ホントウの勇者

さとう

王都レッドキングダム⑤/傷だらけの手・それでも輝く

 
 あれから2日経過していた
 その間俺は〔セーフルーム〕でアグニと鍛錬しつつ〔ラント武器店〕に出向いて武器の進行具合を確認したりする
 あと1日しかない、果たして間に合うか


 すると宿屋の俺の部屋がノックされた
 そこにいたのは笑顔の少年、ラントだった


 「ジュート兄ぃ、父さんが武器が完成したって‼」
 「ホントか、よし行こうぜ」
 「うん‼」


 ラントは俺のことをジュート兄ぃと呼ぶ
 なんかくすぐったい、弟が出来たみたいだ


 俺とクロとラントはさっそく武具店に向かう
 するとラントのお腹がグウウウと鳴った


 「腹減っただろ、先になんか食べるか?······というか食べようぜ、俺も腹減ったよ」
 「で、でも俺···カネ持ってない」




 「子供が遠慮すんなよ。いい店知ってるんだ、行こうぜ」




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 俺たちがやって来たのは〔喫茶プフランフェ〕
 相変わらず誰もいない。ホントに大丈夫なのかこの店?


 俺とラントとクロが入るとマリンさんが出迎えてくれる
 心なしかなんかうれしそうだ、なんかあったのかな?


 「いらっしゃい、ジュートくん···と、お友達かしら?」
 「弟みたいなもんです、マリンさんおすすめお願いします」
 「はーい、お席でお待ちくださ〜い」


 俺とラントは向かい合うように座る
 クロはラントの隣に座った


「ジュート兄ぃの弟······へへっ」


 ラントは笑ってる。この笑顔が見れただけでもよかったな、あとは俺が大会で優勝するだけだ
 するとラントは、何かを思い出したかのように言った


 「あ、そうだ⁉ ゴメンジュート兄ぃ、コレ渡すの忘れてた」
 「なんだコレ?」


 これはメダル?······じゃない、バッジだな
 よく見ると表に〔グランドレッド武具大会〕、裏に〔ラント武器店〕って刻印されている


 「それは本登録選手の証だよ、〔ラント武器店〕の登録選手の証さ。今日大会運営委員会にいってもらってきたんだ、なくさないでよね」
 「わかった。ありがとな」


 するとマリンさんが料理を運んでくる
 おおっ、いつ見てもうまそうだ······ラントもめちゃくちゃ笑顔で俺を見てる




「「いただきます!!」 




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 俺達は腹ごなしもかねて走りながら〔ラント武器店〕まで来た
 最後の方は競争になったが結果は俺の勝ち、勝負の世界は厳しいのだ


 俺が店に入ると、グランツさんが迎えてくれた
 が、その表情は厳しい。そして悔しさを全身に表して言う


 「私は今日ほど自分が許せない日は無い。今まで私は何をしてきたんだ······‼」
 「グランツさん、武器を見せてください」


 そして俺はその武器を見た
 それはどこにでも売ってそうな2本の何の飾り気の無い普通のナイフだ、このくらいのナイフなら1本5000ゴルドで売れればいい方だろう
 しかし、俺は見てしまった。グランツさんの手がボロボロになっているのを。やけどをして、皮がめくれ、爪が割れ、赤く変色し、かさぶたが沢山出来ていた
 きっとその傷はグランツさんの勲章だ。俺にはこのナイフが何よりも輝いて見えた


「グランツさん、ありがとうございます。最高のナイフですよ、明日俺は優勝します。絶対見に来てください‼」


 俺はこのナイフに誓う
 今は亡きランドンさんベリルさんに、そして今を生きるグランツさんとラントに




 明日、必ず勝つと心に誓った




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 俺とクロは再び〔喫茶プフランフェ〕へやって来た
 中からとても楽しそうな声がするこの声はもしかして


 やっぱりメリッサ・アリン・クレアの声だ。中へ入ろう


 「あーっジュートぉっ‼ ただいまぁっ‼」
 「あっ、アリンずるいっ⁉ ただいまですジュートさんっ‼」
 「あなた達ねぇ、ふふっ···ただいま、ジュート」


 アリンが飛びつき、さらにメリッサも飛びついてくる。そんな二人を見てクレアが笑ってる
 すごい久しぶりな感じだ。するとアリンが胸元をゴソゴソ漁る


 「ねぇねぇ見てコレ、Bランク冒険者の証‼」


 アリンは赤のドッグタグを見せてくる
 あ、ホントだ···Bランクって書いてある


 「えっへへーっん‼ ジュート褒めて褒めて‼」


 よしよしかわいいやつめ
 俺はアリンの頭をなでるとメリッサが言う


 「ずっずるいずるいアリンばっかり⁉ ジュートさぁん、私も私もぉっ‼」


 おまえもか、とメリッサの頭をなでる
 俺はなんとなくクレアを見る


 「私はいいわよ。それよりジュート、あなた明日武具大会なんでしょう? 早く休んだ方がいいんじゃない?」


 クレアが気遣ってくれる。やっぱり優しいな、クレアは


 「確かにそうだけど···みんなが帰って来てるって聞いたからさ、どうしても会っておきたかったんだ」
 「「「ッ⁉」」」


 なんだろう、みんなの顔が赤いぞ、大丈夫かな?
 でも、みんなに会えてよかった。無事に帰って来たしこれで明日は迷わず剣を振れる


 「あ、あの···ジュートさん‼ もし明日優勝したら私の大事なモノあげます‼」
 「ずずずるーーーい‼ ジュート、わたしもわたしもあげる‼」
 「それなら私もあげようかしら? ふふ、初めてが4人でなんて、楽しみね」


 何だろう、何をくれるんだ?
 とにかく今日はもう休もう。明日もあるしな


 「じゃあみんなお休み。明日見に来てくれよ‼」


 俺がそう言うと3人は聞いてなかった


 「ね、ねえ···順番決めとかない?」
 「じゃあわたし最初がいい」
 「それはダメ‼」
 「ふふっ···いいじゃない4人で」
 「「それはもっとダメ‼」」




 えーと、お休み。また明日




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 大会当日、俺はホテルを出た
 ちなみにクロとアグニは〔セーフルーム〕で俺の試合を見るそうだ


 「おはようジュート兄ぃ、よく眠れた?」
 「おはようジュート君。今日はよろしく頼む」


 ラントとグランツさんがホテルのロビーで待っていた
 よし行くか。試合会場へ


 そして俺たちは試合会場である〔グランドレッドキング闘技場〕へ向かう
 町の外につながってる道を通って見えたのは、プロ野球でも出来そうな巨大ドームだった


 大きさはまんま野球ドーム、この町の人間全員は入れそうなドームだ
 今まで見た建物とは規模が違う。グランツさんの家にあったオンボロ魔導車でドームの中に入ると、とても大きな広場になっていた
 オンボロ魔導車から降りて少し歩くと長い受付がある、と言っても参加する武器屋は50店舗のみなので受付はすぐに終わってしまう
 ラントからもらった参加者バッジと事前にグランツさんが登録した双剣のチェックが終わり俺は選手として控え室に入ったちなみに双剣はもう鞘に収めてある


 俺は控え室に入るとその空気の重さに少し息苦しくなった
 たぶん俺は最後の方で部屋に入ったのであろう、視線が集中する
 が、俺はひょうひょうとしていた。アグニに比べればたいしたことない、俺は常にそう思っている


 部屋の選手達の顔ぶれはやはり年代が異なっている
 同年代くらいの奴もいれば歴戦の戦士っぽいのもいるし、女の人もいる
 辺りを見回すが当然知り合いはいない······すると


 「〔ラント武器店〕······落ちぶれた······楽勝」
 「あの武器······なんだ·····ザコ······」


 かなりの嘲笑が聞こえてきた
 たしかに装備は貧弱だ、それは俺もグランツさんも認めてる。だがそれがどうした
 コイツら全員のド肝抜いてやる


 そんなときアナウンスが聞こえた
 選手入場があるらしい、その武器屋の紹介があるので音楽と同時に入場するそうだ
 って、聞いてないんですけどぉ⁉ めっちゃハズイぞぉ⁉


 俺が突然のことに戦慄するなか選手入場が始まった
 いろいろな武器屋の紹介が始まるが、どうやら優勝候補は2つ
 毎年優勝と準優勝が交互に入れ替わっている武器屋だ


 〔グラフィー総合武器店〕と〔モールウエポンショップ〕
 この武器屋は〔王都レッドキングダム〕の中で1・2を争う大きさを誇っていて、毎年の利益の順位も交互に入れ替わっている
 それはすなわちこの武具大会で優勝した方が売り上げ総合首位に立っているらしい
 ちなみに去年はまさかの引き分け、決勝戦で両選手の武器が砕けて殴り合いの決着になったがまさかのダブルノックダウン。漫画みたいな展開だ


 〔グラフィー総合武器店〕の選手は傭兵ギルド所属の大剣のウェガ
 Aランク傭兵で50人の野党を魔術なしの剣技のみでたった一人で倒したこの大陸最強の傭兵と言われている
 将来はS級に上がるのは間違いないと言うことでギルドマスターの候補の一人らしい


 〔モールウエポンショップ〕の選手は冒険者ギルド所属の風のフウ
 Aランク冒険者でギルド最速の男とも呼ばれていて【緑】属性の魔術も多少操り風のような連続攻撃を得意としてるらしい
 こちらも将来ギルドマスター候補らしい


 俺の順番が来た。って最後かよぉっ⁉ 
 どうやら登録順に入場するようだな。緊張する···‼
 俺はちょっとだけグランツさんを恨んだ


 俺が入場すると歓声以外にも別の声が聞こえるのがわかる
 侮蔑・嘲笑・嘲り・罵声。グランツさん、どんだけバカにされてんだよ


 選手の入場が終わり大会主催者である王様の挨拶だ
 この〔王都レッドキングダム〕の王〔ガーシュ・エルディン・レッドキングダム13世〕が喋り始める
 あれ? 王様の隣にちっさい10歳くらいの女の子がいる


 その女の子は燃えるような赤い髪をしていて肌はやや褐色、瞳もルビーのようにキラキラしていてまるで人形のようだ
 服装は赤い豪華なローブを羽織っていて服は深紅のワンピースだった。赤っ‼


 すると国歌斉唱が入る。わかんねーから口パクでいいや
 するとアナウンスが言う


 「それでは国歌斉唱を【赤の特級魔術師・ルビーラ】様にお願いいたします」


 と、特級魔術師⁉ あの赤い女の子が⁉
 するとあの女の子が歌い始める。幼いが綺麗な声で、会場は静まりかえっていた


 歌が終わると赤い女の子が恥ずかしそうに下がって行く、すると大歓声が上がった······人気者なんだな


 そして組み合わせが発表された
 げえぇっ⁉ 第1試合ってすぐじゃねーーか⁉
 すると頭の中で声が聞こえる


 《おい、ジュート。最初の予定とは少し違ったが···いいか、コレは対人近接戦闘の訓練だと思え。いいな、負けんじゃねぇぞ》
 《ジュート、あの二人···ラントとグランツの思いを無駄にしなイデ。お願い、負けないデ》


 クロ、アグニ···よし、大丈夫だ。行くぜ‼


 派手な入場の音楽と共に俺と相手選手は入場した
 ルールは2つ。相手を戦闘不能にすること、死んだら事故責任···それだけだ


 俺にはヤジや嘲笑が飛び、相手選手には歓声が上がる
 俺は集中する······もう雑音は聞こえない


 相手選手の武器は剣が2本、二刀流のレイピアだ
 そして、戦いのゴングが鳴る




 「始めっ‼」






 ついに試合が始まった




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 一瞬で終わらせる
 俺は左右にナイフを持ち一瞬で相手の懐に入る
 未だ相手は驚いて構えも見せない


 「えっ?」
 「悪いな、終わらせる」


 まずは右手を狙い、5回細かく切りつける
 すると右手から血が噴き出す剣を落とした


 次は左手を同じように切り刻む、するとあっさり剣を落とした
 最後はみぞおちに強めの蹴り
 すると吐瀉物を吐き出して気を失った


 この間5秒。素人にはすれ違った瞬間に血を引き出して気絶したようにしか見えないはずだ···ってあれ?


 「「「············」」」


 会場は恐ろしいくらい静寂に包まれていた


 「やべ、やりすぎた?」


 でも俺全然本気じゃないんですけど


 俺は審判を見た
 審判ははっと我に返り俺の勝利を宣言する


「しょ、勝者〔ラント武器店〕ジュート······」


 俺はナイフをクルクル回転させてホルスターにしまう
 そして来た道を引き返し控え室に戻ると、やっとここで歓声···と言うか困惑のどよめきが聞こえてきた


 控え室に戻ると大・注・目された
 俺は肩をすくめ笑顔を浮かべ控え室から出ると、優勝候補の二人が俺を睨んでる
 怖いから無視しよーっと


 俺が控え室を出て大広間に行くといつもの見知った人たちが揃っていた
 メリッサ・アリン・クレアの三人組とグランツさん・ラント。さらにリアさんもいた
 みんな激励してくれて特にグランツさんとラントが大喜びだった


「ジュート兄ぃすっげぇ‼ めちゃくちゃつえーじゃん‼」


 とラントが大喜びで抱きついてきて、グランツさんが


「まさかこれ程とは。あの選手は去年のベスト4の選手だったんだよ?」


 と若干興奮しながら言う······あれでベスト4?




 まぁとにかく一回戦は突破した。このまま優勝を目指すぜ‼


 

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コメント

  • ノベルバユーザー331747

    事故責任 × 自己責任 ○

    1
  • ノベルバユーザー333647

    女の子が尻軽ビッチばかり。
    付き合ってないのに初めてあげる発言。そのうえ好きな人が他の女としても平気そうって…

    それ以外は良い話なんだけど。

    0
  • カラ

    あんまり言いたくないけどビックリマークの存在感がありすぎ‼️

    0
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