ホントウの勇者

さとう

シューロ村①/少女の思い・母を想い



 「うおおおおおっ!! とうっ!!」


 俺は相変わらず走っている。ちょっとテンションが高い気がするが……なぜなら今走っているところは地面ではなく岩場なのだ


 〔アカノ村〕から走ること早3日。もちろん修行をしながらだけど、北に向かうにつれて気温が上がってきて草木がほとんど生えていない。土地全体も赤茶色の地面と岩場ばかりで殺風景。しかし修行にはうってつけの土地だ……俺たちはわざと岩場を進んで足場の不安定な所や、アップダウンの激しい所を進むことで体のバランスや全体的な筋力を鍛えているのだ


 そしてモンスターもなんだか強くなってきた気がする。全体的に堅い奴らが出てきたり、遠距離攻撃を使う奴らとか、岩場に潜んで不意打ちを仕掛ける奴とかがいた。〔商業都市グランセン〕にいた頃の俺だったらとっくに死んでたと思う


 そんなこんなで岩場を抜ける、自分で言うのも何だけど俺の身体能力はかなり上がった。垂直跳びも2メートルくらい飛べるし、連続のバック宙もできるようになった。体操選手の物まねをやってみたら意外と簡単にできたのだ、もちろんこの程度で満足はしない………おっモンスターだ


 そこにいたのは赤茶色の岩をくっつけて2メートルくらいの人型にしたようなモンスター〔レッドロックゴレム〕が2匹と、でっかい1メートルくらいの赤茶のサソリ〔レッドスコルピオ〕が3匹だ、今の俺には何の障害にもならない、俺は腰から【死の輝きシャイニング・デッド】を左手で抜き逆手で構え、右手で魔力を練り放つ


 「【青】の上級魔術【泡沫洪水フルート・シャオム】!!」


 蒼い紋章が5匹のモンスターを包むように足下に広がり大量のアワが地面からボコボコ出てくる。その泡がモンスター達に触れると大量の水の爆発が起きる、派手な音と共にモンスターが翻弄される


 そして水の爆発が終わり地面の紋章が消えるとモンスター達は死んでいた……〔レッドロックゴレム〕は粉々に砕け散り、〔レッドスコルピオ〕はバラバラになっていた


 明らかに死んでいたが俺は周囲を警戒する。以前モンスターを倒し気を抜いた瞬間に不意打ちを受けたことがあったからだ………よし大丈夫だな


 「ふう~終わった……」


 俺は左手でナイフをくるくる回しナイフホルダーにしまった。じつはこのモーションを密かに練習していたのは内緒だ


 そのまましばらく進んでいくとついに見えてきた……あれが〔シューロ村〕か。すると俺の後ろにいたクロがジャンプして俺の肩に着地しクロは言う


 《シューロ村は亜人の村ヨ、そして亜人の戦士の村でもあるノ。強い戦士ばかりだからアグニードラに会う前に稽古を付けてもらったらドウ?》
 「戦士の村か……なんか怖そうだな、大丈夫かな?」


 正直怖い人たちとはあんまり関わりたくないんですけど……マジで


 《大丈夫、戦士はミンナ礼儀正しいカラ。モシ戦いを挑まれたら正々堂々魔術なしで受けるのヨ》


 あ、受けるのは決定なんですね。まぁとりあえず行くか


 そして俺とクロは村の入り口まで来た


 「すげえ、まるで要塞みたいだ……」


 高さ10メートル以上ある巨大な岩が村全体を囲んでいて、これならモンスターも入ってこれないだろう。入り口は巨大な岩をくりぬいてトンネルのようになっていて、門はどこから持ってきたのか木でできていた


 そして入り口には守衛が2人…たぶん犬かオオカミの亜人だ。町で売ってるような鎧ではなくモンスターの素材で作ったような皮のフル装備だ。腰には曲刀を差し、手には装飾された動物の骨?の槍を持っている


 こ、怖いな。いきなり切られたりしないよな……俺とクロが入り口に近づくと守衛が言った


 「ようこそ戦士の村シューロへ! 歓迎する。さあ旅人よ、我らの村で旅路の疲れを癒やすといい」
 「疲れのとれる温泉もある、戦いの聖地闘技場もある。ゆっくりしていってくれ」


 熱烈な歓迎っぷりだった。本当にすみません、俺もう人を見た目で判断しないようにします……俺とクロは守衛さんにお礼を言うと村の中に入っていった。


 「ここが亜人の村か」




 俺たちは町を歩きながら観察した




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 一言で言うなら〔レンガの町〕かな。建物はほぼ全て赤茶のレンガで作られていて、よく見ると周りにサボテンのようなものが辺りにたくさん生えている、村の中央には大きな湖があり、その中央に赤茶色の建物が建っていた。しかもかなりでかい…もしかしてあれが闘技場かな?


 湖の周りには武器・防具・道具・魔道具屋と宿屋が何軒かある。よく見ると亜人以外の人たちも結構いるな。4~6人くらいの男女の集まり……たぶん冒険者のパーティーだ。そこまで観察すると俺のおなかがぎゅるるとなる


 「腹減ったな、露店で何か買おう」


 俺は辺りの露店を見回す……すると1件の露店に目が行く


 「お、〔レッドオークの串焼き〕だって……うまそうだな、よしあれにしよう」


 俺は露店で串焼きを2つと飲み物を買う。串焼きは一本500ゴルド、飲み物は1つ150ゴルドだった。安いな、これが普通なのかな?


 湖の周りにベンチがあったのでそこで食べる。この串焼き結構でかいな…腹はかなり減ってたのに1本で満腹になってしまった。クロは俺より早く食べ終わり香箱座りで俺の隣でくつろいでる。この体のどこに入ってんだ? 


 串焼きを食べ終わり飲み物を飲んでリラックスしていると、3人の冒険者パーティーを見つける。全員女の子だ、しかも同い年くらい……困ったような顔で辺りを見回しているな。なんかあったのかな?


 そして三人のうちの一人と視線がぶつかり俺を見つめる。なんかいやな予感…するとその子はほかの二人に何かを言うと俺の所にやって来た。俺と目のあった子が俺に言う


 「あの、すみません。7歳くらいのネコ亜人の女の子を見ませんでしたか?」


 どうやら人捜しらしい。ネコ亜人……クロがいるから猫つながりで俺の所に来たのだろうか。しかし来たばかりの俺にわかるわけがない


 「悪いけどみてないな、俺は今この町に来たばかりなんだ」
 「そうですか……ありがとうございます」


 冒険者の女の子はお礼を言う、すると残りの二人が騒ぎ出した


 「ねぇ、町中をこれだけ探してもいないんだよ? やっぱりヴォーズ渓谷に行ったんだよ……早く探しに行かないと!!」
 「そうね、可能性があるとしたらそこしかないわ。メリッサ……悩んでる暇はないわよ」


 俺に話しかけた女の子、メリッサが右拳を握りしめる


 「わかった……いこう。アリン、クレア」


 そう言うと3人は言ってしまった。はぁ……絶対いやな予感がする


 「あ、そうだ。道具屋で鍋買わないとな」


 そう思い俺は道具屋へ入る。ほぉぉ……なかなかイイ品揃えですね。俺はそこで鍋を二つと食器と香辛料、干し肉や乾燥させた果物・野菜を買い外に出た。これで野菜タップリのお粥でも作ってみよう


 「うーん……気になる」
 《………》


 俺はさっきの3人が気になっていた。そして……見つけてしまった


 宿屋の前で一人の女の人……ネコ亜人が泣いていた。そしてクロが何故かうれしそうに言う


 《行くんでショ?》
 「当たり前だろ」


 俺はネコ亜人の女性に近づくと事情を聞こうと話しかけた


 「あの…もしかしてネコ亜人の7歳くらいの女の子を探してるんですか?」


 そのネコ亜人の女の人が泣きはらした目で俺を見る、そして詰め寄ってきて泣きながら話した


 「うちの子の……ジョアの居場所を知ってるんですか!? お願いします、教えてください!! あの子に何かあったら私は……うううっっううぁぁっ!!」


 「お、落ち着いて事情を話してください。力になります」


 ネコ亜人の奥さんのジェミアさんが話してくれた内容はこんな感じだ


 この宿屋を経営するジェミアさんは、娘のジョアちゃんが生まれてすぐに戦士だった父親のエリオさんを亡くした。そこで残された夫婦の絆のジョアを立派に育てようと誓い、今日まで一生懸命育ててきた。そしてジョアちゃんは最近この町を拠点に活動している女の子3人の冒険者の少女たちに懐き、彼女たちの冒険の話を夢中で聞いていたそうだ


 冒険者の少女達も自分たちを慕ってくれる女の子を妹のように感じかわいがり、ジョアちゃんが冒険者になったら自分たちのパーティに入れてあげると約束してたらしい。そしてジェミアさんの誕生日が近いのでジョアちゃんは冒険者の少女達にお小遣いを貯めてある依頼をした。それはヴォーズ渓谷の最下層に咲く花〔エーデルシュタイン〕をとってきてほしいという依頼だ。しかし少女達の実力ではヴォーズ渓谷は非常に厳しく、断るしか無かったらしい


 少女達にあこがれていたジョアちゃんは落ち込んだ…そこでジョアちゃんは冒険者ギルドに行き依頼を出したが誰も受ける人がおらず、誕生日が明後日に迫ってしまった。そこで冒険者の少女達が町に買い物に誘おうと部屋を訪ねたところその姿は無く、町をくまなく探しても見つからない、行き先はやはりヴォーズ渓谷だろう……


 とまあこんな感じだ、ってゆーか間違いないだろこれ。話して少し落ち着きを見せたジェミアさんにヴォーズ渓谷について聞いてみた


 「ヴォーズ渓谷はこの村から東に10キロほど進んだ所にある渓谷です。そこには非常に強いモンスターが生息していて、最下層には伝説のレッドドラゴンが住んでると言われています。帰ってきた人は今までいないとまで言われて、〔エーデルシュタイン〕もそこにあると言われています………私の主人も帰ってきませんでした………」


 なんかめちゃくちゃやる気出てきた……修行にピッタリだろ


 「わかりました。俺がみんなを連れて帰ります……待っててください」


 ジェミアさんは俺のことも冒険者と思ったのか特に反対はしなかった。むしろ応援してくれた


 「お願いします。メリッサちゃん、アリンちゃん、クレアちゃんも私にとっては娘のような存在です……どうか、どうか!!……娘達をおねがいします!!」




 これで燃えなきゃ男じゃねえな……いくぜクロ!!




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 俺はいつもの通り走って渓谷に向かった……これも修行!!


 途中モンスターが襲ってきたが、それを蹴散らし渓谷にたどり着く。すると渓谷の入り口に…ん? なんだこれ……車みたいな乗り物が置いてある


 「これ魔道具?……クルマみたいだな」


 材質はボディが木製で、イスも堅そうな木でできているけど座布団が引いてある。運転席が前の席の真ん中で、前3人後ろ3人の6人乗りだ、よく見るとボディに〔シューロ冒険者ギルド〕って焼き印が押してある。たぶん冒険者専用の乗り物でギルドが貸し出してるんだろうな。乗り物で来たってことはだいぶ先に進んだ可能性があるし俺も急ごう……あ、そうだクロに確認


 「なあクロ、レッドドラゴンって強いのか?」
 《たいしたコトないワ、アグニードラに比べたらカワイイものヨ。強いていうなら……アナタにとっての〔レッドゴブリン〕みたいなものヨ。マアちょうどいいワネ、アグニードラの前に準備運動していきまショ》




 ホントかよ。生きて帰ってこれた人いないって言ってたけど……まあとりあえず進んでみるか




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 渓谷を順調に進んでいると途中でモンスターの死体を何体かみつけた。きっとあの冒険者の少女達が倒した物だろうな。モンスターの種類は〔レッドオーク〕・〔レッドバフォメット〕・〔レッドキマイラ〕などのなかなかの強敵だ……それにしても


 こんな時に不謹慎だが、この渓谷の景色は素直に美しいと思った。水分が多いためか緑の植物や木がたくさん茂っている。村の入り口にあった門もここの木なのかもしれない。水の流れる音がするので、谷底には渓流が流れているのかな、そんなことを考えながら谷を下っていった




 そしてついに彼女たちを見つけた




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 彼女たちはモンスターと戦っていた


 「あれは〔レッドガルガンチュア〕だよな。ヤバい、押されてる!!」


 でかい10メートルくらいの蜘蛛の化物だ。隊列を見るとメリッサが剣士、アリンが弓士、クレアが魔術師か。しかし……全員ボロボロだった


 アリンの弓は破壊されていて彼女はナイフを握って前に出ている、しかし足を負傷してるのかふらふらしていた。クレアは杖みたいな物を握って魔術を使っている、黄色い紋章が光り石つぶてが飛んでいく。あれは【黄】の下級魔術【投石ストーンバレット】だ。クレアは【黄】の魔術師か…しかしその顔色は真っ青で肩で息をしている。あれは魔力切れだ、あれ以上魔術を使うと倒れてしまうだろう。一番危ないのはメリッサだ、蜘蛛の足をかいくぐり斬撃を加えているが蜘蛛の皮膚が硬くて効果が薄い。むしろ剣が欠けて今にも折れそうだ。しかも彼女が付けている軽鎧は所々が破壊され、右腕、左足、額から出血している


 かなりヤバいな……ん、あれは…あの子がジョアちゃんか? クレアの後ろにいる小さな女の子。でも全然動かない、このままじゃ全滅する




 「クロ、彼女たちに〔治癒薬ポーション〕を!! 俺はあれを倒す!!」




 ついにメリッサの剣が折れてしまった。メリッサも同時に崩れ落ち動かない……彼女は肩をふるわせて泣いている。きっと誰よりも責任を感じていたんだろう……そして大蜘蛛が8本ある前足の一本をメリッサの頭上に振り上げる。その行為は頭から足を突き刺し、そのまま食べるつもりだろう。アリンとクレアが泣き叫んでいる、そしてその足が振り下ろされた




 そして、地面を揺らし轟音が鳴り響く




 土煙が上がり一時的に視界がふさがれる。アリンとクレアはぼろぼろと涙をこぼし、15歳の時から2年間という長くも短くも無いつきあいの少女……メリッサの名を叫ぶ。それと同時に次は自分たちの番だと悟る……クレアの後ろにいるまだ7歳の、自分たちの妹のような少女も同じ運命をたどる。せめてこの少女だけは助けてやりたいが、そんな力も無い自分たちの弱さを呪い……土煙が晴れた瞬間の自分たちの運命を受け入れた














 ──────────────────かに思えた














 それは不思議な光景だった。夢と言われれば迷わず信じただろう……そこにいたのはグロテクスな仲間の死体ではなく、自分たちの大事な仲間を、お姫様抱っこしていた謎の人物














 黒猫を連れた、黒い服の少年だった──────────





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