ホントウの勇者

さとう

水中迷宮都市ラビュリント③/4人の成長・4人の英雄





 訓練開始から20日後。少しはましになってきたかな




 もちろんまだまだ足りないけどね
 この場所はキャンプ場みたいな感じなんでここで寝泊まりする
 料理なんかは俺が作り、物資なんかも俺が町で調達
 魔術で体はキレイに出来るし、湖もあるから特に問題ない




 そしてみんなの修行成果はこんな感じ




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 まずフリックの剣
 まずは剣の型を強制するために型を教えることにした
 勿論俺は剣の型なんて知らないので〔カマクラハウス〕でアグニにしごいて貰い、その型をフリックに伝える
 フリックは才能なのか、すぐに型をモノにして素振りをしている
 そして型がまとまってきたら、体に重りを付けて俺と実戦訓練を始めた
 最初は5分と待たなかったが、今は15分は持つ。重りも少しずつ増量しているので筋力や体力もどんどん上がってきた


 ミコトは格闘訓練
 しかし格闘術事態はほぼ完成してるので下手な技術は加えずに、下半身を鍛えて体力の増強、あとは俺のナイフをよける訓練だ
 最初の方は俺の攻撃をある程度はよけるが、フェイントや絡め手に弱くすぐに攻撃を食らってしまった
 なのでその辺りを指導するとあっという間に強くなる。そこでフリックと本気で闘わせてみたりして実戦に向けての訓練をした
 結果は五分五分、まぁこれも予想通りだ
 フリックの強さに驚きつつもどこかうれしそうで、お互い意識してる


 グリューは弓の訓練
 視界に収まる範囲の至る所に番号付きの的を設置し、指定された順番通りに的に当てる訓練をした
 結果はなんと失敗なし。これには驚いた
 グリューは頭もよく矢を全く外さなかった。弓の才能がすさまじい
 そこで次は近接訓練でナイフを教えた。ナイフは俺も得意だし、グリューも飲み込みが速いのでかなり上達してる
 そして魔術はあっさり【初級魔術師】をマスターした。グリューは天才と言う種類の人間らしい


 ミレアは魔術
 まずは魔術を使いまくって魔力の枯渇を狙う
 ミレアに初級魔術【鎌鼬エアカッター】を10発ほど使ってもらう
 するとミレアは青くなり肩で息をしてる
 少しすると回復してきたのでまた魔術を使い、を何度も繰り返す
 そして10日がたった頃、クロがミレアの魔力総量が上がっているというので試しに中級魔術師を使ってもらう
 使うのは【刺穿風風ウィンドランス】……結果は成功だった
 ミレアは泣いて喜び、フリック達も大喜びだった


 魔術師の位を上げるには、魔術をいくつ使えるかで決まる


 初級魔術師は【初級・5】
 中級魔術師は【初級・5】【中級・8】
 上級魔術師は【初級・8】【中級・10】【上級・12】


 この数の魔術を使う必要がある
 ミレアはあと中級魔術を7つ覚え魔術ギルドの試験に受かれば晴れて中級魔術師だ
 魔術でモノを言うのは才能。クレアは15歳ですでに中級魔術師だったのでミレアはずっと羨ましかったらしい
 だから座学を頑張り、呪文を沢山暗記して中級魔術師になるためにいろいろ備えてきたが、肝心の魔力が足りないので落ち込んでいた
 そこで、3人組が冒険者に誘ってくれて、実戦で魔力総量を上げようとしたらしい


 ミレアはあとは簡単だった
 毎日魔力を限界まで振り絞り魔術を連発する。回復したらまた連発するの繰り返しだ


 そして21日目。俺はみんなにひとつの試験をした
 それは4人VS俺での本気バトル。勿論俺だって修行してきたしやられるつもりは無い


 その発言に4人は仰天していたが俺の目を見て4人とも即座に構える
 自分の今の強さを見てほしいんだな
 俺は大声で叫んだ




 「殺すつもりでかかってこい!!」




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 武器はもちろん本物
 俺は右手に【雄大なる死グロリアス・デッド】、左手に投げナイフを構えて4人の様子を伺う


 「これは……なるほどな」


 フリックは、俺が教えた型で剣を構えてにじり寄ってきてる
 ミコトは俺の隙をうかがい飛び出すタイミングを計っている
 グリューは矢をつがえて様子を見てる
 ミレアはすでに呪文詠唱に入っている


 「ありゃ?」


 ミレアの中級魔術が発動すると同時にフリックとミコトが飛び出し、二人が驚いて急停止する
 【刺穿風風ウィンドランス】は対象の真下に紋章が輝きそこから風の槍が飛び出す魔術。つまり紋章内にいなければダメージは受けない


 「甘い」
 「あっ!?」


 ミレアの声を聞きつつ俺は地面を蹴って紋章内から脱出し、投げナイフをグリューに向かって投げつけ、急停止した2人に接近した


 「ほれこっちだ」
 「くっ!!」


 俺は最初にミコトを狙う
 ミコトはすぐ体制を立て直し、右のショートアッパーでアゴを狙おうとする


 「あらよっと」
 「なっ!?」
 「おわぁッ!?」


 俺は左手でガードしその手を掴み、腕を引っ張る
 そして体勢を崩した所でミコトを前に突き飛ばすと、剣を振りかぶっていたフリックに衝突した


 「きゃあっ!?」
 「おわっ!?」


 二人はそのまま地面に倒れた
 そしてグリューとミレアは両手を挙げて降参していた
 前衛の2人がやられた以上勝ち目がないとわかっているからだ




 「はい、おしまい」




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 以上の通り、俺は負ける気がしなかった
 そりゃそうだ。個人の能力は上がってもチームワークは全くでたらめだからな
 それをわかってもらうためにあえて闘った。4人ともお互いを見ながら反省してるようだ
 さて、今度はチームワークの特訓だ。21日ぶりに町に戻ろう


 「よし、今日は町に戻ってうまい物でも食べよう。明日からBレート以上のモンスター討伐の依頼を受けるからな。しっかり食べてしっかり休もう」
 「び、Bレートですか!? いきなりですね!?」


 とフリックが言うが、俺はAレートでも行けると踏んでいた


 「大丈夫。今のみんななら楽勝だから」




 そう言ってみんなを元気づけ、俺たちは町に戻っていった




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 町に戻り俺たちはちょっと高級そうな店で夕食を取る。もちろん俺のおごりだ


 俺たちは全員ステーキを頼んで食べた
 フリック・ミコト・グリューはおかわりをしてミレアは1枚で満足した。俺も2枚食べちゃった


 そして高級宿で1人1室。もちろん俺のおごりで疲れを取る
 全員遠慮していたが強引に泊まらせる。頑張ったご褒美は必要だよな、明日からモンスター退治だし
 俺はクロと一緒にベッドに入り、目が覚めた


 「……ん?」


 トイレに起きて用を済ませると、廊下でささやくような声がする


 「この声は……ミコト?」


 俺はドアを少し開けて様子を見ると、フリックの部屋の前にミコトがいた
 眠そうなフリックがドアを開けて何かを話して、そのまま2人は部屋に入っていった




 「……まさかな」




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 翌朝。朝食を食べて宿をあとにする


 今日の予定はモンスター討伐の依頼を受け、チームワークの訓練だ
 みんなに覚悟を聞くとフリックがデカい声で言う


 「大丈夫です。今日死んでも後悔はありません!!」
 「私もです!!」


 フリックとミコトが見つめ合ってる
 コイツらまさか、死ぬかもしれないからってヤリやがったな
 ミコトがフリックの部屋に行ったのはそういうことかよ……まったくもう


 グリューとミレアはお互い顔を見合わせて首をかしげていた。あとでこっそり教えてやろう




 とにかく冒険者ギルドに行こう




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 冒険者ギルドに到着して早速依頼掲示板の元へ


 そしてモンスター討伐の依頼を探すとけっこうあった
 その中でA~Bレートの討伐依頼を3つ選ぶ
 3つ全部がAランク冒険者じゃないと受けられない依頼だ。ちなみに依頼は同時に3つまで受けることが出来る


 〔ブルーマンティス〕討伐・Aレート・報酬800万ゴルド
 〔ブルービッグウルフ〕討伐・Aレート・報酬900万ゴルド
 〔ブルービッグバット〕討伐・Bレート・報酬600万ゴルド


 俺が選んだ依頼は以上の3つだ
 全てこの辺りを荒らしてるモンスターなのでクロに居場所を探して貰い、5日以内にケリを付けるつもりだ




 「ではさっそく出発!!」




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 最初は〔ブルーマンティス〕からだ
 コイツは町の近くの森に潜んでいるらしくよく街道を通る商人や冒険者を襲うらしい
 俺はみんなのフォーメーションを確認しながら移動していた
 まずミコトが敵の牽制を行い接近し相手の攻撃の手数を確認する。勿論ムリはしないこと
 そしてミレアとグリューが遠距離でサポート、勿論ミコトに当てないように
 そして弱ってきたところでフリックがとどめを刺す
 あくまで理想であり臨機応変に動くことが大事だ。ミコトが動いている間はフリックが2人を守ったり、その逆もあり得る
 さらに敵が大人数だったらお互いをカバーしながら動かなくては行けない。その辺りの呼吸は実戦でつかむしかない


 俺は見守ることにする
 俺が入って4人のチームワークの訓練を邪魔するわけにはいかないし、もし怪我したら治してやる、それと負けそうだったら助太刀に入る、それが俺の役割だ


 いきなりボスキャラは無謀なので雑魚で経験値を積んでから闘うことにする
 最初は〔ブルーゴブリン〕5体を相手に闘ったが、幼なじみとして小さい頃から一緒だったからかすぐにお互いの仕事を理解して闘えるようになった


 そのまま半日ほど雑魚で修行をして自身がついてきたみたいだ。そろそろボスの所へ行くか
 俺は黙って見てたわけじゃない。ちゃんとボスは見つけて逃げないように監視していた


 「お、いたぞ」
 「ほ、ホントにいた……Aレートモンスター」


 4人は〔ブルーマンティス〕と対峙した
 〔ブルーマンティス〕は大きさ横5メートル、縦3メートルくらいの青いカマキリで体や腕のカマなどは固い皮膚で剣や矢が通らない
 そこでグリューとミレアが開幕の魔術で油断を誘い、フリックが剣を弱点の腹の柔らかい部分に突き立てた
 そして横倒しになったところでフリックが首を切り落とし大勝利。ミコトは何もしなかったので少し落ち込んだが後衛を守るのも仕事だ、と伝えると元気を出した


 「よし、サクサク行くぞ」
 「ハイ!! 次は頑張ります!!」


 お次は〔ブルービッグバット〕
 コイツは俺たちがキャンプしていた場所から少し先に行ったところにある洞窟のヌシで、超音波をだす厄介なヤツだ
 俺たちは1日使い移動と休憩をしながら進み、洞窟へ着く
 早速洞窟へ入ると、そこは洞窟というか広場のようになっていて、入ってすぐの天井に〔ブルービッグバット〕がひっついていた
 そしてそのまま急降下してきてミレアを狙ってきたので、ミコトがカウンターで上段蹴りを叩き込み吹っ飛ばし、すかさずグリューが5本同時に矢を放つと全て命中、最後はフリックが首を切り落とした


 「よし、最後だな」 
 「お任せ下さい」 
 「わたしも頑張ります!!」


 最後は〔ブルービッグウルフ〕だ。4人は以前の屈辱を晴らそうと全員に気合いが入ってるな
 そして2日かけて迷宮裏の泉の先の森へ移動した。〔ブルービッグウルフ〕はここに薬草採取に来た人間を襲い、冒険者も何人か犠牲になっているから早期解決したいところだ
 ここではグリューが狩人としての狩り方で、餌を仕掛けてしばらく待った
 すると〔ブルービッグウルフ〕が現れたのでフリックとミコトはすぐに飛び出せるように構え、グリューは弓に矢をつがえ、ミレアは詠唱に入った


 「お、いいね」
 「はい。毒だんごを食べ始めました」


 まず餌を食べていた〔ブルービッグウルフ〕がいきなり地面に紋章が光ったのを見てその場から飛び退く
 しかし魔術はおとりで本命はグリューの矢。前足と後ろ足に1本ずつ刺さり動きが鈍る
 矢にはマヒ毒が塗ってあった


 「よし、いけるな」
 「さすがグリューだな」


 なぜなら麻痺毒が塗ってあるからだ
 そのままフリックとミコトが飛び出し〔ブルービッグウルフ〕のボディにミコトが借りを返すかのように強烈な1撃を当てる
 そしてフリックが全力の1撃で首を両断、あまりの重さにフリックの剣が折れてしまった


 全てが終わり4人は喜んで抱き合っていた
 そして俺の方に駆け寄ってきて、何故か全員に抱きつかれた


 うむ、俺の役目も終わりか




 俺たちは笑顔で冒険者ギルドに帰還した




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 俺たちは冒険者ギルドに帰還して報告をする


 その成果はフリック達のパーティーの戦果にした
 そりゃそうだろう。俺なんもしてないもん


 すると4人の冒険者のランクが一気にCになった
 フリック達は呆然として俺を見るが、俺は何も言わずに報酬を受け取りギルドを出る
 4人は何か言いたそうだったがとりあえず後にして言う


 「よし。このお金でみんなの新しい装備を買おう」


 と、言うわけで武器屋へ


 まずはフリックの剣、ミコトのグラブ・レガース、グリューの弓、ついでにミレアにワンドを買った
 全員ミスリル製の頑丈な装備品なので、しばらくは大丈夫だろう
 防具屋でも同じミスリル装備を買って、全員の装備を整えた


 残ったお金は全部フリックに押しつけた 
 4人とも頑なに抵抗したが、フリックのパンツの中に無理矢理入れてみんなで爆笑した
 そして、宿屋で1泊してその日は休んだ


 朝、朝食を食べ終わり外に出る
 そして今後のことを聞いてみた


 「さて、修行も終わったしこれから4人はどうすんだ? またダンジョンに潜るのか?」


 「そうですね。今の俺たちなら相当深く行けると思います」
 「ええ。このダンジョンでまだまだ強くなれそうですしね、私たち」
 「うん、それにジュートさんもいるしね」
 「はい。ジュートさん、一緒に冒険しましょうね」


 ミレアがうれしそうに言う
 残念だけど俺にはやることがある


 「いや···俺はここでお別れだな。俺にはやるべき事があるから」
 「そんな⁉ ジュートさん······」


 4人は驚いてる
 それにミレアは泣き出しコトが慰めてる


 「この1ヶ月楽しかった。みんな、ありがとう。みんなならあのダンジョンを絶対に攻略できるって俺はそう確信してる。だからがんばれよ」


 俺がそう言うと4人とも泣き出してしまった
 そして1人ずつ俺に礼を言ってくる


 「ジュートさん。俺は剣士としてあなたに鍛えられたことを誇りに思います。少しでもあなたの強さに近づけるようにもっと強くなります。ありがとうございました‼」
 「私、この1ヶ月辛かったけどとても楽しかったです。強くなれて、それにフリックとも結ばれて。全部ジュートさんのおかげです、ありがとうございました‼」
 「僕はあなたにまだまだ教わりたいことが沢山あります。でも、それじゃダメなんですよね。これからはこの仲間達と一緒に
あなたよりも強くなります。ありがとうございました‼」
 「ジュートさん、わたし···わたし···ひぐっ、うええ···もっとべんぎょおして上級魔術師になりまず。ひぐ、まだ···がんばりまず······ありがとおございまじだぁ‼」


 そうして俺たちは別れた




 次に会うときは、もっと強くなってるだろうな




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 それから俺は町を出て〔オルダ洞窟〕へ向かっている


 久しぶりに一人なのでちょっとだけ淋しかった
 するとクロが言う


 《アナタもだいぶ成長したかもネ。それにアナタは気づいてないかもしれないケド、アナタもかなり強くなってるワヨ》
 《ああ。基本に戻る、人に教えるっつーのはそれだけで自分の実りになる。今のお前ならオレとかなりいい勝負出来そうだぜ》
 「いややんねーよ。それよりも、この1ヶ月間で【魔神軍】の動きがどうなったか気になるな。今度は違うクラスメイトがこの大陸に入ってたりしてな」
 《あり得るな。さっさとルーチェミーアの所いって力もらって、もっと強くなんねーとな」
 《油断は禁物ヨ。まだ先は長いからネ》
 「ああ。じゃあ〔オルダ洞窟〕をさっさと抜けて〔フルブルー大塩湖〕を目指しますかね」


 俺たちは歩き出す




 〔フルブルー大塩湖〕へ向けて






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 この3年後に〔水中迷宮都市ラビュリント〕の迷宮は若干18歳の少年少女の冒険者グループに完全制覇されることになる
 このパーティーはSランク冒険者として最年少チームとなり、【青の大陸】で最強の冒険者パーティーとしてその名を轟かせる
 冒険者を夢見る幼い子供達の希望の星となり、その強さから「英雄」と呼ばれ伝説のパーティーの1つとして語られる事になるのであった






 とある冒険者が、その強さの理由を彼らに聞いてみた


 その答えは······








 「黒猫を連れた黒服の少年が、俺たちを強くしてくれたんだ」









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