ホントウの勇者

さとう

商業都市グランセン②/サニー・友情の約束



 俺とクロは商人ギルドを後にして最初に来たメインストリートへ戻ってきた


 やっぱりすごい喧騒だな……さぁていよいよ買い物タイム。最初に買うのはやっぱり


 「服をなんとかしなくちゃなぁ……」


 と、言うわけで目についた服屋に入って見る。そして適当な自分に合う服と下着を何着か買う。ゴルドカードでの支払いで少しビビったのはナイショだ


 服屋での買い物を終えて再びメインストリートを歩き、近くのベンチに座った。買った服や下着はクロの異空間しまってもらう。今度その魔術教えて貰おう……便利すぎる


 正直なんか物足りないな……俺はそんな気持ちでいっぱいだった。新しく買った服を着ないでボロボロの制服のまま辺りを見回すと、一人の女の子を見つけた


 「おいおい大丈夫か……?」


 思わずそんな言葉が出てきた。その子はだいたい10歳くらいの女の子で身長は俺の腹ぐらいまでで、キラキラした金髪をツインテールにしてる。その子はパンパンに膨らんだ大きな買い物袋を引きずりながら歩いている、あのままだといずれ買い物の底が破れて中身を盛大にぶちまけるかもしれないな……ハァ、仕方ない。俺は女の子に近づき話しかけた


 「えーと……君、大丈夫? 重くない?」


 俺の問いかけに女の子はキョトンとした顔で、すぐに咲くような笑顔で答えてくれる


 「はい、大丈夫です!! 心配してくれてありがとうございます!!」


 元気いっぱいに答えてくれた、しかし次の瞬間。きゅるるるるぅぅ~と、女の子のお腹が可愛く鳴る


 女の子は顔を真っ赤にしてうつむき恥ずかしがっていた……俺はそんな健気な女の子が可愛く思えた。よし、一肌脱いでやるか


 俺は辺りを見回すと一件の露店を見つけた。その露店は〔リザードバーガー〕と書かれている。このあたりに生息する〔レッドリザード〕の肉を焼いてパンに挟んでたべる、ハンバーガーみたいな食べ物屋だ


 俺は女の子の買い物袋を持ち上げて、代わりに俺の肩に乗っているクロを女の子に渡す。すると女の子はびっくりして俺に言う


 「あっあの、えっと」
 「ほら、こっちにおいで。〔リザードバーガー〕でも食べよう」


 女の子は〔リザードバーガー〕の誘惑に負けたのか、クロを抱きしめながらついてくる。そして〔リザードバーガー〕を3つ頼み、支払いを済ませて空いてるベンチへ座る。女の子は俺の顔を見る、俺がどうぞと言うと食べ始めた。よし、俺も食べよう。


 〔リザードバーガー〕を一口食べる。うおおおぉ、うまい……味は強いていうなら照り焼きバーガーっぽい。クロを見るとおいしいそうにバクバク食べてる、女の子はまだ半分くらいだ。俺はもう食べ終わってしまった……ごちそうさま


 飲み物が欲しくなったので近くにあった露店で、この世界の果物を使ったミックスジュースを3つ買う。それを女の子に渡すととても嬉しそうに飲み始めた。クロも前足と後ろ足でコップを固定して、器用にストローで飲みはじめた。ネコのくせに……そして食事が終わり女の子がお礼を言う


 「ありがとうございますお兄さん。お腹いっぱいになりました!! あの、お金は……その」
 「ご馳走したのは俺だから気にしないで。それよりすごい荷物だね……」
 「はい!家はお母さんがいないのでわたしが家事を全部やってるんです。お父さんはお仕事が忙しいので……」


 この歳でたいしたもんだ、そう思うと女の子は思い出したように俺に向かって言う


 「申し遅れました、わたしはサニーです。よろしくお願いします!」
 「俺はジュート。よろしくね、サニー」


 女の子……サニーは嬉しそうに微笑む、妹がいたらこんな感じなのかな……いいね、いい。ってちょっと思考がヤバい方向に行きそうだ、サニーに何か聞いてみよう


 「サニーのお父さんはどんなお仕事してるの?」


 俺はやましい思考をごまかすようにサニーに聞く、すると意外な答えが帰ってきた


 「はい!! お父さんのお仕事は防具職人です。〔ヒマワリ防具店〕って言うお店なんですよ!! でも、お店は町の外れの方にあるから、お客さんがぜんぜんこなくて……」


 サニーは悲しそうに呟いた。それにしても〔ヒマワリ防具店〕……なんか可愛い名前だ、この世界にもヒマワリって咲いているのかな? 今度クロに聞いてみよう


 俺はなんとなくサニーの家の防具屋が気になっていた、何故かそこに行かなくちゃいけないような……第六感とでもいうべきな? よし決めた!!


 「なぁサニー、俺が〔ヒマワリ防具店〕のお客になってもいいかな?」


 俺がそう言うとサニーはヒマワリのような笑顔を浮かべて


 「ホントですか!? ぜひともお願いします。あ、わたしが案内しますね!!」


 サニーは立ち上がり、買い物袋を持とうとする。俺は先に買い物袋を持ち上げて、クロをサニーに渡した。俺達はサニーの案内の元、〔ヒマワリ防具店〕に向けて歩きだした


 サニーはクロを気に入り、歩きながら頭を撫で、しっぽをいじり、抱きしめてもふもふしたりして遊んでいた。クロは俺を恨みがましそうな目でみたが、俺はそれを見て見ぬふりをした


 30分ほど歩いて町の外れまで行くと湖沿いに一件の家が見えた。ボロボロの看板でかろうじて〔ヒマワリ防具店〕と書いてある。ここか……サニーには悪いが正直ボロい。2階立ての建物で1階は店舗、2階は住居になってるみたいだ。サニーは元気よく扉を開けると、バガン!! と扉がはずれた。日常茶飯事なのかサニーは全く気にせずに挨拶する。いつの間にかサニーの腕から逃れたクロが、その建物を見つめてピクリとも動かなかった……クロ?


 「ただいまーっ!!」


 すると父親らしい人がサニーに注意する


 「コラ、サニー!! 扉は静かに開けなさいと毎日言っているだろう」


 「ごめんなさーいお父さん、あのねあのね、お客さん連れてきたよ!!」


 「本当かい!? ああ、いらっしゃいませお客さ………」


 ニーの父親が俺とクロを見て固まっていた。俺なんかしたっけ…? クロもサニーの父親を見つめて微動だにしない。どうしたんだよクロ


 それを見かねたサニーが父親に向けてぷんすか怒りながら言う


 「もうお父さん!! お客様にきちんとあいさつしないとダメじゃない!!」
 「あ、ああゴメンゴメン。改めまして…いらっしゃいませお客様、私はこの〔ヒマワリ防具店〕店主のシャムスです、何をお探しですか?」
 「ジュートさんどうぞ!!汚いところですけど見てってください!!」


 サニーに腕を引っ張られ店内に入る、俺の後ろでシャムスさんが外れた扉を直していた


 店内はそこそこ広い、だいたい12畳くらいの広さでいろいろな防具が置いてある。サニーは汚いと言ったがそんなことはなかった。建物が古いだけで店内はとても清潔だ。それにしても、なんだろうこの感じ……初めて来たのに妙に懐かしい感じがする。俺は吸い込まれるように一つのショーケースの前に来て、布がかぶせてあったがそれを勝手にめくる。怒られてもいいやと言う気持ちが何故かわいてくる…サニーは俺の行動に首をかしげ、シャムスさんは俺の行動を黙ってみていた。そして俺はそれを見た




 そこにあったのは一つのの防具だった




 黒を基調とした上下の服のような防具だ、上は強いて言うならライダースジャケットだ、袖の部分や背中の一部分に赤のラインが入っていて投擲用ナイフを仕込む溝がある。銀のボタンで前を留めるようになっていて普段は前を留めないスタイルでもよさそうだ。下のズボンも上とおそろいで、赤いラインが各所に入っている、臑の部分はプロテクターついていて足をガードできそうだし、ブーツも先端に鉄が仕込んでありまともに蹴ると骨ぐらいは折れるだろう。グローブは指ぬきタイプでこちらも鉄が仕込んである。ベルトはまるでガンベルトのようになってて背中の腰の部分にナイフホルスターがついている。なんだろうこの感じ、まるで……俺のために作られた・・・・・・・・・ような・・・、何でだろう、俺にはわかる


 「ジュートさん……?」
 「…………」


 サニーは俺を見て困惑し、シャムスさんは黙って俺を見つめた


 俺は……泣いていた。そして口から無意識に言葉が出ていた










 「ありがとな、マタハリ」










 俺は自分の口を押さえた


 何だ今の……? そしてシャムスさんが今の言葉を聞いて納得したかのように言った




 「君が、【約束の少年】なんだね……?」




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 店舗の奥は工房になっていてシャムスさんはそこでお茶を出してくれた。サニーもいる。クロはサニーの膝の上で香箱座りで目をつむり、サニーは優しくその背中をなでている。するとシャムスさんが語り出した


 「この工房はグランセンの中でも1,2を争うほど古くてね、その分歴史も古い。僕のご先祖様は何百年も前からこの工房を構えてて、我が家の言い伝えで建物は修理は認めるが改築は絶対にしてはならない、とかいう訳のわからない家訓があるんだ。それにはきちんと理由がある……なんでもこの家の初代当主のマタハリがとある少年・・・・・と約束したそうなんだ。その少年は全身黒い服・・・・・・・・・・を着て、黒猫を連れて・・・・・・・・・・いたらしい・・・・・


 「その少年のために自分の生涯を掛けて最高の防具を作り上げたが、【魔神大戦】が始まり少年は帰ってこなかった。しかしマタハリは少年が死んだとは思えず、いつか帰って来るであろう少年のために遺言を残したのさ『いつか全身黒い服を着た黒猫を連れた少年がやってくる、それまでこの防具とこの店を何があっても守り続けろ』とね。僕たちは代々その少年を【約束の少年】と呼び伝えていったのさ。まさか僕の代で現れるとは思わなかったけどね」


 そこまで話すとシャムスさんはお茶をの一気に飲み干し一息ついた。俺は不思議な感じだった、このボロボロの制服……今日服屋で買い物をして新しい服を買ったのに何故か着たいと思えなかったこと、中央広場でなぜかサニーの目が離せなかったこと、〔ヒマワリ防具店〕という名前がずっと気になっていたこと


 俺はクロを見る……クロは目を閉じ黙っている、過去を思い出し懐かしい気持ちに浸っているようにも見える。まちがいない【約束の少年】は【銃神ヴォルフガング】だ。シャムスさんは、優しい声で俺に言う。


 「ジュートくん。あの防具を付けてみてくれないか?」
 「いいんですか?……あの、お代はいくらですか?」




 「あれは君のものだ。ご先祖様の……マタハリの約束をやっと果たせるんだ」




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 俺はその防具を手に取り着込んでいく。ジャケットの前は留めずに全開にし、ズボンをはきベルトを着けてグローブをはめる。シャムスさんの店で買った投擲用ナイフを袖に刺し、腰に【死の輝きシャイニング・デッド】を装備する。当然のことながらサイズはぴったりだった


 「わああ~、ジュートさんかっこいいです!!」
 「ああ、よく似合ってる」


 サニーとシャムスさんがそれぞれ褒めてくれる。なんか照れるな


 「ホントに料金はいいんですか? こんな立派なもの」
 「ああ、かまわない。むしろ感謝してるよ、マタハリの約束を果たしてくれた君の存在に、あと君を連れてきてくれたサニーに」


 シャムスさんはそう言うとサニーの頭をなでる、サニーはうれしそうだ……でもやっぱり俺の気が晴れないのでシャムスさんに聞いてみた


 「これからどうするんですか?」
 「もちろん防具屋を続ける、約束を果たしたからね。僕の防具屋人生はこれからやっと始まるんだ、実は町の中央に引退した防具屋があってね、そこの主人が物件同士を交換しないかと持ちかけてきたんだ、町中に店を構えれば収入も増えるし、サニーもずいぶん楽ができるだろうしね」


 その言葉が初耳だったのか、サニーが驚いた顔でシャムスさんを見る。


 「そ、それホント!? 町に住めるの!? やったーーーっ!!」


 サニーはその場でぴょんぴょんジャンプしてシャムスさんに抱きついた。そうだ、チョット早いけど俺から引っ越し祝いを渡そう。俺は足下にいるクロの所にかがみ込みあるものを取り出してもらう


 「シャムスさん、これ……服の代金じゃなくて引っ越し祝いです。商人ギルドに持って行ってみてください、なるべく目立たないようにしてくださいね」


 俺は〔アダムズアップル〕をシャムスさんに渡す。サニーもシャムスさんも不思議そうな顔をしていたが特に説明しなくていいだろう、したら返されそうだし。さて、用は済んだしそろそろ行くか


 「じゃあシャムスさん、ありがとうございました。サニーも元気でな」


 俺はサニーの頭をなでる、サニーはくすぐったそうに目を細めた……かわいい


 「ああ、町に店を出したら遊びに来てくれ。君なら大歓迎だ」
 「また遊びに来てくださいね、ジュートさん……ううん、お兄ちゃん!!」


 俺はサニーのお兄ちゃん発言に衝撃を受けながら振り返り歩き出す、10メートルほど進んだところでシャムスさんが少し大きな声で言った










 「ジュートくん、ひとつ言い忘れていた。その防具の名前は……!!」










 【友情の約束プロメッサ・アミティーエ










 友情の約束は長き時を経て果たされた──────────



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