ホントウの勇者

さとう

水中迷宮都市ラビュリント①/湖底の遺跡・4人のルーキー

 
 〔雨の町レイニーン〕を出て3日
 天気もよく今日もツーリング日和、俺とクロは【流星黒天ミーティア・フィンスター】で颯爽と走っていた
 すると俺の肩に乗っているクロが言う


 《次の町は〔水中迷宮都市ラビュリント〕、そこを越えて南下して〔オルダ洞窟〕を抜ければルーチェミーアのいる(フルブルー大塩湖〕ヨ。マダ先は長いワネ》
 「そうたな、力を付けながら確実に行こうぜ」
 《エエそうネ。次の〔水中迷宮都市ラビュリント〕の迷宮に挑戦するのもイイかもネ、あそこの迷宮は未だに踏破者がいない高難易度の迷宮ヨ》
 「うーん、面白そうだけど時間掛かりそうだな。まぁ見るだけ見てみるか」


 迷宮というのは8大陸に各1つあるダンジョンだ
 それぞれ形が異なり大きさも違う。遺跡だったり洞窟だったり、俺も興味がない訳ではない


 そして俺達が向かっている〔水中迷宮都市ラビュリント〕の迷宮は文字通り水中にある
 湖のそばに入り口があり、そこから湖底に向かって降りて行く形式のダンジョンらしい
 っていうか水の中……なんか怖い


 湖の側に町がありそこは冒険者が集う、勿論、迷宮探索のためだ
 迷宮の最深部にはすごいお宝があるらしい……お決まりだね
 あとはやっぱりモンスターが出る、しかも沢山。正直今の俺はモンスターに負ける気がしない、勿論油断はしないが


 お宝には正直興味はある
 だってダンジョンのお宝なんてフィクションの世界だけだし、今の俺にはこの世界が現実だ




 まぁ町に着いたらいろいろ見てみるか




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 そういえば【流星黒天ミーティア・フィンスター】に乗ってるから最近モンスターは素通りしてる
 いざと言うとき体が動かないのは困るな、やっぱり迷宮で鍛え直すのもいいかも


  そうしてしばらく走っていると遠目で町が見えてきた
 この辺りで【流星黒天ミーティア・フィンスター】から降りて歩き出す
 そういえば〔雨の町レイニーン〕の冒険者ギルドに報告してねーや、あの場の勢いで出発したけど……まぁいいか


  天気もよく気持ちよく歩いていると近くで何か聞こえる


 「これは…… 誰かが戦ってる?」




 俺は急いで現場に駆けつけた




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 「いた、あれか」


 男女4人組がデカイ熊の〔ブルーポイズンベア〕と戦ってる、たしかコイツは毒の爪を持つ青い熊だ
 しかも劣勢みたいだ。剣士の少年は肩で息をしてるし、拳闘志の少女は切り傷だらけ、魔術師の少女はぐったりしてるし、弓士の少年は矢が尽きていた
 こりゃ不味いな、助けるか


 「クロ、〔治癒薬ポーション〕をあの子たちに」
 《わかったワ》


 俺は不思議と落ちついていた
 普通の高校生なら裸足で逃げ出す状況だが俺は負ける気がしなかった


 俺は右手に投げナイフを、左手に【死の輝きシャイニング・デッド】を構え少年少女達の前に飛び出した


 「えっ!?」
 「だっ誰だ!?」


  拳闘士少女と剣士少年の二人が驚いてる
 まぁいきなり出てくりゃ驚くよね
 俺は一言呟き、戦闘態勢に入る


  「下がってろ」


 熊はいきなり表れた俺に驚いてるのか動かない
 やれやれ、スキだらけだぜ


 俺はスキだらけの顔、正確には目を狙いナイフを投げ命中させる


 「ガォォッ!?」


 熊は顔を抑え蹈鞴を踏む


 「遅いっ!!」


 俺は飛び出し熊の首を刈る
 すると血が噴水のように吹き出し倒れた


  この間3秒


 剣士少年と拳闘士少女の二人はポカンとし、後ろの弓士少年は突然表れた〔治癒薬ポーション〕を咥えた黒ネコにびっくりしていた
 あの魔術師少女が動かないな、よく見ると腕に怪我をしてる……そうか、毒か


 俺は魔術師少女に近づきしゃがみこみ魔術を使う
 少女を抱えたままの弓士少年が体を強張らせた


  「【白】の初級魔術【毒素破壊ポイズン・ブレイク】」


 すると魔術師少女の顔色はよくなり呼吸も落ち着いた。もう大丈夫だな


 さて、町も近いしもう大丈夫だろうな
 俺は未だに硬直してる少年少女達に背を向けて言う


 「じゃあ気をつけて帰れよ」




 俺とクロはそのままその場を後にした




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 いやーカッコつけすぎた


 あそこで颯爽と現れて颯爽と倒して颯爽と去る、まるでヒーローみたいだ。恥ずかしい
 あのまま町まで送ってやる選択肢もあったよな、弓士少年の矢は尽きていたし魔術師少女はまだ戦えないだろうし、剣士少年も拳闘士少女もだいぶ疲れてたし……かといって今さら戻るのも
 なんて考えながら歩いていたら町に着いた


 「お、ここがそうか」


 町の入口には大きな看板が立っていて〔水中迷宮都市ラビュリントへようこそ!〕って書いてある
 町の中に入るとそこらじゅうに冒険者グループが歩き、周囲の建物はレンガ建築が沢山あるし道路もきちんと舗装されていて歩きやすい
 お店は武器・防具・道具・魔導具・魔術用品・宿屋等が至る所にあり逆に普通の民家がほとんどない。ここで店を構えれば儲かるからかな
 食べ物関係の露店も結構あるな。湖の町だからそこで獲れる魚がメインみたいだ……腹減ったな


 《ネ、ネェ……お魚食べまショ?》
 「奇遇だな、俺もそう思ってた」


 ネコの血が騒いだのか恥ずかしそうに言うクロに俺はニヤリと笑って言う
 何故か引っ掻かれた……なんで?


 俺は近くの出店で焼き魚を4匹買う
 シンプルな塩焼きとこの世界のレモンをかけたのを2匹ずつ買う


 「いただきます!!」


 うまい。これは鮎っぽい味がして焼きたてなので塩もレモンもすごい合う
 すると近くの屋台からさらにイイ匂いがする……なんだろう
 俺は誘われるようにその屋台へ行くと、そこではスープを売っていた
 魚をぶつ切りにして野菜と一緒に煮込んだスープ。うまそうだ、よし買おう


 「おぉぉ……出汁が効いて旨い、野菜も魚も絶品だ」


 そして俺は屋台の味を堪能したのだった
 ここ、住んでみたいな


 腹も膨れた俺とクロは、町の道具屋や魔道具屋を見て周って町を散策してる
 すると俺の肩に乗ってるクロが言い出した


 《そろそろアグニードラのお酒が無くなりそうなのヨ、無いとウルサイから買っていきまショ》
 「そうだな」


 アグニはご飯はほとんど食べないがお酒は毎日飲む
 最後に飲んだのが500年前なので今の大切な娯楽の1つ。クロも同じ【九創世獣ナインス・ビスト】として娯楽の楽しさを知ってるのでそこを無下にはしない
 ちなみにクロの娯楽は魚だ。やっぱネコだな


 俺とクロは酒屋で葡萄酒と麦酒、あと米酒を買う
 米酒……これ日本酒だよな?


 酒屋の主人に聞くと【青の大陸】は水が豊富なので〔コメ〕が結構作られてるらしい
 〔雨の町レイニーン〕なんかは気候が安定しないからコメの栽培には向かず、【赤の大陸】や【青の大陸】からの仕入れがほとんどみたいだ
 買った酒をクロの酒管理空間に送ると頭の中から声が聞こえた
  
 《お、おいなんだコメ酒って……初めてみたぜ。なぁなクロシェットブルムよぉ、頼む!! こっちに送ってくれ!!》


 アグニのめっちゃ興奮した声が響く
 どんだけ酒好きなんだよ……ってゆーかうるせぇ


 《………ハァ》


 クロはため息を一つ吐きしっぽをくるんと回す
 すると頭の中で再びアグニの嬉しそうな声が聞こえた


 《おお~サンキュ~クロシェットブルム。やっぱお前はサイコーだぜ!! いただきまーす……く~効くぜ、これはうめェ!!》


 大好評だった
 仕方ない、沢山買っておこう


 そして俺達は散策を終えて宿屋を探す


 「お、ここにしよう」


 〔ブルーウェイク〕か、なかなか高級そうなレンガ作りの建物だ
 中に入り受付をすると、部屋はなんと最上階




 この日の探索を終えて、俺達は眠りについた




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 「よく寝た……起きよ」


 俺は起きて背伸びをしてシャワーを浴びる
 シャワーがある宿屋は高級な証だ、魔術で体をキレイにできるから本来は必要ないからね
 魔術も楽でいいけど、やっぱり風呂には入りたい


 宿屋の朝食はご飯と魚料理、野菜炒めと魚のスープと和食チックだった
 このレンガの洋風な建物で和食。まぁ旨いからいいや


 それから町へ出て迷宮に向かう
 場所はすぐにわかった、何故なら冒険者について行けば良いからだ
 今は大体朝の8時くらい、しかし迷宮には沢山の冒険者グループがいた


 迷宮の外観は要塞みたいなレンガ作りの建物で、その後ろには広大な湖が広がっている
 この要塞の中に地下へ降りる階段が有るらしく、迷宮の入口には受付のような物がありそこで受付してから降りる事になっている
 受付を済ませると1枚のカードが貰えて、そのカードが迷宮の階層を記録する
 そのカードに魔力を籠めると外に脱出することができる。非常ドアみたいなもんか


 その〔メディアカード〕と呼ばれる魔道具は使用した本人にしか使えないらしく、他人のカードを使うとその都市の全てのギルドに報告が入り、二度とそのダンジョンには入れなくなるらしい


 とりあえず俺も受付を済ませてカードを貰った
 周りはみんなパーティーを組んでいるのに、俺だけ1人だから心配されてしまった




 お気遣いありがとう受付さん。さて、早速行くか




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 この〔水中迷宮ラビュリント〕は湖の下にある大昔の遺跡らしい


 昔の人が穴を掘って遺跡を作り何かを奉っていた……噂では金銀財宝だとか【魔神大戦】時の古代兵器だとか実は何もないとか、いろいろ噂があるらしい
 1番の最下層記録は地下85階のSランク冒険者グループだ。すげぇ


 構造はまんまゲームで見るようなダンジョンで、各階層にボスがいるらしく敵の強さは階層が下がることで強くなっていく仕組みだ
 最下層は地下100階層と言われ、そこのボスは神が作りし【神獣】がお宝を守っていると言われている
 これがこのダンジョンの全容だ。ホントにゲームの世界みたいだ


 俺は今現在1階層にいる
 通路は幅10メートルくらいで高さもおんなじくらいと結構広い、けどこの広さだと小細工は通用しないし、上級魔術は使えない
 武器と格闘・下級と中級魔術だけ、それは敵も同じなのでまぁ問題ない
 迷宮の中は周りの石そのものが発行してるから意外と明るい


 「お、この先モンスターがいる」


 俺は投げナイフと【死の輝きシャイニング・デッド】を構え角を曲がる
 敵はゴブリンが3体、俺は素早くナイフを投擲


 「ギャッ!?」


 1体の頭と胸に3本刺さる


 「ギャアッ!!」
 「おっと、じゃあなっ!!」


 2体目の首を狩り瞬殺
 そのまま3体目も近づいて瞬殺した
  
 この間7秒


 うーん。やっぱり弱い、楽勝だ




 まぁさっさと降りますか




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 あっという間に10階層


 「うーん、楽勝すぎる」


 ボスには少し期待したが大したことなかった
 デカいゴブリンだったり、デカい虫だったり。今までの敵と比べると大したことなかった


 しばらく歩いているとクロが言う
 どうやらこの迷宮に心当たりがあるらしい


 《ココは【戯神マレフィキウム】が作った迷宮で間違いないワネ》
 「神が作った迷宮なのか?」
 《エエ、この神は人間が大好きでよくいたずらシテたワネ。そして【魔神大戦】が始まっテモ好き勝手やって人間にも神にも味方しなくてずっと遊んで神よ。今デモ生きててドコかで遊んでいると言われているワネ》


 そんな神様もいるんだな……いつか会えたりして


 そんな事を考えながら歩いていたらボス部屋に到着した
 ボスのいる部屋は立派な扉がついていて、開けるとモンスターがいる
 すでに倒されている場合は何も無くてそのままスルー出来る。実際俺はまだ2回しかボスと闘っていない……ちょっと物足りないかな


 そんなことを考えていると扉の向こうで声が聞こえる


 「なんか聞いたことあるような……?」


 俺はゆっくり扉を開けるとそこには凄惨な光景が広がっていた
 俺が助けた少年少女冒険者達がいた。しかしその状況はあまりにも酷かった


 モンスター、あれは〔ブルービッグウルフ〕……青いデカい狼だ
 体長は3メートルくらいで、鋭い牙・鋭利な爪・恐ろしいスピードを持つAレートのモンスター
 モンスターにはFからSまでのレートがあり、俺が倒した〔ブルージャイアントゴング〕は最上級のSレートだ
 この10階層程度でAレートのモンスターが出るとは。このダンジョンは相当ヤバいのかもしれない


 「コイツは……ヒドいな」


 少年少女達は死にかけている
 まず剣士の少年は右腕が食いちぎられたのか消失している……それでも残った左腕で剣を構え仲間を守ろうと震えながら前に出ている
 拳闘士の少女は両足が膝から下が食いちぎられていた。止血はしてあるのか剣士少年の後ろで泣きながら何かを言っている


 「「逃げろ」か……」


 弓士少年は腹を爪で割かれたのか腸がはみ出し虫の息だ
 胸は薄く上下していてかろうじて生きている……魔術師少女は無傷だがショックで失禁し泣きながら震えている


 俺の中にドス黒い感情がわき上がる




 「このクソ犬……ぶっ殺す」




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 俺はクソ犬に殺気を送ると俺の方を見てうなり声を上げる


 「グウゥゥゥゥッ!!」


 俺は【雄大なる死グロリアス・デッド】と【死の輝きシャイニング・デッド】を構えると同時にクソ犬が飛びかかってきた


 クソ犬はかなり早いが俺は反応できる
 俺の頭を噛みちぎろうと、上から覆い被さるように口を上げて迫ってくる
 アホかこいつ、前足がお留守だぜ?


 「バーカ」


 俺はクソ犬の右前足に飛び込みナイフを交差させて足を切断した


 「ガウゥゥゥゥゥッ!?」


 クソ犬は痛みでごろごろ転がっている
 この部屋の広さなら問題ないな


 「くらえ、【赤】の上級魔術【炎上炎柱プルート・ボルケーノ】!!」


 クソ犬の真下に赤い紋章が輝き巨大な火柱がクソ犬を焼き尽くす
 が、クソ犬は黒焦げだがまだ生きている。しぶといな


 「じゃあな」




 俺はクソ犬に近づき、その頭にナイフを突き立てた




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 俺は振り返り少年少女たちに近づき確認する
 全員ヤバいな……早く治療してやるか
 すると少年剣士が震える左手で未だに剣を構えながら言う


 「あ、あの……ハァ、ハァ……」
 「話はあとだ、全員治してやるからな」


 俺は4人全員を安心させるように、なるべく優しい声で言う


 「【白】の上級魔術【無垢なる光セイファート・ライフ】!!」


 すると4人全員の体を白い紋章が包み込み、散らばっていた手足がくっつき傷やが回復する
 その光景に4人が呆然としながらも、自分の手足や体を触り4人が全員泣き出した


 「い、生きてる……おれの右手……うううっ」
 「うあっ、あし……あし、うえぇぇぇっ」
 「はははっ……うう、死ぬかと思った……」
 「みんな、みんなぁ……よかったよぉ」


 俺はその光景を優しい笑顔で見てた
 すると4人の視線が俺といつの間にかいたクロに注がれる


 そして4人は深々と礼をした


 「あ、ありがとうございます。あなたは命の恩人です!!」
 「本当にありがとうございます!!」
 「Aランク冒険者の方ですか!? どうりで……」
 「ああ、奇跡って本当にあるのね!!」


 な、なんか近い……しかもくすぐったいな


 「ああ、まぁ気にすんな。とりあえず今日は外に出ようか」




 俺たちは取りあえず外に出ることにした




 まぁここで再会したのも何かの縁だし、メシでも食いながら話でもするか






 

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コメント

  • ノベルバユーザー333647

    ダンジョンで使える魔術中級までって記述しておいてダンジョン内で上級魔術使ってんぞ!
    ダンジョンが崩壊するw

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