ホントウの勇者

さとう

王都レッドキングダム⑦/冒険の終わりと夢の始まり・流星黒天

 
 「いやーつかれた……」


 大会も無事に終わり俺は一度ホテルに戻る
 これから〔喫茶プフランフェ〕を貸し切りにしてパーティーを行うのだ
 俺が軽くシャワーを浴びて着替えるとクロが言う


 《お疲れサマ、優勝するとは思っていたケド……かっこよかったワヨ》
 「さんきゅークロ、応援アリガトな」


 クロのねぎらいの言葉に俺は笑顔で返す
 すると赤い紋章が輝きアグニが現れ、パタパタ飛びながら俺に言う


 《まあ人間相手ならお前はもう負けることはねぇだろ。わすれんなよ、人間だ。この8大陸には神以外にも強い種族はいくらでもいる。巨人・エルフ・ドワーフ・龍人……おまえの旅は始まったばかりだ、気ぃぬくんじゃねえぞ》
 《たしかにネ、次の【青の大陸ネレイスブルー】は魔術の達人でもある〔人魚族〕がいるワヨ》


 人魚か……気になるな
 まあとりあえず今は祝勝会だ


 《ワタシはちょっと気になるコトがあるから、少し外に出るワ》
 「どうしたんだ、なんかあるのか?」
 《大会中から気になってたのヨ、不吉な気配が。ワタシはそういうのに敏感なのヨ》


 クロはそう言うと出て行ってしまった


 《クロシェットブルムは【九創世獣ナインス・ビスト】の中でも一番感覚が鋭いんだ。目に見えないモノを見たり、気配を察知したりするのが得意なんだよ》


 へぇ、まるでネコみたいだな




 まあネコだよな……ネコ? まあいいや、取りあえず祝勝会に行こう




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 〔喫茶プフランフェ〕中に入るとみんなから熱烈な歓迎を受ける
 パーティー参加メンバーはメリッサ・アリン・クレア・ラント・グランツさん・リアさん
 マリンさんは料理担当でパーティーを楽しみながら料理するらしい
 俺が入るとすでに全員そろっていた


 「遅いよジュート兄ぃ、主役が遅れちゃダメだろっ!!」
 「コラ、ラント。ははは……すまないねジュート君」


 俺はラントの頭をガシガシなでると席に着く
 俺の隣はメリッサとリアさんだ、リアさんは俺に言う


 「私も呼ばれてよかったのかしら? 何にもしていないのだけれど……」
 「いえ、リアさんが武具大会に誘ってくれなかったら俺は大会に出てませんし、ラントやグランツさんにも会えませんでした。だからリアさん、ありがとうございます」


 俺がそう言うとリアさんは薄く微笑む。やっぱ美人だな、この人


 「とにかく乾杯しよっ!! ホラジュートグラス持って音頭とって!!」


 アリンにそう言われてグラスを持ち、乾杯の音頭をとる・


 「優勝おめでとう。かんぱーーい!!」
 「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」


 「……かんぱい」


 「ってなんでいつの間にルビーラが!?」


 突然の来訪者の乾杯の声に全員がド肝を抜かれ、俺は声を上げてしまった
 すると、ジュースを飲みながらルビーラが言う


 「……ジュート、ゆうしょうおめでとう」


 そういってにっこり笑う
 やっぱりカワイイな。ここまで来たらまぁいいか
 って言うかどうやって来たんだ……と思っていると、ルビーラが封筒を俺に渡してきた


 「……これ、おうさまから」


 どうやら王様のお使いできたらしい
 俺は封筒を受け取ると胸にしまう…今はとにかくパーティー優先だ


 「ありがとなルビーラ。さぁみんな食べようぜ!!」




 俺のその一声で再び盛り上がり、みんな食事を楽しんだ




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 祝勝会もあっという間に終わりみんな帰る時間になった


 「楽しかったわ。こんなに楽しかったのはギルドマスターになって初めてだったわ…今日は本当にありがとうジュートくん。またギルドに来てくね」


 と言って帰っていた。次はラントとグランツさんだ


 「ジュート兄ぃ、今日のご飯もすっげーおいしかった。またみんなでたべよーぜ!!」
 「ジュート君。君には本当に感謝している…君のおかげで私は失った誇りを取り戻せた。本当にありがとう。明日、店に来てくれないか? 君にお礼がしたい」
 「わかりました、明日伺います。ラント、グランツさんまた明日!!」


 ラントとグランツさんは楽しそうに帰って行った


 俺は店に戻り3人娘とマリンさんの片付けを手伝う
 片付けを終わらせるとマリンさんが俺たちにお茶を出してくれた
 しばらく無言でお茶を飲んでいると、メリッサが切り出した


 「ジュートさん、改めまして優勝おめでとうございます」


 すごくまじめな声だった
 アリンもクレアも悲しそうな笑みを浮かべてメリッサを見てる


 「私たちは本日をもって冒険者を……卒業します。ジュートさんに、わ、私達の…最後に立ち会って…もらいたかったんです」


 メリッサは泣いていた
 アリンは顔をくしゃくしゃにしてボロボロ泣き、クレアは口元に手を当てて静かに泣いている
 3年…長くも短い彼女達の冒険者生活、きっといろいろなことがあったんだろう
 自分たちの夢に向けて3人で歩き出した時間は、きっとかけがえのない宝物だ
 これからは自分の夢に向けて歩き出す、自分の夢を始めるためにここで終わるのだ
 俺が掛ける言葉は……これしかない


 「みんなおつかれさま、でもココで終わりじゃ無い、メリッサは騎士に、アリンは花嫁修業、クレアは上級魔術師……まだまだ大変だろうけど3人で過ごした時間はきっとこれからの力になる。だからこれからもがんばれよ、俺はみんなの夢を応援するから」


 みんな泣いてる……でも、今日はいっぱい泣いて明日からは前を向いて頑張ってほしい
 俺はマリンさんを見ると、マリンさんも泣いていた




 冒険者最後の夜は3人で過ごすのだろう。俺は静かに店を出た




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 店を出ると外にルビーラがいた
 しかもクロを抱っこしてる……お前いつの間に帰ってきてたんだ?
 するとルビーラが俺に言う


 「……てがみ、みた?」


 あ、やべ…忘れてた
 俺はすぐに手紙を開封して内容を確認する……なるほどな


 難しい挨拶やら堅苦しい言葉が並んでいたが、どうやら一度城に来てくれ…と言うことらしい
 正直めんどくさいしかったるい、でもこの手紙を持ってきたのはルビーラだ
 仕方ない、ルビーラに免じて1回だけ顔出してやるか


 「どうやらお城に来いって言うことらしい。明日は用事があるから…明後日に行くか」
 「……わかった。つたえとく」
 「え……つ、伝えとくって?」
 「……おうさま」


 ま、まさかルビーラはメッセンジャーだったのか
 いいのかな、俺の都合で……ってルビーラがもういねぇ。帰るのはやっ!?


 「クロ、おかえり」




 《ただいま。ソレよりも大事な話があるワ…アグニードラも呼んで〔セーフルーム〕で話しまショ》




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 俺とクロは部屋に戻るなり〔セーフルーム〕へ移動した
 そこではアグニが酒を飲んでいて、以前クロにこってり絞られたアグニは飲み方を変えて杯でちょびちょび飲むようになっていた


 《おーう帰ってきたかクロシェットブルム。そのツラは何かあったな?》
 《エエ。ここから北のプレオ平原で【魔神軍】のモンスターが野営をしていたワ。数は1000以上、【神獣】はいなかったけどネ。仮に明日動き出したとしてもココまで来るのに10日は掛かるはずヨ》


 クロは俺を見る……イヤな予感がした


 《ジュート、落ち着いてきいてネ。アナタのクラスメイトが三人いたワ。間違いないと思う……白い騎士服を着て、男1人に女2人ヨ》
 「…………」


 ついに、ついに来たのか
 俺にやれるのか?……戦えるのか? 話合いは……?
 戦いたくない、できるのか……誰がきた?
 男1人に女2人、まさか剣吾? 弓島さん? 静寂さん……?


 《おいジューートっ!!》


 俺の体がビクッと跳ねる
 いつの間にか冷や汗を掻き、体は冷たくなっていた


 《おいジュート、選べ》
 《…………》
 「……アグニ? クロ?」
 《今ならまだ間に合う。このまますぐに【青の大陸ネレイスブルー】に入っちまえば取りあえずは助かる。正直今のお前じゃ【神器ジンギ】を持った〔神の器〕にゃあ絶対勝てねえ、【青の大陸】に入ってルーチェミーアを仲間にして、お前の【神器ジンギ】を目覚めさせてお前が強くなってから闘う手もある。つまり……この大陸を・・・・・見捨てて強くなるか・・・・・・・・・勝ち目の無い・・・・・・戦いに勝つか・・・・・……どうするんだ?》
 「そんな、俺は……俺は……!!」
 《ワタシはアナタに死んでほしくない。今は逃げてでも生きてほしイ……このままアノ〔神の器〕と戦闘になれば、アナタの【神器ジンギ】が発現するかもしれナイ、デモそんな保証はドコにもない。死ぬ可能性の方が遙かに高いワ……どうするノ?》
 「そんなの、俺が闘わないと……メリッサ達やラント達が。俺が、闘わないと……俺は…!!」


 覚悟は出来てるつもりだった
 でもそれが間近に迫るとこんなにも……こんなにも怖いなんて
 俺は今までなにを、体を鍛えたのは何のためだ?
 魔術を勉強したのは友達を救うため……でもそれがいまはこんなにも怖い


 《おい、ジュート……》
 「……何だよ、ぐがぁッ!?」


 アグニは俺を思いきりぶん殴った


 《戦いの理由にあいつらを使ってんじゃねぇ……お前はどうしたいんだ!! お前が、お前の意思でお前の答えを出せ!!》
 「俺の答え……それは……」


 俺の頭の中に今までの思い出が蘇る
 剣吾とゲーセンで遊んだこと
 静寂さんと一緒に本を読んで笑ったこと
 弓島さんにお昼のパンをあげて、次の日に彼女の手作り弁当をもらったこと
 他にもクラスメイト達の思い出が蘇り……そして


 この世界での思い出が蘇る
 グランシャリオでのこと。シャムスさん、サニー
 アカノ村、ルビィ。シューロ村、ジョアちゃん
 そしてメリッサ・アリン・クレア・ラント・グランツさん


 「ああ……そうか、俺は……」


 俺はここで一つの答えにたどり着いた






 「………守りたい」






 《……………》
 《……………》




 クロとアグニは、沈黙していた




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 「俺はどっちも失いたく……ない」
 《それがお前の答えか……?》
 「うん……俺、みんなが大好きだ。だれも失いたくないよ……!!」
 《ソウ、やっと素直になったワネ》
 《あぁ……決まりだな》
 「……え?」
 《どっちも大事でどっちも失いたくねぇ、ならこの大陸を守ってクラスメイトを守るために闘え。いいか、守るために闘うんだ。勝機がねぇわけじゃねぇ……もし戦いになったら【神器ジンギ】を破壊しろ。【神器ジンギ】は神の力の結晶だ、そうすれば一時的にだが力を失うはずだ》
 《チカラさえ失えば闘うことは出来ない。魔術は使えるケドね、でも撤退させるくらいナラ今のアナタでも出来るはずヨ》
 「わかったよ、俺……やってみるよ。クロ、アグニ……ありがとう」
 《へっ、オレもモンスタ-くらいは退治してやる。あとお前、明後日王様に合うんだろ? 話ぐらいすれば力貸してもらえるんじゃねえか?》
 《エエ、試してみる価値はあるワネ。自分たちの国を守るためならキット達上がるワヨ》




 そうだな……おれも吹っ切れたぜ




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 次の日俺は〔ラント武器店〕にやって来た。約束の時間ぴったりだ
 玄関まで行くと、ラントが迎えてくれた


 「ジュート兄ぃ、いらっしゃい。へへっ…父さん呼んでくるね!!」


 ラントは奥へ走って行った
 するとすぐにラントとグランツさんが一緒に来た


 「いらっしゃいジュート君。まずはお茶でも」




 とりあえず一服……話はそのあとかな




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 「君には本当に感謝しても仕切れない、本当にありがとう」
 「いえ、礼ならラントに言ってやってください。俺があそこでラントに出会わなかったら……ラントの誇りに対する思いを聞いたから戦えたんです。だから一番頑張ったのはラントです」
 「ジュート兄ぃ……ぐすっ」




 それからグランツさんはこれからのことを話してくれた


 まず賞金を俺に渡そうとしてきたが辞退した
 金ならあるし、それにこの店を直すのにお金がいる
 ラントのために使ってくれと言ったら納得してくれた
 そしてグランツさんとラントは町の鍛冶屋に正式に弟子入りしたらしい
 武具大会優勝ということが効いたらしく、その鍛冶屋はこの町で3番目に有名な所、今日から2人は親子でもあるし同じ店で働く同僚でもある
 正式に店を出すのに何年か掛かるが、二人はこれから同じ道を切磋琢磨しながら歩いて行く
 〔ラント武器店〕……家族の絆、か


「ジュート君、君にお礼がしたいんだ……ちょっとこっちに来てくれないか?」


 グランツさんは立ち上がり、俺はそれについていく
 庭に出て行くと目の前に大きな蔵?がある
 グランツさんはその蔵のカギを開けて中に入ると、中は真っ暗だ


 グランツさんが魔導ランプに魔力を注ぐ


 するとそこには、漆黒の魔導車が置かれていた。いや違う




 これは……バイクだ。間違いない




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 グランツさんが言う


 「以前、私が魔導車職人と言うことは話したね? これは私が設計した2人乗り用の魔導車なんだ。私が設計、ベリルが魔工技術、父に外装を作ってもらった私たち家族の作品だ。しかし扱いが難しくて誰も乗れなくてね……しかし、君なら乗りこなせる。私はこれが君のための乗り物だと確信している……これを君に託したい」


 まさかこの世界でバイクを見ることになるなんて
 全長はだいたい2メートルくらいのフルカウルタイプ
 スロットルグリップの部分に魔力を流す装置がついてるので普通にまたがり運転できる
 スピードメーター……やっぱないよね。クラッチもない、でも魔導ライトもついてるしメットインみたいなスペースもある
 ブレーキも両グリップについてるので完全にオートマチックだ


 「でもこんな立派なの貰えませんよ。家族の絆じゃないですか!!」
 「だからこそ、だよ。この魔導車【流星黒天ミーティア・フィンスター】を、私たちの絆を守ってくれた君だから託せるんだ」
 「ジュート兄ぃ、俺からも頼むよ。大好きな俺の兄貴にもらってほしい」


 俺は本当に幸せ者だ……俺は笑顔が止められなかった
 ここまで俺を思ってくれる二人に感謝の気持ちを伝える


 「わかりました。グランツさん、ラント……あなたたちの家族の絆。使わせていただきます」




 二人は笑い俺も笑う
 ランドンさんとベリルさんも笑ってる




 そんな幸せな笑い声が聞こえた気がした







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