ホントウの勇者

さとう

苦痛・絶望

 「なんだこれ…黒、じゃない?」


 俺は呆然とその紋章と色を見て勝手に声が出ていた。すると俺の言葉に反応したように、紋章が俺の胸に…正確には心臓に吸い込まれていった。すると


 「ぐっ…があァァ!?」


 激痛が胸に走る、焼けるように熱い胸を押さえ、Tシャツをめくり胸元を見るとそこには紋章が刻まれていた。そしてなぜかはわからないが、クラスメイトよりも先に金仮面を見た…すると


 金仮面の瞳は見えないが、なぜか自分を怒りの表情で見ているのが手に取るようにわかった。
そして側近の四人の表情がとても恐ろしく感じた。


 (逃げなきゃ……)


 なんでそう思ったのかはわからない


 (ここにいたら……)


 反射的に振り返り、出口らしき扉を見つけ走り出す


 (殺される!!!)






 『捕らえろ』






 すると突如空中から鎖が飛び出し俺の全身を拘束する。両腕、両足、胴体、首に鎖が巻き付き、全身をくまなく締め上げる。あまりの激痛に叫んでしまう


 「ぐっ・・・ぎっっっがァァァァァァ!?!?」


 生まれて初めての激痛に頭がパニックを起こしかける、すると剣吾が叫ぶ


 「ジュートォ!! てめぇ、なにしてやがるこのヤロォォッ!!!」


 鎖を生み出した側近の一人…喪服の魔女に剣吾が飛びかかろうとするが、兵士たちに取り押さえられてしまった。するとほかの生徒たちが怯え始めたのを見て、鎖の拘束が少し緩む


 「ジュート!! ジュートォ!!」 


 と、弓島さんが泣き


 「え…え? いったいなにが?」 


 と静寂さんが戸惑ってる


 金仮面がステージを降りゆっくりこちらに近づいてくる。そして、俺の目の前まで来ると俺の顔をのぞき込み……呟いた








 『また逢えたな……フフフ』










 怪訝に思っていると鎖の拘束が解け地面に投げ出された。いてぇ……鎖が巻き付いていた場所は傷だらけで、血が出ていた。いきなりの扱いに腹が立ち金仮面にむけて怒鳴り散らす




 「なんで……こんなことを……!!」




 だが金仮面はその問いには答えずに、近くの兵士に告げる




 『連れて行け』




 俺はあっさりと兵士に拘束され、そのまま無理矢理引きずられていった




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 俺が連れて行かれたのはやっぱり牢屋だった。広さはだいたい12畳くらいでがっしりした鉄格子、窓はなく出口はこの鉄格子のみだ……そんなことよりも、ここにあるのはどうみても拷問用の器具ではないのか? なんでこんな部屋に? これから拷問でも始めるのか? 誰を? 俺? 何で?………そんなことを考えていたら、兵士にいきなり殴られた


 「ゲボ…っつ、ゴホッ…がはあァァッ!?」


 一発や二発ではない、腹・顔面・腕・足。とにかくボコボコに殴られた…声も出せずにされるがままになっていると、兵士が兜をを脱ぐ……その顔をみて心底恐怖した




 人間じゃない。まるで歪んだブタのような顔




 あとで知ったことだがそれは【メガゴブリン】と呼ばれるゴブリンの上位種らしかった。なんでそんな化物が、モンスターがこんな城にいるんだ?


 化物は俺の表情に満足したのか、笑みを浮かべてしゃべり始めた




 「残念ダッタナァ、マサカオ前ガアノ【銃神】ダッタトハナ。マア殺シハシナイガ、タップリ楽シマセテモラオウカ」




 わけがわからない。なんだ【銃神】って……俺が何をしたってんだよ?




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 そこから先はよく覚えていない。兵士が何人か入れ替わり俺を痛めつけ、残飯のような食事を無理矢理のどに流し込まれた……電気ショックを浴びせられ、爪をはがされ、試し切りという名目で死なない程度に切り刻まれ、心身共に限界を超えていた


 二・三日たち、その日の拷問が終わり夜になり、明かりがすべて消されて真っ暗になる。ここは光が届かないので一メートル先も見えない、体中痛くて動けないので、その場で横になる…思い出すのは家族のこと


「親父、母さん……」


 どうしているだろうか? 親父は心配してるかな。母さんは、泣いているかなぁ?……そんなことを考えていると涙が出てきた


 「うっ……うううっ……うあああぁぁっ!!」




 苦痛の日は……まだ終わらない




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 十日ぐらい経っただろうか……誰かが来た。こいつは金仮面の横にいた戦士風のイケメンだ。そいつはいけしゃあしゃあという


 「どうですか、気分は?」


 笑顔でそんなことを言いやがる、俺は精一杯の憎しみの目で睨み付ける


 「ああ、自己紹介がまだでしたね。私はエルレイン様直属の親衛隊【王ノ四牙フォーゲイザー】の一人……【空神シグムント】と申します」


 聞いちゃいねえよ……あっちいけ、イケメン滅びろ


 「ふふ、そう睨まないでください・少しお話がしたくてね……あなたがなぜこんな状況に陥ったのか、その理由を知りたくありませんか?」


 「………どういうことだ?」


 「おや?少しは元気が出ましたか。ふふふ、それでは教えてあげましょう」


 なんだこいつ……芝居がかったしゃべり方してきもちわりいな、さっさと言えよ


 「すべての原因は、あなたの中に存在する神、【銃神ヴォルフガング】のせいですよ。数百年前【銃神】は一度、このクローノス大陸を滅ぼしているんです。そのときエルレイン様の「ご先祖様」と相打ちに近い形で滅ぼされましたが、その魂はどこかで彷徨っていると言われていました……そして過去にも異世界転移により異世界人が召喚されましたが、【銃神】は一度も現れたことがありません。そして今回の召喚で見事、あなたが【銃神】に選ばれたのです!!」


 ここまで興奮気味に喋ってシグムントは息をつき俺を見つめる。その瞳はとても濁っていた


 「このクローノス大陸すべての生物は、遺伝子レベルで【銃神】を憎んでいます。もちろん私も!!」


 そういってシグムントは俺の左腕を思い切り踏みつけた


 「がァァァァァァッ!?!?」


 折れた……腕が折れ砕けた!?


 「ふふふふふふふ……あァァァァァァッッはははは!!!」


 涙がこぼれる……なんでオレガコンnめにあウnd


 「イイ顔だァァァ…もっともっと絶望しろォォォォォォォッ!! ははははははははははあははっはっっははっっっっっははっっははっ!!!」


 「はぁ、はぁ……ふぅぅぅ。いいことを教えてあげましょう、あなたのクラスメイトのことですがね」




 俺は思わずシグムントを見つめる、剣吾、静寂さん、弓島さんが頭をよぎる




 「みんな、ミィィィィィンナ……あなたを深く憎んでいます。おかしいと思わないんですか? あなたがこんな目にあっているのに誰一人としてあなたを助けに来ない、様子を見に来ようとすらしないなんて」




 うそだ




 「私たちがあなたの中の【銃神】のこと、この大陸、この世界の事情。それらすべてを懇切丁寧に説明したところ、満場一致でみんながあなたへの憎しみとあなたの死を望みました」




 「…………うそだ」




 「喜びなさい、もうすぐ苦痛は終わります。あなたの死を持ってあなたを解放しましょう…最後くらいはあなたの望む人間にあなたを殺させましょう」


 「……うそだ…うそだ……うそ、だ」


 「そうだ、クラスメイトのみんなの前でこのクローノス城の最上階から飛び降りる…というのはどうでしょう? あなたの友達から憎しみのすべてを受けて自ら命を絶つのです!! よし、そうしましょう!! そうときまれば準備をしなくては、ああ忙しくなりそうだ。それでは失礼いたします。処刑台で会いましょう!!」






 鼻歌を歌いながら、シグムントは去って行った










 「うそだ……うそだ、うそだ……剣吾、静寂さん……弓島さん……」
















 「うそだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」






















 苦痛が終わり、絶望が俺を支配した





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