ホントウの勇者

さとう

プロレの森/初戦闘・飲み込む決意



 穴の中を通過して反対の穴に出るとそこは森だった…ってゆーかジャングル? 


 俺は辺りを見回していると後ろの穴が音もなく閉じてく……するとクロが


 《こんなコトするのは今回ダケよ、次元に穴を開けるなんてホントはものすごく危険なんだからネ。もし空間と空間のスキマに落ちたら次元のハザマを永久にさ迷うコトになるからネ》


 ちょっ、お前そういうのは最初に言えよ。カッコつけて飛び込んじまったじゃねーか。 こええ!!


 《言えばアナタ、ビビって動けなかったんジャない?》
 「そそそそんなわけあるか!? 全然余裕だっての!!」
 《とにかく【赤の大陸グランドレッド】についたワヨ。ココは〈プロレの森〉ネ……フム》


 クロは何かを思い付いたのか、しっぽをくるんと回す。すると紋章が輝き、光が俺を包み込む。今度はなんだ?


 《アナタの結界を解除シタワ》
 「………はい?」
 《ココにいるモンスター達は比較的弱いのばかりよ。実戦に勝る修行はナイワ…サァ行くワヨ》
 「ちょ……クロさん!?」


 クロは空間から俺のナイフ、【死の輝きシャイニング・デッド】を取り出して俺に渡してきた。俺はなんとなくそのナイフを逆手に構えてクロについていく……するとついに来た






 「モンスターだ!!」






 そのモンスターは人のカタチだった。全身赤色の皮膚に髪の毛は生えていない、爬虫類のような瞳に不揃いな歯、口からはヨダレがダラダラこぼれていて、知性の欠片も感じさせない表情。身長は1メートルくらいで上半身裸、羞恥心はあるのか腰にはボロ布を巻いている。手には折れた棒に尖った石をくくりつけた即席の槍を握ってる


 《レッドゴブリンね、この大陸にしかいないゴブリンよ。サァ……一人で戦いなサイ》


 クロは突き放すように言う。甘えるなってことか……するとゴブリンがこちらに気付き、槍を構えて突進してきた


 「グギィヤァァァァァ!!」
 「うわあぁぁぁぁぁ!!」


 この世の物とは思えない声に足がすくみかける。俺は横っ飛びで突進を回避してカッコ悪くゴロゴロ転がり、そして再びゴブリンが槍を構え再び突進してきた


 俺はナイフ振り回しながら回避する。すると手にざぐん、と不思議な感覚が伝わってくる


 「え……?」


 ナイフを見ると、赤い血がべったりこびりついている。まさかと思いゴブリンを見ると……ゴブリンの左腕が切断されていた。ゴブリンはのたうち回り、怒りの表情で俺を睨み付ける


 「ギィィィァアアアア!!」


 ゴブリンは腕の止血を諦めて俺に向かってきた。痛みよりも自分をこんな目に合わせた俺が許せないんだろう……このゴブリンは俺を殺す気だ、殺らなきゃ殺られる。覚悟を決めろ、俺は友達を助けるんだ、こんな所で終われない


 「……ふぅ」


 俺は瞬間的に冷静になった。そして向かってくるゴブリンを観察する…走るのはそんなに速くない、左腕がないので右腕と右脇で槍を固定して突っ込んでくる。左側ががら空きだ


 俺はナイフを左手で逆手に持ち、腰を低く構える。ゴブリンの突進を右にかわしてカウンターの要領で首を切った。するとゴブリンはもんどりうって倒れて動かなくなった


 「ハァ、ハァ……ハァ」


 この間約30秒。俺は全身が汗だくになっていた。初めての命のやり取り…俺が殺した。ついこの間までただの高校生だった俺が殺した


 俺は猛烈な吐き気が俺を襲う、俺は口に手をあて




 《ダメよ》






 そこで初めてクロが話す。俺が聞いたことのない冷たい声で
 



 《吐くのは許さないワ、飲み込みなサイ。アナタが殺した・・・・・・・命と一緒に・・・・・


 その言葉を聞いて俺は飲み込んだ。全てを・・・


 「悪い……クロ、もう大丈夫」
 《ソウ、ジャあいくワヨ》




 素っ気ない態度、それはホントウに俺が大丈夫だとわかったいるから。この黒猫なりのやさしさだった




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  初戦闘を終えて再び森を歩きだす。すると再びゴブリンが現れた……しかも今度は二匹、するとクロが


 《今度は魔術も使って倒しなさイ》


 と言う、さっきは必死で普通に忘れてた。よ-し


 俺はナイフを左手で逆手に構えて、右手に【赤】の魔力を集中させる、ゴブリンならこの魔術でイイだろう


 ゴブリン達も俺に気付いたみたいだ、よくみるとさっきのゴブリンとおんなじ武器。知能が低そうだから他の武器が作れないのか……まあいいや


 するとゴブリンが同時に突っ込んでくる、俺は右側のゴブリンに魔術を放つ


 【下級魔術・炎弾ファイアボール


 俺の放った炎弾は、右側のゴブリンの上半身を黒焦げにした。悲鳴すら挙げずに死んだゴブリンをみて左側のゴブリンが驚く。そのスキに俺はゴブリンの首を切ると勢いがつきすぎて首が切断された


 よっしゃ勝利!!……するとクロが


 《なかなか冷静に戦えるワネ、あとは身体能力を上げて、武器術や武術を習得すれば強くなれるワヨ》


 なんとなくクロが嬉しそうに喋るので俺も嬉しかった。そして再び歩きだした。


 クロ曰くこの森はゴブリンの住む森らしく、他のモンスターはそんなにいないらしい。俺も戦いに少し慣れてきたのか、かれこれゴブリンを20匹くらいは倒した。しばらく歩くと森の出口についた。そして外の風景を眺めると自然と言葉が出てきた。


 「ここが【赤の大陸グランドレッド】か……広いな」


 そこはとても広い平原だった、森の出口から少し進んだ先に長い街道が延びている。特徴としては土や岩が全て赤茶色で、山や岩場なんかも全体的に赤っぽい。俺とクロは街道に出ると、少し先に看板が立っていた。どれどれ


 〔 この先・商業都市グランセン〕


 と、書かれている。するとクロが


 《ちょうどイイわネ、グランセンに向かいまショ。まずは〔アダムズアップル〕を売ってお金を作って、アナタの装備を買いまショ》


 装備か。たしかに制服はボロボロだし、着替えなんかも欲しいし、道具を入れる鞄とか、ナイフをぶら下げるベルト、余裕があったら魔導具なんかもみてみたい……よし、目的地は決まった


 「よーし。商業都市グランセンに出発だ!!」


 いいねいいね、なんか冒険者みたいでさ、するとクロが楽しそうに笑い呟いた。


 《フフフ……ヴォルと旅してた時を思いだすワ》






 なんだかんだでクロも楽しんでいるみたいだ。俺達はグランセンに向けて、街道を歩きだした。
  






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