ホントウの勇者

さとう

再会・罵声



  シグムントが部屋を去って一日ぐらい経過した


 その間拷問は一切行われず、あの化物ゴブリンすら来なかった。身体中が激痛に悲鳴を上げていてまともに動ける状態ではなく、特に左の二の腕がパンパンに膨らみまともに動かすことすら出来なかった。自分の腕の状態を見て何度も嘔吐し、胃のなかは空っぽだった


   グゥゥゥゥ……と、腹が鳴る。 あはは、こんな状態なのに腹は減るんだなあ




 「母さんの目玉焼き……食べたい…なあ」




 頭が働かない、痛みだけがはっきりしてる。俺はそのまま目を閉じる。なんか……眠いなあ




 そのまま眼を閉じ……気を失った




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 「起キロ、処刑ノ時間ダ!!」




 化物ゴブリンのダミ声で目覚めた俺は、無理矢理立たされて手錠を付けられた。そして、目の前には腐れイケメンのシグムントが能面のような気持ち悪い笑みを浮かべている


 「おはようございます。いやぁ、実に素晴らしい朝ですねぇ…今日の処刑が実に楽しみで、昨夜は興奮して眠れませんでしたよ」


 嬉しく語るシグムント。俺は嫌悪感しか感じない、背中を押されて歩き始めるが、立って歩くのは久しぶりだったから体が悲鳴を挙げている。止まるたびに化物ゴブリンに背中を蹴られた


 「安心してください。あなたが死んだあと【銃神】の魂はまた遥か長い間さ迷う事でしょう。あなたは死ぬ事でこの大陸の全ての命から祝福されるのです」


 あっそ、だからなに?


 「どうせ最後ですからね、一つくらいなら望みを叶えて差し上げましょう。何か望みはありますか?」


 望み……俺は……俺は家に帰りたい。読みかけの本もまだたくさんある。来月発売のゲームもやりたいし、お気に入りの作家の新作も発売する。剣吾にジュースおごってもらってないし、静寂さんに聞かせたい話もある、弓島さんに100円返してないし、まだまだやりたいことがたくさんある




 俺は……泣いていた。無表情のまま静かに泣いた。そして、ポツリと呟いた






 「帰り……たい」




 シグムントはその答えにとても満足して、身を震わせて恍惚の表情を浮かべている。決して届かない物に手を伸ばし抗う者を、嘲笑うかのように口を歪ませて


 「ダァァァァアメで~す。残念でしたァァァァア!! あははははひあははは!!」


 シグムントは狂ったように嗤う。これがこいつの本性だ


 「まァクラスメイトぐらいには会わせてあげますよ、最後ですからねぇ?」


 クラスメイトの顔が浮かぶ……挨拶ぐらいしかしない奴もいたし、全く喋ったことない奴もいる。それでもみんなに会いたかった。剣吾、静寂さん、弓島さん


 そんな事を考えていると目的地らしき所についた。ここは、最初に転移した大広間か?


 そして観音開きの扉が大きな音を立てて開いていく、そこにはクラスメイトたちがいた。俺は自然に顔がほころび涙がこぼれていた。みんなが驚いた表情でこっちをみている、よくみると服装が全員違う。白を基調とした立派な作りの服、まるで騎士のような感じだ。男子はズボン、女子はミニスカで何人かはマントを着けている。剣吾と静寂さんと弓島さんはマントを着けていた




 「みんな、助けてくれ……!!」




 自然にその言葉が出てきた。みんな、助け






















 「話し掛けるんじゃねぇよ、クソ野郎が」






 「え、剣吾………?」






 「信じてたのに……許しません。絶対に許さない!!」






 「 静寂さん……なんで?」






 「あんたのせいでこの世界は!! 死んで償いなさい、それともあたしが殺してやろうか!?」






 「弓島……さん?」


 





 なんで? どうして?……みんな助けてくれよ、俺は俺は俺は


 俺の後ろでシグムントが恐ろしく深い笑顔を浮かべている。この時を待っていたと言わんばかりに




 





 「あなたはもう、一人だ」










 俺の中で、何かが壊れた






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  そして、ほかのクラスメイトからも大量の罵声を浴びて、俺はゆっくり歩き始める。壁が一部分無くなって外が見える。外は俺の心のように黒い雨が降っていて、眼下に広がる森は地獄の入り口のように感じた


 辺りを見回すとクラスメイトの他に、金仮面と側近四人、全身鎧の兵士がたくさんいた。手錠を外されて壁際まで蹴り飛ばされる。その様子を見て、クラスメイトたちが爆笑してる。剣吾や静寂さん、弓島さんたちも、楽しそうに……そして、シグムントが近づいてきた




 「さぁ、最後の時です。あなたの中の【銃神】を呪い、苦しみながら逝きなさい」 


 

 俺はノロノロと歩き始める。そして振り返りその場の全員を見つめた。




 クラスメイトたちは全員が笑顔を浮かべ、さっさと跳べとヤジを飛ばしてる。シグムントは狂ったような笑みを向けているし、他の三人の側近も笑っていた。兵士たちは兜で顔が見えないが、あの化物ゴブリンのような醜悪な笑みを浮かべているだろう。俺は最後に金仮面を見つめた。金仮面は








 「それでは、さようなら」






 シグムントの手から風が吹き出して俺の体を切り刻んむ……そしてそのまま壁の穴から外に投げだされた




 俺は衝撃で意識を失いかけていたが最後に気になる事が頭をよぎった






 最後に見た金仮面の雰囲気が─────────








     









 







 

















 まるで、泣いている女の子のようだった───────────


 


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コメント

  • ノベルバユーザー294338

    刻(ん)む

    0
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