ホントウの勇者

さとう

雨の町レイニーン①/水流亭・激流の先に待つ試練

 


  「……はぁ」


 俺のテンションは下がっていた
 そりゃそうだろ……【青の大陸】に入ったらいきなり大雨だもん


 《しかたないワヨ、この辺りはほぼ毎日雨が降り続いているからネ》


 と、言うことらしい
 今俺達は街道の木の下で休憩してる……まぁしょうがない


 俺達のこれからの予定は【青】を司る【九創世獣ナインス・ビスト】の一匹、【ルーチェミーア・アロロツェーレ】に力を貸して貰う事
 その為に向かっているのがルーチェミーアがいる場所〔フルブルー大塩湖〕という湖だ
 まずはこの街道先の〔雨の町レイニーン〕に向かっている


 【青の大陸ネレイスブルー】は川や大小さまざまな湖が多い
 【赤の大陸】とは違うのはまず地形、全体的に平べったく段差や岩場がほとんどない
 街道は石畳で舗装されてるがそれ以外の所はぬかるんでいて、バイクでは雨で滑るので歩きながら向かっている


 モンスターも出てくるが正直大したことはない
 俺か強いのか敵が弱いのか……


 驚いたのはこの世界には傘がない
 クロやアグニに聞いても、なんだそれ? みたいな答えだった
 この辺りの人は普通に濡れながら歩き、家に着いたら生活魔術で乾かすらしい。マジかよ


 しかし俺は濡れるのが嫌なので【灰】の魔術で傘を作ってみた
 もちろん閉じることはできないただのハリボテだが、あるとないとでは違う
 まぁその場しのぎだね


 俺が雨を見つめていると、足が汚れるため俺の肩にいるクロのが言う


 《何度も言うケド、クラスメイトや神以外の前で【神器ジンギ】を使っちゃだめヨ》
 「わかってる」


 俺はリアさんの……俺に恐怖したあの目を忘れられない
 メリッサ達やラント、グランツさん。サニーやシャムスさんにあんな目で見られたら俺は……


 《そろそろ行きまショ……》


  雨が止む気配はない、それでも前に進んで歩く


  
  俺はハリボテ傘をさして歩き出した
  


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 「着いた。ここが〔雨の町レイニーン〕か……」


 雨の町レイニーンに着いたのはいいけど、いきなり川が流れていた。しかも激流
 その川幅は広く深い、落ちたら死ぬなこりゃ
 そしてその川をまたぐようにアーチ上の橋が掛かり、橋の先に町の入り口があった


 とりあえず橋を渡る
 通行人はみんな濡れながら歩いていて、俺の傘が珍しいのか結構注目を浴びてる
 俺はなんとなく川を覗きこむ


 「なんだありゃ!?」


 俺が見たのは長さ5メートル位の魚が激流を登ってる光景だった
 なんだよアレ……しかも1匹2匹じゃねーぞ!?


 単純に見ても100以上の鯉モドキが激流を登っていた
 すげえ、なにこの光景?


 俺はしばらくその光景を見て我に帰るとそのまま町の中に入った




 あの魚の事、聞いてみるか




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 町の中は全体的に白っぽい
 木造建築の家でアカノ村っぽい感じだがこちらの家の方が立派な感じがする
 お店は道具・武器・防具・魔導具・宿屋などでいつも通りな感じ、通りには雨対策なのか東屋が沢山ありその中で休憩したりおしゃべりしてる人がいる


 お腹も空いてきたのでおしゃれな食堂みたいな所に入ってみた


 「いらっしゃいませ!! 一名様ごあんなーい」


 おお、びっくりした
 青い髪を後ろで束ねた同い年くらいの女の子が案内してくれた


 「ご注文はいかがいたしますか?」


 「えーと、おすすめで」
 「はーい、おとーさん!! おすすめ入りましたー」
 「バカ野郎、仕事中はお父さんって言うな!!」


 何だかとても楽しそうな所だ
 お店の規模は大体24畳くらいで席はカウンターと2人掛けが窓側の3つと4人掛けが4つと、この女の子一人でもギリギリ対応できる広さだ
 俺は窓側に座り料理を待つ……クロは外で待ってて貰ってる


 「ねぇねぇ、あのネコ……きみのネコ?」


  と、ウェイトレスの女の子が聞いてきた


 「ああ、そうだけど」
 「へぇ~いいなぁ。ねぇ、触っていい?」
 「いいけど、飲食店なのに大丈夫なのか?」
 「あ、そっか……って、えぇ!? Aランク冒険者!?」


 俺の胸元を見て女の子が驚く
 すると、厨房から怒声が聞こえた


 「プラム!! 仕事しろ!!」
 「は、はーい!!」


 俺の料理が出来たようだ




 女の子はあわてて料理を取りに厨房に入っていった




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 「ご馳走様でした……旨かった」


 ここで出た料理は魚中心のメニューだった
 焼き魚、煮付け、刺身の定食で驚いたのはなんと米があったこと
 しかもお茶まであったし日本人の俺にはうれしい


 「これはね〔コメ〕って言って【赤の大陸】から仕入れてる食材なんだよ。 おいしかったでしょ?」
 「ああサイコーだったよ、ご馳走様でした」
 「お粗末様でした!!」
 「あ、ちょっと聞きたいんだけどさ、この辺りでいい宿屋はどこか教えて欲しいんだけど」
 「宿屋? あぁならウチの宿屋にしなよ、ウチの2階は宿屋を経営してるんだ……どうかな?」
 「そうなんだ、じゃあよろしく……って、ネコは大丈夫なの?」
 「もちろん、ねぇねぇ後で触らせてね」


  俺は頷くイケニエを捧げて宿を確保
 クロさん……頑張ってくれ


 「あ、私はプラム。この〔水流亭すいりゅうてい〕の一人娘の看板娘の17歳!! よろしくね」
 「あ、ああ。俺はジュート、よろしく」


 自己主張の強い自己紹介に俺は驚き、なんとかこちらも挨拶を返す




 さて、この町のこといろいろ聞いてみるか




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 俺とクロはそのまま2階に案内された
 クロはプラムが抱っこし、頭撫でたり肉球を弄られて遊ばれてる
 クロさんや、そんな顔で見ないでくれ……するとプラムが


 「ジュートはさ、【赤の大陸】から来たんでしょ。じゃあいろいろ話を聞かせてよ」
 「別にいーけど、店はいいのか?」
 「今休憩中だから大丈夫。それより私と同い年のジュートの冒険話の方が大事だよ」
 「いやどう考えても店が大事だろ……まぁいいか」


 それから俺はいろいろ話した
 アカノ村の温泉やシューロ村のドラゴンや武具大会なんかの話をすると、プラムはすごく楽しそうに聞いてる。そして今度は俺が質問してみた


 「なぁ、町の入り口の激流を魚が泳いでたんだけど…あれはなんなんだ?」
 「あぁ、あれは〔龍ノ試練りゅうのしれん〕って呼ばれてるの。あの魚は〔ブルーカープ〕って言う魚で、この激流の先にある〔試練ノ滝しれんのたき〕を登りきった〔ブルーカープ〕は伝説の〔ブルードラゴン〕に進化するって言われてるの。でも強力なモンスターや滝の最上部に住み着いてる〔ブルージャイアントゴング〕が邪魔してて、もう何十年も〔ブルードラゴン〕は表れてないの……」


  プラムは寂しそうにそこまで言う


 「〔ブルードラゴン〕が生まれる時にこの空が晴れ渡り〔ニジ〕ってゆう奇跡が起きるらしいよ。でも〔ブルージャイアントゴング〕はSランクモンスターだから誰も手が出せないし、Aランク冒険者や傭兵団が討伐に出たけど何度も全滅しちゃってこの町の冒険者は誰も手を出さないのよ」


 〔ニジ〕って虹か?
 この世界じゃ虹は架からないのか?……よし、やるか


 「なぁプラム、その依頼はまだ受けられるのか?」
 「え、う、うん。冒険者ギルドの依頼板の隅で埃被ってるよ。私が小さい時からあるから……ってまさか」




 「俺がその依頼を受ける、この町のみんなに虹を見せてやるよ」




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 プラムは驚いて俺に何か言おうとしたが、父親の怒声で仕事に戻った
 俺は町に買い物に出かけたが、その必要は全く無かった
 そりゃそうだ、王都で買い物しすぎて必要な物が全然ないのだ


 俺はため息をつきながら魔導具店に入る
 するとなんと水道が売ってた。というかシンクだよなコレ?


 このシンクは魔力を流すと蛇口に搭載されてる水の魔石から水が出る仕組みで、排水はそのままパイプを通って排出される仕組みだ
 いいなコレ……よし買おう


 シンクを買い〔セーフルーム〕へ送り店を出るとプラムがびしょ濡れで歩いていた
 そして俺を見つけると走ってきた。どうやらお使いらしい、買い物袋は防水加工してあるみたいだ


 「ねぇジュート、ホントに依頼受けるの……?」
 「ああ、自信はあるよ。こう見えて俺は強いからね」
 「でも……」
 「明日冒険者ギルドで依頼してる受けるよ。まあ期待してくれ」


 プラムは純粋に俺を心配してる




 ちょっと心が痛いが仕方ない、町の為に頑張りますか




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 そして翌朝、俺は朝食の為に一階に降りてきた……クロはまだ部屋で寝てる
 宿屋の主人、もとい料理長に挨拶してカウンターに座るとプラムが来た
 挨拶をすると返してくれるが元気がない、どうやら昨日の話で俺がやる気になってる事に責任を感じてるらしい


 「ねぇジュート、やっぱり止めた方がいいよ。昨日も言ったでしょ、Aランクの冒険者や傭兵団が束になってかかって誰も帰って来なかったんだよ」
 「心配してくれてありがとな、プラム。でも俺はホントに大丈夫だから」
 「もう、カッコつけちゃって……本当に知らないからね!!」


  そう言ってプラムは厨房に引っ込んでしまった


 「怒らせちゃったかな……」


 そして料理長自ら運んで来た朝食を食べて部屋に戻る
 するとクロが焼き魚を食べていた、どうやら俺が食べてる間に持ってきてくれたらしい
 サンキュープラム


 そしてそのまま宿屋を後にすると、プラムが見送りに来てくれた


 「ホントにホント~に知らないからね、死んでも私のせいじゃないからね!!」
 「ははは、心配してくれてありがとな。なあプラム、雨が止んだら空を見てみろよ…じゃあな」


         
  最後まで心配してくれた優しいプラムの為に頑張りますか




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 俺はハリボテ傘をさしながらしばらく歩くと、〔レイニーン冒険者ギルド〕と書かれた看板を見つけた


 王都に比べたら規模は小さい、広さはだいたい教室2つ分くらいかな
 冒険者は15~20人くらいいてそれぞれ4~5人で集まっていた


 冒険者は基本パーティーを組むのが当たり前らしい
 基本的なパーティーは剣士・魔術師・弓士がもっとも基本的らしく、メリッサ達もそうだった
 近・中・遠のバランスが整ってるし、あとは前衛を増やしたり、後衛の魔術師、弓士なんかを増やしたりする
 あとは武器は斧だったり格闘だったり、ハンマーだったり槍だったり……考え出したらキリが無い


 その中で最も重宝されるのが【白】の魔術師だ
 【白】属性は「光」すなわち回復魔術が基本、毒や麻痺など状態異常も治療できるし、もちろん怪我も治せる
 中級魔術師となれば冒険者だけでなく、傭兵や魔術ギルドなんかでも貴重な人材らしい
 この世界では【赤・青・黄・緑】の魔術師は多いが【白・黒・紫・灰】の魔術師はとても少ないので重宝される


 俺は【無】……すなわち全属性。なんかゴメン


 たった一人で、しかも黒猫を連れていた俺はなんか注目されていた
 恥ずかしい。今更だけど俺人の視線とか目立つのすっげー苦手だわ


 とりあえずプラムが言ってた依頼掲示板に行く
 いろいろな依頼があるな、モンスター退治・薬草摘み・貴重なアイテム入手……ちなみに護衛任務は傭兵ギルドに行くらしい


 「あ、あった」


 〔ブルージャイアントゴング〕Sレート・報酬1000万ゴルド


 俺は依頼の紙を掲示板からはがし受付へ持って行く
 また亜人のおね……おばさんだ、たぶん熊
 その紙を見せると仰天して俺を見ていた、俺はAランクのドッグタグを見せると渋い顔をしていたが受理される
 依頼達成条件は〔ブルージャイアントゴング〕の体の一部を持ち帰ることか


 注目されていたので俺の受けた依頼がみんなわかってしまったらしい
 ヒソヒソ声や嘲笑が聞こえる、まあ別にどうでもいいけど




 じゃ、行きますか




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 〔雨の町レイニーン〕の東に〔試練ノ滝しれんのたき〕はあるらしい
 道は簡単だ……川沿いに歩けばいいだけだからな


 《ニジってなんだ? 食えんのか?》
 「食いもんじゃねーよ。俺の世界では綺麗な光だな」
 《へえ、見てみたいワネ》
 《食いもんじゃねえなら俺は興味ねえな。それより〔ブルージャイアントゴング〕だ。おいジュート、ヤツらはけっこうデケェから気ぃ抜くんじゃねえぞ》
 「あぁわかったよ。いざとなれば【神器ジンギ】を使うけど、まずはこのままやってみるよ」
 《おう、じゃあオレは寝る。着いたら起こせよ……ファァァ……》
 《全く、相変わらず自由ネ……マァいいワ、行きまショ》
 「そうだな。虹か……見てみたいな」
 《そうネ。ニジを見るのが幸せに繋がるなら……やってみるのもいいかもネ》
 「ああ、そうだな」




 虹を見るために闘う────ロマンチックな理由だ





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