ホントウの勇者

さとう

王都レッドキングダム⑦/神の器・王の威厳

 
 「うわぁぁぁぁぁっ!?」
 《ニャァァァァァッ!?》


 俺とクロは今現在【流星黒天ミーティア・フィンスター】の試験走行中だ
 というかこのバイクに振り回されていた


 運転自体は何の問題も無い
 カーブを曲がるときはハンドル操作じゃなくて曲がりたい方向に顔を向けるだけで勝手に曲がった
 そして今最高速度にチャレンジしてるが……すごかった
 時速100キロ以上は間違いなく出てる……コケたら死ぬぞこれ


 このバイクにもクロの時間停止魔術を掛けたのでもう壊れる事は無い
 ホントに便利だな、マジでありがとう


 ノーヘルだとこの世界では問題ないが心情的に不安だしやっぱ作るか、ついでにゴーグルも
 そこで俺が考えたのが試験走行もかねて〔商業都市グランセン〕へ行く、と言うものだ
 この王都からグランセンまで最短で半日、と言うことなのでこの【流星黒天ミーティア・フィンスター】なら数時間でつくはず・・と俺は思った




 このペースならお昼前に着く、着いたらシャムスさんの所で作ってもらおう




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 つ、着いた……1時間で着いたぞ


 「おい、クロ…大丈夫か?」
 《……にゃ》


 めっちゃグロッキーだ……目もなんか虚ろだし




 俺はクロを抱っこして〔ヒマワリ防具店〕に向かった


 そして歩くこと15分。〔ヒマワリ防具店〕は大盛況だった


 以前はおじいさんが掃き掃除してる所しか見てなかったがこうしてみるとすごく広い
 店は1階が店舗の2階が住居の普通の商店で、店の入り口に全身鎧が飾ってあり2階の窓の下あたりに〔ヒマワリ防具店〕の看板が掛かってる
 正面は半分がガラス張りになっていて左側がドアになっている
 窓から中を見ると、1人の女の子が見えた


 「あ、サニーだ……少し背が伸びたかな」


 エプロンを着けてニコニコしてる
 あ、冒険者の女性と喋ってる、受付には若い20歳くらいの男の人がいる……たぶん弟子だな
 よし、さっそく入ってみるか


 「いらっしゃいま……お、おにいちゃん!?」
 「久しぶり。サニー、元気だったか?」
 「お、お…おにいちゃーん!!」
 「ぐふぅッ!?」


 サニーが胸に飛び込んできた
 サニーの頭がみぞおちにヒットして俺は一瞬呼吸困難に陥る
 武具大会でもこんなダメージは受けたことがない……サニー恐るべし


 「おにいちゃん、会いたかったよぉぉっ!! うぇぇぇん!!」


 あらら、泣き出しちゃった
 ってゆうかヤベえ……めっちゃ注目浴びてるし
 俺はサニーの頭をなでて宥めていると、店の奥から見知った人が出てきた


 「ジュ、ジュートくん!? はは、久しぶりじゃないか!!」
 「お久しぶりですシャムスさん。ほらサニー」


 サニーは未だに俺に抱きついたままだ
 かわいいけどちょっと恥ずかしい


 「ほらサニー、ジュートくんが困ってるよ?」
 「うん……お兄ちゃん」


 サニーはやっと離れてくれた
 うれしいような、残念なような……するとシャムスさんが


 「さあジュートくん、久しぶりに話を聞かせてくれないか?」
 「はい。あの、実はシャムスさんにお願いがあってきたんです」




 さて、お願いしてみますかね




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 俺はシャムスさんに事情を説明する


 「わかった、任せてくれ。そうだな……2時間もあれば出来るだろう。それまでサニーと町で遊んでくるといい、っとそうだ…頭のサイズを測らせてくれ」


 あっさりOKしてくれた…っていうか忙しいんじゃないの?


 「キミには大きな借りがある。〔アダムズアップル〕の件でもね。あれには驚いたよ……まさか2500万ゴルドで売れるとは。おかげで開業資金も出来たしサニーにもずいぶん楽をさせられた。キミのためならどんな防具でも作ろう」


 と言うことだった。するとサニーは


 「お兄ちゃん、約束おぼえてる? 町を案内してあげるね」


 サニー、覚えてたんだ……お兄ちゃんうれしいぞ


 「じゃあシャムスさん、お願いします。サニー行こうか」
 「うん、はやくはやく!!」




 こうして俺とサニーのデートが始まったのだった




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 「ねぇお兄ちゃん、ごはんまだでしょ? 美味しいお店があるからいこ!!」
 「ああ、サニーのおすすめをよろしくな」


 俺とサニーはメインストリートを歩いていた
 サニーと俺は今手を繋いで歩き、サニーの案内でお昼ごはんを食べに行くところだ
 そんな感じで歩いていると、一軒のおしゃれなお店に着く。するとサニーは嬉しそうに


  「ここね、前お父さんと一緒に来たの。パスタがすっごく美味しかったの!!」


 サニーはかわいいなぁ……癒される
 そのまま店に入りサニーおすすめのパスタを食べる
 このパスタはシーフードパスタっぽくて、お店の人が言うには【青】の大陸の食材を使ったパスタらしい
 確かに【赤】の大陸では肉ばっかり食べてたしなぁ……本当にうまい


 食事を終えて店を出るとサニーが町を案内してくれた
 商業の町という事でいろんなお店に連れて行って貰い、お雑貨屋やアクセサリー屋、おもちゃ魔導具屋などサニーらしいチョイスで楽しく遊ぶ
 そしてあっという間に2時間たち、残念そうなサニーと一緒にシャムスさんのところへ戻った


 「やぁお帰り、サニー……楽しかったかい?」
 「うん。すっごく楽しかった!! お兄ちゃん、また遊んでね」
 「ああ、もちろんだ」


  俺とサニーのやり取りをシャムスさんは嬉しそうに見てる


 「頼まれていた物、完成してるよ……どうかな?」
 「おお、すげぇ……」


 そこにあったのは黒いヘルメット
 形はジェットタイプにシールドがついてない感じで手にとってみるととても軽い
 材質は金属っぽいけどどういう材質なんだ?……中はクッションが敷き詰められてて頭を痛める心配はなさそうだし隙間が空いてるので通気性もいい、視界もなかなか良好だ
 試しに被ってみるとゴムバンドで固定するみたいだな
 そしてゴーグルはヴィンテージゴーグルみたいな形で材質は黒皮、レンズもちゃんと入ってる


  さらに驚くことに、もう一つあった


 「これもしかして……クロの?」


 俺のサイズのヘルメットをそのまま小さくしたようなヘルメットとゴーグルがあった
 頭の部分に穴が空いてて耳が出せるようになってる


 「サービスさ、合うといいけどね」


 俺はクロの頭に被せてみる
 ぴったりだ。クロも満更ではなさそうだ


 「シャムスさん、ありがとうございます!!」
 「いやなに、いい仕事をさせてもらったよ。君と一緒に遊べてサニーも嬉しそうだったしね、こっちが礼をしたいくらいさ」


 俺が料金を払おうとするとシャムスさんは貰おうとしなかった
 俺は抵抗したがシャムスさんは一切の拒絶。そこまで言うならありがたく


 俺は町の外まで行くとシャムスさんとサニーが見送りに来てくれた
 お店にいた男の人はやっぱりシャムスさんの弟子で今は店番をしてる
 この二人にならいいか……


 俺は魔術を使い異空間にしまってある【流星黒天ミーティア・フィンスター】を出す
 すると二人はすごい驚いていたが、すぐに立ち直り俺に言う


 「いつでも来てくれ、君の依頼なら最優先で仕事を引き受けよう」
 「お兄ちゃん、また遊びにきてね」


 俺は泣きそうなサニーのそばに行くとポケットから包みを取り出しサニーに渡す
 サニーは驚いた表情でその包みを開けると、中からチェーンのついたペンダントが出てきた


 「わぁキレイ。お兄ちゃん、これ……?」
 「プレゼント。初デートの記念にな」


 俺がそう言うとサニーは泣きながら抱き着いてきた
 俺はやさしく頭をなでる。するとサニーは俺から離れて言う


 「お兄ちゃんありがとう。またね!!」
 「ああ、また来るからな。シャムスさん、サニー……元気で!!」




 俺は再び【流星黒天ミーティア・フィンスター】で王都に向かって走りだした


  
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 王都へついたのは夕方頃、そろそろお腹が空いてきた頃だった
 俺はそのまま〔喫茶プフランフェ〕へ行くと、中から聞き覚えのある声が聞こえてくる
 俺はそのまま中へ入る……すると、意外な人物がいた


 「いらっしゃいませー!!…ってジュートぉ!?」
 「ようアリン。さっそく花嫁修業か?」
 「うん。えへへ……似合うかな?」


  アリンはいつもの冒険者服ではなく、落ち着いた感じの私服に花柄のフリルがついたエプロンをしていた。うん、すごく似合ってる


 「うん、いいな。すごい似合ってる、かわいいよ」
 「あ、ありがと……えへへ」


  アリンは顔を赤くして照れる。すると後ろでドアが開いた


 「こんにちは。アリンきたよー」
 「こんにちは」


 メリッサとクレアだ
 メリッサは私服だけどクレアは魔術師服のまま
 二人は俺の存在に気づくと驚いてた
  
 「ジュートさん、こんにちは!!」
 「こんにちは。ジュート、あなたも夕食?」
 「二人とも元気か、俺もってことは二人も夕食?」
 「はい、よかったら一緒にどうですか?」




 「もちろん、一緒に食べようぜ」




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 「ごちそうさまでした。ふう……旨かった」


 俺達は食事を終えてひと休みしていると、アリンがやって来た
 みんなで雑談を始め、そして3人のこれからを聞いてみた


 メリッサは、朝昼は騎士である父親に剣を習いつつ夜は礼儀作法の勉強を始めたらしい
 覚えることが沢山あるがとても楽しく頑張っていけそうだとのこと。メリッサなら大丈夫だろうな 
  
 アリンは今日からお店に入り、接客や料理をマリンさんに習いつつ閉店後に簡単な料理を自分で作ってるらしい
 アリンの料理か……どんなのだろうな


 クレアはメリッサの家の一室を家賃を払って借り、魔術学園に提出する論文を書き始めたらしい
 書きたいことが有りすぎるらしく、暫くはここにいるとのコトだ


 みんな夢に向かって歩きだしてる
 するとクレアが俺に質問してきた


 「ジュート、あなたはこれからどうするの?」
 「…………」


 俺は悩んだ……みんなに言うべきか
 でもみんなはもう冒険者じゃないし、やっぱり言わなくていいか


 「俺は【青】の大陸に渡るよ。俺の目的はこの世界を見て回ることだからな…さて、そろそろ帰るか」


 俺はこの三人にこれ以上嘘をつきたくない




 俺はこの場から逃げ出した
  
  
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 そのままホテルに戻りベッドに倒れ、気が付くと朝だった
 シャワーを浴びて一息つく、するとドアがノックされた。こんな朝から誰だよ?


 「……おはよ」
 「……あ、ああ。おはよう」


 ルビーラちゃんでした
 そうか、迎えに来てくれたのか……こんなに早くから?


 「おしろ、いこ……?」
 「わかった、行こうか」


 すると、きゅるる……とかわいい音が聞こえた


 「……っ!!」


 どうやらルビーラのお腹がまた鳴ったみたいだ
 俺も朝ごはん食べてから行きたい……よし


 「よし、先に朝ごはん食べてから行くか」
 「……うん」




  ルビーラは恥ずかしがりながら頷き、俺達は〔喫茶プフランフェ〕へ向けて歩きだした




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 朝ごはんをしっかり食べて、俺達は町の中心のやや先にあるロープウェイ入口まで来ていた
 正式名称は〔魔導滑車〕と言うらしく【紫の大陸ノイエパープル】の技術らしい
 入り口に兵士が二人立っていてルビーラを見て敬礼している、ついでに俺にも
 そして3畳 ほどの広さの〔魔導滑車〕に乗ると音も無く発車した


 ルビーラは慣れてるのか椅子座って大人しくしてるが、俺は外の景色に釘付けだった
 この世界にきてこんな高い所まで登ったことがないから感動していると、目的地に着く
 所要時間約10分、短い旅だった……帰りも乗るけど


 〔魔導滑車〕から降りるとすぐ目の前にお城がある
 デカいな。お城と言うよりは要塞って感じの形だ
 ルビーラはトコトコ歩きだし、俺はその後ろに付いていく……するとデカい扉の前で立ち止まり静かに言った


 「……まってて」
   
 と、いい扉の中に入って行く
 そして待つこと15分。ルビーラが現れる


 「……どうぞ」




  さぁて、なんとか説明して力を貸して貰わないとな




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 俺は今〔謁見の間〕の中心に立っている
 ヤ・バ・イ……緊張なんてもんじゃねぇ


 俺の正面には武具大会でも見た王様〔ガーシュ・エルディン・レッドキングダム13世〕が豪華な椅子に座って俺を見下ろしてる
 その隣にはルビーラが立っていて更に周りには鎧を着けた騎士っぽい人達が6・7人……もしかしてメリッサの父親もいたりして
 同じ鎧を着けた兵士が20人くらい、あとは豪華な服を着た頭の良さそうなおじさんが4・5人いた
 その全ての人達の視線が俺に集中している……帰りてぇ


 「そなたが〔黒猫を連れた黒服の少年〕か?」
 「え?」


 と俺は間抜けな返事をしてしまった
 王様は特に気にせずに話を続ける


 「アカノ村での温泉、シューロ村でのドラゴンの子供、それらの事に対して報告が上がっているが、それら全ての中心に〔黒猫を連れた黒服の少年〕という言葉があった。武具大会を見て確信した、それは間違いなくそなたであるとな」


 王様はそこまで言うと嬉しそうに笑う
 その笑顔は子供みたいな、親しみやすい顔だった
 こんな顔出来たんだな……すると王様は


 「ああ、硬くならんで宜しい。武具大会の優勝者は毎年こうして挨拶をするのだがな、そなたには個人的にも興味があった。強く、それにいい目をしている。ふふん……気に入ったわ。何か困ったことはないか? 力になろう」


 これは願ってもない展開だ
 まさか王様からそう言ってくれるなんてな


 「実は、王様の耳にお入れしたい事とお願いがございます」




 俺は精一杯の敬語を使って事情を説明した




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 俺は今の状況を説明すると周りの人達がガヤガヤ騒ぎだす
 ルビーラも不安そうに俺を見つめていた


  「………」


 王様は目を閉じて考え込んでいた
 すると王様は鋭い視線で俺を見る……俺は目を逸らさなかった


 「今の話、確信があるのだな?」
 「はい、嘘なんかじゃありません。信じてください……!!」


 周りの人達は半信半疑で俺を見ている
 ルビーラは不安そうに俺を見つめ、王様は目を開き立ち上がりこの空間全ての人全員が聞こえるくらいの声で言う


 「全ての騎士団に出陣の準備をさせろ。それから冒険者ギルド、傭兵ギルド、魔術ギルドに今の話を伝えて戦士たちに出陣の依頼を出せ。報酬はこちらで用意するとな……直ちに始めろ。この国、いやこの大陸の一大事だ!!」


 物凄い迫力だった、さすが王様だ
 すると王様は俺に確認してきた


 「敵は〔神の器〕か?」


 〔神の器〕って言うのは俺達みたいな神の力を得た異世界人の事らしい
 かつての【魔神軍】には何人かいたらしいけど……さすがに今回は40人いますよ、とは言えなかった


 「そうです。王様、お願いがあります」
 「なんだ? 申してみよ」
 「〔神の器〕の相手は俺に任せて下さい。お願いします……!!」


  俺は頭を下げる……すると王様は


 「わかった。ならばそなたは単体で動き、騎士団・戦士・魔術師にモンスターを任せて〔神の器〕を倒してくれ。頼むぞ」


 「はい……!!」




 守るんだ……全てを!!





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コメント

  • ノベルバユーザー333647

    今までの活動が上手く伏線回収されていい感じですね。
    ただ敵に生きてるのバレるよね?
    神器が使えるようになる展開かな?

    0
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