ホントウの勇者

さとう

心の整理・死の輝き

 

 旅って、どーゆーこと?


 クロのいきなりの発言に、俺はアホみたいな顔でクロを見つめていた。


 《言葉ノ通りヨ。ココでできるコトには限界があるワ、旅をしながら力を磨いて、【神器】を覚醒させて、かつての【銃神】がしたように、8大陸を回るノヨ!》


 クロの言葉を聞いて、俺は胸が高鳴るのを感じた。冒険、それは男が一度は夢見る物


 「うおおぉぉーー!! メチャクチャ面白そうじゃねーか!!」
 《遊びジャないワヨ。旅の中でも修行はするからネ!!》


 それでもよかった。俺の目的はクラスメイトの解放、ついでに世界を守ること。よく考えたら…世界を知らないのに世界を守れるわけがない、でも不安があった


 「でも、今の俺で大丈夫なのか?【中級魔術】をマスターしただけなんだが」
 《大丈夫ヨ。アナタならすぐに【上級】レベルまで強くなれるワ。強いて言うなら、不安なのは近接戦闘ね。コレばかりはワタシも教えられないからネ》


 近接戦闘か…確かにな、もし剣吾とかと戦いになったらあっさり負けそうな気がする。どうしよう


《ナラちょうどイイワ、【赤の大陸グランドレッド】にいるワタシと同じ九創成獣ナインス・ビストの一匹【アグニードラ・インフェルノ】に教えてもらいマショ》


 「【神獣】なのに、近接戦闘とか武器を使うのか?」


《エエ、アイツも【銃神】の影響で人間の文化に興味を持っちゃてネ、特に武術や武器術を何百年もかけて習得、アレンジしてるのヨ。本来の強さナラそんなことしなくても強いんだけどネ》


 そ、そうなのか……【神獣】って暇なのか?


 《ソウと決まれば支度してすぐに出発ヨ。ア、そうだコレを持っていって、お金に変えましょう》


 と言ってクロが取り出したのは、いつもお世話になっていた〔りんごモドキ〕だった


《コレはこの【クローノス大陸】でしか取れない幻の果実、〔アダムズアップル〕ヨ。市場には数年に一度出るか出ないかの超高級食材。1個200万ゴルドは下らないワ》


 マジかよ、俺なんにも考えないでバクバク食べてたぞ。そんな高級食材だったのか……ってゆーかこの世界の通貨の単位ゴルドっていうのか


 クロは俺の驚きを無視して100個ぐらいりんごを集めて一ヶ所にまとめている。そしてしっぽをくるんと回すと紋章が輝き、りんごを光が飲み込んだ。


 《空間を隔離シテ時間を止めたワ、これでずっと新鮮なママよ》


 相変わらず反則な力だな、でも助かるぜ。ふと疑問が沸いたので確認してみる


 「なぁ、この空間から外に出たらさ、他の神に気付かれないのか?…っていうのか外はどうなってるんだ?」


 今の状態で他の神やクラスメイト、特にシグムントには絶対会いたくない。借りは必ず返すつもりだが


 《ワタシの結界なら大丈夫。ワタシはこの大陸に何百年も住んでいるノヨ? 【魔神】ですらワタシを見つけることができなかったんだから》


 クロさんさすがです、たよりになります。そう思っていたらクロがしっぽをくるんと回す…すると紋章が俺とクロを包み込む


 《コレでイイワ、さぁでましょ。あぁこの場所は一応持って持っていくワ、ずっと住んでた所だから愛着があるノヨ》


 隔離空間は自由に持ち運びできる、そう言って外に出た。クロが言うには俺が城から落ちてからまだ数分しかたっていないらしい。外は相変わらず真っ黒で、コールタールの雨が降っている。しかし、クロの結界のおかげなのか、体が雨を弾いて全く濡れなかった。クロが言う


 《コノ雨は〔毒雨〕ヨ。普通の人間が浴びたら数分で死ぬワヨ、コノ雨を汲むためだけに冒険者が来ることもあるワ、しかもココは神の土地、生息するモンスターはとても強いワ、今のアナタじゃ挽き肉にされるワヨ》


 恐ろしいこと平然と言うなよ、こええだろ!! まあ結界があるから大丈夫か


 《コッチよ》


 俺はクロの後に続く。獣道や岩場などを抜け林を抜けると、開けた場所に出た。城からはかなり離れたし雨も止んできたが、その広場を見て硬直した






 死体だ








 その死体は、死んでからからかなり時間が経過しているように見えた、死体というかミイラみたいに痩せこけていたからだ。格好は〔毒雨〕対策だろうか、頭から被るマントみたいな物を被っている。よくみるとマントの下に軽そうな鎧をつけていて、腰には剣の鞘がついている。左腕は食いちぎられたのか無くなっていて、錆びだらけの剣がそばに落ちていた


 俺はその光景を見て嫌悪感などは全く浮かばずに、埋葬してやりたい気持ちになっていた。クロに出会わなかったら自分がこうなっていたかも知れない。そう考えただけで、この死体を放っておくことはできなかった。俺はクロに言う


 「クロ……埋めてあげよう」
 《……わかったワ、その代わり》


 クロは俺に厳しく言う


 《そうイウ気持ちになるのは今回だけにしなサイ。アナタは生きている、彼は死んだ……コレから先もこういうコトがたくさんあるワ。キビシイかもしれないけど、彼をキチンと埋葬して気持ちに区切りをつけなサイ》


 クロの言葉は厳しい、でもそれは俺のことを思っての言葉だ。クロのやさしさを俺は心で受け止めた。


 「ありがとう……クロ」


 俺はそう言って死体の体を持ち上げた、すると何が落ちた


 「これは……ナイフ?」


 それは一本のナイフだった。刃渡り30センチくらいで、雨に散々打たれたはずなのに錆び一つ付いていない。刀身は銀色に輝き、角度を変えると虹のように煌めいた。グリップはとても持ちやすく手にフィットして、順手でも逆手でも持ちやすい。俺はなぜか死体の顔を見つめた。そして、それは確かに聞こえた










 『俺の代わりに、使ってくれ』










 それは都合のいい幻聴なのかもしれない。それでも俺はこの死体の死を悼み、涙を流した




 クロは何も言わなかった




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 死体を抱えたまま移動して海の見える丘まできた。この辺りで死体を埋葬しようと思い、落ちていた棒で穴をほる。10分ほどで掘り終わり、死体を穴に入れ土を戻す。近くに落ちていた大きな石を墓石に見立てて〔アダムズアップル〕をお供えした。この大陸に花は咲かないので少しさみしいが仕方ない。俺はナイフを取り出し、墓に語りかけた。


 「このナイフ、使わせて貰います。志半ばで散ったあなたのぶんまで…俺の相棒として、ずっと」


 俺は名前も知らない冒険者に誓う。今日のこの気持ちを忘れないために。するとクロが


 《いいナイフね、とてもキレイ・・・》


 そう言ってしっぽをくるんと回す、すると紺色の紋章が輝き、光がナイフに吸い込まれた。何をしたんだ?


 《そのナイフの時間を止めたワ、コレでもうそのナイフは決して折れることなく、いつまでも輝き続けるワ》


 俺はクロに微笑みかける。粋なことするじゃねえか。するとクロが


 《ねェ、そのナイフに名前をつけてあげたら?》
 「名前か……そうだな」


 彼は死んでも、俺の手の中で輝き続ける。






 「【死の輝きシャイニング・デッド】……かな」






 《そう……イイ名前ね》
 「ああ、行こうぜ」


 俺たちは墓を後にする、【赤の大陸グランドレッド】へ向かうために、歩きだした。すると─────────




















 『ありがとう─────────』




















 風に乗って、そんな声が聞こえた気がした





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コメント

  • ノベルバユーザー303040

    中2病心がぅすぐられる

    2
  • カラ

    主人公のネーミングセンスすごく疼きますね

    4
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