく強いですねぇ······もしかして〔神の器〕ですか?」




 俺の全身が一瞬で戦闘態勢に切り替わり、左手はすでに【死の輝きシャイニング・デッド】に添えられている
 この距離なら1秒も掛からずに首を落とせる




 「わわわ、ちょっと殺気を押さえて下さいぃ。それだと答えを言っちゃってるような物ですよぉ?」
 「チッ···‼」




 こいつ、俺をハメやがった
 俺はなるべく低い声で言う
 仮にコイツが全力で来たところで俺には勝てないはず、すると目の前の女は


 「わたしはあなたやあなたの知り合いに危害を加えるつもりはありません。〔神の器〕や神様は怖い人ばかりじゃないって信じてますから·····わたしを信じて下さい」
 「何で俺に近づいてきた。何が目的だ?」
 「あなたの魔力の流れが普通の人と違って見えてから。わたしは生まれつき人の魔力の流れが見えるんです、普通の人は緩やかな1色の流れなんですけど、あなたはいろんな色がうねりを起こしてるような。でもすごく優しい感じで綺麗な色······」
 「〔神の器〕や・神様が怖くないのか?」
 「はい。だって〔勇者ヴォルフガング〕は神様だけど、この世界を守ってくれたやさしい神様じゃないですか。今の神様は怖い人たちばかりですけどきっとやさしい神様もいますよ? あなたみたいに」


 サフィーアはにっこり笑う
 どこまでも優しいどこまでも澄んだ笑顔で
 これじゃ俺が悪者じゃねえか。仕方ない、今は信じてやるか


 俺は殺気を解き、ナイフに添えていた手を外してため息を吐いた。


 「俺は神様じゃない。それで俺に何か用か?」
 「いえ、本当にお話したかっただけです。もしよかったら試験のあとお話しできませんか? あなたの強さと優しさを見込んでお願いがあります。初対面の人にこんなこと言えるなんて······ふふ、変な感じですねぇ」
 「·········」


 どう言い返そうか悩んでいると、サフィーアはポケットから何かを取り出して俺の前に差し出してくる


 「これは、ペンダント?」


 そのペンダントは、魚の模様が装飾されたレリーフの中央に、青い球体がはめ込まれている
 球体はガラス玉で中に青い液体が入っていた


 「これを学園内の教師や生徒に見せて、わたしの所へ案内してと言えば案内してくれるはずです。今日の試験が終わったら来て下さいね。待ってますよ」


 そう言って俺の手にペンダントを握らせて立ち上がり、ゆっくりと歩いて行ってしまった
 得体が知れない、警戒しておこう


 試験が終わったら、クレアかミレアに聞いてみるか




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 試験の行程が全て終了して、俺たちは学校の中庭に来ていた


 実地試験は見学できなかったのでクレアがサフィーアとどういう戦いをしたのかはわからないが、二人とも笑顔なのでいい結果を残せたのだろう
 そうだ、二人にサフィーアの事を聞いてみるか


 「なぁ、【青の特級魔術師サフィーア・サピロス】ってどんな奴なんだ?」


 すると二人はガバッと同時に俺を見て、熱く語り出した


 「サフィーア様はこの【青の大陸】最強の魔術師でもあり、女性魔術師の憧れでもあるわね。若干20歳でこの〔ウィルエンデ魔術学園〕の校長に就任してから、魔術師を志す人たちがかなり増えたと言われているわ」
 「それだけじゃないですよ!! この【青の大陸】で付き合いたい女性魔術師ナンバーワン!! 美人でスタイル抜群のお姉様で、この町の男性魔術師はほぼ全員サフィーア様のファンクラブに入会してるという噂もあります!!」


 なるほど。クレアの話だけならこの大陸最強の魔術師で、魔術師達のあこがれの存在ってやつなのか?
 ミレアの話は置いておくとして


 「ジュート、何故サフィーア様のことを気にするの?」
 「ジュートさんも好きになっちゃいました?」


 二人はからかうように、ちょっとトゲを混ぜて聞いてくる




 「いや、そいつに呼び出されたんだ」




 「そうなの?」
 「そうなんですか?」


 2人は顔を見合わせて考え込んでいた


 「「········」」




 「「えええええええっ⁉」」


 二人の大音量の絶叫に、周りにいた他の魔術師達も驚いて振り向きこちらを凝視している
 おいおい、注目されちゃってるよ


 「なななんでジュートがサフィーア様に呼び出されるのよ⁉」
 「そそそうですよ!! 何したんですかジュートさん⁉」
 「落ち着け落ち着け‼ 注目浴びてるぞ‼」


 そう言うと二人は辺りを見回し、顔を赤くして静かになった
 俺はポケットからペンダントを取り出し二人に見せながら言う


 「これを見せてば案内してくれるはずって言ってたけど」


 二人はそのペンダントをみて愕然としている
 なんだよ一体


 「お、お、お、お姉ちゃん。こここれって···⁉」
 「え、〔エリクシルペンダント〕ね。間違いないわ」
 「えーと、大丈夫か? 案内してくれんのか?」


 二人は呼吸を整えて俺に言う


 「わかった、案内するわ。たぶん学園長室ね、早速行きましょう」
 「わたしも一緒に行くよ。学園長の近くまで行けるなんて今までなかったからね」
 「ああ。じゃあよろしくな」




 二人の態度が気になったが、取り合えず学園長室まで案内してもらうことにした





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