ホントウの勇者

さとう

雨の町レイニーン②/虹の架かかる町・水龍の歌声

 
 俺たちは歩きながら〔試練ノ滝しれんのたき〕を目指していた
 場所はここから東に約5キロと以外と近い。川は相変わらず激流ですごい音がするし、水しぶきもすごい
 この流れに落ちたら間違いなく死ぬ……こわっ


 相変わらず大雨で視界はあまりよくない。ハリボテ傘大活躍である
 そのまましばらく歩いていると川の流れが緩やかになってきた
 そして……気分が悪くなる物を見つけた


 「うわ……ひでぇ」
 《………》


 それは〔ブルーカープ〕の死骸


 めちゃくちゃに食い荒らされている
 川岸に大量に放り出されていて数は100ぐらい、たぶん俺が初めて町に来たときに見た群れかもしれない


 「かわいそうに……ん?」


 1匹だけピクピク動いている〔ブルーカープ〕を見つけた
 けど、ひどい怪我で今にも死んでしまいそうだ……俺は迷わなかった


 「【白】の上級魔術【無垢なる光セイファート・ライフ】!!」


 中級魔術でもよかったかもしれないけど、どーせ魔力消費しないから確実な方を選ぶ
 怪我は治り俺は〔ブルーカープ〕を引きずり川に戻してやる


 「キュオォォォォォン!!」
 「なんだ、ははっ……ありがとうってか?」


 その〔ブルーカープ〕は俺のそばにいて動こうとしない。俺が動くとゆっくり着いてくる
 何かカワイイな、魚でもこういう感情あるんだな
 俺は川岸に寄ると〔ブルーカープ〕は頭を出して俺を見てくる


 「ほれ、ったく……」


 俺は頭を撫でてやる
 待ってろよ、仲間の敵討ってやるからな


 「ここで待ってろよ、〔ブルージャイアントゴング〕をぶっ倒してくるからな」


 俺は魔術で地面に大穴を開け、少々乱暴だが風の魔術で〔ブルーカープ〕の死骸を集めて1カ所に埋葬した
 何でだろう、こんなことをする〔ブルージャイアントゴング〕が許せない




 俺はハリボテ傘を投げ捨て〔試練ノ滝しれんのたき〕へ走って行った




───────────────


───────────


───────






 「ここが〔試練ノ滝〕か……」


 俺は辺りを見回し状況を確認する
 戦闘場の地形把握は重要だからな


 まず目に付くのは巨大な滝


 「すげぇ、縦50……いや80メートルくらいか?…よくわからん」


 滝壺は落ちてくる滝の水でものすごい渦が出来ている
 こちらもすごく深く広い……辺りの地形は岩場のようになっていて足場は正直よくない
 しかも苔みたいなのも生えててすごく滑る。滝の上部はどうなってるかわからない


 「ん?………もしかして」
 《エエ、見つけたワネ》


 俺とクロの前には巨大な2つの影


 「ゴァァァァァァァッ!!」
 「グガァァァァァァッ!!」


 〔ブルージャイアントゴング〕がいた……しかも2匹


 〔ブルージャイアントゴング〕は皮膚が青く体は薄い青い毛に覆われていて顔の部分と手と足のみ毛が生えていない。そして猿みたいに長いしっぽにものすごく太い手と指。指も一本一本丸太のようでしかも皮膚が硬そうだ
 そしてなにより驚いたのはその大きさ


 「おいおい、20メートルはあるぞ!?」


 特撮ヒーローのロボットを見てるみたいな気分だった
 もしこんなのが俺の世界に現れたらやばい、このモンスターなら俺の通ってる高校の校舎を一撃で破壊できそうだ
 ムリムリ、こんなのAランク冒険者や傭兵団が集まったところでどうにもなんねーぞ。死ぬわ




 「グゥゥゥゥゥゥ?」
 「ゴルルルルルル?」




 あ、こっちみた…………




 「ゴァァァァァァァッ!!」
 「グガァァァァァァッ!!」




 その迫力にビビった俺は全力で魔術を放った


 「うぉぉぉぉっ!? あ、【赤】の上級魔術・【爆炎爆破エクスプロード・ブレイズ】!!」


 巨大な火球が紋章から飛び出して2匹を飲み込み爆発……しかし


 「グガァァァァッ!!」
 「ゴォォォォォッ!!」


 ほぼノーダメージ
 急ぎすぎて魔力の練りが甘かったかもしれない


 そして2匹はその巨大な足で俺に迫ってきた


 「き、来たぁぁぁぁぁっ!?」


 大きすぎて迫ってくるたびに地響きがして地面が揺れる
 2匹は怒り狂い俺を殺して食おうと手を伸ばしながら迫り来る




 「ゴァァァァァァァッ!!」
 「グガァァァァァァッ!!」
 「うおぉぉぉぉぉぉっ!?」




 俺は必死で逃げ、そして見た
 近くに流れる川から何か見覚えのあるモノが




 「キュォォォォォン」




 あの〔ブルーカープ〕が俺を見ているのを




───────────────


───────────


───────






 〔ブルージャイアントゴング〕の1匹は突然現れた〔ブルーカープ〕に狙いを定めた
 この2匹は元々兄弟で、いつもお互い助け合って生きてきた、なので今回のエモノも平等に分ける


 弟の〔ブルージャイアントゴング〕は〔ブルーカープ〕を、兄の〔ブルージャイアントゴング〕は人間を餌にするためそれぞれ標的を変える


 〔ブルーカープ〕までの距離はほんの数歩、兄もすぐに狩りを終えて餌にありつくだろう……そう思っていた




 こんな言葉が聞こえるまでは






「『神器発動ジンギはつどう』」




───────────────


───────────


───────






 俺は迷わず『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』を構えて何発か銀弾を発砲した
 すると銀弾は〔ブルーカープ〕を襲おうとしていたゴリラ1の腕に命中した


 「よし、弾は通る!!」
 「ガァァァァァァァッ!!」


 俺の方に向かってくるゴリラ2は拳を振りかぶってる


 「そんな大ぶり当たるかよっ!!」


 地面を陥没させる拳を躱しつつすかさず俺は発砲
 全弾が両腕に命中してゴリラ2は苦しんでいる、すると〔ブルーカープ〕を狙っていたゴリラ1が標的を俺に変えて襲ってきた


 不思議だ、もう全然怖くない


 ゴリラ1はムチャクチャに腕を振るい足を振り回すが俺は全て回避
 そして足に光弾を連射してゴリラ1は倒れる


 「グガァァァァァァッ!?」
 「悪いな」


 俺はジャンプしてゴリラ1の目を狙い発砲
 ゴリラ1は顔を押さえ転げ回っている


 「とどめだッ!!」


 俺はマガジンホルスターから〔決戦技弾フィニッシュアーツ・ストレージ〕を取り出し装填、スライドを引き、ゴリラ1に狙いを定めて発射した




 「【銃神砲撃ヴォルフガング・ブラスター】!!」




 濡羽色の光線が銃口から発射
 そしてゴリラ1を飲み込み空へ消えていった




 ゴリラ1は跡形も無く消滅した




───────────────


───────────


───────






 次はゴリラ2だ
 ゴリラ2は両腕から血を流しながら俺へ向かってくる


 「少しは考えろよっ!!」
 「グガァァァァァァッ!?」


 俺は両足を撃ちまくり転倒させる
 ここで試してみるか……フォームチェンジ


 「アグニ、行くぜっ!!」


 俺はアグニを呼び出してみた……が


 《ゴガァァァッ……ん?……っててて!? 何すんだクロシェットブルム!! あん、出番? あぁわかったわかった、引っ掻くな!?》


 そういえば寝てるって言ってたっけ……とにかく行くぞ!!




 「【九創世獣ナインス・ビスト魂融ソウルエンゲージ】!!」




 俺の装備のデザインが変わり、アグニの力が俺に宿る




 「【焱龍神化ソウルオブアグニードラ】!!」




 俺は火炎放射器を装備し放射する
 するとゴリラ2は明らかにイヤがり距離を取ろうと後ろに下がる


 「よっしゃ、この炎は効くぜ!!」


 身体に炎の付いたゴリラ2はのたうち回っている


 「よし、とどめだ!!」


 俺は再びマガジンホルスターから〔決戦技弾フィニッシュアーツ・ストレージ〕を取り出し【焔炎放射機インフェルノ・スロアー】にセットしてある『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』に装填、噴射口をゴリラ2にむけて発射した




 「【焱龍砲撃ブレイジング・ブラスター】!!」




 龍の形をした焱がゴリラ2を飲み込み、ゴリラ2は骨も残らなかった




───────────────


───────────


───────






 俺は〔神化形態〕を解いて〔ブルーカープ〕の元へ向かうと、〔ブルーカープ〕は無傷で泳いでいた
 俺がそばに行くと〔ブルーカープ〕は頭を出してくる


 「よしよし、無事でよかった」


 〔ブルーカープ〕は再び泳ぎ出し滝の方へ向かって行った
 そして俺の方に振り向き鳴く、まるで見ててくれとでも言うように
 そして〔ブルーカープ〕は滝を登り始めた


 滝の激流に阻まれ、途中まで登り滝壺に落ち、登っては落ちて……〔ブルーカープ〕の体はボロボロになっていった
 回復魔術を使ってやれば回復するが、その行為はこの〔ブルーカープ〕に対する最大の侮辱のような気がした


「がんばれ……!!」


 俺は応援した
 何度落ちても、何度失敗しても〔ブルーカープ〕は諦めていない
 〔ブルードラゴン〕になるために命をかけて滝を登る。俺は本当にかっこいいと思った


「がんばれ……がんばれっ!!」


 それしか言葉が出てこない
 俺は声が枯れそうになっても応援した……そして


 「お、おぉぉぉぉっ!!」




 〔ブルーカープ〕は滝を登り切った
 すると……〔ブルーカープ〕に異変が起きる


 「な、なんだ……?」
 《……コレは》


 滝の頂上が青い光を放ち、伝説が現れる






 そこにいたのは、伝説の〔ブルードラゴン〕だった




───────────────


───────────


───────






 〔ブルードラゴン〕が美しい咆吼を上げるとあり得ないことが起こった
 なんと〔ブルードラゴン〕を中心に雨雲が消失していき、水面に落とした水滴に波紋が広がるように黒い雲が晴れて青空が広がる


 「お、おぉぉ……」
 《キレイ……》


 虹が空をを照らしていた
 それも1つだけじゃ無い、無数の虹が辺りを照らしている


 「すげぇ……ホントにすげぇ」
 《キレイね……長く生きてるケド、こんなの初めてヨ》
 《おったまげたぜ、はははっ……世界は広いぜ》
 「ああ、キレイだ……」


 川の流れが穏やかになり、とても澄んだ綺麗な水が流れている
 辺り一面が光に包まれて俺はここでやっと【青の大陸ネレイスブルー】に来たと初めて自覚した


 「お、来た来た」


 俺の目の前に〔ブルードラゴン〕が降りてくる
 長い蛇みたいな、東洋の龍みたいな……水色の綺麗な体で顔はしっかりドラゴンの顔
 人懐っこそうな目をしていていたがコイツは強い。さっきのゴリラが10匹いても勝てないくらいの強さを感じる


 「キュオォォォォォン!!」


 ドラゴンはそのまま上空に向かって飛ぶ
 滝の頂上を気持ちよさそうに旋回している


 「な、何だ!?」


 旋回した場所に雨雲が出来てそこに雨が降り出す
 このドラゴンは自由に雨を降らせることができるらしい、そしてそのまま町の方へ飛んでいく


 あのドラゴンなら心配いらないだろう
 ま、いたずらで雨ぐらいは降らしそうだけどな


 俺は背伸びをしてクロ達に提案する


 「なあ、このまま次の町に行っちまうか?」
 《フフッ、そうネ。日差しも気持ちイイしお散歩しながら行きまショ》
 《かかかっ!! 今日は実にいい日だな、酒がうまいぜ》




 空には虹が無数に架かり、龍の咆吼が歌に聞こえた




───────────────


───────────


───────










 その後、〔雨の町レイニーン〕は明るい日差しに包まれた町になる
 柔らかな川の流れ、温かい日差しが町を優しく包み込み笑顔が絶えない町になった
 しかし、時折空を駆ける〔ブルードラゴン〕がいたずらで雨を降らせて住人を困らせるが、雨が降ったあとはいつも綺麗な虹が架かり人々を笑顔にする


 そして、のちに町はこう呼ばれるようになる






 〔虹の架かる町ブルーレインボー〕






 そして、とある飲食店兼宿屋の少女は思う






 これは、黒猫を連れた黒服の少年が起こした奇跡だと





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • ノベルバユーザー334530

    クエストは達成出来たんかな

    0
  • ノベルバユーザー333647

    当たり前だけど人間の体温って魚より遥かに高温。
    素手で触っては魚が人間の感覚で言う火傷状態になるから凄い弱るよ。

    0
コメントを書く