ホントウの勇者

さとう

王都レッドキングダム③/冒険者ギルド・武具大会

 

 結局あのあとクロとアグニは長い「話し合い」をしたらしい
 気になるような、ならないような


 そこで決まったのはお酒に関するルールだった
 お酒は週に一樽、葡萄酒か麦酒かはアグニが決めていいらしい
 朝起きたら引っ掻き傷だらけのアグニがうつ伏せで気絶してて、その上でクロが香箱座りで寝てた。とても平和的な話し合いだったのだろう


 俺はそのまま起きて簡単にストレッチをしてシャワーを浴び、【友情の約束プロメッサ・アミティーエ】を装備する。そしてベルトにナイフ2本を装備し、袖に投げナイフを差し込み武装完了


 アグニはすでに〔セーフルーム〕に戻ったみたいだ
 クロはドアの前で俺のことを待っていた。


 《サァ、行きまショ》
 「な、なあクロ···アグニは?》
 《掃除をさせてるワ、アイツにはイイ薬ヨ》


 伝説の神獣が部屋の掃除·····マジで?
 すごい光景だ、逆に見てみたい。でも朝飯が優先だしな


 「あ、アグニの朝ごはんどうしよう?」
 《必要ないんじゃナイ?》
 「おいおい、流石にそりゃひどいんじゃねーのか?」


 俺が咎めるような視線を送るとクロが言う。


 《そう言う意味ジャないワヨ。ワタシたち【九創世獣ナインス・ビスト】は【創造神】によって作られた究極の神獣ヨ、本来なら食事や睡眠は必要ないノヨ》


 「そうなのか。でも何で······?」


 俺が最後のまで言い切る前に、クロが呆れたように言い出した


 《ワタシたちはもう何百年も生きてるノヨ? そりゃ娯楽の一つでも欲しくなるワヨ》


 たしかにそうだよな。知らなかったとは言え失礼だった


 「ごめん、クロ」


 俺が謝るとクロが言う


 《イイのヨ、早く行きまショ》




 そうだな、朝飯食べに行きますか




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 俺とクロは散歩も兼ねてゆっくり歩きだす
 今は朝の7時くらいかな? それなのに人の通りは既に多い
 大きな荷物を運んでる人や馬車が多いな、多分商人が品物を卸したりしてるんだろうな 


 そんな風に歩いていると着いた。〔喫茶プフランフェ〕
 店の前には既に冒険者3人娘が揃っていた。やべえ、遅かったかな?


 「おはようございます。いい朝ですね、今日も1日頑張りましょうね‼」


 と、メリッサが朝からすごい元気だ。するとクレアが


 「この子昨日からずっと興奮しててね、あなたが冒険者になるのがよっぽどうれしいみたい。あ、おはよう」


 と、クレアが説明するとメリッサが慌てだす。そこでアリンが
 

 「ジュートおはよっ‼ 早く朝ごはん食べよっ‼」


 と言って俺の腕を引っ張る
 ふう、朝から騒がしい···でも悪くない
 学校での思い出が蘇えり、少し懐かしかった


 店に入るとマリンさんの作ってくれた朝ごはんがちょうど並べ終わったところだった。俺はマリンさんに挨拶して4人と一匹でご飯を食べ始める。パンに野菜スープとスクランブルエッグに焼いたベーコンに野菜サラダと、凄く美味しい朝ごはんだった。そして食事が終わりみんなでお茶を飲んでいるとメリッサが言い出した


 「そうだ、冒険者登録の手順を教えておきますね」


 そう言うとメリッサが嬉しそうに説明してくれた


 冒険者になるには冒険者ギルドで名前の登録をしなくてはいけない
 そして名前を登録してギルドマスター直々にテストが行われる
 テスト内容は戦闘能力を図ることらしい、これに合格すれば晴れて冒険者としてデビューだ


 「ギルドマスターは上級魔術師で近接戦闘も得意な万能型よ、でも負けたからと言って不合格になるわけじゃないから安心なさい」


 なるほどねぇ。そして冒険者にはランクがある
 そのランクは一番下がFで一番上がSらしい、まあ俺は正直ランクはどうでもいい。えーと、上からS・A・B・C・D・E・Fか
 ちなみにメリッサ達はCらしい、近々Bに上がると言うことだ


 とにかくわかった。ようはギルドマスターとの戦いがあると言うことだ。そういえば俺、人間相手に戦ったことないけど···大丈夫かな


 「それじゃ行こっか‼」




 アリンの一言で、俺たちは店を後にした




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 食後なのでゆっくり談笑しながら冒険者ギルドに向かう。そして中央広場にある一番大きな建物・・・ここが冒険者ギルドか・・・にやって来た。


 見た目は都会にありそうな公共施設みたいだ
 メリッサが先頭になり中にはいると、装備をきっちり固めた冒険者だらけだった。同年代くらいもいれば年下もいるし、20~30代もいれば70くらいの人もいる
 建物の中は商人ギルドに近い感じがするかもな、雰囲気は全く違うが
 カウンターがたくさんあり壁には依頼?だろうか、紙がたくさん張り付けてある。あ、3人組の冒険者が壁の紙を一枚剥がしてカウンターに持っていった。あの紙が依頼みたいだ


 俺は壁に張られた1枚の大きなポスターに目を引かれた


 〔グランドレッド武具大会〕参加者求む‼


 グランドレッドに存在する無数の武器屋の頂点を決める大会みたいだ
 この〔王都レッドキングダム〕には武器屋が50以上存在する。その中ので最も優れた武器を作りし武器屋を決める大会だ。ルールは簡単、それぞれの武器屋から代表選者を1名出場させて自社の最強の武器を持たせて戦わせる。優勝した武器屋がこの〔王都レッドキングダム〕で一年間最高の武器屋の名誉を貰えるらしい。優勝すれば仕事も増えるだろうし、収入も増大する。この町の武器屋にとってははずせないイベントだ


 俺がそのポスターを見ていたらメリッサが言い出した


 「冒険者登録受付はこっちですよ」


 おっといかんいかん、俺はメリッサ達に案内されて一つのカウンターに着いた。そこにいたのは亜人のお姉さん、受付の亜人のお姉さん率が高い気がする。すると亜人のお姉さんは


 「あらメリッサ、今日はどうしたの?」
 「おはようございますコロンさん。今日は冒険者登録に来ました‼」


 そこまで言うと亜人のお姉さん─コロンさんは俺を見る
 この人はネコ亜人かな? どこかで見たような······?


 「はじめまして、コロンと申します。本日は冒険者登録にお越しですね?それではこちらの用紙にご記入お願い致します。───はいありがとうございます。それではギルドマスターの試験がございますので装備品の確認などをしてお待ち下さい」


 トントン拍子で話が進んでいく
 するとメリッサが話しかけてきた。


 「もしかしてコロンさんに見覚えあるんですか?」
 「いや、どこかで見たような······?」


 俺が首を傾げているとクレアが答えを教えてくれた


 「シューロ村を覚えている? コロンさんはジョアちゃんのお母さんのジェミアさんの妹よ」


 ああ、そっかそっか。ジェミアさんか‼
 懐かしいな、ジョアちゃんやあのチビドラゴン元気かなぁ、とシューロ村の出来事を思い出しているとメリッサが


 「ジョアちゃんは今、冒険者になるって言って頑張って勉強してますよ。13歳になれば冒険者の資格がとれますからね。あのドラゴン、クエナも町の人気者ですよ‼」


 そっか······よかった
 あのチビドラゴン、クエナって名前にしたのか
 するとアリンが嬉しそうに言う


 「ジョアちゃん毎日言ってたよ、お兄さんと約束したから強くなるって」


 アリンがそう言うと、メリッサとクレアも嬉しそうに笑う
 俺も釣られて一緒に笑う




 ジョアちゃん、クイナ······頑張れよ




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 そんなこんなでみんなでダベっていると、コロンさんがギルドマスターを連れてきた
 ギルドマスター=この街の冒険者の頂点みたいな存在だ。しかも上級魔術師だし
 クレアに聞いた話だとギルドマスター何て呼ばれるはこんな感じだ


 冒険者ギルドマスター
 商人ギルドマスター 
 傭兵ギルドマスター
 魔術ギルドマスター


 と、こんな感じだ
 これらのマスターは各大陸の王都に全て存在してその大陸の中でも最も強い4人らしい。しかも全員上級魔術師
 そんな〔王都レッドキングダム〕の冒険者ギルドマスターが俺のところへやって来た


 「あなたが冒険者ギルド登録希望の子ね。はじめまして、私はこの〔レッドキングダム冒険者ギルドマスター〕のリアスフィーダ・ベネよ。リアでいいわ、よろしくね」


 そりゃびっくりするよ、いかついおっさんが来ると思ってたら美人のお姉さんだったんだもん
 名字があるってことは貴族だよな? 貴族が何でギルドマスターをやってんだろう?


 「さあ、早速試験を始めましょうが。こちらへ来て、戦いの場所へ案内するわ」


 と、リアさんの後についていく
 メリッサ達もついてきてクロはアリンに抱っこされてた


 目的地にはすぐ着いた。ギルドの真裏だしな
 そこは柵に覆われた広場で、大きさはそんなに広くない。円形の闘技場で周りを囲うように席が並んでいて、スペインの闘牛場みたいな感じだ
 

 俺とリアさんは闘技場に降りて真ん中で向かい合う
 するとリアさんが


 「あなたの力を見るわ。武器は何で仕様してよし、魔術も仕様してよし、私を殺すつもりできなさい」


 すると頭の中でアグニの言葉が響く


 《おいジュート、ちょうどいい···よく聞け。お前の戦いの目的は殺す事じゃねぇ、救うための戦いだ。それは殺す事よりずっと難しい、神の力を持ったお前のクラスメイトを殺す事なく無力化するってことはそういう戦い方をしなけりゃいけねぇってことだ。いい機会だ、こいつを殺す事なく無力化しろ。こいつをできねぇようじゃこれから先やっていけねーぞ》


 アグニの言葉が響く
 リアさんはこの赤の大陸で最も強い人の一人だ。やれるのか?······いや、やってやる


 俺はリアさんを観察する
 髪は真っ赤なロングヘアでアリンよりも赤く、顔立ちは間違いなく美人で貴族の風格を感じる
 装備は赤いプレートアーマーに銀色の長剣。あの長さなら近接が有利か? でも何の対策もしてないなんて考えられない。やるしかないか


 俺は右手に【雄大なる死グロリアス・デッド】、左手に投擲ナイフを構える。するとリアさんが


 「さぁ、かかってらっしゃい‼」




 俺はリアさんに向かい走り出した




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 相手の無力化、やっぱり狙いは武器だな
 俺のスピードにリアさんが驚いてる


 「そりゃッ‼」


 俺はナイフを剣を持った右手に投げる、しかしリアさんは難なく躱したが、ナイフはあくまで牽制


 「何ッ⁉」
 「おりゃっ‼」


 そのまま接近してナイフの柄で右手首を叩き、剣を地面に叩き落とした


 「クソッ‼」
 「終わりっす」


 そのままリアさんの右手を左手で掴んで、足払いして地面に倒し首にナイフを当てた


 この間5秒···リアさんは驚愕の表情で俺の顔を見てるし、メリッサ達もポカンとしてる


 《やっぱな。今のお前じゃこの程度のヤツ相手になんねーよ、このオレとまともにやりあえるお前がいまさら人間程度に遅れをとるわけねーだろーが。ってもまだまだ荒いけどな、もう少し対人戦闘の経験を積めればいーんだけどなぁ······まてよ?》


 俺はとりあえずリアさんから離れてリアさんを起こす
 するとリアさんは苦笑いで言う


 「完敗ね、あなたの動きに全く対応出来なかったわ。あなた一体何者?」
 「ただの冒険者希望です。それより試験は合格ですか?」
 「ええ、文句なしの合格よ。おめでとう······さあ本登録しましょうか」


 リアさんは再び歩きだし、俺もそれについて行く
 メリッサ達が俺を呆然と見つめてたが俺は曖昧に笑って返した。そしてコロンさんのカウンターに来て本登録を済ませるとコロンさんが首飾り·····ドッグタグみたいな物を俺に渡してくれた
 へーえ、キレイな銀色だ······んん?


 「あ、あの···リアさん。これAランクって刻んで有るんですけど······?」


 メリッサ達も呆然としてる
 俺も驚いてる、するとリアさんが


 「あなたの実力はSランク級よ。でもいきなりだと大変でしょうからAランクで経験を積んでからSランクに上がりましょう」


 マジかよ。まあいいや、ランクが高いに越した事はないしな
 そう思い俺はドッグタグを首にかけた
 するとリアさんが言う


 「ねぇジュートくん、〔グランドレッド武具大会〕に出てみない? あなたなら優勝を狙えるわ···どう?」


 グランドレッド武具大会······ああ、さっきのやつか
 するとまた頭の中で声がする


 《おいジュート、いい機会だ···その大会に出ろ。対人戦闘の経験を積むチャンスだ》


 おいおいマジかよ、でも正直悪い気はしない
 俺も自分の実力がどこまで通用するか試してみたいしな、それに、みんなを助けるための技術だし磨いておいて損はない
 俺の答えを待ってるリアさんに向かって言う


 「わかりました。俺も興味あったんで出てみたいです」


 「ふふ、わかったわ。あなたならそう言ってくれると思ってた。選手登録はしておくからあなたは町の武器屋を訪ねて代表の交渉をしてきて、あなたの強さなら間違いなく代表になれるわ」






 なるほどね、武器屋の交渉か···まあ色々探してみるか







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